「球技大会」の不思議

夏休みに学校対抗の球技大会が開かれます。

声援】
 ここの地域ではソフトボールとフットベースボールの球技大会が行われています。
 この大会には親もよく応援に来られます。そして試合となると,大きな声で声援を送って下さいます。が,つい熱が入りすぎて,子どもが守備をしていてボールを取ると,
「2塁2塁!」
とか
「ホームホーム!」
と,それぞれ口々に指示をされることがありました。
 ボールを取った子はその声で逆に判断に迷い,投げようとした所に投げられなくなっていました。

 次の年に親しい親の方にそれとなく,「ボールを投げる場所の指示をするような応援は子どもを迷わせる」ということを応援に来られる方に伝えてもらうようお願いしたことがありました。
 せっかく応援に来て下さるのに言いにくいことでしたが,それからはこの種の声援がなくなり助かったことがあります。

【指導?】
 試合をしていて気になるのは,子どもがエラーや走塁ミスをしたような時,監督がそのことについての指導をその場で大きな声でされていることです。例えば「ランナーが目の前を走っているのにタッチしなかった」「フライが上がった時に進塁してしまった」ようなミスについてです。
 子どもたちは年に1回だけの試合に緊張し,地に足がつかないような精神状態でプレーをしています。休憩時間にほんの少しの間だけ練習してきているはずです。ルールは一応知っていても,緊迫した状況の中では瞬時に体が反応できるはずもありません。ミスがあってもそれはベンチに帰ってきた時にそっと確認すれば気づくし,きっと自分でも「あっ,失敗した。」と思っているはずです。試合途中に大きな声で,緊張感がよけい高まるばかりの,ミスを指摘するような指導をされるのが不思議です。

 また,ミスが起きてから指摘するのは誰にでもできることです。もし本当に効果的に指導しようとするなら,そのミスが起きる前に,その状況では次にどんなことに気をつけていればいいのかを事前に「大きな声で指導」しておくべきでしょう。

【支援】
 走塁ミス,守備ミス,判断ミス等に対してあまりに当たり前の「指導」を試合中に行うことのマイナス性は,きっと自分が逆の立場で言われてみれば分かるはずです。そういう指導はそれまでの練習期間にしっかり行っておくべきでしょう。
 小さな胸をドキドキさせながら,多くの人の前で慣れない「年に1回の試合」をしている子には「ミスの指摘」をするより,やはり元気づける言葉が何より必要だと思います。
 
 これが本当にいいのかどうか分かりませんが,私は試合中のミスには目をつむり,
「ボールをうまく取れなくてランナーをアウトにできなくても,ボールをそこでよく止めたこと」
「キャッチャーが毎回よくボールを受け止めていること」
「アウトになってもよくボールを蹴って走っていたこと」
等々をずっと言い続けます。
 失敗に対して,「おしい」とか「こうすればよかった」でなく,「そのプレーの中にある価値」を無理矢理にでも引き出して伝えます。また,相手チームのプレーに対しても「感心言葉」をかけます。

 この3年間は連続優勝していますが,どんなに負けている試合でも,その中でどれだけ支援の言葉をかけられるかは,自分自身との戦いになることもあります。
 「試合」の中で,自分のそれまでの指導力を反省できれば,子どものミスを責めるような「指導」の言葉はなくなっていくはずだと思います。