数学的思考力を刺激し育成を促すためには,ちょっとしたところにこだわり,それを少しずつ継続していくことが大切だと思われます。 |
例えば啓林館の5年生の教科書に次のような問題があります。
この問題の下に 「表をかいて考えるといいよ。」 とヒントが書いてあり,
一人で勉強するときは,これだけのヒントが大きな役割を果たし,分かる子にはすぐに方向性が見えてくるきれいな構成です。 しかしあまりにスムーズすぎて,言われるままに表を埋めていっていつの間にか答えが出ていた,ということもありそうです。 これは中レベル以上の子にはあまり時間をかけなくても,自分で答えを出せる程度の問題です。しかし論理的な思考が苦手な子には,もしこの表をただ埋めていくだけで答えを求めていくようなことをさせていては,思考力への刺激が少ないかもしれません。 そこで,ここではヒントと表を見せずに,次のような展開で考えさせていきます。
「それぞれの円周の長さを計算しその差を求める」 ということに気づけなかったり,その方法は感じていても,うまく表現できない子がいるものです。 分かる子には本当に簡単な問題ですが, 「円周が何pふえるかをどうやってしらべるか」 というような「ちょっとしたところ」を考えさせることが論理的な思考力をくすぐっていくことになると思われます。 そして,その方法を必ず正確に最後まできちんと説明させます。 実際には一人ひとりに, 「直径1pの円の円周の長さと直径2pの円の円周の長さを求め,直径2pの円の円周の長さから直径1pの円の円周の長さを引いて調べる。」 というようなことをはっきり言わせていきます。 論理的な思考が苦手な子は,これだけのことを言うのでも大仕事になってきます。しかし,何となく難しそうな説明をしたという気分が,自分への自信になっていくこともあります。あまり無理のない範囲で,こういう経験を繰り返させることが思考力を育てていく小さな一歩になるように思います。 |