−12月−

−実録「補教」1−
今年は教務の仕事ということで,去年の生徒指導主事に続いて担任のない生活をしていますが,週に20時間の算数少人数クラスの担当の他に,時々お休みや出張に出られた先生の学級に補教に出ることがあります。そこでのエピソードをいくつか紹介していこうと思います。

−実録「補教」2−
出張,年休,厚生等で先生が不在になるクラスへの補教体制を教務が組みます。1時間目の補教に出る場合は朝会時から行き,健康観察等をします。4時間目に出た場合は引き続きその学級で給食指導をし,5時間目や6時間目の最後の時間に出た場合はその先生が帰りの会の指導をすることになります。ある日の朝,急に1時間目の社会の補教に出ることになったことがありました。

−実録「補教」3−
このように,急な用事で補教が必要になることもあります。教室に行くと,1時間目は社会でした。子どもたちにどこまで進んでいるのか聞いて,最後に学習したページを確認し,その次のページを開かせ大事な所だと思う所には赤線を短く引きながら読むよう伝え,読む時間を設定しました。時間が来た後,全員に教科書を伏せさせて,教科書から問題を出しました。挙手する子はわずかです。そこで,「こういう問題を出します。もう1分時間をあげるから,よく読みましょう。」と言って1分待ちます。そして次のように言います。「これから問題を出します。答えられる人は各列の一番前の人だけです。」

−幹事1−
「補教」シリーズの途中ですが,時事ネタを割り込ませます。今年度は職員の親睦会の幹事になっています。そこで今は忘年会に向けて準備をしているところです。今日作ったのは,席順用のくじです。ただの番号くじ式では面白くないので,各席に花と花言葉を印刷したしおり形のカードを置いておくことにしました。


参加者は入り口で番号と花の名前を書いてあるくじを引き,その花のカードのある席につきます。しおりカードはケント紙で作りました。枠や背景も入れました。会の後しおりとして本当に使ってもらえたら嬉しいなと思っています。

−幹事2−
花言葉席順くじを作りながら,次のアイデアも浮かんできました。もし次回幹事をすることになったら,今度は百人一首席順くじを作ろうと思っています。つまり,入り口で引くくじには百人一首の上の句が書いてあり,各席には絵札に下の句を書いたカードを置いておきます。もちろん今回の花言葉バージョンと同じように,それぞれに通し番号を付けておきます。これで百人一首を知らなくても番号くじと全く同じように席につけます。花の名前でも番号をつけておくことにしたのは,今回40名以上の参加があるので,番号がないと探すのに時間がかかるということもあるからです。

−実録「補教」4−
教科書から問題を出すことを伝え,時間を決めて読ませた後教科書を伏せさせました。問題に答えられるのは各列の一番前の子だけです。私が「問題」と言ったら一番前の子たちには全員「ヘキサゴン!」と言わせます。これだけで本気になり,何故か盛り上がります。

−実録「補教」5−
教科書に書いてある内容から問題を出し,列の一番前の子の中で分かった子は机をたたいてから手をあげさせます。中には「ピンポーン」と言って手をあげる子もいます。もしその答えが合っていた場合,その子はその列の一番後ろに移動します。するとその列の子は全員一つずつ前の机に移動することになります。そして一巡した列の勝ちというシステムにします。解答権が最前列にしかないことが,他の子の意欲をなくすかどうかは,やってみれば分かります。解答権はなくても,問題を出された瞬間全員がその答えを必死で思い出そうとします。解答権があろうとなかろうと,分かる子は分かるし分からない子は分かりません。「あー,それ分かるのにー。」とか「あれー?なんだったかなー?」と思いながら答えを聞いた時に,1つ知識を習得していきます。

−実録「補教」6−
この方法はテスト前などにはより効果があります。また時々問題の中に「インタビューを受けているおばさんは何色の服を着ていたでしょう。」等のオタク問題を入れることで,次回の読み取り方がより緻密になっていきます。今までは自分の教室でこれをやっていましたが,初めて補教で入ったクラスでも社会ではこの方法が有効的だと感じました。

−実録「補教」7−
今年1年から6年まで全ての学年の補教に行きました。どのクラスに行っても同じことをしていることがあります。言葉遣いに関することです。

−実録「補教」8−
どのクラスに行っても必ず教師に対してタメ口をきく子がいます。ほとんどの場合,何かをたずねたり,何かの許可を得ようとする時なので,私は「えっ?もう一度言ってごらん。」と言います。1年生などは本当に聞こえなかったのかと何度も同じ言い方を繰り返すので,こちらも何度も「もう一度」「もう一度」と繰り返します。

−実録「補教」9−
普通,何度か聞き返していると,本人が気づいたり,周りの子に教えられて「○○するんですか。」と言い方を変えます。これはもうどんな場面でも必ずしつこく繰り返します。中には「もういい。」なんていう子もいますから,今度はそこから指導に入ります。

−実録「補教」10−
中学年のクラスに行った時,やけに元気のいい子がいました。その子は,私の話の途中で「はい。」「はい。」と話の脈絡と関係なしに何度も合いの手を入れてくるのです。

−実録「補教」11−
しばらくは無視して話していましたが,何度も途中で「はい。」を連発してきました。そこで,「ねぇ,ねぇ,ちょっとみんなに聞くんだけど,今そこで話と関係のない元気のいい返事をしている人がいるけど,この子っていつもこんな感じなんですか?」と聞くと,「そうそう。」と周りの子がみんなうなずきました。集団を統率する決めては,やんちゃ坊主と教師が一対一にならないというのが鉄則です。周りの子の共感を得て,その子対クラス全体の構図をイメージしていきます。そして統率にはボスの決定が必要ですが,それを悲壮感のない,笑いのある決闘にしていくところが教育の醍醐味です。

−実録「補教」12−
「笑いのある決闘」をするには,まずこちらのテンションをしっかり持ち上げて,その世界に入り込んでしまいます。いわゆる「ゾーンに入る」という感覚です。リズムとテンポのある言葉のやりとり,切り返しで,その場を劇場空間にしていく意気込みです。相手がどうであろうと勝手にこちらの土俵に相手も周りの子も引き込み,一緒に笑えたら第一ラウンドはこちらのものになります。

−実録「補教」13−
その時は,「いつもこんな感じ?」と聞いて「そうそう。」と周りの子がうなずいた後,その子に「あのねぇ,さっきの所ははいと返事をする所じゃないでしょ。はいはい,はいはいとうるさいんだよ。君ははいはい教の教祖か。ちゃんと聞いて下さい。・・・ここではいと言うんだよ。」「はい。」「そうその調子。ではこれからプリントを配ります。」「はい。」「またぁ,さっき言ったばかりでしょ。関係ない所で・・・。あぁ,今のはいいのか。そう,そんな感じで返事をして下さい。」「はい。」「そうそう,いいねー。きれいな返事。」これだけで,本人も周りもよく笑ってくれました。その子はその後,会う度に声をかけてくれます。

−実録「補教」14−
「笑い」は人間関係の大事な潤滑油です。集団の統率にも「厳しさ」と共に効果があります。話の中に「笑い」と「意外性」を所々に散りばめることで,人は,静かにしなさいと言われなくても静かにし,聞きなさいと言われなくても,聞き耳を立てるはずです。ある日,高学年の朝の会に行ったことがありました。

−実録「補教」15−
朝の会で「健康観察」をします。普通教師が一人ずつ出席順に聞いていきます。クラスによっては出席番号1番の子の名前を教師が呼ぶと,その子が「はい元気です。○○さん。」と2番の子の名前を呼ぶところもあります。こうすると,子どもたちだけでどんどん進んでいきます。教師は観察簿にチェックしていくだけですみます。そして最後の子は「はい元気です。○○先生。」と最後に教師に聞きます。その高学年のクラスも同じように,最後私の名前を呼んでくれました。

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