異様なる豪雨が収まりを見せた蒸暑い夜、
Salが珍しく帰って来ず。
昼間
オレが部屋を出る前に外に置いたゴハンにも手‥
と言うか舌を付けて居らず。
ソレ目にして居れば食べぬ筈は無く、
詰りは午前中に部屋を後にして以来ウチには寄り付いて居ない様子。
そんな珍しく不安な日の翌朝10時頃、
カノジョは普通に姿を現した。
そして又フラリと姿を消し、13時を少しばかり過ぎた頃、
再び現れた、又普通に、
しかしソノ口には何かを咥えて‥。
ソノ咥えられたイキモノは聞き慣れぬ、気を引く声で、鳴いて居る。
オレはドキリとすると共に“又モグラか‥”、
“ココで食されてはコマる”と瞬時思ったが、
よく見ると白と黒の“斑模様”。
ヘンなモグラだろうがナンだろうがウチにエサを持ち込まれる事、
そして突然なる出来事、
それにSalの“アンタに構っては居られナイ”とでも言う様な
オレの意なぞ全く介さぬ風な身の熟しにオレは当惑を覚え、
アタマは束の間乱れて居た為、
“何処からか犬の仔を攫って来たのか‥”とも想ったが、
食べちゃう様子もナイ。
ソノ得体の知れぬイキモノが“ピギィィッ”とでも悲鳴を挙げ、
Salが食べようとする仕草を一瞬でも見せれば全身全霊で外へ追い遣ろうと思い
正に平静を装い静観するが、どぅも様子が違い、
カノジョは部屋の角に置かれたTV、ソノ金網製ラックの裏側に腰を下ろした。
ソコは最近Salが見出した落着きの場所。
そして現実から目を逸らさぬ為、更によくよく見てみれば、
カノジョはソノ“獲物”を舐め回して居る。
それで漸くオレは悟った‥
と言うか認めたくはなかった事実を認めた、
“Salの仔だ”と。
数週間前からオッパイが目立つ様に成り、
昨日撫でてあげて居た際にはオナカがヘンな動きを見せて居たし、
最近妙に吾が屋の室内で“下見”でもするかの様にウロチョロして居たノにも、
今朝見た時には俄かにホッソリとして居たノにも、頷ける。
若干オナカが大きく成ったノも、オッパイが露に成ったノも
“成長”に因るモノと思い、
他のネコと交わった覚えはアノ騒々しい夜以外無く
(まぁ外界での沙汰はオレは全く知らナイが)、
先日も身重所か身軽にオレの寝床の有るロフトまで外壁を登って来たりして居り、
性質も平常通り穏やかなまま、食欲も変わらずで、
何処かの動物園のパンダの妊娠報道で“妊娠すると食欲不振”との情報を得て
“ヤッパ妊娠ではナイ”と自身に言い聞かせて居た最中。
しかしこぅ成ると最早認めて応援する他無い。
それで決心しSalを見詰めて居ると、
カノジョが離れると即座にソノ仔が恋しがり鳴く‥。
なるほど、
Salにもソンナ時期が有り、ソノ寂しみを越え独りで生き、
今親と成ったのか‥
そぅ思い仔猫のオシリを舐めてあげるSalを眺めて居ると、
健気で涙を誘われる…。
それから暫くして、仔を落ち着かせ自分も落ち着いたらしきSalが又外出し、
オレも出勤の為外へ出ようとして居ると
数分後先程の様に又普通にSalが更に一匹咥えて現れた‥。
一匹では少ないと思って居たが、やはりまだ居た模様。
多分、場の安全を確認しつつ、一匹ずつ慎重に運んで居るのだろう。
“風変りなノが一人ノンビリ暮らして居るアソコで手を打とう”
とでも思ったのかは知らぬが、
とにかくSalが吾が屋を子育ての場に選んでくれたノは嬉しい。
結局その後出勤し帰宅してみれば更に二匹増えて居り、
白、茶虎模様、白黒斑、茶虎斑の計四匹。
コノ夜は、
目も開かず立ちも出来ぬ、
「ピャゥ、ピャゥ」と鳴る子供の靴の音の様な声で鳴く、
無上と思える程にかわいらしぃ仔猫達への
“一匹触らせぃっ”とのチョッカイ慾を圧し殺し、
只々見守った…。
仔を寝かし付けた後いつもの様にオレの隣に座るSalが、
何よりもいとおしかった、
7/16“ナナイロの日”。
you bring me something like the rainbow.
and you tell me i too can see that.
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