登下校

 この学校では,登校も下校も集団ですることになっています。人数が多いと道幅いっぱいになり,後ろから来た車などが通れず,学校に苦情が寄せられることがあります。高学年の女子などは警笛を鳴らしても平気で前を歩いているとのことでした。

 昨年よく学校にそういう苦情の電話がかかっていたようでした。今年は生活指導専属としての立場になったので,どうにかこの手の苦情電話が少しでも少なくなるようにしたいと思いました。そこで,4月6日の始業式の日から,特に苦情のよくある通学路に出て登校の様子を見ることにしました。カメラを持って。

 始業式の日の登校の様子を写真に撮ります。最初の日ですから,どの班もきれいに並んで道の端を歩いて来ていました。この日の下校の様子も写真に撮りました。朝ほどではないにしても道の端を集団で歩いて帰っていました。こうして登下校の様子を1週間ほど毎日写真に撮っていきました。

 3日ほど経つと下校が段々いい加減になり,道いっぱいに広がり始めました。いい場面と問題のある場面を写真に撮り,集会用にプレゼンソフトで編集します。まずいい場面をいくつか紹介し,「こういう歩き方はアッパレです。」という説明と共に画面の子どもたちの上に大きなニコニコマークが現れるようにアニメーションを入れます。

 次に3日目ぐらいの下校の様子で問題のある場面を入れます。これはすぐに悪い場面ではなく,まずきれいに並んで歩いているところから段々広がっていく場面へと3,4枚のスライドにします。実際の集会でのこの場面の説明では(1枚目)「見て下さい。3日経ってもきれいに並んで歩いていますね。」(2枚目)「あれ,少し広がってきています。」(3枚目)「あらあら,もうこれはダメですね。こんなに広がっていては道を通る人の迷惑になります。こういう人は・・・カァーッツ!です。」という言葉と同時に画像全体をトゲトゲのあるヒイラギのような塗りつぶしマークが覆います。このスライドショーのポイントは自動切り替えにしておくことです。

 自動切り替えにしておくと,マイクだけを持っていくらか臨場感のある説明をリズムよくしていけます。スライドではこの続きがまだあって,更に3日後の下校の様子が映し出されます。最初のスライドはきれいに並んで歩いている場面です。説明ではこう言いました。「見て下さい。3日前に注意されてからこのようにきれいに並んで帰るようになりました。これなら安全ですね。」(次のスライドでは2人ほど道路の真ん中に出ています。)「あっ!やっぱりまだ道路の真ん中に出ている人が2人います。こういう人にはそのうちバチがあたるものです。」と言った後何秒かして,その2人の上に大きなジグザグの矢印が表示されます。「ほら,カミナリが落ちたでしょ。」で,大いに笑ってくれます。

 この集会後しばらくは,登下校の時間にポイントに立っていると,「写真に撮られる」ことを意識した行動も見られました。しかし,登下校の態度に限らず,掃除や挨拶の態度のような日常的な習慣はそう一朝一夕に改善されるものではありません。集会等で一応意識づけした後も,とにかく物理的に登下校中の注意を喚起する意味で5月半ばまでは毎日ポイントに立ち続けました。こうして,徐々に歩き方を意識した登下校の習慣化を図りながらその後段々ポイントに立たない日を増やしてきています。6月になっても今のところ今年は地域からの苦情電話はかかってきていません。