ビデオレター

 先日学級懇談があり,とても受けたビデオレターの紹介をします。

 年度末の懇談で,まず普通通り学級PTA目標の反省と教師からの経営の内容報告と児童の様子をお知らせし,今気になる事,学校や担任への要望を聞いた後,2つの「出し物」を用意していました。

 1つは,修学旅行の報告に使ったスライドショー(39枚)です。これは5月に旅行から帰って全校にプロジェクターで映しながら1枚ずつ子どもが分担してそれぞれの説明をしたものです。今回の懇談の前にその原稿をもう一度読んでテープに録音しました。児童はそれぞれ自分の書いた原稿を読む前に自分の名前を言います。これで家の人は自分の子の発表がはっきり分かります。
 このテープを流しながら旅行のスライドショーを行っていきました。スライドに音声を挿入する方法もあるのでしょうが,カセットテープに別に録る方が手軽で早くできるように思いました。

 また,この旅行のスライドの後に児童が図工で描いた絵や木工作品の写真も入れておき,その作品の良さを紹介していきました。教室に貼っていても案外家の方は見られないのです。

 その次に「ごめんなさいビデオレター」を見てもらいました。
 これはテレビの「所さんの笑ってコラえて」の真似です。以下,その作成の説明をします。

 まず子どもに家の人に向かって「○○でごめんなさい。」と言う内容を考えさせます。
 この○○の中身は本当に謝る内容でもいいし,逆に自分の自慢でもいいことにします。
 例えば
 「ゲームばかりしてごめんなさい。」
でもいいし,逆に
 「足が速くてごめんなさい。」
等のようなものでもいいよと説明します。
 
 それから
「この1年間で家の人に言われたことや,してもらったことで嬉しかったこと」
を1つ考えさせておきます。

 全員が内容を決めたら,軽く一度リハーサルをします。
 リハーサルではカメラを使わず出席順に席を立ってその場で言わせます。その後教師からそれについてテレビでやっているようにその内容を詳しくするような質問をしていきます。それに対する子どもの答えの中から面白そうな部分だけを短く使うように予定を立てておきます。アドリブ的な面白さを出すためにもこれだけで次はすぐに本番に入ります。

 教室の前にビデオカメラをセットし,一人ずつ前に出てくるのですが,その出方は各自で自由に考えさせます。すると後ろの方から走ってきたり,横から出てきたり,急に真下からピョンと現れたりといろいろなパターンを考え出します。これだけでも楽しい雰囲気になります。
 
 カメラの前に立ち,「○○でごめんなさい。」と言った後,教師がカメラの後ろからいくつか質問し子どもが答えていきます。その後,教師から
「では家の人に向かって一言どうぞ。」
と言い,子どもは
「○○をほめてもらって嬉しかったです。」
と言って終わります。

 実際にあった流れは例えば次のようなものでした。

(その子は横からカメラをのぞくようにして出てきました。)(笑い)
児童A「お姉さんにゲームのソフトを貸してごめんなさい。」
(カメラの後ろから)教師「えっ?貸してあげるのはいいことじゃないんですか?」
児童A「いいえ,よくないんです。」
教師「なぜですか?」
児童A「姉ちゃんが勉強しなくなるからです。」
教師「じゃあ,これからは貸さないんですね。」
児童A「いいえ,それはできません。」
教師「なぜですか?」
児童A「姉ちゃんに蹴られるからです。」(笑い)
教師「じゃあ,命がけで頑張って下さいね。」
児童A「・・・はい。」(笑い)
教師「では,家の人に向かって一言どうぞ。」
(その子はお母さんに自分が注文した料理を作ってもらったことのお礼を言いました。)(笑い)

 もう1つ紹介します。

(この子はカメラに写らないように下をはっていき,急に画面の下から飛び上がりました。)(爆笑)
児童B「土日だけ早起きしてごめんなさい。」
教師「なぜ土日だけ早く起きるんですか?」
児童B「なぜかこの日だけは光がピカッと光る感じがして目が覚めるんです。」
教師「えー,おじゃ魔女ドレミを見たいからじゃないんですか?」(笑い)
児童B「そんなの見ませんよ。」
教師「じゃあ,アンパンマンが見たいからでしょう。」
児童B「あっ,それはちょっと見る・・・かな。」(爆笑)
教師「では,家の人に向かって一言どうぞ。」
(この子は,今までお母さんに起こしてもらってきたお礼を言い,これからは毎日5時55分には起きる決意を述べました。)

 この子は出席番号が最後でこれで終わるはずだったのですが,「家の人への一言」が終わった後カメラに向かって,急に
「先生,僕らがみんな言ったんだから,先生もここで何か言い!」
と手招きをするではありませんか!

 ・・・という風に家の方には見えたはずですが,実はこれは前もって最後の子にそう言うように仕込んでおいたことでした。

 「えー?」と言いながらカメラの前に出て行き,しばらく考えるふりをして前もって考えておいたことを言い(笑い),最後に今年の教育方針のようなものを述べて,ピースをして(笑い)終わりました。

 このビデオを切った後,
「と,いうことで今年もよろしくお願いします。」
で懇談を終わりにしました。

 次の日,懇談の話がいろいろ家であったことを子どもたちが報告してくれました。最後の子は家の人に
「いい作品を作っていたね。」
と言われたと言うので,図工の作品かと思っていたら,そうではなくて「ごめんなさいビデオ」のことだと分かりました。
 参観日に授業は見られても後の懇談には少ししか残られないという話を聞くことがあります。懇談に行かなかったことを「損した」と思ってもらえるようなものを用意していくと,段々残られる数も増えていくのではないでしょうか。