〜12 jewelry tales(12の宝石物語)〜


すべての始まり(前編)


突然、考えもしなかったことが自分に起こったら、

あなたなら・・・どうしますか?

運命の出会いは・・どこで待ち受けているのか・・

それは誰にもわからないことなのです。

あなただけの・・運命の人・・・・・・・。

きっとどこかで・・あなたを待っていますよ。


・・・・・・・すべての始まり(前編)・・・・・・・・


「おやすみなさい。」

まさかこれが両親と交わした最後の言葉になるなんて
このご時世いったい誰が信じるだろうか・・・。
普通に会社に行って、普通に遊んで・・
でもそれは別に退屈なものではなくて・・
平和でそれなりに楽しい日常。
特に波乱万丈であることは望まない・・
楽しければそれでいいと・・

確かに冗談交じりで
「異世界なんてあれば面白のに・・」
なんて言ったこともあった。
でも少なくとも私は現状に満足していた。
満足しているつもりだった。
それでいいと・・
なのに・・・


「ここはどこなのよぉ〜〜〜〜〜〜〜。」

目が覚めて最初に言った言葉はこれだった。
見慣れぬロッジのある部屋のベッドの上。
これが私の今置かれた状況だった。

昨日確かに自分の部屋で私は眠ったはず・・
なのに・・なぜ私はこんなところに・・
ちょっとぉ。勤続○年一度も遅刻したことないのよ!私。


「お目覚めかな?お嬢さん。」

突然見慣れないおじいさんが部屋に入ってくる。

「あんた誰!?」

「ははは。随分威勢のいい『ダイナスト』じゃね。」

「だいなすと?」

「お嬢さんはこの世界の住人じゃない。そうじゃね?」

「確かにこんなところ知らないわよ。
だいたい私は部屋でいつも通り眠りに付いただけ。
それがどうしてこんなことになってるのよ。」

「ここは「ラレオ」と呼ばれる世界じゃ。
そしてお嬢さんが現在いるこの場所は、その
「ラレオ」の第一都市:ファスタと呼ばれる土地じゃ。」

られお??ふぁすた??いったい何を言ってるのこの人・・。

「わしが何を言っているかさっぱりわからん、
そんな顔じゃな。」

「・・よくわかってんじゃない。」

「では結論から言おう。お嬢さんは、これからわしの
言うことに従い、ダイナストの使命を終えるまでは、
元居た世界には戻れぬ。」

「元居た世界に戻れない?」

「そうじゃ。お嬢さんの居た世界からすれば
この「ラレオ」は異世界。仕組みも何もかも
お嬢さんの常識は通用せん世界じゃよ。」

「異世界!?」

「『ラレオ王限界になりしとき、空より舞い降りし
異世界の者、ダイナストとなりて12の宝石を導く。
その光よりいでし真の宝石こそ、次期ラレオ王となりて
ラレオに平安をもたらすであろう。』この国に伝わる
『12 jewelry tales(12の宝石物語)』の一説じゃ。
これを伝説と思うておる者もおるが、
これはラレオで60年に一度繰り返される真の王伝説じゃ。
物語などではない。ただ、目撃するものも少なく、
一般のものには雲の上の話。だから伝説とされてはいるが、
必ず起きるものじゃよ。」

伝説だの何だの・・どちらかといえば現実主義の私。
寝耳に水な話ばかり・・・。

「信じらんない。」

「じゃろうな。先代のダイナストもお嬢さんに
よく似た人でな。初めは信じてはくれなんだよ。
論より証拠。お嬢さんの世界でこういった言葉は
ないかね?」

「あるわよ。いくらしゃべっても、
実際のものを見るほうが信じられるって話。」

「先代のダイナストが教えてくれたよ。
見た目がなんとなく似てるから、
同じ世界から来たのかもしれんと思ってな。
ではその「論より証拠」とやらを見てもらおうかな。」

そういっておじいさんは一つの綺麗な
ペンダントを差し出した。
銀色で・・丸い小さな銀の珠が13個付いている。

「なにこれ?」

「『ダイナストティアラ』と呼ばれるものじゃよ。」

「これがティアラ?」

「この世界の住人がいくらさわってもこのままじゃよ。
ダイナストとなるべくこの世界に召された
異世界のものだけが、本来の形にすることができる。
お嬢さんの世界では、物質が言葉をかけただけで
変化することはないんじゃろ?」

「そうよ、その通り。ありえないわよそんなこと。
異世界でもない限り・・・あ・・。」

「そう。この「ラレオ」では具現化は常識なんじゃよ。
心に強く願い、その思いを言葉にしたとき
その言葉は呪文となって具現化する。
その想いが強ければ強いほど、具体的に変化する。
ただし、誰でもできるわけではない。
精神が純粋で強いものだけがその「言の葉の具現」
を実現できるのじゃ。」

「精神が純粋で強いもの・・。」

「願いに純粋で、真に精神の強いものだけが具現化できる。
だから大人よりも小さな子供のほうが、具現化できる者が
多いのじゃよ。ダイナストは異世界のものじゃ。
よほどのことがなければ、ここに来ることはない。
お嬢さんの気持ちはどうであれ、何も感じておらんものが
この世界に来ることはない。お嬢さん、現状に満足
しとらんのと違うだろうか?気づかないふりを
していただけで、お嬢さんは現状に不満があったのでは
ないのかの?」

この人は人の心が読めるのだろうか・・。
確かに波乱万丈は望まなかった。
でも誰だって一度ぐらいは思ったことはあるだろう。
この世界以外の世界も見てみたいと・・。

だから物語が生まれる。
「魔法」を使ったり現実にありえないことが
物語の中では許される。・・・でもそれは
あくまで物語の中の話。
現実に起きてほしいとは・・・

「お嬢さん。どうせやらねばならぬこと。
ならばその運命が楽しいほうが良いじゃろう。
ここへ来られたということは、
少なくともお嬢さんの精神が常人よりも
強かったということ。
試してみなされ。自分の心を。」

そういっておじいさんはそのダイナストティアラ
を私に渡す。どうみても・・ペンダントの形をしたそれ。

「・・どうすればいいの?」

「強く願ってみなされ。きっとティアラは
答えてくれるはずじゃよ。余計なことは考えずに・・・
ただ願う。さすれば自然に言葉が生まれる。」


余計なことを考えずに・・・・
ただ・・願う・・っか。
そんなこと何年してなかっただろう・・・。

((これをティアラに・・・))

あれ・・なんか知らない言葉が・・頭に

「『ディアデム!』」

私からなぞの言葉が出た瞬間、
先ほどまでペンダントだったそれは・・
とても綺麗な銀色のティアラへと変化した。

「間違いない。お嬢さんは、ダイナストじゃな。」

「信じられない・・・・。」

「ダイナストにしか、そのペンダントは
ティアラにすることはできん。」

「論より証拠・・って訳ね・・
あれ?・・でもこれちょっと変。」

そう・・普通ティアラにはあるはずの・・

「宝石がない・・」

あるべき宝石が・・装飾がなかった。
真ん中に大きな爪があって・・
下には12個の小さな爪があるのに・・・
その爪にはどれにも・・宝石がなかった。

「そう。そのティアラはお嬢さんが作るもの。
これからその宝石を持ちし12人のラシルを探し
心を見極め、そのティアラにラシルが持っている
宝石を収めてゆくのじゃよ。」

「ラシル?」

「ラレオ王の候補、12人の宝石を持ちし人間を
『ラシル』と呼ぶんじゃ。そのラシルを探し出し
そのティアラの宝石をすべてうめるのが
お嬢さんの仕事じゃよ。宝石が全部で12個じゃから
『12 jewelry tales(12の宝石物語)』なんて
呼ばれておるのじゃ。」

「12の宝石を持ちし「ラシル」・・。
・・でもこれ13個爪があるけど?」

「一番大きな爪には、王となる者の宝石が入るんじゃ。
12の宝石の中で、お嬢さんが一番輝かせたもの。
その宝石がここには入る。ここに宝石が入ったときが、
お嬢さんが元の世界に戻れる時じゃよ。」

「・・これが埋まったとき・・か。
でもその人たち、どこにいるのよ。」

「それはこれからお嬢さんが探すんじゃよ。」

「探すったってどうやって??」

「ティアラが必ず道を示してくれる。
お嬢さんが純粋に願えば、会いたい者に会える。
忘れたかな?この「ラレオ」では願うことで
具現化する。願い、言葉にすることが、
道しるべになるよじゃよ。」

「願いこそが・・。でも・・私この世界のこと
なんにもわからない。」

「そうじゃな。そのためにわしがおるのじゃよ。
申し遅れたがわしは代々ダイナストの導き役を
しておる「ラミエル」一族の一人じゃ。
わしは「ファスタ・ラミエル」街に一人ずつ
「ラミエル」一族がおる。困ったときは頼りにすると
よいじゃろう。・・ところでお嬢さん、名前は?」

「私?私は『神姫』久遠神姫(くおん まりあ)よ」

私はその場にあった筆記用具で漢字を書いて見せた。
・・この世界で漢字が通じるかどうかは・・
わからないけど・・・。
まぁ願えばかなう・・なんて世界だし・・ここ。

「「まりあ」。こちらではダイナスト・・妖精を意味する
名前じゃ。良い名をもらっとるの。」

「妖精・・。」

「神姫。そなたの行きたい道はティアラが示してくれる。
そして私からはこれを預けよう。」

おじいちゃん・・いや、ファスタ・ラミエルは
ぽん!っと手をたたいた。


後編へつづく・・・


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