今朝午前五時頃だろうか‥
下の階に在るエサ袋を何者かが触れる音が、
ロフトで眠るオレの耳に入った。
Sal達三名は幾らオナカ空かして居ようとソンナ事はしない為、
もしやと思い「Blitz‥」と極力柔らかい声色で呼び掛けみれば、
去ったのか直ぐに物音は静まった…。
そして午前七時前、又「カサカサ」と遠音が鳴り、再び「Blitz‥Blitz」
と声を掛ければ、
か弱い声で「ミャー‥ミャー」と応えが。
しかし直ぐに下を覗いてみても最早姿は無かった。
それで目覚め、午前七時を少し過ぎた時分、弱々しい鳴声と共に
三度カレは姿を現した、しかも今回は明りの下、吾が現前に。
所がソノ姿を認めようとする束の間、真偽を確認する為に凝視したオレは、
己の目を疑った。
久し振り故に目が慣れぬ所為か‥何処となく違和感を覚える。
野良暮しをして居た為に痩せたノとは違う、“小柄”なのだ。
そしてロフトから降りてきたNewが直ぐ様追い払った為、
確りと認める事は出来ずに又も別れた。
それから更に小一時間程が過ぎ、
Sal達がロフトへと上がり休んで居る時機にカレは又姿を現してくれた。
今回はふたり限で邪魔されぬ為、カレがエサを食む最中、属目し続けた。
模様もアノ鉤形の尻尾も、Blitzそのもの‥‥‥
だけれど若干‥尻尾‥“S字”でナイ。
不可思議なる理由で小さく成ってしまったのでは…
と混乱し畏怖を覚えてしまう程に似て居る…
が、やはりどぅ見ても“仔猫”。
Blitzの仔、“ブリッ仔”と言うのならば、頷けるが。
そしてこの祁寒の下、
痩せてしまって居るBlitzに直ぐにでも栄養を与えて遣ろうと、
吾が屋に入って来ずとも食べられる様縁側に置いてあげて居たエサを、
共に来た母親風ネコが食べて居て、“ブリッコ”も三皿分程のエサを平らげ、
やはりかなりの空腹だった模様。
その様な光景、そして頻りに甘え声で擦り寄ってくる姿を見ると、
情も俄然芽生えてきた‥が、エサを与えるノも“今回限り”と心鬼とし、
食べ終えるノを見届けると、ロフトのNewを呼び、追い出す様促した‥
が、都合好くNewは降りてこず、疼く心を圧し殺し、
甘え縋る“Blicco”を玄関から数次追い出した。
何にしろ例の“通用口”を平然と通り入るノラネコは、そぅは居ナイ。
Blitzの匂でも染み付いて居たのか‥将又Blitzに
“途方に暮れたらアソコを訪え”とでも教わって居たのか(ハィハィ)。
そしてロフトへと上がる階段で一部始終を坐視して居たSalにふと気付いたオレの胸裡には、
Salと出逢った当時の情景が想起された。
アノ時のSalも同様なる甘え声で、オレに纏わってきた…。
“仕方無い”と己に言い聞かせ、共鳴を求めSalを撫でれば‥
Blitzではなかったと言う事実も加わり‥切なさは更に膨らみ…、
久方振り日の目を見たBlitzの“空の器”は、再び仕舞われた。
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