クリスマスに奇跡を!  選択肢〜綺麗な藍色の刀〜



綺麗な藍色の刀をかたどった硝子細工。
いつも刀を腰に差して・・全力で私を守ってくれたよね。
いつだって私が一番で・・・
そっと側に寄り添ってくれていた。
昼間同じように起きて活動しているのに・・
彼は夜も・・私の身を守ってくれた。

まるで硝子のように私を大切にしてくれた人。

私を好きだって言ってくれたよね・・
誰よりも大切だ・・って・・側に居たいって・・。
でも・・あの時私はまだ気がついていなかった。
一番大切だったのは・・他の誰でもないあなただってことに・・

・・だからあの人が止めるのも聞かず・・
私は一人現代に戻ってきた。
・・京を離れたら・・もう二度と会えなくなるって・・
どうしてそんな簡単なことに気付かなかったんだろう・・。

異世界で出会った・・誠実でとても強い人。
でも私には・・とても・・とても優しかった・・。
頼久さん・・私・・あなたに・・会いたい・・。


今とても後悔しているの・・京に残らなかったこと・・
あなたが大切だって・・気付かなかったこと・・
・・私・・・頼久さんのこと・・・


「そこにおられるのは・・神子殿・・なのですか?」

突然の声に私は振り返った。

「よ・・頼久さん?」

後ろに立ってたのは、今、私の心を
占めている・・頼久さんだった。

「ほ・・本当に頼久さん・・なの?
どうして・・どうしてこっちの世界にいるの!?」

「それが・・先ほどまでは、いつも通り
武士棟の自分の部屋に居たはずなのですが・・。」

頼久さんがここにいることが信じられなくて・・
私は思わず頼久さんに近づき・・・
夢でないことを確かめようと・・彼の手を自分の
頬に引き寄せた。

「み・・神子殿・・。」

「暖かい・・本物・・だね。
また会えるなんて・・夢みたい。」

「私も・・とても驚いています。
どうしてこんなところに来たのか・・不思議です。」

「私もね・・駅前にいたはずなのに・・気がついたら
ここに立っていたの。・・不思議・・だよね。」

本当に不思議・・夢の中にいるんじゃないかって・・
そう思うくらい。・・でも私はさっきまで大通りを
歩いていた・・。だとしたら・・これは『白昼夢?』
でも・・そしたら、この暖かい手は?


「神子殿。お手元にあるその工芸品は、
刀を模した物ではありませんか?」

不意にそう聞かれて、私は先ほどまで自分が
触れていた硝子細工に目を移した。

「そうみたい。綺麗な藍色をしているなぁって
思っていたの。とても綺麗な刀だなって。
・・・でもこれ、不思議なんだけど・・
見たことあるような・・そんな気がしたの。」

「それなら気のせいではないと思います、神子殿。」

「え?どうして?」

「私が所持している刀に非常によく似ています。
きっと同じような刀を見本として作られたのでしょう。」

「頼久さんの刀と・・・同じ・・。」

「・・これは私の勝手な考えですが、きっと頭の隅で
私の所持品を覚えておいでだったのでしょう。
だからそちらの工芸品に惹かれたのではないでしょうか。
身近だった者が持っていたものであれば、
少なからず、どんなものでも気になるでしょう。
・・あるいは私の気持ちが届いたのかもしれません。」

「頼久さんの・・気持ち?」

「・・私は、神子殿が京を離れた後も
一日たりと神子殿のことを忘れたことがありません。
あなたは京を救ってくださったばかりでなく、
私の心の支えてであり・・大切な方でした。
・・・そしてそれは・・今も変わりなく・・。」

頼久さん・・今、なんていった?
ねぇ・・ひょっとして・・まだ間に合うの?
私、気持ち伝えてもいいの?


‐‐‐‐龍神さま・・お願い、私に少しだけ勇気を!


『その願い、叶えよう。我が神子のために』


急に頭に響く低い声が聞こえた・・。
そのとたん・・お店中の硝子細工が・・きらきらと
藍色に・・美しく光りだして・・


「こ・・この光は・・神子殿!!ご無事ですか!?」


藍色の光に包まれそうになる私を・・
頼久さんは私の肩を強く抱いて・・・
・・頼久さんの胸元へ引き寄せる。


「行かせません!・・神子殿をもう見失いたくない!
私は神子殿がどなたを思っていようと・・かまわないのです。
ただ・・私があなたをお慕いすることは・・
・・もう・・止められない。
この気持ちは・・永遠に変わらない。
どうか・・私をお側に・・・。」


あかね・・今言わないで、いつ言うの?
今度こそ・・ちゃんと伝えなきゃ。
大切な人の・・側にいるために!


「どこにも行かない。
私が好きなのは・・誰よりも大切なのは・・
頼久さんだけ。・・・大好きです、頼久さん。」


私が思いを告げたとたん・・私を包んでいた
藍色の光は・・うそのように消えていった。


『今の光は、その八葉を守護した『青龍』からの伝言。
われらは、神子と八葉が幸せになることを心から祈っている。』


また低い声が聞こえた・・。これは龍神さまの声・・。


「・・よかった。神子殿がご無事で・・。」

藍色の光が消えても、頼久さんは私を抱きしめたまま・・
そう言った。

「よ・・頼久さん・・これ・・・。」

私が目を開けて頼久さんを見ると・・
店が藍色に光るまでは、京にいたときのまま・・
腰に刀を差したあの姿のままだったのに・・
今はとても現代的な白いセーターと細めのジーンズ姿。
黒いロングのコートを上から羽織っている。


「どうやら、龍神と青龍の計らいのようです。」

「どういうこと?」

「先ほどの藍色の光が消える寸前に、私の頭の中に
大量の情報が流れ込んできました。

『神子と共に神子の世界で生きよ。』

私が最後に聞いた言葉です。
あたなと共に生きていくために必要な情報を
青龍と龍神が私にくれたようです。
こちらの世界でいうなら『クリスマスプレゼント』
なのでしょうか。」

「ク・・クリスマスプレゼント!?
よ・・頼久さんの口から『クリスマス』
って言葉を聞くなんて・・。」

「・・これも頂いた情報の一つです。」

「そっか。クリスマスプレゼントか。
・・大事にしなきゃだめだよね。
頼久さん、私もう迷ったりしない。
やっと気がついたの。
私が側にいたい人は・・・大好きな人は・・
頼久さんだってこと。」

「ありがとうございます、あかね。」

「頼久さん・・今、私のこと・・。」

「この世界には神子殿はおられません。
お名前を呼ぶのが一番ふさわしいと・・教わりましたから。」

「うれしい!これからずっと一緒だね!」

「はい。では、『クリスマス』のやり直し致しましょうか?」

「やり直し?」

「もう一度、二人でクリスマスを過ごしませんか?
あかねは駅前にいたのですよね?」

「うん、買い物をしようと思ってたんだよ。」

「ではまず買い物の続きから・・ですが・・
この不思議なお店、普通に出られるでしょうか?」

「多分、大丈夫。青龍と龍神さまの力だもん。」


そういって私は、この不思議な硝子細工の店の扉を開けた。
大切な人・・頼久さんとこれからを過ごすために・・。

これも不思議なんだけど・・店から出た先は、
駅前の大通りだった。

そして・・後日、その店を2人で探したんだけど・・・
いくら探しても・・二度と見つかることはなかった。


これはきっとクリスマスがくれた『奇跡』だったんだと・・
今ならそう思う・・。


メリークリスマス!

Fin


頼久EDでした(^^)
後書きは後日掲載します。
読んでくださって本当にありがとうございました。
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