マット運動(前転)をさせてみると,次のような様子が見られます。
- 頭の先をついた後,バタンと背中とおしりが板のように同時にマットにつく。
- 回転した後両足が前に伸びてすぐに立ち上がれない。
- 膝が割れる。
- 膝はついていても足をハの字に開いて立ち上がる。
- 手をついて立ち上がる。
- 横に倒れる。
- すごい速さで勢いをつけて回る。
等です。
これらの状況を短時間で修正していく方法もあるのでしょうが,一定の期間で成果をあげようとすると,1単位時間に集中して取り組むようになります。長い時間マット運動を繰り返すことはマット運動嫌いを助長したり,首や背骨を痛めることにもなりそうです。
そこで1年間続けて少しずつマット運動に取り組んでいくことにしました。とにかく少なくとも体育館で体育をする時は必ずマット運動の時間をとるのです。時間は約5分です。こういう方式を10年近く続けてきましたが,どの子もきれいな前転,後転等ができるようになります。中には太り気味で,腹がつかえて回転後おしりが決してマットから上がりそうになかった子もいつの間にかできるようになります。
別に特別なことはいっさいしません。強いてあげれば,「できていなくても,さっと切り上げる」ということでしょうか。
およそ次のようにします。
- マット運動は他の室内運動を十分行った後の,「身体の筋肉が柔らかくほぐれた状態」になってから行う。
- まず前転を重点的に繰り返し行う。
- どの子にも1回ずつ必ず評価をしていく。(私の場合は,児童2列,マット2つで一度に2人ずつまでが限度)
- 指導の重点
- 速く回れる子には,ゆっくり,きれいに,音を立てない回り方を求める。
- 足が開く子には,足を抱え込む回転を繰り返させる。
- バタンと倒れる子には,まず後頭部をさわらせ,そこをマットにつけるようなイメージをもたせる。
- 横に倒れる子,後ろに手をつく子には,ゆりかごの運動に戻り,それを繰り返させる。
- 目標は,最初から最後まで足が揃って,静かで,スムーズで,ゆっくりとしたきれいな回転。(ただの前転だったらすぐにできるでしょう。)
- うまくできていなくても5分以上時間をとらない。
- そのうちできるようになるという長い展望で,穏やかな気持ちで声かけをする。
- できれば声かけにユーモアを持たせる。(くにゃっとつぶれた時は「ぬいぐるみみたい。」 途中で止まってしまった時は「あれ,電池が切れたかな。」 足が伸びて立てない時は「足が長すぎるね。」 回転が速すぎてドンと音がする時は「そんなに急いでどこに行く?」)
- 前転が合格した子には,模範演技をしてもらったり,開脚前転,後転,開脚後転と進めていく。(開脚後転は後転より簡単ですが,まず後転で苦労させておくと,開脚後転を始めた時,その簡単さにびっくりします。その驚きを体験させたいと思います。)
- 他のマット運動は別に時間をとり,普通通り行う。
- とにかく必ず体育の時間にはマット運動を行う,というシンプルで息の長い意志を持つ。(週に3回前後1年間ずっとマット運動をしていれば必ずきれいにできるようになります。)
3学期の参観日には,今までの学習のまとめとして,音読,リコーダー,各種調べ学習のまとめの発表等を見てもらうこともあります。その中に教室にマットを持ち込んでのマット運動の発表を入れてみるというのはどうでしょうか。 |