いつかは、離れてく


ー。」


私が庭に面している廊下に寝転んでいると私を呼ぶ兄上の声が聞こえる。


「湛増兄上、私は此処ですー。」


私が兄上を呼ぶとそれが聞こえたのか兄上の足音はこちらへ近づいてくる。


、此処にいたのか。…何してるんだ?」

「ひなたぼっこ…?」


廊下に仰向けで寝転んでいる私を兄上が覗き込んでくる。


「ひなたぼっこ、ねえ…。」

「兄上も一緒にしましょ?」

「…敵わないね、には。」

「…何がですか?」


意味がわからない私が首を傾げたら、兄上は私の横に寝転びながら
なんでもないよ、と微笑み返してくれた。


「兄上、兄上。」

「なんだい?。」

「兄上が熊野別当になったら、私は兄上を手伝う為に
熊野別当の補佐になります!」

「…が?」

「はい。」


私が言ったことがおかしかったのか、兄上は少し驚愕していた。


「兄上…私、おかしなこと、言いましたか?」

「いや…。じゃあ、オレも頑張って別当にならなくちゃな。」


兄上はそういいながら頭を撫でてくれる。


「兄上ー。」

「今度はなんだい?。」

「眠いです…。」

「…じゃあこっちにおいで。」

「はい…。」


私が寝転んだまま真横に移動すると、兄上も横を向いて私を抱きしめた。


「温いかい?」

「…はい。」


私は兄上の胸に頬を寄せ、心地よい温もりに目を閉じた。

目を開けたら、兄上はそこにいたものの、私達2人には
布団らしきものが掛けられていた。


「誰かしら…?」

「ん…?」

「兄上、布団持ってきてくれましたか?」


起きた兄上に私は今思ったことを言う。


「いや?オレは知らないよ。」

「じゃあ誰でしょう…。」

「…さあな…。」


私達がそんな話をしていると、2人のお腹から。


『ぐううぅぅぅ』


盛大になった。


「あはは、兄上ご飯に行きましょ。」

「ふふ、そうだね。」


私と兄上は少し顔を見合わせて笑ってから、ご飯を食べに部屋へ戻った。

私と兄上が手を繋いで部屋に戻ったら、父上と叔父上が部屋にいてた。


「父上ー。」

「なんだ?。」

「兄上は、熊野別当になるでしょ?」

「ああ、なるな。それがどうかしたか?」

「あのね、兄上が熊野別当になったら、私は別当補佐になります!」

「「が?」」


父上と隣にいた叔父上が一緒に問うから、私ははい。と肯定する。


「じゃあ、今から勉強しねえとな。」

「はい!」

は湛増より頭がいいから、頑張ってくださいね。」

「はい。」

「おい、おっさん。なんで此処にいるんだよ。」

「おっさんとはなんですか、おっさんとは。
それに、自分の故郷に帰ってきたらいけないのですか?
可愛い姪の顔を見に。」

「だってオレらのおっさんじゃん。なあ、。」

「え、はい…。」


湛増兄上が私に同意を求めるから、私は一応頷く。


「叔父上は、私達の叔父上です。」

「そうですね。」

「おっさん、オレのときと随分態度が違うじゃねえか。」

「ええ。は君と違って可愛い姪ですから。」


叔父上はそう言いながら私の頭を撫でてくれる。

久しぶりに叔父上と会って、私は沢山話をした。
兄上も渋々一緒に話していたみたいだけど、私から見たら、
兄上も叔父上も楽しそうだった。
2人が楽しいと、私も嬉しい。

いつかは離れてく兄妹だとしても、今は、このままでいいよね。


FIN

この素敵な創作は『Water-drop』 姫乃麻都 さまより
私のへっぽこ残暑お見舞いのお礼に・・と頂いた物です。

望美ちゃんじゃない主人公ちゃんは初めて拝見したのですが、
もしヒノエくんに本当に妹がいたら・・こういうことはあったかもしれない。
とても日常的で、幼き記憶って感じでとても良い物を拝見できてうれしいです。
最近、創作が前のようにぽんぽん書けないなぁ・・なんて思っている
私には、『こういうのもいいんじゃない?』って励まされたような気がします。
発想の柔軟さがなせる創作ですよね(^^)

麻都さま、素敵な創作ありがとうございました!


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