とても綺麗な山吹色のカード。 そこには『魔術師』と書かれている。 ・・まるであの人のためのカードのようだ。 陰陽師と魔術師は・・ちょっと違うかもしれないけど・・ あの人の行動や言動は・・いつも検討がつかなくて・・ マジックにでも掛けられたかのようだった。 人としてあの人は生まれなかった・・そう言っていた。 顔に施された不思議な呪いもそのためだって・・。 でも私には、誰よりも感情のある人に思えた。 この描かれた魔術師のように、大人ではなく・・ 山吹の花のように・・純真無垢で・・綺麗な人。 とても強くて・・頼りになって・・・ でもちゃんと人の暖かさを知っていたよ・・。 あの人は、私にとても・・とても優しかった。 言動がストレートで、誤解を招くようなことも 確かにあったかもしれないけど、 私に間違ったことを教えたことなんて一度も無い。 素直で優しくて・・頼れる・・そんな人。 私を好きだって言ってくれたよね・・ 誰よりも大切だ・・って・・側に居たいって・・。 でも・・あの時私はまだ気がついていなかった。 一番大切だったのは・・他の誰でもないあなただってことに・・ ・・だからあの人が止めるのも聞かず・・ 私は一人現代に戻ってきた。 ・・京を離れたら・・もう二度と会えなくなるって・・ どうしてそんな簡単なことに気付かなかったんだろう・・。 本当は誰よりも大切で・・放おって置けないはずの人。 純真無垢で・・自分にとても素直だった人。 私をしっかり導いてくれた・・とても強い人。 泰明さん・・私・・あなたに・・会いたい・・。 今とても後悔しているの・・京に残らなかったこと・・ あなたが大切だって・・気付かなかったこと・・ ・・私・・・泰明さんのこと・・・ 「そこにいるのは・・神子か?」 突然の声に私は振り返った。 「や・・泰明さん?」 後ろに立ってたのは、今、私の心を 占めている・・泰明さんだった。 「ほ・・本当に泰明さん・・なの? どうして・・どうしてこっちの世界にいるの!?」 「なぜかはわからぬ。・・ただとても大きな気を 感じた。・・私は仕事で嵐山に赴いていたが・・ その気に飲まれるような感じがしたと思ったら ・・ここにいた。」 泰明さんがここにいることが信じられなくて・・ 私は思わず泰明さんにそっと近づいて・・・ 夢でないことを確かめようと・・彼の手を自分の 頬に引き寄せた。 「神子?何をしている。」 「・・本物の泰明さんかどうか・・まだ 信じられなくて・・。」 「・・本物だ。私は2人もいない。」 「暖かい・・本物・・だね。 また会えるなんて・・夢みたい。」 「・・神子に会えるとは、私も思っていなかった。 なぜここに来たのかは・・わからない。」 「私もね・・駅前にいたはずなのに・・気がついたら ここに立っていたの。・・不思議・・だよね。」 本当に不思議・・夢の中にいるんじゃないかって・・ そう思うくらい。・・でも私はさっきまで大通りを 歩いていた・・。だとしたら・・これは『白昼夢?』 でも・・そしたら、この暖かい手は? 「神子、その手にしているものはなんだ?札・・か?」 「ううん。これはタロットカード。 こっちの世界で占いに使う札のようなものだよ。 これは『魔術師』のカード。マジックっていって 現実に起こりえないことをやってみせる人のことだよ。 ・・ちょっと違うかもしれなけど・・・・・ 泰明さんみたいな職業の人だよ。 触っていたのは・・なんとなく気になったからだよ。 きっと・・この魔術師が泰明さんが使う術に 似てるように思えたから・・・・。」 「・・私は動物を出したりはしないが・・ 札から式神を呼び出すようなものだろうか。 ならば、神子が似ていると感じても不思議はない。 あるいは・・私の強い思いが、そうさせたやもしれぬ。」 「泰明さんの強い思い?」 「神子が京を離れてからも、神子を思わない日はなかった。 どうしているのだろうと・・常に思っていた。 私の思いは変わらない。私に感情を与えた、 お前の心を、私は忘れられるわけが無いのだ・・。 神子・・今でも私は・・おまえを心から思っている。」 泰明さん・・今、なんていった? ねぇ・・ひょっとして・・まだ間に合うの? 私、気持ち伝えてもいいの? ‐‐‐‐龍神さま・・お願い、私に少しだけ勇気を! 『その願い、叶えよう。我が神子のために』 急に頭に響く低い声が聞こえた・・。 そのとたん・・お店の中が・・きらきらと 山吹色に・・美しく光りだして・・ 「こ・・この光は・・神子!!」 山吹色の光に包まれそうになる私を・・ 泰明さんはものすごい勢いで私の腕を強く引き・・ ・・泰明さんの胸元へ私自身を引き寄せる。 「神子を連れて行くな・・・もう失いたくないのだ。 やっと・・やっと会えたというのに・・ 私にとって神子は・・何者にも変えがたい・・・ 大事な・・大事な人だ・・・。 行かせはしない!!・・私を神子の元に・・・。」 あかね・・今言わないで、いつ言うの? 今度こそ・・ちゃんと伝えなきゃ。 大切な人の・・側にいるために! 「どこにも行かない。 私が好きなのは・・誰よりも大切なのは・・ 泰明さんだけ。・・・大好きです、泰明さん。」 私が思いを告げたとたん・・私を包んでいた 山吹色の光は・・うそのように消えていった。 『今の光は、その八葉を守護した『玄武』からの伝言。 われらは、神子と八葉が幸せになることを心から祈っている。』 また低い声が聞こえた・・。これは龍神さまの声・・。 「・・神子・・無事か?」 山吹色の光が消えても、 泰明さんは私を胸に抱きしめたまま・・そう言った。 「や・・泰明さん・・それ・・。」 私が目を開けて泰明さんを見ると・・ 店が山吹色に光るまでは、京にいたときのまま・・ 水干にズボン・・ブーツを履いたあの姿のままだったのに・・ 今はとても現代的な明るい緑色のやわらかいセーターに 細身の黒いズボン、明るい茶色のロングコートを 上から羽織っていた。 「どうやら、龍神と玄武の計らいのようだ。」 「どういうこと?」 「先ほどの山吹色の光が消える寸前に、私の頭の中に 大量の情報が流れ込んできた。 『神子と共に神子の世界で生きよ。』 私が情報の最後に聞いた言葉だ。 神子と共に生きていくために必要な情報を 玄武と龍神が私に与えたようだ。 こちらの世界でいうなら 『クリスマスプレゼント』というのだろう。」 「ク・・クリスマスプレゼント!? や・・泰明さんの口から『クリスマス』 って言葉を聞くなんて・・。」 「これも貰った情報の一つなのだ。」 「そっか。クリスマスプレゼントか。 ・・大事にしなきゃだめだよね。 泰明さん、私やっと気がついたの。 私が側にいたい人は・・・大好きな人は・・ 泰明さんだってこと。」 「ありがとう、あかね。」 「泰明さん・・今、私のこと・・。」 「この世界には神子はいない。 名前を呼ぶのが一番相応しい。」 「うれしいです!これからずっと一緒ですね!」 「では、『クリスマス』のやり直しをするか?あかね。」 「やり直し?」 「もう一度、二人でクリスマスを過ごさないか? あかねは駅前にいたのだろう?」 「はい、買い物をしようと思って。」 「ではまず買い物の続きからしよう。・・・ただ この不思議な店、普通に出られるだろうか?」 「多分、大丈夫。玄武と龍神さまの力だもん。」 そういって私は、この不思議な占いの店の扉を開けた。 大切な人・・泰明さんとこれからを過ごすために・・。 これも不思議なんだけど・・店から出た先は、 駅前の大通りだった。 そして・・後日、その店を2人で探したんだけど・・・ いくら探しても・・二度と見つかることはなかった。 これはきっとクリスマスがくれた『奇跡』だったんだと・・ 今ならそう思う・・。 メリークリスマス! Fin |
泰明EDでした(^^)
後書きは後日掲載します。
読んでくださって本当にありがとうございました。
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