新しい友達 (5年)


発問1 (P.7)
「まりちゃんが帰ってきた。」
のは何月でしょう。
留意点 全体をよく読んでいるかどうかを確かめるために,こういう質問をすることがあります。案外こういう発問が子どもには受けます。
解答例 4月。(P.11に「来年の4月に帰るね。」と書いてあるから。)

発問2 (P.7)
「三日前」にまりちゃんのロンドン行きを知るのは早いでしょうか,遅いでしょうか。
留意点 「早い,遅い」等の判断を自分の感覚でするのではなく,あくまで「文章の分析」から行うという国語的な態度を育成していきたいものです。
解答例 遅い。(まりちゃんはひろに言ったら泣くと思って,ロンドン行きが決まってもずっと言えずにいたのだから。)

発問3 (P.7)
「ひろに言ったら,泣いちゃうって思った」
ここからどんなことが分かりますか。
留意点 「分かること」と聞かれて,いろいろな所から細かく深く読み取っていくような全体の意欲的な雰囲気をつくっていくのが,毎年の国語授業の大きな目標の一つです。そしてできれば,あるページを指定するだけで,その中で重要な箇所の「分かること」を自分たちで見つけ出していけるような感覚を身につけさせたいものです。
解答例 二人が親友であること。

まずはこういう答えが出されます。しかし,ここで終わっていては表面的な「言葉」の世界の理解にすぎないように思います。このままではこれからもこういう「単語」で反応する学習になってしまいそうです。そこで,ここでもう一歩頑張ります。

発問4 「親友」としての二人の様子をもっと詳しく思い描いてみましょう。
留意点 具体的な付き合い方を自分たちの生活から思い描きイメージをはっきりさせていきます。できるだけたくさんの考えられることを教科書の「泣いちゃうって思った」の言葉の横に書き込みをさせます。
なかなか書けないようだったら,例えばと例を挙げて最初の振りをつけます。そして,たくさん書いた子の教科書を提示し,「このように教科書が真っ黒になるぐらい書き込みをすることで国語の力がつきます。」と教師の求める一つの国語学習の形をはっきり示していきます。最初からあまり高度なことを要求しては重苦しい雰囲気がすぐに生まれてくるので簡単な場所で,書いてあることから書いてないことを見つけ出せるという経験を何回もさせていくことで段々要領が分かってくるものです。
解答例 二人はよく一緒に遊んでいた。
家が近い。
幼なじみ。
交換日記をしていた。
一緒に買い物に行っていた。
悩みをきいてもらっていた。
いろんな相談をしていた。
二人で写った写真が部屋に飾ってある。

発問5 (P.8)
「わたしも泣かなかった。」の「も」から分かるのはどんなことでしょう。
留意点 1文字から分かることがある。という発見をさせることで言葉の分析感覚を身につけさせたいと思います。
解答例 まりちゃんが泣かないから自分も泣かないということ。
ひろは自分とまりちゃんはすごく仲がよくて,何でも同じようにしてきているから,まりちゃんが泣かなかったら,自分も泣いてはいけないと思っている。
ひろはまりちゃんと同じようにすることでつながりを確かめたいと思っている。

発問6 (P.9)
「鼻のおくがつうんとした。」とはどういう意味でしょう。
留意点 子どもは分かっているようで,時々とんでもない解釈をしていることがあります。こういう表現でも分かる子には分かるが,分からない子には全くその感覚が伝わらないことがあります。
解答例 泣きそうになったということ。
別れる時がきたことが本当に感じられて胸がいっぱいになった。

発問7 (P.9)
「あったかくなってるよ。」から分かることを教科書に書き込みましょう。
留意点 感じたことを「書き込む」習慣をつけることは,その子にとってこれから先,能動的な読みをしていくための手段の一つになるはずです。
解答例 ずっとにぎっていた。
まりちゃんへのいろんな思いが球根をにぎりしめる力になっていた。
まりちゃんへの自分の思いを球根にこめていた。

発問8 (P.10)
「今度は,まりちゃんが球根をポケットの中でにぎりしめたまま」から分かることを自由にすぐ発表しましょう。
留意点 意見を持たせるためには「書き込み」は大きな助けになりますが,いつも「書いて発表」ではだるく感じる子もいます。また書いてからでは,つい書いたままを読むだけの抑揚のないセリフを棒読みしているような発表になってしまうことがあります。そしてつながりのある発言になりにくくなります。
解答例 ひろの気持ちを大切にしたい。
友達のしるしと思っている。
何かつながりのあるものをしっかり持っておきたい。
自分の気持ちを球根をにぎる手にこめている。

発問9 (P.10)
「さよならをした。」のはひろたちが何年生のときでしょう。
留意点 クラスの実態によって,いろんなレベルの子どもがいるものです。授業が雲を掴むような話し合いに感じているような子がいる場合や,退屈そうにしている子がいる場合は,それなりに発問の方をその子たちに歩み寄らせていくことも大切だと思います。何か,そういう子でもえっ?とつい考えてしまうような問いかけを見つけ出したいものです。
解答例 3年生のとき。(5年生の2年前にお別れ会をしているから。)

発問10 (P.10)
「教室がすうすうするような感じ」ってどんな感じでしょう。
留意点 さっと聞いて,さっと答えるようなリズムで流すことで逆についてくるような子もいます。「○○○」ってどんな感じ?,どういうこと?,まわりに何が見えている?等々テンポよくその世界に引き込んでいけると,イメージがひとつながりになって自然に主題にかかわるような深い読み取りが偶然できるような場面も生まれてきます。
解答例 まりちゃんがいるのが今まで当たり前に思っていたので,いないと変な感じがする。
頼れる友達がいない。
話し相手がいない。
心に穴があいたような感じ。

発問11 (P.11)
「その写真を,」の「その」は何を指しているでしょう。
留意点 指示語や主語,述語,修飾語等の確認は意識的に年間を通して行っていかないと確実に読み取れる力はつきにくいように思います。
解答例 黄色いクロッカスのはち植えを持ったまりちゃんの

発問12 (P.11)
「5年生からまたいっしょだよ。」の5年生学級は1クラスでしょうか,2クラス以上あるのでしょうか。
留意点 読めば分かる問題にひっかかる子もいます。理由もはっきり答えられた子はしっかりほめて次もまた読もうとする意欲を与えていきたいものです。
解答例 2クラス以上。(「クラスがえ」があるから。)

発問13 (P.11)
「本物のまりちゃん」とわざわざ「本物の」という言葉をつけるのはなぜでしょう。
留意点 表現の工夫を学ぶことで,自分の作文等にいかしていけるようにしていきたいものです。
解答例 今までは「手紙」や写真だけでまりちゃんとあっていたから。

発問14 (P.12)
「とつ然でおどろいた。・・・・」(2行目〜7行目)
を音読しましょう。
留意点 できれば一人ずつ全員に読ませます。するとたぶん「おどろいた。(↓)」と読む子と「おどろいた?」と聞くように読む子がいるはずです。そこでどちらの読み方が適しているか考え,はっきりとその理由を説明することを求めます。
解答例 「とつ然でおどろいた?」と聞くように読めること。
(その理由)
まりちゃんがひろに驚いたかと聞いているのだから。

発問15 (P.13)
「いつでも会えるさよなら」
とはどういう意味でしょう。
留意点
解答例 今までは遠くに居て会いたい時,会うことができなかった。
今は会いたい時に会える。

発問16 (P.13)
「−−−でも,まりちゃんならだいじょうぶよ。心配ないって。」
の「だいじょうぶよ」と同じ意味の言葉を同じページの文中の言葉を使って言い換えましょう。
留意点 語彙力が問われる問題です。
解答例 「とまどわないよ。」

発問17 (P.15)
「それでも,何か変な気持ちがしてしまう。」
のはなぜでしょう。
留意点 主題にかかわる部分です。それだけにここは少し難しく,体験の乏しい子には理解できにくい心情描写のように思います。人間の業なんだよ,なんて言ってみたい気もしますが,そんな言葉が通じる方がおかしいでしょうね。
解答例 2年前のひろの親友のまりちゃんと今のまりちゃんの様子が違っているから。
ひろには2年間ずっと「3年生までのまりちゃん」の思い出だけが心にあったから。
自分が今まで思っていたまりちゃんと変わっている気がしたから。

発問18 (P.15)
「それはすごくうれしいことなのに,すなおに喜ぶことができない自分に気づいて,わたしは,自分が少しいやになる。」
というところで,「うれしいこと」を「喜ぶことができない自分」がいやになるのは,ひろは喜びを表現するのがへただということですね。
留意点 いわゆる「揺さぶり発問」のつもりです。難しいところなので,うまく食いついてくれるかどうか実態によって変わってくるところだと思います。
この物語では,ここの葛藤場面が一番のクライマックスのように思います。ひろの複雑な心境を感じ取れたら,この教材はもう終わってもいいぐらいですが,何とこの話はこの後もう2転するんですよね。
解答例 自分だけのまりちゃんでいてほしいと,わがままな気持ちを持っているような気がしたからいやになった。
やきもちをやいているような気がしていやになった。

発問19 まりちゃんが帰ってきてから後,この話には大きな山場(話として大事な場所)が3カ所あります。例えば,「ひろがまりちゃんにクロッカスの球根を渡すところ」というような言い方で答えて下さい。
留意点 物語の構成を大きく読み取ろうとする経験をさせていきたいと思います。また分からなくても,そういう骨組みなんだよと教えていくことで次へのステップになると思います。
解答例 「ひろが自分を嫌になるところ」と「まりちゃんを新しい友達と思おうとするところ」と「まりちゃんの方もひろを前とちがうと思っていたことが分かるところ」

発問20 最後の場面でまりちゃんの言葉の中に大切な言葉があります。どの言葉だと思いますか。
留意点 何が大切と思うかは人によって違うものですが,主題を読み取るという学習では,その材料に似合った分析をすることができる力量をつけていかなくてはならないと思います。
解答例 あたしはあたしだし,ひろはひろでしょ。