先生はカマボコ

 教師が一言言うと,何かにつけて反発をする口先の達者な子がいます。反発自体は悪いことではないのですが,必要以上に何かと反発する子や,日々の学校での活動全体を「させられる」と感じているのではないかと思われる子どもたちに対して,ちょっと意識を変えてほしいなという思いで話しました。

 学校や家でみんな食事をします。その料理は,どれもみんなのことを考えてつくってありますね。それに好き嫌いを言って嫌いなものを食べないでいると,栄養が偏って病気になったりすることもあります。

 実は「学校」という所もみんなの前に出された料理のようなものなんです。学校があるからみんなが来るのじゃなくて,みんながいるから学校があるのです。そして,学校にあるものは全てみんなのためにあるのです。給食も教室も机も黒板も掃除も宿題も,ぜ〜んぶみんなのためにあるのです。
 「先生」というものもそうです。みんなのためにあるのです。先生は街で歩いていればただのおじさんですが,国がみんなのために学校を用意し,先生を用意して,こうして先生として立っているわけです。そして時にはみんなに恨みも無いのに注意したり,叱ったりしなければいけないこともあります。それは,「先生」としてみんなに「人としての力」をつけていくためなんです。

 「人としての力」ってどんな力だと思いますか?もちろん,自分自身がこれから先やりたい仕事ができるようになる力,自分の夢を叶えていけるようになる力でもありますが,もう一つ,人として人に優しくできる力でもあります。人に優しくできるようになるには大きな力が必要なのです。自分のことがいくらできたって,それは大した力ではありません。無人島で暮らすのだったら別ですが,人の社会の中で暮らしていくには,お互いのことを考え合い,助け合って生きていける力が必要なのです。

 こんなことを偉そうに言っている先生でも一人の人間として,まだまだできていないことがあります。大人でもそうです。いつまでも勉強が必要です。でも,大きくなってしまってからでは,なかなか人間も堅くなってしまって成長しにくくなります。鉄は熱いうちに打て,と言われます。子どもの時にしておかなければならない人として大切な勉強が3つあります。何だと思いますか。

 その3つとは,「勉強」と「労働」と「遊び」です。
 「労働」とは,働くことです。学校や家で掃除をしたり,手伝いをしたりすることです。
 「遊び」とは,一人でするテレビゲームのようなものではなく,友達といっしょに楽しく遊べるということです。
 物事を深く考えられること,人のために自分にできる範囲で体を動かすことができること,人と楽しみ合えるということ。どれも小さいうちから身につけていく努力をしなければならないことです。
 その手助けをするために「先生」が学校にいます。

 料理がみんなのためにあるように,学校もみんなのためにあるのです。まあ,料理で言えば,先生はカマボコみたいなものです。野菜や魚がみんなの栄養になるように,学校での全てはみんなの成長のためにあるのです。好き嫌いを言っていては損をすることがあります。

 今まで「先生の目を盗んで掃除をサボる」とか「先生の目を盗んで勉強をサボる」とかしていたとしたら,それは大きな損をしていることになります。できれば,これからは,「先生の力を盗んで自分を成長させる」ような賢さを身につけていってほしいと思います。
 そして,「先生にさせられる」と考えるより,「先生を利用する」という考え方で,後について行くのでなく,先に進んでいくような人になってほしいと思います。