雅なイラストが描かれた綺麗な文庫本。 何色にも形容しがたい、とてもきらびやかな本。 平安浪漫・・なんて書いてあるから、 平安時代の恋愛物なのかもしれない・・。 でもあの人なら、こんな本よりずっと・・ ずっと雅で美しい恋物語を聞かせてくれそう・・。 『おいで、姫君』 そう・・私を姫君と呼んで・・とても大切に・・ まるで壊れ物のように扱ってくれた。 お姫様扱い・・というのは、ああいうのを言うのだと ・・今ならそう思う。 口では随分なことを言っていても・・やっぱり 私はあの人に大切にされてた。 軽い言動の割りに、武官らしく・・ 私をしっかり守ってくれていたよね。 少し理不尽なことを言っても笑って許してくれたよね。 大人で、迷ったときにはしっかりと導いてくれる。 この本のように・・本当に雅な人で・・ 私を大切に・・優しく扱ってくれた人。 私のこと好きだって言ってくれたよね・・ 誰よりも大切だ・・って・・側に居て守りたいって・・。 でも・・あの時私はまだ気がついていなかった。 一番大切だったのは・・他の誰でもないあなただってことに・・ ・・だからあの人が止めるのも聞かず・・ 私は一人現代に戻ってきた。 ・・京を離れたら・・もう二度と会えなくなるって・・ どうしてそんな簡単なことに気付かなかったんだろう・・。 異世界で出会った大人で優しくて・・とても雅な人。 一見軽そうだけど・・とてもしっかりしていて、 自分を持っている人。私の面倒もきちんと見てくれる人で・・ 言い方は軽くても・・私にはいつも真実を語ってくれた。 誰よりも信頼できる人だった・・。 友雅さん・・私・・あなたに・・会いたい・・。 今とても後悔しているの・・京に残らなかったこと・・ あなたが大切だって・・気付かなかったこと・・ ・・私・・・友雅さんのこと・・・ 「私は夢でも見ているのかな? ・・そこに美しい姫君が見えるのだが。」 突然の声に私は振り返った。 「と・・友雅さん?」 後ろに立ってたのは、今、私の心を 占めている・・友雅さんだった。 「ほ・・本当に友雅さん・・なの? どうして・・どうしてこっちの世界にいるの!?」 「いつも通り、自宅で橘を愛でていたはず なんだがね・・急に誰かに呼ばれたような気がして 振り返ったら・・こんなところにいたよ。 なにやら書物の多い場所だね。」 友雅さんがここにいることが信じられなくて・・ 私は思わず友雅さんに近づき・・・ 夢でないことを確かめようと・・彼の手のひらを掴んで 自分の胸元に引き寄せた。 「・・神子殿?」 「暖かい・・本物・・だね。 また会えるなんて・・夢みたい。」 「私もとても驚いているよ。 どうしてこんなところにいるのか不思議だね。」 「私もね・・駅前にいたはずなのに・・気がついたら ここに立っていたの。・・不思議・・だよね。」 本当に不思議・・夢の中にいるんじゃないかって・・ そう思うくらい。・・でも私はさっきまで大通りを 歩いていた・・。だとしたら・・これは『白昼夢?』 でも・・そしたら、この暖かい手は? 「神子殿、手に持っているのは、そちらの世界の書物かな?」 「はい。平安浪漫をテーマにした恋愛小説のようです。 とても雅なイラストに惹かれて・・・ 友雅さんだったら、雅な恋愛話を聞かせてくれるかも・・ って思っていたんです。」 「ではご期待に沿わなくてはならないかな? こちらへおいで、私の姫君。」 そういうと、友雅さんは自分のほうへと 私を引き寄せた。そして耳元に唇を寄せて・・ 「最高の恋物語は・・実はまだ終わりが決まってなくてね。 どうしたものか、自分でも困っているのだよ。」 「物語が終わらなくて困ってる?」 「そう。その答えは、神子殿だけが知っている。 ・・知らないとは言わせないよ。 私の心は、神子殿が一番ご存知のはずだ。 私の気持ちは、君が京を離れたときから 変わっていないからね。 ・・教えてくれないか?恋物語の終わりを・・ 私の大切な姫君・・。」 友雅さん・・今、なんていった? ねぇ・・ひょっとして・・まだ間に合うの? 私、気持ち伝えてもいいの? ‐‐‐‐龍神さま・・お願い、私に少しだけ勇気を! 『その願い、叶えよう。我が神子のために』 急に頭に響く低い声が聞こえた・・。 そのとたん・・お店の中が真っ白に・・光りだす・・ それは外の白い妖精たちのように・・ きらきらと・・美しく光りだして・・・ 「・・この白い光は・・神子殿!?」 胸元に引き寄せられていた私が 白い色の光に包まれそうになる私を止めたいかのように 友雅さんはさらにきつく抱きしめなおす。 「もうどこにも行かないでおくれ・・・ 物語を終わらせたくないのは・・他の誰でもない 私自身だ。・・神子殿を離したくない。 ・・答えを聞かせておくれ・・私の大切な姫君。」 あかね・・今言わないで、いつ言うの? 今度こそ・・ちゃんと伝えなきゃ。 大切な人の・・側にいるために! 「どこにも行かない。 私が好きなのは・・誰よりも大切なのは・・ 友雅さんだけ。・・・大好きです、友雅さん。」 私が思いを告げたとたん・・私を包んでいた 真っ白い光は・・うそのように消えていった。 『今の光は、その八葉を守護した『白虎』からの伝言。 われらは、神子と八葉が幸せになることを心から祈っている。』 また低い声が聞こえた・・。これは龍神さまの声・・。 「どうやら龍神と白虎のご慈悲があったようだね。 なんともないかい?神子殿。」 白い光が消えても、 友雅さんは私を抱きしめたまま・・そう言った。 「と・・友雅さん・・その格好・・。」 私が目を開けて友雅さんを見ると・・ 店が白く光るまでは、京にいたときのまま・・ 水色に近い翠色の直衣姿のままだったのに・・ 今はとても現代的な白いセーターに黒の革ズボン。 それに・・黒いロングのトレンチコートを羽織っている。 「龍神と白虎の計らいのようだね。」 「どういうこと?」 「先ほどの白い光が消える寸前に、 私の頭の中に大量の情報が流れ込んできてね、 『神子と共に神子の世界で生きよ。』 最後にそんな言葉を聞いたよ。 姫君と共に生きていくために必要な情報を 白虎と龍神が私にくれたようだね。 こちらの世界で言う『クリスマスプレゼント』だろうね。」 「クリスマスプレゼント!?」 「こちらの世界では今日は『クリスマス』 というのだろう?先ほど頭に流れてきた情報の 一つにそれがあったからね。」 「そっか。クリスマスプレゼントか。 ・・じゃぁ大事にしなきゃだめだよね。 友雅さん、私やっと気がついたの。 私が側にいたい人は・・・大好きな人は・・ 友雅さんだってこと。」 「ありがとう、これで物語りは『Happy End』 そうだね、あかね。」 「友雅さん・・今、私のこと『あかね』って・・。」 「この世界には神子殿はいないからね。 それにこの世界では、恋人たちは名前で呼び合うのだろう?」 「うれしいです。これからは・・ずっと一緒ですね。」 「そうだね。あかね、せっかくだから 『クリスマス』のやり直し、しなかい?」 「やり直し?」 「もう一度、二人でクリスマスを過ごさないかい? あかねは駅前にいたのだろう?」 「うん、買い物をしようと思って・・・・。」 「ではまず買い物の続きから行こうか。 ・・しかしこの不思議な店、普通に出られるだろうか?」 「多分、大丈夫。白虎と龍神さまの力だもん。」 そういって私は、この不思議な本屋さんの扉を開けた。 大切な人・・友雅さんとこれからを過ごすために・・。 これも不思議なんだけど・・店から出た先は、 駅前の大通りだった。 そして・・後日、その店を2人で探したんだけど・・・ いくら探しても・・二度と見つかることはなかった。 これはきっとクリスマスがくれた『奇跡』だったんだと・・ 今ならそう思う・・。 メリークリスマス! Fin |
友雅EDでした(^^)
後書きは後日掲載します。
読んでくださって本当にありがとうございました。
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