ある朝,子どもたちが教室に入ると, 教室の後ろに次のような張り紙が張ってあります。 ここからゲームが始まります。 |
SCHOOL QUEST スクールクエストへのご招待 ☆ 物語 ☆ 長い間平和が続いていたここゴッドストーン共和国に, 今暗闇がおとずれようとしていた。 どこからともなく現れた暗黒の魔王グラモキソンが この共和国の人々を次々におそい始めたのだ。 地には魔物たちがあふれ,何人もの旅人たちが, そのえじきになってしまっている。 うわさでは,すでにいくつもの村や町が魔物たちによって あとかたもなくほろぼされているそうだ。 ゴッドストーン共和国の地に再び平和を! しかし,魔王に戦いをいどんだ勇者たちは, だれひとりとして生きて帰ってはこなかった。 だが,グラースウッドにいる偉大なる予言者サッピーは言った。 「やがて,この地のどこかに本当の知恵と勇気を持った子が現れる。 その子が,魔王グラモキソンをたおすであろう。」 と。 そう,その「知恵と勇気を持った子」それが,あなたです。 この地に残された勇者たちの数々の伝説をひろい集め, 人々の話に耳をかたむけながら, 見事魔王をたおし,この共和国に平和をとりもどしてください。 あなたの冒険は,もうすぐ始まる! |
テレビゲーム「ドラゴンクエスト」のパクリです。あの内容を指先ではなく,自分の身体を使って,学校の敷地内中を走り回りながら,謎を解いていきます。RPGと呼ばれるゲームの面白さは,自分が冒険物語の主人公になり,自分の力で謎を解いていき,最後に感動的な終末を迎えるところにあります。その魅力を取り入れたのがこのゲームです。 テレビゲームでは,面白みはあっても,視力,体力,社会性等の面で問題があります。このゲームでは,学校中のいたる所を複数の人数で謎を解くために走り回るので,知力,協力,体力等が養われます。更に最後には謎を解いた達成感を友達と共有することができます。 学校は「まちがう所」でもあるし,当然「楽しい所」でなければなりません。ゲームの本から探し出していろいろやってみるのもいいですが,時には,教師の手作りによる大げさなRPGを体験させてみてはいかがでしょうか。 因みに,私がこのゲームの準備のためにグランド中を走り回っている時,教室の窓から子どもたちは,「先生頑張ってー!」と声援を送ってくれました。 日頃の罪滅ぼし?としても,時にはこうして教師が汗をかくところを見せるのも意味があると思います。 RPGを経験されていない方には,ゲームのイメージがもうひとつつかめきれないのではないかと思います。 簡単に言えば,オリエンテーリングのような形式で,学校中に謎を解くヒントが書かれたカードが置いてあり,それらの全てのヒントを頼りにある場所にたどり着き,そこで最後の問題を解いて,魔王を倒す。というものです。 子どもたちは,とても喜んで走り回ります。家の方からは,連絡帳で 「子どもが帰って,嬉しそうに楽しかったといろいろ話すのですが,何のことかさっぱり分かりません。でも,その話をしている時の子どもの目がとても生き生きしていて,楽しかった様子が伝わります。準備が大変でしょうが,これからもよろしくお願いします」 といった反応をもらったことがあります。 このゲームの概要を説明するために,子どもたちに最初にさせる,このゲームのやり方を説明するための準備運動的な予備ゲームをまず紹介します。 |
一人ずつに次のようなプリントを配ります。
「この4つの枠に,ある言葉を入れるとこのゲームをクリアしたことになります。 その言葉のヒントは,人々の話の中に隠されています。 人々の話は,この紙に書かれています。 紙は11枚あります。 この紙を裏返して,机の上に置いておきます。 みんなは,これから,廊下に出て先生がこの紙を置くまで待っていて下さい。 先生がいいですよと言ったら,入って来て,人々の話をどんどん読んでいって下さい。 読んだら紙はまた裏返して置いておいて下さい。 4つの枠に全部言葉を入れることができたら先生に見せに来て下さい。」 ということで,子どもたちを廊下に出した後,紙を裏返して適当に11枚を机の上に置いていきます。 紙は出来れば画用紙のようなちょっと堅めの紙がいいと思います。 11枚の紙には,次のような言葉をそれぞれ書いておきます。
教師は,紙を置いた後,子どもたちを教室に呼び入れゲーム開始にします。 もし,呪文を言ってきた子がいたら,次の紙を見せてあげます。
関係ない話も入れてありますが,全部をヒントに枠に言葉を入れていけば,
これでクリアということになります。 これは,逆から読むと,「コスモス」となります。 ABCDに普通に言葉を並べるようにすると,2,3文字が入った時点で,後は予想で書いてくる子がいるかもしれないので, このような並べ方にしました。 この言葉は,いろいろ工夫してみて下さい。 |
何だかわけのわからないようなゲームかもしれませんが,案外知的興奮を呼び起こすかもしれません。もし,この段階で難しかったり,興味を持たない子がいる場合は,次の本番の学校中を使う「スクールクエスト」には,進まない方がいいと思います。 「スクールクエスト」というのは,「ドラゴンクエスト」から何となくつけた名前です。「ドラゴンクエスト」のクエストとは,「捜す」ということですから,「ドラゴンを捜す」というのは意味が通りますが,「スクールクエスト」では,「学校を捜す」で,ちょっとおかしくなりますね。ま,「学校で捜す」というくらいの意味だと説明しています。 もし,このゲームを試してみようと思われる方は,いい名前を考えて下さい。ゲームの導入に使う張り紙の内容も工夫してしっかり盛り上げて下さい。ゲームをする時間としては,午後の5,6時間目を使いました。昼休憩中に「人々の話」を書いた紙を学校中に置いて回ります。グランドでは,周りの金網に紙をかけました。紙には,園芸用の支柱につける柔らかい針金を予めつけておきます。 この「スクールクエスト」は大変子どもたちに好評で,とうとうパート3まで作ってしまいました。パート2では,教生の先生も一緒に入られて楽しんでもらえました。3学期の最後には,パート4を男子2,3人で作ってくれて,私の方が子どもたちと一緒にゲームをさせてもらいました。 パート1で使った「冒険の書」は,次のようなものです。 |
SCHOOL QUEST 冒険の書 勇者の名前 5色の球
長老の娘
C |
パート1では,人々の話は,26ぐらいつくりました。つまり26枚の人々の言葉を書いた紙を学校中に置いておきました。 よーい,スタートで子どもたちは「冒険の書」を持ってグランドに出ていきます。子どもたちは紙に書かれた「人々の話」をもとに,冒険の書(A,B,C)にそれぞれ決められた言葉を書いたり,5色の球を集めていくことになります。「5色の球」として,決められた色の丸いシールを決められた場所に貼ります。シールも「人々の話」を読めばどこにあるか分かるようにして人数分置いておきます。そして,26の話を全部読めば,最後には,教室の私の所に来なければならなくなるようにしてあります。教室で最後の戦い(百人一首を3首言うとか,3回連続してジャンケンで私に勝つとか)をして,その戦いに勝つと,魔王の場所を書いた紙を見ることができます。その場所に行くと,魔王の最後の様子が・・・。 というような流れになります。 一人ずつで冒険させてもいいと思いますが,中には,読んで,話を組み立てることが苦手な子もいるかもしれません。協力を学ぶためにも,2,3人のグループにしてはどうかと思います。これは,問題があるかもしれませんが,冒険が終了した子には,チョコの一粒ぐらい用意しておくというのはどうでしょう。また,困っているグループの助っ人に行ってもらうこともします。 もし元気があれば,夏休み等にこんなゲームを自分も楽しみながら作ってみて下さい。子どもたちは熱中し,卒業文集にも思い出のベスト10に入れてくれます。 こんなゲームにも,もし興味を持たれた方は連絡して下さい。私の作ったパート1の話でもよければメールに添付(一太郎文書)してお送りします。(HP上で全部を公開するには,ちょっと恥ずかしいものがあるので) |