書き出し

 日記を見ていてある日気づいたのは,どの子も「今日」から始めているということでした。
 そこで,
「日記に今日という書き出しはやめましょう。」
と伝えました。
 これだけで随分文章の雰囲気は変わるものです。

 「今日」をやめた日記の中からいくつかの例を紹介してみます。

「昼休けい。運動場のはしっこでは,ボールがちゅうにういている。そうです。これは,レクのドッジです。・・・」

「タッタッという足音。でもときどきバタン!とたおれるハードル。・・・」

「ああーつかれた。と思うプールに行きました。・・・」

「うぇっ。少しよった感じになるバスの中。今日,1年に1回の社会見学。・・・」

「おーとっと!あーぶない。シャトルがとんでくる。でもこのドキドキ感が,くぅーたまんねぇー。と思うくらい楽しかったクラブ。・・・」

「朝方,ざーざーと雨の音。ときにはふーふー風の音。今,台風は九州に上陸をあと少しでします。・・・」

「いつもと2時間おくれで学校に行きました。・・・」

「「できるかな〜,できないかな〜。」と思って,前も少し作ったことがあるチャーハンを作りました。・・・」

「何かいつもとちがう空気がながれています。・・・」

「つかれながらも体育をしました。前の時間はプールをしたからです。・・・」

「「ピ〜」とキックオフ。2位グループの決勝戦です。・・・」

「「これでOK。」服そうとぼうしもある。準備ばんぜんです。田んぼに行ってかりました。・・・」

「「気をひきしめて。」ぼくはそう決心した。そしてステージの上。・・・」

「「王手。」ぼくはこまをうった。でも相手は起死回生の一手を願っているのかもしれません。・・・」

「「いて〜。」を思わずさけんだ。はりが指をさしてしまった。今日は前からしている・・・」

「ガビーン。たまごっちが・・・死んでる。えっなんで,うそでしょ。・・・」

「コンコンコン。今くつをはいている。ブルンブルン,エンジンの音だ。今から車でおでかけだ〜。・・・」

「キーンコーンカーンコーン 2時間目のチャイムが今なりました。・・・」

「うげっ。やっばぁ〜い。算数の教科書の下がない!お願い。出てきてぇ〜。なんていのってものこのこと生き物みたいに出てくるわけないか・・・。んじゃぁもう一度。・・・」

「う〜んせまいっ!ここは,友だちの家の車の下。子ネコ発見しました!・・・」

「バゴンッ。でっかい音と共にボールが大空めがけて飛んでいく。「よっしゃ。」私は走りながら手をぐっとにぎりしめた。・・・」

「わからな〜い。よしっ,とばしちゃえっ。テストの問題が分かりません。・・・」

「「タッチ。」とけいさつがどろぼうをつかまえる。レクでけいどろをした。・・・」

「ヒュッとボールがちゅうをまう。それをキャッチしてなげる。昼休けいにドッジをした。・・・」

「パコーンとボールが大空をつきぬける。昼休けいレクをした。・・・」

「「急げー。」とそうじが始まる。昼休けいが終わるとそうじだ!・・・」

「チャラリーン,チャラリラリーラー,オーマイガット。今日はさっちゃんと遊ぶやくそくだったのに・・・」

「ガチャ「こんにちは〜。」わたしは英語の教室に入った。・・・」

「「おはようございます。」という声が今日は聞こえない。わたしはふと思い出した。そうだった。今日は先生,しゅっちょうだ〜。・・・」

「「わっしょい。」「わっしょい。」おみこしが通っていきます。かねもなっています。・・・」

「「お母さん,歯がグラグラしてる。」これは昨日のことでした。・・・」

「「集合してください。」体育係の声が聞こえると,集合します。・・・」

「10月26日はとてもいそがしかった。日直であったし,・・・」

「私は今,雲になっているんだ。雲って気持ちいいなぁ。今はねています。アチチチチ。私の雲に太陽がかくれました。太陽とお話です。私が「ねぇ太陽さん,あなたはあつくないの?」と聞くと・・・」

 どうにかして「今日」を使わずに今日を表そうとしていたり,今日を後から持ってきたりといろいろと工夫する中に文章の息づかいが生まれてきているように思います。
 この子たちのそれまでの日記は全て次のように「今日」で始まっていました。

「今日,水泳がありました。・・・」

「今日,テストがありました。・・・」

「今日,大休けいにバレーボールをしました。・・・」

「今日,昼休けいに6年生の人から・・・」

「今日,家族でおすしを食べに行きました。・・・」

「今日,サラダを作りました。・・・」

「今日,ひなんくんれんがありました。・・・」

「今日,家に帰って宿題をしていたら・・・」

「今日,台風みたいな雨がふって,風もちょっと強かった。・・・」

「今日,さようならをした後,・・・」