つい最近編み出したゲーム,その名も, 「エンドレスゲーム」(学習規律支援ゲーム超強力版) の紹介をします。 このゲームによって,子どもたちの発言意欲が変わってきました。 このゲームを2,3回行ったことにより,授業では,1時間の間ほとんど途切れず意見が続き,私はただ黒板の前で書記の役をしているだけのような場面も生まれてきました。どんなクラスでも効き目がある万能薬のようなゲームではありませんが,教室に元気を出す一つの手だてとしていかがでしょうか。 |
このゲームの効能 ・発言が次々と続いていきます。 ・関連性のある発言が続きます。 ・「笑い」が起きます。 ・児童の「生活」が出されます。 ・一歩深い意見が出されます。 ・人の意見を聞こうとするようになります。 ・反対意見も出ます。 ・意欲的な雰囲気が作られます。 このゲームの効き目が現れるクラスの状態 ・休憩中は元気だが,授業中は活気がない。 ・教師に言われたことは素直にできる。 ・ゲーム等は楽しんで行うことができる。 準備物 ・テレビ ・絵,写真等の表現物 ・タイマー 方法 ステップ1『連想ゲームその1』 まず普通の連想ゲームを行います。題は何でもいいです。色や動物などの名を教師から出し,全員順番に次々と前の人の言葉から連想する物を言っていきます。例えば, 「(教師)白」→「白と言ったら,ウサギ。」→「ウサギと言ったら,はねる。」→「はねると言ったら,カエル。」・・・ のように必ず,「○○と言ったら,」という言い方で続けていかせます。 全員が言ったら,また最初の子に返って続けていきます。 これを行う時の大きなポイントは2つあります。 1,前の人が言った後5秒以内に連想する言葉を言うこと。(子どもがしばらく考えていると,教師が1,2,3・・・と数え始めます。) 2,(人数に合わせて)1〜3分ぐらい(およそ全員が2,3度は言うようになる時間)のタイマーをかけてその間ずっと続けられるか挑戦させます。 もし,決めた時間内にずっと続けられたら1面クリア(ちょっと昔のゲームの世界ではこう言いましたね。)です。 ステップ2『連想ゲームその2』 次に全員起立させます。そして,教師から一つ題を出します。題は何でもいいです。その後は誰でもいいですから,早く連想する物を言った子がまず座ります。次はその子が言った言葉から連想する物を言って座っていきます。座るためには前に座った子が言った言葉を聞いておいて,それから連想する物を言わなければなりません。言い方は,その1と同じように「○○と言ったら,」という言い方をさせます。 全員が座るまでの時間を計ってもいいし,タイマーで時間を決めて,全員座るまで何分以内に挑戦!でもいいです。厳密に行う必要はありません。一度に二人座るようなことがあっても大目に見て,大雑把に楽しくさわやかに行います。とにかく「全員」というところをどうにかクリアしたいのですが,実態によって幅をもたせていきます。 ステップ3『むりやり意見ゲーム』 普通ならこの辺りでニコニコして次は?という表情が見られるはずです。また,そうなるように「すごい!」「なるほど!」「早い!」等どんどんおだてて気分を盛り上げておきます。 次は少しレベルを上げていきます。次のように言います。 「今度は少し難しくなります。先生がまた一つ題を出します。それについてみんなに無理矢理意見を言ってもらいます。とにかく意見を出します。前の人が言った意見に関係のあることを言います。前の人の意見に関係があれば少しぐらい無茶な意見でもいいです。とにかく意見を出すことが目的です。意見を思いついた人はすぐに立って言います。今からタイマーを5分にセットします。この5分間ずっとみんなだけで意見が続いたら3面クリアです。ではいきますよ。」 ということを言って,題を出します。低学年だったら, 「給食には毎日アイスクリームを出すことにしたいと思います。さて,みなさんはそのことについてどう思いますか?」 等の身近な楽しい題がいいと思います。高学年だったら, 「学校のグランドについて直してほしいところとか,こんなにしたらいいんじゃないかという意見を出して下さい。」 というような題ではいかがでしょう。例えば,ということで,最初は教師が「こんなこと」でも「あんなこと」でもいいんだよ,と実例を挙げていきます。そして教師側が出してほしい意見のイメージを子どもに高めておいてから始めます。 題を出した後,きっと最初は誰かすぐに意見を出す子がいるものです。その時に 「すごい!最初に意見を出せる人は2倍すごい。」 等のほめ言葉で必ず評価するようにします。そして,その後すぐに 「さあ,今の意見に必ず関係のある内容で意見を出して下さいよ。今の意見の中のどこかの言葉に関係があればいいんです。連想ゲームのように,○○と言えば,という感じでいいのです。どうぞ。」 というように,方向を示しながら続けていきます。そして,次々と出される意見の中で「賛成です。」等の言い方をする子がいればすかさずそこを大げさにほめます。また,出ない場合は, 「その意見には賛成です,とか,ちょっと今の意見には反対なんだけど,とか,今の意見に質問なんだけど,なんていう言い方で意見を出せたらかっこいいですね。」 と言い方の指導をしていきます。また,しばらくシーンとしていても少し我慢して待ち,誰かが立って意見を言った場合は,必ずそこで最大限のパフォーマンスで, 「すごい!シーンとしている時意見を出せる人は10倍すごい!」 というように大げさにほめます。また,思わず周りの者を笑わせるような楽しい意見だった場合も,やはり「10倍すごい」とほめます。そして,中には自分の生活と関係づけて前こんな事があったから,というような内容で意見を言える子もいるはずです。そんな時は「20倍すごい」とほめます。出ない時は教師の方から言い方の例を出していくこともします。全体の雰囲気が意見を出すことに熱中してくると,時には自分や人を深く見つめた意見や優しい意見,反省する意見等も出てくることがあります。そういう時は「100倍すごい」とほめていきます。感動的な意見は自分を見つめるところから生まれます。と指導していきます。また反対意見,質問等も評価し,一方的で単調になった時はそういう意見を要求もしていきます。 要は教師の側の「意見の出し合い」に対するビジョンをはっきりさせ,その「形」をリズム豊かに楽しく評価しながら子どもたちといっしょになって創り出していくことです。子どもたちはたいがいの場合,「意見が無い」のではなく,「意見を出そうとしていない」だけだと思います。また,「意見を出そうと思えるような雰囲気でない」つまり,「お互い敬遠しあっている」状態があります。 こういうゲームを通して,まずは「どんな意見を出しても認められる」という雰囲気,「自分の意見が人に受けた」という快感,「あ,こういうことを言えばいいんだ。」という安心感等をクラスの中に創り出していくのが目的です。 1日目はこのステップ3までで終わりにします。時間にしておよそ10分で終わります。あまりしつこくすると飽きられます。私はこれを朝の会で行いました。このゲームでの子どもたちの様子に,教師がすごく感動した姿をしっかり見せておけば,次の段階のゲームでも必ず意欲的に活動するはずです。 ステップ4『1枚の写真』 ここまででお分かりのように,「エンドレスゲーム」とは,「意見の終わりのないゲーム」という意味です。このゲームを初めて行う時,まず黒板に「エンドレスゲーム」と書き,「エンド」「レス」についての意味の説明をし,「これから終わりのないゲームをしよう。」と少し謎めいた言い方から始めると,子どもたちの期待感も大きくなると思います。 さて次の日は,何でもいいですから,1枚の写真か絵を用意します。私は,漢字ドリルの表紙のイラストを使いました。そしてそれを見せて,この絵について意見を出し合うよう伝えます。やはり時間は5分ぐらいが長くも短くもなくていいと思います。 漢字ドリルの表紙には,ミッキーたちが野球をしているイラストがかいてあったのですが,その1枚についてだけで,5分間意見の出し合いを続けることができました。私が気をつけたのは,前の意見に関係のある内容で話しているかということと,楽しい意見,自分の生活と関係づけた意見,賛成意見,反対意見,質問,ちょっと深く考えていると思われる意見等に対する肯定評価でした。 この時は,人物たちの姿に対してや,セーフなのかアウトなのか,ミッキーから思いつく東京ディズニーシーに関わる自分の思い等々が出され楽しく意見の交流ができました。 大切なのは,これはあくまで「ゲーム」だということで,うまくいかなくてもそれはそれでチャンチャンで終わってもいいということです。意見の内容にもあまり注文をつけると,ゲームとして楽しくなくなるので,害のある発言以外は教師は端の方でニコニコしながら聞いているのがいいと思います。 この日はこれだけで終わりにします。もし,「エー!?もう終わりー?」なんて声が聞かれたら大成功です。飽きられる前にやめるのがコツです。 ステップ5『テレビを見て』 次はいよいよ最終段階です。 エンドレスゲームをすることを告げ,テレビを1分ほど見せます。番組は何でもかまいません。私が朝会でゲームをした時は丁度,朝のワイドショーのような番組で「アフガニスタンに拘束されている日本人ジャーナリスト」についてコメンテーターが話している場面でした。 テレビを1分ほど(短い方がいいと思います。)見せた後, 「今見た事について意見を言って下さい。もちろん,言う時は前の人の意見を聞いてそれに関係のある内容で言います。○○と言えば,を思い出して下さい。」 と言ってタイマーを5分にセットします。ステップ4までスムーズにきている場合は多分これも5分間意見が続くはずです。また続くように時々は教師から盛り上げる評価をしていきます。 もしうまくいかない場合は,ここにくるまでの「発言への意識づくり」に課題があると思われます。 子どもたちには一人一人個性がありますから,その実態に合った「発言をしようとする意欲」「聞こうとする態度」「発言を楽しめる雰囲気」等々をつくりだしていく必要があります。 子どもによっては「楽しい意見」を出そうとする子,「真面目な意見」を言おうとする子,「受け」を狙おうとする子,「ユニークな意見」が出せる子,「感情的な意見」になってしまう子,「人と違った意見」を言おうとする子,といろいろなタイプがいます。その一人一人に合った評価をし(○○君は楽しい意見が得意だね。○○さんはいつも感動的な意見を聞かせてくれるなー。等),自信をつけさせ, 「また言おう」 と思えるような状態にしていくことが大切です。そのためにゲーム中の子どもたちの一言一言を注意深く聞き,即座にタイミング良く,教師は「驚き」「感心し」「笑い」「うなずき」「喜び」「楽しんで」いくことを意識していきます。 ステップ6『応用』 ゲームはステップ5で終わりです。次は今までのゲームで培った力を実際に試してみます。いろんな教科で試してみることができます。 国語では, 「残雪について5分間エンドレスで(以下同じ)意見を出し合ってみよう。」 道徳では, 「この主人公の行動について意見を出し合ってみよう。」 社会では, 「この1ヶ月勉強してきた工業について覚えていることを出し合ってみよう。(もちろんこれも前の意見とかかわりのある意見を求めます。これはテスト前の復習にもなります。)」 総合では, 「車イスに乗ってみて感じたことを出し合ってみよう。(特にこの総合では「意見を出し合う」ということ自体が大切な学習になってくると思われます。)」 以上,エンドレスゲームでした。 これが本当に役に立つかどうか分かりませんが, もし実際に試してみられた方がおられましたら,その時の様子などお知らせしていただくと,また参考になります。よろしくお願いします。 |