1969年NHK・FMラジオ芸術劇場(土曜22.15~2300)
タイトル 原作・脚本 演出 出演 放送日
ギャロップ 1969・01・04
離婚届 田辺聖子 溝田繁、藤岡ひろ子 1969・01・11
銀閣 水尾比呂志 森雅之、杉村春子、寺田路恵 1969・01・18
老人と少女 1969・01・25
アルバートの橋 訳・潤色=中井多津夫 1969・02・01
リング 作=ヨアン・グリゴリス
潤色=福田善之
小山田宗徳 1969・02・08
かくれんぼ 作=ジャン・ミュノ、潤色=中江俊夫 鈴木瑞穂、草間靖子、天野鎮雄 1969・02・15
白い猫 作=マルヤ・リーサーバルチオ
潤色=伊藤海彦
1969・02・22
松本武久 1969・03・01
将軍と馬 宮本研 今福正雄(将雄)、柳川清 1969・03・08
あーあ、極楽鳥 佐藤竜太 若宮大祐、青柳ひで子、加藤武 1969・03・15
人工音声NO5
横光晃 下元勉、黒柳徹子、北村和夫、大山のぶ代、江守徹 1969・03・22
小泉源太郎 久米明、江角英明、北城真紀子、此島愛子 1969・03・29
ゆうぐれの歌 小田和生 下条正己、佐々木すみ江、寺田路恵 1969・04・05
ヘルンさん 郡山政宏 若林彰、木下秀雄、幸田弘子 1969・04・12
日暮れの街角 真船豊 渡辺富美子、高井章子、斉藤隆 1969・04・19
昔、子どもだったあなたに 矢代静一 小山田宗徳、伊藤幸子、前沢迪雄 1969・05・26
じゃがたら文異聞 1969・05・03
さるものは日々に 1969・05・10
梯子 津村節子 阪口美奈子、山本勝、芳川和子 1969・05・17
マイナス一番線 川崎洋 中尾彬 1969・05・24
野に消える 高井有一(芥川賞)の初書き下ろし 森雅之、植田譲 1969・05・31
時計 佐藤竜太 垂水悟郎、武岡淳一、降旗文子、北城真記子 1969・06・07
黄色い日曜日 別役実 下元勉、加藤土代子、加藤嘉、長岡輝子、串田和美、山谷初男 1969・06・14
曳航不能 原作=吉村昭、作=須藤出穂 加藤忠、佐々木愛、鈴木光枝 1969・06・21
斑鳩 水尾比呂志 柳川清、茂山千五郎 1969・06・28
送別会 田井洋子 南美江、七尾怜子、文野朋子、新村礼子 1969・07・05
彼と私の仮の宿 鶉野昭彦 高田次郎、中村成太郎、山田桂子、新間正次、天野有恒、北村英三 1969・07・12
残された影 尾崎甫 早川保、堀越節子、高井章子 1969・07・19
かづらきやま 安永稔和 芥川比呂志、溝田繁 1969・07・26
曲馬団 鎌田忠良 井上昭文 1969・08・02
夜の太鼓 原作=中村きい子「薩摩の女」
脚本=岸宏子
酒井光子、金田龍之介、 1969・08・09
のりかえ駅 飯島正 名古屋章、此島愛子 1969・08・16
夏の雛 人見嘉久彦 江守徹、寺田路恵、河東けい 1969・08・23
黙示録 寺山修司 林隆三、佐藤耀子、鈴木光枝 1969・08・30
ささやき 木村嘉長 松村彦次郎、八木光生、阿村久子 1969・09・06
おやじ 高橋昇之助 巌金四郎、市原清彦 1969・09・13
またいらっしゃい 岸宏子 柳有、天野有恒、中村加奈子、 1969・09・20
老夫婦と耳 真船豊 下條正己、小夜福子 1969・09・27
雪は天からの手紙 1969・10・04
そこにミイラがあった 1969・10・11
釣り船 石堂淑朗 鈴木伸也、竹内和子、上田修 1969・10・18
北の祭り 山田隆之 寺田農、志村喬、藤原鎌足、桑山正一 1969・10・25
安土往還記 原作=辻邦生
脚色=水尾比呂志
森雅之、小山田宗徳、名古屋章 1969・11・01
津軽砂山 ふじたあさや 若山弦蔵、芳川和子、小野泰次郎、諸石茂 1969・11・08
幻の畳 田中千禾夫 鎌田吉三郎、高部滋子、天野有恒 1969・11・15
四国山脈 中沢昭二 仲谷昇、伊藤幸子 1969・11・22
湖への道 1969・11・29
兵隊養子 1969・12・06
赤い牛乳びん 嶋岡晨 木下清、内田稔、阿部寿美子、伊藤牧子 1969・12・13
釣巡礼 茂木草介 下条正己、溝田繁、中畑道子、西田勲子、露口茂 1969・12・20
人形 セシル・ベーカー 伊藤幸子、名古屋章、北城真記子 1969・12・27
離婚届

大阪生まれの夫、名古屋生まれの妻、子供のないのが唯一の不満といった平穏な夫婦。ある日、ちょっとしたことで諍いになり、離婚にまで発展していく夫婦を冷ややかに。
銀閣

応仁の乱の後、銀閣の一応の落成を見た夜のこと。憎みあう足利義政と妻・富子が久々に対面する。二人の間に隠れ潜む愛憎を、金閣、銀閣の美と対比させながら、義政の若い側室・山科慶子の目を通して描く。

アルバートの橋

海外ラジオドラマ特集。英BBC制作。文明批判を根底に、現代人の孤独を。

リング

ボクサーA103はゲバウワーと対戦することになった。しかし、どこかで見たような気がする。リングの上のボクサーの意識を通して戦争の傷跡を描く。ルーマニア放送制作。

かくれんぼ

ベルギー放送制作。幸福な過程、破綻のない人生がふとしたきっかけで崩れていく。夢と現実を織り込みながら、詩情豊かに人間の心のひだを描く。

白い猫

フィンランド放送制作。俗物の夫、過去の夢ばかりを追いかける妻。妻は夫に、愛情に満ちた幸せな時間があったことを思い出させようとするが……。

将軍と馬

乃木将軍の愛馬コトブキの独白を通して、「生きるも形、死ぬも形」を軍人の信条とした乃木の姿を描く。ロシアの将軍の愛馬だったコトブキ、彼は敗者と勝者のありのままの姿を知っていた。そんなコトブキにとって、乃木の人気は不思議だった。

あーあ、極楽鳥

南(めい)の島に浮かぶ、架空の緑の島の極楽鳥をめぐって次々と引き起こされる人間たちの悲喜劇。欲にかられた人間と島の純朴な人々を対比させながら、高度文明社会を皮肉る。

人工音声NO5

コンピューターの音声言語が普及すると我々の生活はどうなるのか。未来社会をコミカルに風刺。貧乏科学者・佐伯は中古のコンピューターを使っている。ある日、懸賞金1億円のかかった泥棒3人組をNO5に協力して捕まえようとする。



厳しい鎖国政策をとっていた江戸時代中期。御蔵島でアメリカの貨物船が難破する。幕府のおふれに怯えながらも、遭難した船員たちを助けようとする島人たち。

ゆうぐれの歌

都会の喧騒から逃れて田舎町に引っ越してきた初老の大学講師一家。しかし、都会の生活に親しんだ子供は反発。しかも田舎といえども隣人との付き合いが煩わしく……。

ヘルンさん
ラフカディオ・ハーンが旧松江藩の武士の娘・小泉セツと結婚し日本に帰化したいきさつはナゾにつつまれている。ハーンの松江中学時代の教頭・西田千太郎の日記をもとに、このナゾに迫る。

日暮れの街角

学校からの知らせで、娘が登校していなかったことを知った母親。行き先を調べると、娘は別れた夫と会っていた。いやいやながらも元夫婦が再会する。別れた父親を慕う12歳の娘の心と夫婦の葛藤。

昔、子どもだったあなたに

学生だったボクは劇場の踊り子だった少女と焼け跡の闇市で知り合い、結ばれるが……。終戦直後の混乱期から現在まで、一人の男を愛し続けた女の姿を寓話風に描く。

梯子

悲しい恋の果てに心中を図り、相手は死亡。自分は生き残ってしまい、佐渡に旅する女の心象風景を、佐渡金山の男と遊女の悲しい伝説を織り交ぜながら描く。

マイナス一番線

万博を前にホームの増設工事、仮称「マイナス一番線」が進行中の大阪。薄緑色の壁に囲まれるオートメーション工場での仕事が耐えられなくなった男に、そのマイナス一番線が誘いかけてくる。

野に消える

晩年を迎えようとしている父親と、息子の会話を通して、親子、夫婦、友人などさまざまな人のふれあいの中で、人間にとっての支えとは何かを描く。

時計

30歳も半ばを過ぎた青年が、時計の想い出にまつわる少年時代を追想する。

黄色い日曜日

狭い穴の中でとりとめもないオシャベリを続ける夫婦、日課の散歩をただ繰り返すだけの老夫婦、自分の思い出を掘り起こすことに専念する男たち。ある日曜日を背景に、この3組の日常を不条理な笑いとともに描く。

曳航不能

一等水兵の佐々木倉吉は昭和11年、北太平洋の演習中に大波にさらわれて意識を失う。吉村昭「艦首切断流出せり」から奇跡的生還をした水兵のエピソードを。

斑鳩

古代。皇位継承をめぐって、専制権力者・蘇我氏と上宮王家の争いを素材にしたもの。蘇我入鹿の暴挙に対し、聖徳太子の教えに殉じて命を絶った山背大兄王の悲劇を、その決意するまでの葛藤を。

送別会

女学校時代の旧友4人が、外国に旅立つ友人の見送りのために集まる。50代、子供も独立し、生活に余裕が出てきた彼女たちのとりとめもないおしゃべりが始まる。

彼と私の仮の宿

生活に疲れた35歳のサラリーマン。会社では上司に不満を抱き、家では母と妻の諍いに巻き込まれる。彼の心の中には次第にもう一人の自分が生まれる。

残された影

夏山で遭難した画家を待つ家族。その生存は絶望視されていたが、母は嫁に対し、息子が家にいるような気がしないのはあなたが息子を愛していないからだと非難する。互いに愛の奪い合いを繰り返す嫁と姑。しかし、そこに発見の知らせが……。

かづらきやま

一人の男が、人里はなれたかづらき山の奥深くで倒れていた。気がつくと自分が誰なのかわからない。頭の中では戦場を逃げ惑う村人の声が渦巻く。やがて、自分の後ろにもう一人の男が倒れている気配がするが、体を動かすことができない。見知らぬ男二人の会話が始まる。奈良時代の歌人・柿本人麻呂のミステリアスな生涯を。

曲馬団

明治維新前の安政年間にイギリスに渡り、「トリカタサーカス」を作り、欧米で人気を博した知られざる日本人サーカス王・鳥潟小三吉の生涯を描く。小三吉は郷里の秋田を飛び出し、大阪で曲芸師をしていた。ある日、誘われるままイギリスに渡る。しかしそれは曲芸師としてではなく、檻に入れられた日本人の見世物としてだった。

夜の太鼓

貧農に嫁いだ娘は借金返済のため、馬車馬のように働くが、夫はそれを不思議そうに見ていた。数年後、肺結核になり、郷里に戻るが、夫は一度も見舞いに来なかった。おばばは夜ごと太鼓を打ち鳴らす。それは亡き夫の心が生涯わからなかったため、太鼓にのせて問いかけているのだ。

のりかえ駅

ある男が10年ぶりに故郷に帰ろうとする。ローカル線の乗換駅で見知らぬ人からカバンを預かる。しかし、村に着くと家は一軒もなく、誰もいない。一方、同じ乗換駅にいた女は5年前に別れた夫に会いに来た。しかし、村は大きな町に変わっており、夫も、知人もいない。過去や想い出が持つ美しさと空しさを幻想的に描く。

夏の雛

瀬戸内海のある町に伝わる夏のひな祭りを卒論のために訪れた学生。その由来はどこから来ているのか。長い間、虐げられ、戦争の傷跡を秘めたこの祭りを機に脱皮していく女たち。

黙示録

親から離れ、たった一人で歩かなければならない年齢にさしかかった少年の心の奥底に潜む地獄。世の中に背を向け、僧になろうと思いつめている少年。彼の心の地獄とは……。

ささやき

何不自由ない生活にイヤ気がさして家出した社長、心中した若い男女、公金を使い込んで死んだ男。彼らの頑なな心もあたたかい老刑事の言葉で次第にほぐされ……。死者のささやきと刑事の心の声でつづる詩劇。

おやじ

台風の余波が残る信州の国道で、くたびれた老人がトラックに便乗する。運転手は26歳の若者。老人は戦時中の部下を頼って仕事を探しに着たが、その部下は死んでいた。青年は家出した時に持ち出した金を父に返すために帰郷したが父は出稼ぎに出ていた。老人と青年の会話を通して、世代の断絶が浮き彫りにされる。

またいらっしゃい

定年の翌日から、毎日会社に顔を出す元同僚。しかし、それが続くと、誰もが彼を疎ましく思い始める。「もう来ないで」とはっきりと拒絶する役割を年配の女性社員が引き受ける。

老夫婦と耳

東京のある秋の夕、耳の遠くなった老夫婦が家の食堂で静かに向かい合っている。夫は作家。ふとしたはずみで妻の耳を叩いた夫はそれが原因で妻の耳鳴りが始まったと思い、それを深く恥じて自分の鼓膜も破ってしまう。老夫婦の日常の機微を描いた真船豊の名作。

釣り船

のどかだった瀬戸内海は工事のために廃液が流れ込み、沿岸には工場が立ち並ぶ。汚れた海の波間に釣り糸をたらす老漁師。一本釣りにかけた漁師の孤独と執念をドキュメントタッチで。

北の祭り

都会暮らしに疲れ、故郷の三陸に帰った青年が、漁師になろうと決心し、厳しい自然と対決しながら、「祭り=生の燃焼」に賭ける。死者と生者の交信をステレオ効果音を駆使し詩的に描く。

安土往還記

16世紀に日本に渡ってきたオランダ人航海冒険家の目に映った日本を異端の権力者・織田信長への共感を込めて描く。

津軽砂山

15歳で失明し、北海道への流浪の旅に出る男。津軽三味線の名手・高橋竹山をモデルに、日本の伝統芸能の本来の姿と継承について描く。

幻の畳

平家の落人伝説を秘めた山深い村を舞台に、都会から来た若い男女と村人たちの奇妙な交流を通し、歴史とは何か、文化とは何かを問う。

四国山脈

心の中に居座り続ける女。その女と今度こそ別れられるに違いない……。大学教授の地位を捨て、四国山脈の石鎚の行者になることで邪念を振りきろうとする男の回想。

兵隊養子

徴兵令が出た明治初期、国民は徴兵を「血税」と呼んで、一揆が起きるほど混乱した。徴兵を逃れるには270円の免除料を納めるか、戸主や跡取り息子になるかしなければならなかった。そのため兵隊養子と呼ばれる養子縁組が盛んに行われた。こうした時代を背景に、なんとか徴兵から逃れようとする気の弱い豆腐屋の二男の短い生涯をユーモアとペーソスを交えて描く。

赤い牛乳びん

物質文明の急激な進展と、それを受け入れる人間たちの世代間の断絶を調査するために、ある一家に入り込んだ人造人間。しかし、その家の家長が自殺。警察では他殺の疑いがあるとして、息子、母、女中を調べる。それぞれに動機があり……。

釣巡礼

関西のある山を舞台に、世をすねた青年と、彼をめぐるさまざまな人々の対話を通して、人間の心に宿る「神」のような真実を描く。

人形

結婚して4年になるのに、子宝に恵まれない夫婦。妻はノイローゼ気味で、訪ねてきた母に当り散らしたり、近所の子供を可愛がる夫に嫉妬したりする。1週間後、なぜか上機嫌の妻は、夫に本物ソックリの赤ちゃんの人形を見せる。代用品ブームを風刺したデンマークの作品。