分数の計算では,ちょっとしたケアレスミスで不正解になることがあります。 例えば,約分ミス,通分ミスなどです。 これら分数の計算にも,整数の加法や減法の繰り上がり,繰り下がりの時に行う補助計算のような書き込みを必ず行うように指導すると,95点の子は100点に70点の子は80点になります。 つまり,補助計算の書き込みを必ず行わせることで,おしいミスをなくしていくのです。 |
約分をする場合は,分母,分子を何で割るのかをはっきり書いていきます。 例えば 6 ― 12 を約分する時は,両方を割る6を必ず書き込むようにさせます。 ただ6とだけ書いたのでは,問題の数字と一緒になったりするので,Eとします。 それを約分する分数の横に必ず書くくせをつけます。 1 E ― 2 もし,Aで約分した場合は,もう一回Bと書き,約分を続けます。 1 A ― B 2 大したことではないように見えますが,案外,低学力の児童の中には,分母は6で割って,分子は3で割るというようなことをしてしまうことがあるのです。 約分するたびに,今は,何で割っているのかをはっきりさせるために○印のついた数を書かせます。 この書き込みがあると,後で確かめをするときや,直しをするとき,また,教師が児童の間違いの場所を指摘する場合に役に立ちます。 これは,約分指導の最初の場面で,必ず書くくせをつけます。 練習問題ができて,持ってきた子のノートにこの○印の数字の書き込みがない場合は,やり直しをさせます。 こんな書き込みをさせなくても,最初のうちは,間違えないのですが,慣れてきた頃,ミスが出てきます。 そして,「本当は,100点だったのにおしいな〜。」の95点のテストになったりするのです。 |
約分も通分も,まずは,その必要性をタイル等を使って学習した後,計算練習もし,その後に, 「では,これからは,○印をつけて・・・」 という形で,最後に補助計算のパターンを習慣づけていきます。 決して,形を先に教え込んでいくようなことはしません。 通分が必要になってくるのは,まず分母の違う二つの分数の大きさを比べるときです。 例えば,次の二つの分数の大きさを比べるときは, 1 2 ― ― 2 3 2つの分母の最小公倍数6に分母を変えていきます。 教科書では,すぐに通分した形を書くようになっていますが,そこに,途中の計算をはっきり書き込むように指導していきます。 まず,3と2の最小公倍数を見つけて,それを2つの分母の間に○印をつけて書かせます。 1 2 ― ― 2 3 E 次にそれぞれの分数の分母と分子に通分するためにかける数を書き込みます。 1×3 2×2 ― ― 2×3 3×2 E 次にそれぞれの分数の下に,↓を書き,通分した形を書きます。 1×3 2×2 ― ― 2×3 3×2 ↓ E ↓ 3 4 ― ― 6 6 この後2つの分数の大小を判断して,不等号をつけていけば終わりです。 通分した形をそれぞれの分数の下に書くのは,特に低学力の児童に対する配慮です。 これを右に書いていくと,左右どちらの分数を通分したものなのか分からなくなってしまう児童がいるからです。 矢印をつけ,どの分数がどのように変化したのかをできるだけはっきりさせておきます。 途中の書き込みも,できるだけ通分の思考をオモテに表すようにしています。 このようにして,今何をどうしているのかをはっきりさせていきます。 通分では,とかく分母だけ倍数にして,分子を放っておくことがありがちです。 そのため,かける数を分母,分子に必ず書くようにさせます。 これに習熟させておくと,この後からはほとんどオートマチックで通分はできていくはずです。 一つひとつの頭でする作業を順に「書いて」いくことでミスが減っていくと思います。 この通分に慣れた後,異分母の加法,減法をすることになります。 ここからは,もう下に分数を書いていくようなことはせず,=をつけて横に書いていくようにします。 次のようになります。 1 2 ― + ― 4 3 1×3 2×4 3 8 ― + ― = ― + ― 4×3 3×4 12 12 K 11 = ― 12 この○印の最小公倍数を書くことと,かける数を必ずつけた計算を練習問題で行います。 約分のときと同じように,答えが合っていても補助計算が書き込んでないものはマルをせず,書き直させます。 その注意を練習を始める前にしっかりと伝えておきます。 まず1つ目の問題ができた所で,全員ノートを持って来させチェックします。 書き込みが正しくできていれば,次は,全部できてから持って来させるようにします。 書き込みが不十分な児童は,まず1問目が合格するまで直しを続けます。 1問目から書き込みをいい加減にしている児童は,後から持って来ると,全てを直さなければならなくなるからです。 尚,=が縦に真っ直ぐ並ぶように指導することも,これから先役に立ちます。 私の今までの経験では,この補助計算を入れるようにしてからの児童の正答率は以前より随分上がったように思います。 ただ,こんなことしなくてもみんな正解するようなクラスでは,これは必要ありませんね。 |