「豊かな人間性」(総合的な学習の評価)

 前回紹介しました「総合的な学習の評価について」という校内研修用提案資料は,校内で検討する予定日の2週間ほど前に各先生方の机上にお配りしておきました。そして,質疑・改善点等について意見を考えておいていただくようお願いしておきました。
 検討日,時間の節約も含めて,この提案についての説明はせず,すぐに質疑・意見をお願いしました。
 その中で出された質問で,「2,評価の観点」の中の「豊かな人間性」とはどういう意味か,というのがありました。
 そこで,もう一度その時に出していた提案資料とその質問に対して答えた私の考えを紹介します。
(前回紹介した提案資料)

総合的な学習における評価について

 校内研修で,「総合的な学習の評価」について提案した資料です。
 この学習における「評価」については,何だかよく分からない長い文章が続いていることが多いですね。
 そこを校内でイメージをはっきりさせるために,できるだけすっきりとシンプルにしたつもりです。

1,教育課程審議会答申より

「総合的な学習の時間の評価については,この時間の趣旨,ねらい等の特質が生かされるよう,教科のように試験の成績によって数値的に評価することはせず,活動や学習の過程,報告書や作品,発表や討論などに見られる学習の状況や成果などについて,児童のよい点,学習に対する意欲や態度,進歩の状況などを踏まえて適切に評価することとし,例えば指導要録の記載においては,評定は行わず,所見等を記述することが適当であると考える。」

2,評価の観点
  • 「生きる力」を育成するための評価であること。
  • 「生きる力」とは「問題解決能力」「情報活用能力」「表現能力」「豊かな人間性」ととらえる。
  • 課題追求過程,まとめ,発表のそれぞれの場面において,「よい点」「意欲,態度」「進歩の状況」の面から評価する。

3,評価の項目
  • 課題設定,解決,分析,整理
  • 情報収集,活用
  • 活動意欲,態度
  • 内容理解

4,評価の方法
  • 児童の自己評価を通して(ワークシートの活用)
  • 学習意欲,態度を通して(課題の設定,追求,解決等について)
  • 学習内容を通して(ポートフォリオの活用)
  
※「ポートフォリオ(Portfolio)」・・・紙ばさみ,折りかばん,書類入れ
   (次のようなものを綴じていくものととらえる)
     ・見学,観察記録  
     ・アンケート
     ・自己評価チェック表
     ・収集した資料
     ・各種ワークシート
     ・分析,まとめ
     ・発表原稿     
                          
(「豊かな人間性」について)
 今質問された「豊かな人間性」については,総合的な学習では大変重要な意味を持つと思う。
 国がこの「総合的な学習」を出してきた背景には,21世紀に予想される日本の状況に対応できる人づくりがある。
 現在の日本の労働者人口は,全体の52パーセントらしいが,これが2025年になると,50パーセントになると言われている。つまり,一人で一人をみなければならなくなるらしい。
 そうなった時,「人のことなんか知らないよ。自分は自分のことだけでいい。」なんて言う人間が育っていては,困ったことになる。
 そういう意味で,「福祉・健康」が例示されている。
 また,今まではゴミを出しても地球が消化できる範囲だったものが,もう今ではとても処理できなくなってきている。空き缶を投げ捨てる国民をつくっていては,日本はゴミだらけになってしまう。たちまち,まずは空き缶を投げ捨てない国民をつくるためにも「環境」の学習も必要になってきている。
 また,これからはますます外国とのつき合いも増えていき,国際社会の中で積極的に人とコミュニケーションのとれる人間が育っていかなければならない。

 今までの学校での勉強はほとんど,「自分のため」の勉強だった。
 しかし,これからはそういう21世紀の日本と世界の状況から,「人様のためになる勉強」をすすめていくことを国は考えているようだ。総合的な学習を行う上で,「福祉・健康,環境,国際理解」を課題にしていくということは,一言で言えば,これからの日本の状況に対応できる「豊かな人間性」を育てていくということになるのではないか。