大きな かぶ (1年)


 私はまだ1年生を担任したことはないのですが,この「大きな かぶ」をもし授業するとしたら,ぜひ子どもたちと一緒に考えてみたい問題があります。


発問  おじいさんがかぶを抜こうとしてもなかなか抜けなかった時,おじいさんは嬉しかったでしょうか,嬉しくなかったでしょうか。
留意点  このお話は音読の繰り返しのリズムの面白さを味わうことがねらいなのかもしれません。また,「力を合わせる」ことの大切さや,小さな者でも貴重な存在であること等を考えられる題材だと思います。
 しかし,その他に上のような検討もさせてみたいなと,人が教材研究をしているのを横目で見ながら,ふと思いました。

 このお話の背景には祖父,祖母で孫の面倒をみている状況があります。お父さんは戦争に行っていたような時代でしょうか。お母さんはどこかに働きに出ているのかもしれません。みんな貧しくて食べる物もあまり無かったと思われます。だからおじいさんは「あまくて,大きな」かぶをつくろうとしているのでしょう。

 そして収穫の時,できたかぶはおじいさん一人ではとても抜けないぐらい大きくなっていたのです。これはその時代の人々の豊作を願う心を表しているのでしょう。
 だから,「すぐには抜けないぐらい大きく育ったかぶ」を前に,おじいさんは喜びながら困っているのではないでしょうか。

 この後,おじいさんたちはみんなで力を合わせてかぶを抜くのですが,これは,当然,道の真ん中にあった大きなじゃまになる岩をみんなで力を合わせて動かしたような喜びとは違うものです。
 
  光村の教科書の挿絵ではかぶを抜こうとするおじいさんは,嬉しいのか嬉しくないのかよく分からないような大変冷静な表情で描かれています。子どもたちは問題の検討をこの挿絵から行うかもしれません。それはそれで認めるとしても,やはりそれだけでなく,第1場面のおじいさんがかぶのたねをまく時の言葉
「あまい あまい かぶになれ。大きな 大きなかぶに なれ。」
に判断の視点を持っていくような読み取りの力をつくっていきたいと思います。
 
 おじいさんはおばあさんをよんできても孫をよんできてもまだ抜けません。その後,犬やねこやねずみと増えていきます。その中でおじいさんは「おいおい,まだ抜けないぞ。人が一人増え,二人増えてもまだ抜けないぞ。」と人の数を自分のつくったかぶの大きさに重ね合わせて,嬉しい悲鳴?をひょっとしたら自慢しながらあげているのかもしれません。
 
 もし,「おじいさんは嬉しくない。抜けなかったら困る。」という意見ばかりになったら,
「じゃあ,すぐ抜けるようなかぶってどんなかぶかなあ。」
と問い返してみたいと思います。
解答例 「嬉しい。」
「嬉しくない。」

(できれば,この2つに分かれてほしいものです。そしてここからそれぞれの理由を言い合っていければいいなと思います。)