白い家 【NO1】

あの頃思い描いていた、岬に建つ白い家
あなたと2人で暮らす、白い家
こんなにも穏やかな時間を過ごせるなんて、
あの頃は想像もできなかった・・・。

今日は快晴。
優しい風が窓から入り、レースのカーテンを揺らす。
お寝坊なはるかはまだ夢の中。

今日はどんな1日にしようかしら。
そんな事を考えながら私はキッチンに立つ。
愛しいあの人を思いながら。

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戦いを終え、私とはるかは都内から脱出し岬に建つ白い家を借りた。
そこは私の憧れがそのまま愚見化したような家。
はるかは私の心が読めるのかしら?

「この家に住もう」と言いだしたのははるかだった。
私が思い描いていた夢の城。
はるかには一言だって話していなかったのに、ホント不思議な人ね。

そんな事を考えながら私はピンクと赤のバラを飾る。
バラの花は私の好きな花。
はるかが私にプレゼントしてくれた最初の花束と同じ色。
「君に似合うと思って買ってきたんだ。君はこの花みたいな人だからね」
確かそんな事を言っていたかしら。
それ以来、私の一番好きな花はバラになった。

「うふふ、やっぱり花を飾ると気分が華やぐわね」

独り言をつぶやき、私ははるかのために簡単なブランチを用意し始めた。
新鮮な野菜のサラダに、スープとパン。
彩り鮮やかなフルーツを並べ私は紅茶を入れる。

紅茶の良い香りがキッチンに立ちこめ、カップに注いだ紅茶にお砂糖2杯。
はるかは見た目とは裏腹に意外と甘い物が好きだった。
そんな可愛い一面がある彼女を思うと愛しさがこみ上げてくる。

ブランチの支度が整ったので、私ははるかを起こしに2階にある寝室へ向かう。
はるかは予想通りまだ布団にくるまっていた。
私はベッドに腰掛け彼女の顔をのぞき込む。

長いまつげと明るい色の髪。
窓から差す光をうけ、彼女の髪はきららと輝いて見えた。
少しの間彼女の寝顔に見とれ、私ははるかの肩を優しくゆする。
「はるか、起きて。今日は良い天気よ?」

うっすらとはるかは目を開き、瞳に私を写した。
「・・・う〜ん・・・。」
まだ寝ぼけているのかベッドに腰掛けた私の膝に顔をすり寄せ、幸せそうにまどろんでいる。

たまに子供っぽい仕草で私に甘えてくる彼女がとても愛おしかった。
本当ははるかって寂しがり屋なんだと思う。
普段はかっこつけているくせに、人一倍寂しがり屋。
だからたまに子供のように甘えてくる彼女の仕草も私は好きだった。
私を必要としてくれるって感じられるから。

「はるか、せっかく作ったブランチが冷めてしまうわ。早く起きて下さらない?」
私ははるかの髪をなで、頬にキスをした。
ずっとこうしていても良いけど、1日はあっという間に過ぎてしまうから。

「・・・うん、みちる・・・。おはよう」
はるかはまだ寝ぼけた目をこすって体を起こす。
まだ眠そうなはるかの髪を撫で、私ははるかを促した。
「おはよう、はるか。今日はとても良い天気なのよ。はやく降りて来てね」
そう言い残し、私はダイニングへ向かった。

今日は快晴。
暖かな光と風が私を包む。

ここには私のささやかな夢がたくさん詰まっていた。
どんな名声や賛美もこの幸福と比べたら色あせてしまうわね。
そんな事を思い、私はダイニングにブランチを並べ、愛しいあの人を待つ。
しばらくすると、2階からトントンと階段を下りてくる音が聞こえてきた。

この穏やかで優しい時間をかみしめ、幸せの足音を聞いていた。
そんな1日の始まり。
今日はどんな1日になるのかしらね。



                             END