意味理解
(「割合」5年生)

 算数では一般的に基本的な計算方法を学習した後,その活用問題を解くことになります。その時,読み取りを苦手としている子はまず問題の意味理解に苦しむことがあります。児童の実態によってはその最初のハードルを越えやすくする手立て(事前学習)が必要になることがあります。
 そういう手立ての1つを5年生の「割合」の学習で紹介します。

事前学習

 啓林館の教科書(5年生)では百分率の学習の後に「問題づくり」として次のような問題が出されています。

 次の文章は(  )の中の数のどれか1つを変えると,正しい文章になります。
 正しい文章にするには,(  )の中の数をどのように変えたらよいでしょう。

子ども会に集まった人数( 15 )人のうち,( 6 )人は男の子で,全体の( 20 )%にあたります。

 児童の実態によってはこの問題をすぐ考えさせたのでは全く歯が立たないことがあります。ここでは「どれか1つを変えると,正しい文章になります」という意味理解が難しいのではないかと思われました。
 そこでこの問題を提示する前に次の式を黒板に書きました。

3×2=12

発問1「この式は正しくないですね。どれか1つの数を変えると正しい式になります。どの数をどう変えたらいいでしょう。」

 すぐに出てくる答えは「12がおかしい」という意見です。
 そこで,

3×2=12

3×2=□ 

と書き,□を求めさせます。

3×2=12

3×2=□
  □=6
3×2=


 時にはここで終わってしまい,他の数字を変えることに気がつかないこともあります。そこで,「12以外を変えても正しい式になるよ。」と指示することになります。そして,以下

3×2=12

3×2=□
  □=6
3×2=

3×□=12
     □=12÷3
  □=4
3×
=12

□×2=12
     □=12÷2
  □=6
×2=12

と立式は教師が手伝いながらあまり時間をかけず進めていきます。

 この思考を事前に行っておくことで,上の問題の「どれか1つを変えると,正しい文章になります」という文の意味理解を助けることになるだろうと考えました。実際,この後これが役に立ったように思います。

 本題の「問題づくり」での一番大きなハードルはやはり割合を表す問題文から量の関係を読み取るというところです。しかし,この点は今までの学習である程度機械的に処理できるようになってきているので,それをここでも利用させます。割合の文章題に対する解法プロセスをパターン化した「関係図」の利用です。


同じプロセスで

 次の文章は(  )の中の数のどれか1つを変えると,正しい文章になります。
 正しい文章にするには,(  )の中の数をどのように変えたらよいでしょう。

子ども会に集まった人数( 15 )人のうち,( 6 )人は男の子で,全体の( 20 )%にあたります。

 この問題にくるまで,児童は割合の文章題に対して全て同じプロセスで解いてきました。そのプロセスとは,

1.まずその問題文を
  「何の何倍は何」
という関係で言い表す。(決して「何は何の何倍」という言い方はさせない。どちらでもいいがどちらか1つの言い方に決めて全てをその関係に言い換えさせる。)

2.その関係を関係図(もとにする量とくらべる量を矢印で結んだもの)に表し,分からない数を□で表す。(数量関係を「何の何倍は何」ととらえれば,関係図はいつも左側から言う通りに書いていけばよくなる。)

3.□を求める。

といったシンプルなものです。これを教科書,ドリル,プリントの全ての割合の文章題に適応させていきました。そのため,ここでも「数の関係を読み取る」という大きな課題の部分はどうにかクリアーできました。
 実際には次のように進みました。

1.(上に示した)教科書の問題文をコピーした紙を配り,ノートに貼らせます。教科書には一番考えさせたい関係図が既に書いてあるので閉じさせておきます。本当は問題を板書して視写させるのがいいのですが,時間の関係でこのようにコピーをノートに貼ることもあります。

2.しばらく考える時間を与えましたが,やはり困っています。複数の課題が含まれているためだと思われます。

3.まずいつものように関係を言うことにします。すると,
 「全体の人数の0.2倍は男の子の人数。」
と言うことができました。問題文にある(%)はいつも(小数倍)に直して読み換え,問題文に必ずその小数倍を書き込むようにさせています。

4.関係図を書かせます。

0.2倍
全体の人数
男の子の人数
15人 6人

5.関係を式に表します。
     15×0.2=6

6.実際に15×0.2の計算をさせてみます。

7.「6」にならないことを確認して,事前学習の3×2=12と同じ思考をしていくことを知らせます。

8.「どれか1つを変えると正しくなる」のだから1つずつ変えていこう。どれからにする?と聞くと,6人からということで,

0.2倍
全体の人数
男の子の人数
15人 6人
□人

と書き,
15×0.2=3
で「男の子の人数の6人を3人にする」と答えを書きます。

9.以下それぞれを□で表し,答えを求めていきました。もとにする量を求める時はくらべる量を割合で割り,割合を求めるときはくらべる量をもとにする量で割ることは経験則で覚えています。もし□の求め方が分からなくなった時は簡単な整数の関係図(関係図の導入で一番初めに学習しています。)

 2倍

を書いて分からない所を□にして計算方法を思い出すよう指導しています。