「前倒しではいけない」の不思議

今,国際理解,英語教育について様々な意見が交わされています。

中学校の前倒しではいけない?】
 公開研究会で行った英会話の授業を見られたある先生が,後の討議の場で,
「英単語の発音練習にあまり時間をかけるのはどうか。あれ以上すると中学校の前倒しになってしまうのではないか。」
というような意見を出されたことがあります。
 
 その時の授業ではシンセサイザーのリズムにより7つの単語の発音をチャンツ形式で行っていきました。最初は1つの単語を教師が発音し,シンセのリズムに合わせてその後児童が発音します。それを全部の単語について2,3回繰り返し,次に一度に発音する単語の数を1つ,2つ,3つ,・・・と増やしていきます。

 教師:「station」   児童「station」
 教師:「station,hospital」   児童「station,hospital」
 教師:「station,hospital,park」   児童「station,hospital,park」
 ・・・・

という感じです。シンセサイザーのリズムに合わせていきますので,途中で休めません。そこにスリルと面白味も生まれてきます。7つ全部一気に言えた時は小さな達成感も感じられます。

 また,Where is the station?等に使うためにWhereの発音の説明に児童に1枚ずつ紙を渡し,それを各自の顔の前にたらし,声を出さずに紙が動くようにフッと口から息を吹かせます。それに「エァ」を付けてごらんと指示します。すると,ちゃんとWhereの発音に近づいていきます。

 発音を何回も繰り返したり,こういう発音への指導を見られて,

「中学校の前倒しになってはいけない。」

と言われたのでしょうか。

 ここで不思議なのは,「なぜ中学校の前倒しになってはいけないのかな」ということです。

 「中学校の前倒し」と言うときは,まずここで使う「中学校」の「授業」の中身をどうとらえているかが問題になってきます。この先生は「中学校の英語の授業」に対してどういうイメージを持っておられるのでしょうか。
「発音」をいろんなパターンで楽しんでいくことは「中学校的な授業」なのでしょうか。

 自分の受けてきた授業が全ての中学校での授業でもないでしょうし,最近は特に変わってきているはずです。もし,中学校の英語の授業が魅力的で,生徒の学習意欲を喚起し,興味を持って取り組めるものならば,小学校もどんどん「中学校の前倒し」をしていくべきではないでしょうか。

 「小学校のような授業になってはいけない」とか「中学校のような授業になってはいけない」というより,お互いのよさを取り入れ,学び合う必要があると思うのですが。