11月30日(日)曇り時々雨

 11.00、娘と2人で新宿へ。初台・オペラシティホールで16歳のロシアの天才ピアニスト、スタニスラフ・ジェヴィツキのコンサートがあるため。

 その前に、高校の演奏会で使うブラウスを探して、伊勢丹、丸井、三越を回るが、白・襟なしというのはどこも置いてない。昨日は地元の主要なデパートを回って、ついに見つからなかったとか。たかがブラウス一枚でこんなに苦労するとは。

 2.00、デパート巡りに時間を散られて、開演ぎりぎりの入場。
 クラシックピアノコンサートというのは初めての体験。満席のホール。外の世界を隔てたゆったりとした時間が流れる。
 しかし、静まりかえったホールに時々、客の咳払いが響き渡る。風邪がはやっているためか。美輪明宏さんは「風邪をひいて咳が出る人は家に居てください。みんなの迷惑になりますから」と自分のコンサートで辛辣に言うが、確かに、コンサート会場、それもクラシックピアノのホールでは、客の咳は予想以上に響く。演奏者も気になるだろう。
 4.00終演。
 外に出るともう町は黄昏色。どこにも寄らずに家路に。
下車駅で、「プリクラとろうよ」と言われ、娘の後についていくと、なんとプリクラの機械が10数台も並ぶプリクラルームに行き着く。まるでカラオケルームの空き順番を待つように大勢が並んでいる。まさか今でもプリクラがこんなに隆盛をきわめているとは思いもよらず、マジびっくり。
 6.30、帰宅即夕食。

 日本のロケットH2A打ち上げ失敗。初歩的なミスというが、それに関連してある評論家が「この前、成功した中国の有人ロケットとは燃料システムが違う。早晩、中国もエンジン開発で苦労するだろう」と、言わずもがなのコメント。日本のロケット打ち上げ失敗の弁護をするために、よその国への見当違いのコメントをする。偏狭なる精神……。

 イラク、ティクリート付近で日本人外交官2人が殺害。アラブ社会に、「対米追従の日本」の印象を植え付けるに十分な事件。これで、日本は完全なアラブの敵になる。「それでもテロに屈しない」というコイズミのノーテンキさ。イラクにとってはテロではなく戦争の継続にほかならないだろう。営々と築き上げてきた、アラブ社会での日本の友好関係を完膚なきまでに壊す外交破壊者・コイズミ。

11月29日(土)雨

 朝から咳が出るので、予定をキャンセル。
 風邪薬を飲んで会社で一日中仕事。劇団Y・Hからレビューの依頼。女優の一条さゆりさんから、新刊「ハダカのゴタキスト」を出したというお知らせ。文筆家としても一流の一条さん。読むのが楽しみ。
 「風邪気味」も夕方になったら、気分爽快。

 会社帰りに映画を一本。貧乏性。何か見ないと時間がもったいないと思ってしまう。ニュー東宝シネマ2で「アイディンティティー」。暴風雨の夜、モーテルに立ち寄った10人の男女が次々と殺されていくというサスペンス。最初に「結末は教えないで下さい」との字幕。まるで、「シックスセンス」みたい、と思ったら、やはり……。最初から結末が読めてしまうところがつまらない。

 しかし、見終わって劇場を出たら、エスカレーターに乗った老年の二人連れが「なんだか意味がわからなかったですね。ごめんなさいね、こんな映画に誘ってしまって」と話している。若いカップルも、「よくわかんなかったー」。

 そういえば、この前のテアトルエコー「ドアをあけたら……」を見た老年の某評論家氏や某支配人が「何がどうなってるのか、全然わからなかったですよ」と関係者にささやいていたとか。芝居の場合は時空の往還があるので、混乱するのかもしれないけど、映画は誰にでもわかるエンターテインメント。こういう映画を「わからない」といわれては配給会社も困るだろう。

 7.30帰宅。
 27日に関西電力、中部電力、北陸電力3社が共同で石川県珠洲市に建設する予定の珠洲原発計画を断念する方針と発表。いよいよ電力会社もコストの高い原発建設を見直す機運が出てきたか。もっとも、コストは国民に押し付ければいいことだから、今の原発推進の流れは変わらないだろうけど。
 ところで、日本の原発が集中する地域には共通の、ある事柄がある。ざっと調べてみたが、以下の通り。


珠洲原発(関電・中電・北陸電)=石川県・加賀藩。加賀藩主・前田慶寧(よしやす)は薩長迎撃のために進軍していたが、徳川方敗走の報に、あわててて、進軍兵を呼び戻し、朝廷方に尽くすと表明した。反・薩長。その後寝返り派。

島根原発(中国電力)=松江藩。戊辰戦争の時に幕府側についていた。朝敵藩。
福島原発(東京電力)=会津藩。言わずと知れた幕府側最大の親藩。
伊方原発(四国電力)=愛媛(今治藩)。親藩松平家の城下町。鳥羽伏見の戦役にも幕府軍として出兵した。

福井原発、敦賀原発(関西電力)=福井藩。徳川一門であり、幕府側の主力藩。

浜岡原発(中部電力)静岡県。駿河藩(静岡藩)。幕府側。

柏崎・刈羽(東京電力)=新潟・新発田藩、長岡藩。奥羽越・諸藩同盟を結成した幕府側の盟主藩。
女川原発(東北電力)=宮城県・仙台藩。12代将軍家慶から一字を賜った第13代仙台藩主慶邦は東北最大の幕府支援の雄藩の藩主。奥羽越列藩同盟の総督。

 以上のように、原発が立地する地域は押しなべて明治維新の「反・薩長藩」。

 青森県に至ってはこれが露骨。原燃・核再処理施設計画が集中する下北半島は旧南部藩。奥羽越列藩同盟。一方、いちはやく新政府に恭順の意を示した津軽藩(青森・津軽地方)に原発のゲの字もない。日本は今にいたるも「明治維新」を引きずっているという証左。
 最後まで薩長に抵抗した南部藩や会津からの移封藩「斗南藩」を抱える下北はいまだに「薩長・明治新政府」から見下されているといえる。
 ウソだと思うなら、今の小泉内閣の閣僚の出身地を調べてみればいい。小泉内閣は「薩長内閣」だとわかるから。
 ……日本はいまだに、明治維新の呪縛から解き放たれていない。 
11月28日(金)晴れ

 [知人]のボーナス日。とはいっても、早い時期から年俸制を採用している彼の社は自分で年間の配分の割り振りをしているのでボーナスというよりも、年間の分割金感覚。いくら出るかというのは織り込み済み。

 ところが、今年から社会保険、厚生年金などが総報酬制になったため、いわゆるボーナスから差し引かれる税額が半端じゃなく増えた。給与明細書を開いたとたん、あちこちから悲鳴が上がったとか。住民税、所得税を含めると2割から3割の税金が差し引かれたわけで、みんな真っ青。例えば普通の会社で3か月分ボーナスが出たとしたら1カ月分が税金で持っていかれたということ。ひどい話だ。勤労意欲をなくすのも無理はない。この上、コイズミ首相は住民税の引き上げを検討していると朝刊各紙。働けど働けど楽にならないわけだ。年収の2割から3割が税金で持っていかれて、買い物をすれば消費税。もしかしたら年収の半分が税金で消えるのではないか。アホらしい。政治家は私腹を肥やし庶民に痛みを押し付けるだけ。暴動が起きないのがおかしい。

 PM7、住吉。「ティアラこうとう」で有里知花のライブ。キャパ120人ほどのこじんまりとしたホール。初のワンマンライブということで、感激しきりの知花。客層も年配から若年層までまんべんなく網羅し、落ち着いた中にも熱気のある好ライブ。高野寛らがゲスト。知花のフラの先生のフラダンスに合わせて歌うシーンが印象的。フラといっても、さまざま。舞踏のようなゆったりとした動きのフラ。フラも奥が深い。
 9.05終演。
 10.00帰宅。
11月27日(木)晴れ

 ここ毎朝、駅に行く途中で決まって一匹の犬とすれ違う。ゴールデンリトリバーのような犬。とぼとぼと足を引きずりながら、うつむきかげんで歩いてくる。 なんだか悲しそうな目。同じ時間に同じ場所ですれ違う人と犬。まだ暗い朝の路上。どこに行くのだろうか。なんとなく心にひっかかる。

 PM5.30帰宅。ヤマト運輸が荷物を引き取りに来る予定なので、早めに帰ったのに、待てど暮らせど現われず。結局9.15。約束を1時間以上オーバー。

 今日は10数年前の「トルコ嬢モモ子シリーズ サザエロード」をダビング。竹下景子の人気シリーズ。ほりかわとんこう演出が冴える一編。
 
 来週にも自衛隊のイラク派遣を閣議決定とか。
 で、イラクに自衛隊が行って何をするかといえば、自分たちの安全を確保するために陣地を作って、その中に閉じこもることという。イラクでは安全な場所などないから、自分たちで安全な場所を作る。なるほど理にかなっている。でも、これでは何のためにイラクに行くのか意味不明。イラク復興支援のためではなかったの? イラクに行ってタコツボに閉じこもるのでは、何のための派兵なのか。兵站を作るだけのイラク行きなら初めから行かないほうが税金の節約になる。意味があるとしたら、「行った」という、米国に対するアリバイだけ。ほとんど悪い冗談としか思えない。こんな詭弁が通用するんだから、国民もなめられたもの。自衛隊派遣で日本がイラク・イスラムに憎まれる方がよほど国益を害する。「売国奴」という言葉を使うなら、コイズミこそ稀代の「売国奴」だろう。

11月26日(水)晴れ
 
 午後から銀行、郵便局回り。DVDにダビングするため、古いテープを見ていると、NHK「若い広場」で山際淳司が司会。学生時代の室井滋が一般女子大生として出演している。野坂昭如は住井すゑと、五木寛之は原田美枝子と対談。11PMでは大橋巨泉が日本の韓国侵略の歴史を特集している。11PMも硬派だった。そしてまだみんな若い。
 夕方、昨日の日記をつけていたら途中でパソコンがフリーズ。書いた原稿がパー。

 劇団BのOさんから、電話。劇評の件。

11月25日(火)雨

 PM5、新宿。シネマ2で「フォーンブース」。予告編倒れの映画が多い中、これは予告編以上のできばえ。

 電話の相手が画面の片隅に出る冒頭の映像処理がうるさく感じたが、主人公がブースに入ってからはまさに息をもつかせぬ展開。「なぜ、電話ボックスから出られないのか」という疑問にも明快な理由を提示する脚本に驚嘆。緊密な演出。

 傲慢で軽薄、一流のパブリシスト(広告マン)と自称するスチュを演じるコリン・ファレルの演技がまたいい。彼を標的にした理由というのも誰しも身におぼえのある別な意味での恐怖。こんなにピーンと張り詰めた客席は久しぶり。ラストはいかにもアメリカ映画的で、ちょっと……だが。

 映画館を出て、南口に移動。回転寿司で腹ごしらえ。PM7、紀伊國屋サザンシアターでひょうご舞台芸術「ニュルンベルク裁判」。

 文句なしに今年のベスト作品。見事なセリフ劇、演技。俳優という存在がこれほどすばらしいものだとは。ことに、2幕目、沈黙を破って被告エルンスト・ヤングが発言するシーンの鈴木瑞穂の演技には身震いするほどの感動をおぼえる。いや、本当に電流が走ったように、体に震えがきたのだ。こんな経験は絶えてなかった。

 物語の舞台はドイツ、ニュルンベルク。1945年から始まった国際軍事裁判と並行して、46年から米軍政府の下、ニュルンベルク裁判と呼ばれるナチス・エリート総体への裁判が行われていた。舞台はそのニュルンベルク裁判の第三の裁判「法律家裁判」をモチーフにしたもの。
 被告はワイマール共和国で法務大臣も務めた高潔で高名な裁判官エルンスト・ヤニング。裁くのは米国の地方裁判官たち。裁判長はテキサス出身の共和党支持者、ヘイウッド判事。
 しかし、ヤニングは一切の証言を拒否し、口をつぐむ。代わって、若い弁護士が、ヤニングの代理人としてきわめて論理的で説得力ある弁論を展開する。
 対する検事は米軍のパーカー大佐。ナチス政権下で犯した法律家の罪を厳しく追及する。
 
 
 とこの後、2時間以上かけて3000字あまりの日記を記したら、突然パソコンが固まって、強制終了。再起動したら、ここまでしかデータが記憶されていない。
 がく然。舞台「ニュルンベルク裁判」の素晴らしさを詳述したのに。悔しいやら腹が立つやら。前にも映画「レボルーション6」の感想を書いてる途中でフリーズした経験がある。意気込んで何時間もかけて書いたときに限ってこんなことが……。

11月24日(月)晴れ

 正午、子供が行きたいと言うので、映画館へ。「木更津キャッツアイ」。しかし、上映前にすでに長蛇の列。立見になるというので、仕方なしにしばらくゲームセンターにつきあってから帰宅。

 古いテープをダビング。エジェクションが効かないので、蓋を開けてテープを出し入れ。
 20年前のテープは何が出てくるかわからない。藤竜也と大原麗子の「偽装結婚」というドラマが録画されてる。あまり記憶にない。「過去へ旅した女」、これは「ある日どこかで」と並ぶタイムスリップものの名作。ようやく見られる日が来た。

 ワイドショーの放送した「特集・天井桟敷解散」(この時代は寺山修司と天井桟敷がワイドショーできちんと取り上げられていたのだ!)、石川セリが初めて「夜のヒットスタジオ」に登場した回など、今から思えば「お宝映像」ばかり。

 とりあえずHDDに取り込んで、今度の休みにきっちりDVDに保存しよう。
 PM3、喫茶店に行って原稿書き。帰宅して、DVDのラベル作り。この趣味的時間がなんともいえずに楽しい。一日が48時間あれば……。
11月23日(日)晴れ

 10.30起床。
 このところまったく時間がなく、HPを更新しようと思うが、家族サービスで、自分の自由になるのは細切れの時間。

 その時間を縫ってビデオ「李君の明日」をDVDに焼く。
 1990年5月3日放送のNHK作品。たぶん再放送することはなかったドラマだ。自分でも放送当時に見て以来。ダビングしながらつい見入ってしまう。

 当時、梁山泊の石井ひとみ、朱源実、六平直政らが出演している。高橋かおりが帰国子女の役。まだ中学生か。

 鶉野昭彦氏の著書「星の溜息」の中で、妻の女優・新屋英子が出演したドラマとして出てくる。「在日問題を扱った”李君の明日”でさえ、企画が通るまでに8年もかかった」とのくだり。鶉野氏が1969年に作ったドラマ「真夜中のぶるうす」は市井の名もなき人々の怒りと哄笑を描いたドラマだが、芸術祭優秀賞を受賞したにも関わらず、再放送は教育テレビの午後3時からの放送だった。作品のテーマが反権力的だとのNHK上層部の判断があったらしい。

 「反権力?反社会的?結構ではないか。作家・伊藤整は確か”小説の作法”の中で、芸術の創造は自分を取り巻く秩序を打ち破ろうとするエネルギーであるという意味のことを書いていたが、物書きはすべて反権力・反社会的であるべきではないのか」
 こう怒りをぶつける鶉野昭彦氏。

 しかし、放送を取り巻く自主規制の流れはこの1990年の「李君の明日」よりもさらに過酷となり、実質的に1995年を境に、差別や在日問題、社会問題を扱ったドラマは消滅し、毒にも薬にもならないトレンディードラマが主流になっていく。

 視聴者層が若者だから、それにターゲットを当てて、というのはテレビ局の言い訳だろう。若者はハードなドラマを好まないというのは偏見に過ぎない。要は、社会的なドラマ、反権力的なドラマを国民に「見せたくない人たち」の意向が働いているだけのこと。

 小学生の時に見た「七人の刑事」の最終回を今でも思い出すことが出来る。確か「地上300メートルの死刑台」というタイトルだった。ハイジャックした学生活動家と乗客の緊迫した人間模様を描いたもので、犯人役は石橋蓮司。学生の言う革命の論理、偶然乗り合わせた刑事の説得。乗客も妊婦、親の死に目に駆けつけるサラリーマン……。さまざまな人間ドラマに小学生でも感動したものだ。いいドラマであれば、年代性別に関わりなく、面白いと思うもの。

 それを、今のテレビドラマは画一的な愚にもつかない恋愛ドラマばかり。社会的な弱者の抱える問題はなくなったのではなく、今も差別は拡大しているというのに。
 差別も抑圧もないものとしてごまかし続けるテレビ局にジャーナリズムの誇りはあるのだろうか。少なくとも、自分が子供の頃のテレビはまだ矜持があったし、だからこそテレビは活況があり、面白かった。
 
 さて、「李君の明日」。「考証・協力」に中尾幸世さんの名前がクレジット。はて、どんな関わりがあるのだろうか。

 午後、オークションで落としたビデオデッキが到着したので、さっそく古いテープをダビング。と思ったら、エジェクトがいかれている。仕方なく、外蓋を開けて、取り出すも、不良品にショック。オークションにはこんなリスクがあるのか……。
 
 10時過ぎまで、細切れの自分の時間。せっかくの休みもなんだかなぁの一日。
11月22日(土)晴れ

 仕事を終えて、PM2.30、下北沢へ。佐藤正隆事務所「アザー・ピープル」。2000年に初演された、クリストファー・シンの戯曲。現代NYで暮らす人々の孤独と混沌を新鮮な切り口でリアルに描いている。元俳優で劇作家志望の若者(佐藤隆文)、詩人でストリッパー(古田耕子)、ホモセクシャルで敬虔なクリスチャンの映画監督(瑞木健太郎)、風俗嬢にカネを払い、自分の話を聞いてもらう金融資本家(小長谷勝彦)、町のホモ・ジャンキー(田鹿幸太郎)など、愛に飢えた人々の人間模様が、リアルな会話で立ち上がる。いずれも無名に近い俳優たち。しかし、その新鮮さ・迫真性はどんな高名な俳優も及ばない力強さに満ち溢れている。「翻訳劇」という言葉には違和感がある、という演出家の言葉通り、普遍性のある戯曲は国境を軽々と超える。

 それにしても、会話のリアリティー。「ここにはボブ・ディランしかないの?」「ヴァン・ヘイレンもあるけど」
「タランティーノは幼児の頃、人に愛されなかったのね」
 50代の金融資本家のマンションを訪れたストリッパーの会話。

 この詩人でストリッパーという難役を演じた古田耕子が実にうまい。エロティックでなおかつインテリジェンスを感じさせる女性。男優陣もいずれ劣らぬ演技巧者。佐藤隆文は神経症的な現代の若者を演じさせたらピカイチ。しかし、前作「エイジ・オブ・コンセント」の若者の演技と似たような役作りなのが気にかかった。舌をなめるクセは直ったようだが、時おり、そのクセが出そうになり、抑えている様子がわかる。ホモセクシャルということで、俳優が全裸になり、2人の絡みもあるが、清新でイヤ味はない。

 休憩10分を挟み、2時間40分。かつてない濃密な時間。

 帰り、駅まで青年座のプロデューサーM氏と話しながら。青年座は「カゾクカレンダー」の稽古中。動員が悩みの種とか。

 5.30。新宿で下車し、時間をつぶそうかと思ったが、気が変わり、高円寺へ。夕食を済ませ、中古レコード店「レア」へ。次に立ち寄った古本屋で偶然、敬愛する元読売新聞記者・北川登園氏の「すくらっぷ館」を見つける。なんという不思議なめぐり合わせ。1977年刊の本。このサイト名をつけるとき、最初は「すくらっぷ館」と考えたのだが、ネットで検索したら、北川氏の著書名が同じだと知って、「造語」にした経緯がある。800円。さっそく購入。北川氏が新聞やパンフレットに書いた文章をまとめたもの。読むと、北川氏の最初の寺山修司演劇の出会いは「反発」から始まったということがわかる。「市街劇ノック」を「一般市民を犠牲にする権利はない」「壮大な失敗作」と決め付けている。
 しかし、その後、寺山演劇への支持者として寺山に傾倒していく様子が著書からよくわかる。
 寺山修司と縁の深い阿佐ヶ谷=高円寺の本屋で見つけたというのも不思議な縁。

 PM7、東中野の梁山泊アトリエ「芝居砦・満天星」で若手公演「楽屋」。5年程前に、スズナリで梶村、三浦、近藤、渡会らで上演して以来。これが非常にいい舞台に仕上がった。若手とはいっても全員27歳だが、本公演では端役の彼女たちが生き生きと「楽屋」の亡霊を演じている。池田実香、岩村和子、沖中咲子、そして草野小夜架。

 清水邦夫の名作はすぐれた女優論、演劇論と思っていたが、これはもう一つの「ゴドー待ち」ではないかと思えてくる。いまだ訪れぬ変革を待つ人々。そう思えば、劇中のBGMで「ワルシャワ労働歌」が流れるのもうなずける。
 原作にはないプロンプター役の女の子がダブルキャストで出ているとのことで、今日は任里英(イム・リエ)。重苦しい雰囲気が彼女の登場でフッとなごむ。その天然の演技におもわず口元がほころんでしまう。構えない自然体の演技。この子は伸びる。後で小檜山、金両氏が彼女を紹介してくれたが、素直ないい子。

 終演後、飲み会。山口昌男、梁石日氏が乾杯の挨拶。
 近藤弐吉、伸子、結宥花、渡会、秋元、小檜山さんらと11時まで。金ちゃんは「○○さん、昔と全然変わらないよね」と言うが、変わらず若いのは金守珍の方。来年は唐十郎の脚本で映画を撮るという。エネルギッシュ。伸子さんたちも1月5日スタートの昼帯ドラマでレギュラー・ゲスト出演が決まり、今撮影中という。唐さんのマネージメントもクルージングが担当。梁山泊の経済的基盤が固まるのはいいこと。今日は終電に間に合うようにと、11時、小檜山さんと一緒に駅まで。宴会はまだまだ続く様子。
 新宿で小檜山さんと別れ、山手線で上野。なんとか終電に滑り込み。

11月21日(金)晴れ

 PM6、三軒茶屋。定食屋「はとぽっぽ」でさば焼き定食+目玉焼き。

 7.00。トラムで現代能楽集「AOI/KOMACHI」。川村毅の作・演出。「AOI」は光源氏を現代のカリスマ美容師(長谷川博巳)に設定、葵上はリングの貞子のような、長い黒髪の美少女(森ほさち)。ゴージャスマダム(六条御息所)は麻実れい。助手が蟹江一平。鋼板を折り曲げたようにホリゾントまで、立ち上がった真っ白な舞台。そこに投影されるスライド、動画。美術がユニーク。

 「卒都婆小町」はさびれた映画館に迷い込んだ男(手塚とおる)が、執事(福士惠二)と往年の大女優の妄想の中に取り込まれる物語。戦前戦後を生きた大女優役に舞踏の笠井叡。言葉を発することなく、ドレス姿で飛び跳ねる。何歳になったのか知らないが、そのしなやかな肉体の躍動に驚嘆。
 手塚とおるもいいが、福士惠二の軽やかな肉体の跳梁が小気味いい。

 「ハムレットクローン」もそうだったが、川村毅の最近の舞台には「身体性」の復権がめざましい成果をあげている。どちらかといえば、ブッキッシュで、どんなに役者が舞台で身体性を誇示しようとも、空疎に空回りするだけだった川村演劇に大きな変化が現われたのは、ここ最近のこと。舞踏系の俳優を起用したことがその成果に結びついているのか。言葉は殺ぎ落とされ、舞台に屹立する肉体がその言葉以上の言葉を発する。
 休憩時間に毎日新聞のT氏と立話。「野戦の月」のことなど。綿貫さん、平井さんに挨拶。
 9.20終演。ポストトークあるも、帰宅時間が遅れるので、失礼して家路に。
 10.40帰宅。疲れがたまっているのか、目を開けていられない。即就寝。
11月20日(木)雨

 朝から雨。お昼休み、東銀座、松竹会館に行って、注文してあった娘のプレゼント用ビデオを引き取ってくる。
 PM4.20.K記念病院で鍼治療。
PM6帰宅。DVDに「男たちの旅路」をダビング。

 辻元清美・秘書給与詐欺事件初公判。そんなに大騒ぎする事件なのか? ナチスのユダヤ人虐殺と、大根泥棒をいっしょくたに報じるマスコミ。国会議員の中で、辻元に石を投げる資格のある議員は何人いるというのか。国民の将来に関わる重大問題には、ほおかぶりし、たかが大根泥棒を重大事件のように扱うマスコミは、コイズミ軍拡政府の目くらましに加担する共犯者。第一、年間1人1億円という国会議員の報酬に見合う活動をしている議員が何人いるのか。

「まだ大丈夫、という大本営発表に国民が欺かれ、気がつけば、ニッポンの金庫はからっぽ。すべて、自民党政府とそれに連なる企業・ヤクザが山分けした後……」という『フォーブス』アジア太平洋支局長、ベンジャミン・フルフォード氏の「泥棒国家日本」に誰も反論できないだろう。知っていても、大本営発表を垂れ流し続けるのが日本のマスコミ。

11月19日(水)

 9.00起床。朝食もそこそこに、DVDレコーダーのセッティングに取り掛かる。
 今使っているビデオ(8ミリ、VHS)、LD、AVアンプも生かした配線にするために、四苦八苦。思い切ってFMチューナー、セレクター、タイマーなどは取り払い、なるべくシンプルな配線に。ラックの裏側の込み入った配線をスッキリ整理し、DVDレコーダーを正しく設置し終わったのが、PM2。ビデオからDVDへのダビングも完璧。

 さっそく、大好きなビデオ「メリークリスマスショー」をHDDにダビングし、それからDVDに焼いてみる。ほかのDVDプレーヤーでも再生できることを確認。素晴らしい。

 思えば、小学生低学年の頃は、ハム(無線)に憧れ、雑誌の通信販売欄に載ってる無線機を細密に模写して、壁に貼り、「いつか無線機が買えるように」と朝夕眺めていたものだし、高学年の頃は、出始めのカセットを持っている同級生の女の子をうらやましく思ってた。中学1年の時、スタンダード社製の小さなオープンリールテープレコーダーを買ってもらったときの喜び。あれは一生忘れないだろう。

 夢の夢だったビデオを買ったのが22歳。映像を録画して保存できるなんて、もう夢のような話。当時30万円もしたソニーのSLーJ9を3年ローンで買ったのがつい昨日のよう。そして、ついにDVDレコーダー。自分で編集もできるDVD。昔から見たら、なんとすごい時代になったことか。アマチュア無線の代わりにインターネットで世界中の人と会話が出来、音どころか映像まで保存できる。小学生の自分が今の世界を見たらどんなにびっくりするだろう。
 そんな便利で、自由な時代のはずなのに、世界はどんどん不自由で息苦しい時代に向かいつつある。この矛盾。

11月18日(火)晴れ

 PM1、仕事を抜けて息子の小学校へ。親子授業でドッジボールの試合があるため。「どうしても来て!」と言われてはいたし方ない、日頃の父親としての怠慢を挽回しなければ……。体育館に着くとちょうど試合中。父親は2人だけ。あとはお母さん方。その中に入ってドッジボール。試合は2回とも負け。最初はたかが子供の試合……と笑っていたが、終わってみれば、悔しい。この次に試合があったら勝つぞ……と。

 PM5、会社に戻り後片付け。

 6.30。六本木。俳優座劇場で俳優座「三人姉妹」。役者たちの演技の堅実さ。さすがに俳優座。注目は鶉野樹理。敬愛する劇作家・鶉野昭彦氏の娘ということで、以前からその演技を見たいと思っていたのだ。プロフィール写真とはちょっと違って、どこか木野花ふうの顔立ち。オリガ役かと思いきや、マーシャ役。オリガはラジオドラマ「夢の男」(大傑作!)でも主要なモチーフとして使われるし、鶉野氏の妻・新屋英子もオリガ役をやったことがあるという。樹理さんも残念そうだが、柄からいえばマーシャ役の方が難しい。その難役をこともなく演じる樹理さんはさすがに演技派の娘。9.20終演。
 10.30帰宅。

 桜井大造の「風の旅団 転戦するパラム」が届いたので読む。その激越な反天皇・反権力志向ゆえにアングラ演劇史からも抹殺された「曲馬館」「風の旅団」の史実。函館出身の桜井大造。どこかに啄木の「時代閉塞の現状」が憑依している。
11月17日(月)晴れ
 
 昨日、青森で開催された「ふるさと自慢CMコンテスト」で大間町が3度目の正直でついに大賞受賞。立案から関わっているだけに、うれしさひとしお。「賞」をもらうということが、これほどうれしいものだとは。
 
 帰宅の途中で、ビックカメラに寄り、DVDレコーダー購入。これで、ビデオテープが一掃できるか。このところ、物欲にとりつかれたような日々……。といっても、何万単位の買い物でびくつくのは貧乏性。

 アルカイダが日本攻撃を声明。アラブの大義に殉じた日本赤軍のおかげで、アラブ世界での日本人への信頼は絶大なものがあったが、そんな過去の恩義・信頼も、コイズミ軍拡路線のせいで、帳消しになる。もはや、日本人はアラブ・イスラムの敵になってしまった。自衛隊員が死んだら、それをきっかけに「やっぱり重装備しなかったのがいけない」の大合唱が読売新聞を先頭にキャンペーンされ、憲法は改憲前になし崩しにされる。自衛隊員が死ぬのを待っているハゲタカのような軍国主義者たち。
11月16日(日)晴れ

 いきなりヤフーオークションにハマってしまう。製造中止のビデオレコーダーが出品されていたので、なんとしても、それを落札したかったのだ。初めてのオークション参加。まず会員になる手続きが意外に面倒。それだけで丸半日費やしてしまった。意外に安い値で落札できたのでまずは好調な滑り出し。絶版になった本、探していた本なども、オークションで見つかる。家族も参加して、すっかりオークション・デー。人間の欲望を刺激するオークション、あまり入れ込むとちょっと怖いかも。結局、深夜まで、オークション三昧。

 曲馬館のCDを聴く。天皇の終戦「玉音」放送にかぶせて、「××××を殺せ!」という叫び入る。こんなにも激越なレコードが作られた時代。この原盤レコードは曲馬館解散の前の公演ですべてが炎上したという。伝説の一枚。

11月15日(土)曇り時々雨

 仕事を早めに切り上げ、PM2、私鉄線の駅からS・ローザさんのお宅へ。途中雨がぱらついたので、タクシー。特徴的な外観の自宅はすぐ見つかる。お手伝いさんに案内され玄関から入るとすぐに応接間。その広さとインテリアの豪華さに思わず立ちすくんでしまう。ウサギ小屋マンションがまるまる一つ入ってしまいそうな広さ。壁に飾られた肖像画、高級ソファ、目を見張る美術品の数々。リモコンで天井からスクリーンが下り、ミラーボールが回る。スピーカーは当然BOSE。そのへんの芸能人の「お宅拝見」など目じゃない、さりげないぜいを尽くした応接間。

 現われたS・ローザさんはさすがに往年の「小悪魔」的容姿からは遠く時代を経て、「気のいい南米のおっかさん」に。それでも最近録音したというCDを聴かせてもらったら、歌声はまったく変わらず。同席した子息のT氏を交え、約2時間、おしゃべり。うらやましいほどに仲のよい親子。二男のR君も自室から出てきて挨拶。帰りはT氏のベンツSL500で最寄駅まで。自分の住む世界とは別の世界を垣間見たような……。
 PM5、新宿。さくらやで入荷したばかりのDVDレコーダーを試してみる。ソニー、パイオニア。どちらがいいか。編集機能はパイオニアが上だけど。
 
 6.00。シアタートップスでウォーキング・スタッフ「SOLO」。
 隣りの席にK間水希とR石井。開演前に雑談。作・演出する来年の「スター誕生」、すでに3稿まで書いたとか。「去年からスタートしてるから。でも、まだですね」。登場人物が多く、それぞれにスポットを当てるのが腕の見せ所。多忙にも関わらず、こまめに芝居を見ている石井氏。エネルギッシュ。

 5分遅れで開演。姉を殺害しようと企てた妹夫婦、夫の元恋人、便利屋2人組……6人の破局に至るまでの推移が、「結」から「起」に向かって、逆回し=リバースで描かれる。追い詰め型の演出家・和田憲明によって、雛形あきこと池田有希子が女優としてどう変貌を遂げるか楽しみだったが、2人とも堅調。鈴木省吾は相変わらず、キレた役をやらせたら右に出るものがいない。
 8.20終演。

 面会人がごった返すロビー。楽屋から出てきた雛形あきこと抱き合ってはしゃぐ高橋ひとみ。池田有希子が出てきたので、立話。25日のライブの話など。そばにいた岩橋道子は来年、久しぶりのラッパ屋公演。アイドル本で紹介した事があるので挨拶。
 10.00帰宅。
 S・ローザさんからいただいた私家版のCDを聴く。日本語のアルバムを出したいと言うローザさんのために、T氏が作ったというアルバム。素晴らしい仕上がり。
 深夜までかかって、画像ファイル、音声ファイルをDドライブに移行。約20ギガ。これでシステムが軽くなるか。
11月14日(金)

 渋谷「M」のAさんからお誘いをいただき、楽しみにしていた栗坪先生の新著・記念会、予定が玉突きになったため、やむなく断念。下北沢へ。燐光群「CVR」。演出=坂手洋二+ロバート・バーガー+パトリック・ダニエルズ+アービン・グレゴリー。満席のスズナリ。普段の客層とはまったく異なり、背広姿のサラリーマン、50代、60代の婦人の姿が目立つ。固唾を飲んで見守る6つのコクピットの最後の瞬間。本当の現場は誰も見ていないのだから、演出家の想像力が補うわけだが……。
 
 気になったのは日航123便のケース。緊迫するコクピットで、機長の顔をやたらと覗き込み指示をうかがう航空機関士(丸岡祥宏)の演技。好きな役者だが、緊迫した機内で、後ろから機長の顔を覗き込もうとする「目」の芝居は、この場にそぐわない。あまりにも第三者的な芝居に違和感。
 スズナリの座席がビリビリと震えるほどの音響効果。入口にあった「気分が悪くなった方はお申し出ください」の張り紙もむべなるかな。しわぶき一つ出ない緊迫した1時間40分。作者の意図とは別に、もう飛行機には二度と乗りたくない、というのが改めて再演を見た率直な感想。坂手氏の姿が見えないので、そのまま駅へ。

 「ディスク・ユニオン」で曲馬館「泪橋哀歌」を買う。この前、ネットで同じく曲馬館の劇音楽のCDを買ったばかり。なんだ、ユニオンで買えば、送料がかからなかったのに……。

11月13日(木)晴れ

 社民・土井氏が党首辞任。右翼メディアはここぞとばかりに「とっくに役割を終えた護憲だけの化石党」と悪罵を投げつける。夕方テレビをつけたらフジTVで木村太郎がニヤニヤしながら、「憲法を守れというのは時代遅れ」と言ってる。いつから「人間が平和に暮らすことが時代遅れ」になり、戦争ができる国が普通の国と呼ばれるようになったのだろう。不思議な時代の不思議な国。

 同窓会報の印刷費支払い。1500部で7万3500円。某高校同窓会のHPを見ていたら、会報代300万円という項目にびっくりしたが、それでも普通はひとケタ違う数字に違いない。
 燐光群「CVR」の予定だったが、明日に変更。

11月12日(水)晴れ

 部屋の掃除をしている途中、棚にあるビデオの背表紙「小劇場の世界」に手がのびる。何が入っているんだろう。再生すると、「3OO」「青い鳥」、天井桟敷「奴婢訓」、状況劇場「ジャガーの眼」。つい、見入ってしまう。「ジャガーの眼」は寺山修司への追悼作品だから83年頃か。六平直政、金守珍、中村祐子ら、その後、新宿梁山泊を結成するメンバーが出演している。それに深貝大輔の顔も。主演は田中容子。そうだ、この頃、彼女は主役を張ったことがあるんだった。彼女がバイトしている高円寺の飲み屋で毎晩のように、歌い、語った熱い日々。あれから20年……。
11月11日(火)曇り時々雨

 夜中、イヤな夢を見てうなされ、目が覚める。朝には、それが何の夢だったか忘れたが、胸に澱のようなものが残る。悪夢はたいてい良くないことの前触れ。

 友人のNさんが田舎に引き上げるとの報。老親の面倒を見なくてはならないという。ほぼ同じ世代。田舎から出てきている人の共通の悩みは自分の親のこと。元気なうちはいいが、年老いて、病を抱えた親を1人にしておくのは絶えず不安がつきまとう。
 PM4、丸の内ピカデリーで「ティアーズ・オブ・ザ・サン」。戦場娯楽作として見ればこれほど面白い映画はない。しかし、イラク戦争を見てしまった人々にとってはイヤミな「米国の正義」宣伝の映画。この映画を見たら、日本の「強大な軍備」は必要と思う人が増えるかもしれない。戦意高揚映画。でも、ブルース・ウィリス、モニカ・ベルッチは◎。PM7、四谷へ。駅に着いて自宅からの急用メールを確認。公衆電話から田舎に電話。やはり、昨夜の夢は不吉な前触れ。7.30、紀尾井ホールで「兵士の物語」。ほとんど上の空。1時間30分の短さが救い。10.00帰宅。

11月10日(月)雨

 そぼ降る雨。昨日までとうって変わって肌寒さに身をすくめる。突然の冬模様。

 AM6.30出社。即日開票のせいもあって、速報の熱気がまったくない。こんな選挙明けは初めてのこと。
  自民は例によって本籍隠しの無所属を取り込み、辛うじて237。公明、保守新党と合わせて、与党が絶対多数を確保。民主は177と40議席増。社民・共産は各6、9議席の1ケタ政党に転落。

 小選挙区制が実施された時からこの日が来る事はわかっていたが、絵に描いたような「二大政党」並立が現出するとは。全国紙は例によって、「社民・共産の護憲政党の衰退は憲法改正の日程を早めることになるだろう」と、言い訳じみた論調。そんなこと今更言っても後の祭り。なぜ、選挙前に、真の争点がどこにあるのかを伝えないのか。知ってて言わないのは犯罪に等しい。

 社・共という「護憲」派の抵抗で辛うじて、踏みこたえて来た「戦後民主主義」はこれで完全に終わった。あとは坂道を転がるように、右傾化に拍車がかかる。まずは、御用マスコミを使った憲法改悪=第9条撤廃のための地ならしが行われるだろう。
 いわく、「耐用年数が終わったものは変えるべき」「環境権を加えるためにも憲法は改正しよう」「北朝鮮がミサイル撃ってきたらどうするんだ」――憲法改正の機運を盛り上げ、自民、公明、民主の一部で改正動議。国民投票。国民は国を守る義務があるのは当然、との大宣伝で、まずは志願兵役、段階的に皆兵制。
 
 「まさかそこまでは」とタカをくくっていられる時代だろうか。やるときには徹底してやるのが権力というもの。「護憲派」政党だって、これから先、最後の一人が消えるまであらゆる手段を使って徹底的に潰される。
 年金だ、道路だと目くらましに踊らされた国民は、一番大事な自由と命を奪われることになる。自由と平和があってこその年金、道路ではないのか。年金貰う前に戦死したら元も子もない。それが狙いかもしれないが……。
 一日中、鉛を飲みこんだように、不快な気分。
 「絶望は愚か者の結論である」とはいうけど、もはや……。

 PM7、新宿。紀伊國屋サザンシターで扉座「夜曲」。舞台を見る心境ではないが、無理を言って今日にしてもらった手前、キャンセルできず。 愛と平和を訴える横内謙介の芝居。その甘いヒューマニズムは苦手だが、こんな日はその甘さが身にしみる。舞台は「夢を見る力」。その夢の力をまだ信じたい。
 PM10・30帰宅。

11月9日(日)曇り時々雨

 9.30起床。総選挙。夕方投票所へ。閑散とした投票所。これでは投票率は期待できない。組織の固い宗教政党と自民に有利に働くだけ。

 PM8、投票率は60%を割る見通し? 信じられない数字。テレビで井筒和幸監督が「道路、年金、そんなことはどうでもいい。今回の選挙は憲法改悪を認めるかどうかが争点だ」と叫んでいたが、まさにその通り。
 人間は崖っぷちに追い詰められても、足が地面についてうちは安心している。「まだ大丈夫」。しかし、宙に舞った時はもうおしまい。

 「どうせ何も変わりはしない」と一票を行使しない人たちがなんと多いことか。投票率が上がれば政治状況はガラリと変わるのに。信条として確信犯的な人もいるだろうが……。
 確率は同じでも、宝くじには当たると思うが、自分だけは交通事故に遭わないと考える。どこか似ている。

 自民・公明堅調、民主躍進、社民・共産惨敗。思ったとおりの展開。土井たか子まで小選挙区で落選、比例区で救済されるとは。
 これで、護憲勢力は一掃され、あとは国民を支配したい人たちの思うまま。テレビを見ていても気分が悪いだけなので早めに就寝。
11月8日(土)晴れ

 PM2、阿佐ヶ谷。ザムザ阿佐ヶ谷でバニラスカイ・プロデュース「フタリ+フタツ=芝居」。作=大岩真理、演出=森さゆ里。出演=裕木奈江、若松泰弘。

 会場ほぼ満席。
 第一話「蜜の味」。
 男によって自室に監禁される女。口に粘着テープ、足にはロープ。男は小心な学校教師。テープを外し、食事させる男。数日後、2人の関係は逆転し……。

 第二話「二等辺三角形」。
 旧友の家を訪ねたOL。しかし、約束したにも関わらず、友人は買い物で不在。出張のはずの夫が居て、彼女の話し相手を務めるが、どこかぎごちない。2人でケーキを食べ、子供や新婚旅行のアルバムを見る。どうやら、妻は家出したようで……。

 これは思わぬ収穫。特に第二話の脚本の絶妙さ。男女の、そして夫婦の機微がこれほど細やかに描きこまれた舞台は見た事がない。台本を取り寄せて読みたいと思ったほどの繊細な心理・感情表現。それを血肉化する演出の丁寧さ、奥深さ。奈江、若松の息もぴったりで、客に媚びない、抑制された演出と演技。2人の芝居を見ているうちに、体の中の熱量が次第次第に高まり、えもいわれぬ幸福感に包まれる。二人芝居はやはり役者の相性だ。これほど息がピタリと合った芝居はめったにない。

 4.15終演。客出しの途中で楽屋から出てきて知り合いに挨拶している裕木奈江。セルフ・プロデュースだから、制作も兼ねていて、いろいろ気を使うのだろう。

 しばし立話。「来年5月の舞台が決まったんですよ」と嬉しそうな顔。なんと、S江氏の新作で、演出はM本Y子さんとか。これは楽しみ。M本さんは彼女の初舞台で演出助手を務めた仲とか。M本さんもいよいよ新K劇場か。好きな演出家、俳優が新しい挑戦をするーーこれほど嬉しいことはない。

 劇場を出て、5丁目方面に。アパートF荘。S村氏を訪ねるが、今日も不在。洗濯物が干してあるから、夕方には帰るのだろうけど。
 馬橋公園のベンチに座り、メール。次第に雨雲が垂れ込めてきた……と思ったら、そうではなく、夜の帳が静々と下りてきたようで、気がつくとあたりは真っ暗。昼から夜の移り変わりを体感したのは久しぶり。
 
 N江ちゃんへのメールを打ち終わり、駅へ。明日の総選挙の最後の訴えが駅頭にこだまする。

 PM6、渋谷。モヤイ像の前に人だかりがするので、覗くと、若いバンドの路上ライブ。美形の女性ボーカルに思わず立ち止まって聴き入ってしまう。SOLTという女性1人+男4人のバンド。ボーカルの力強さ、声の伸び。演奏もまずまず。思わず自主シングルCD500円を買ってしまう。

 ハチ公前は、宗教政党が陣取って絶叫。とめどなく右傾化し、いまや自民党の補完物というより、自民党を超える極右政党になったこの宗教政党。盗聴法、住民基本台帳法、国旗歌法、教科書問題、靖国参拝、そして個人情報保護法案ーーことごとく追認してきた政党。信教の自由を貫いたために獄死した初代会長はあの世でこの宗教法人=政党どう見ているのだろう。
 
 反対口に回ると、こちらでも女の子が路上ライブ。でも、ヘタ。そばを通り過ぎ、246へ。

 PM7、青山円形劇場でアトリエ・ダンカンプロデュース「欲望という名の電車」。受付に鈴木さん、吉田さん、木野下さんと、見知った顔が勢ぞろい。「SOLO、いつ見に行かれます?」とI田有希子のマネジャー・木野下さん。「土曜ですか? その頃がちょうどいいかもしれませんね」と笑顔。やはり、芝居がまだかたまってないということか。

  篠井英介がブランチ役。この演出、前に見たなぁと思ったら、再演だった。初演がほとんど印象にないのはなぜだろう。やはり体調のせい?

 今回はスタンリー役を初演の加勢大周に替え、古田新太。当初目論んだキャスティングだったとのこと。つまり、これが本来のオリジナルキャスト。舞台の枠に収まらない破天荒な演技の古田。一時減量していたが、また太ったようで、「豚!」とののしられるセリフに客席から笑い。これほど笑いがあふれる「欲望ーー」も珍しい。ダイエットを励行しているそうで、スリムな体躯の篠井。女形の妖艶さを漂わせる。狂気の淵をさまようブランチを好演。ムーンライダースの鈴木慶一はチョイ役ながら、おいしい役。

 終演後、沢さんらと楽屋口に行き、篠井氏に挨拶。「今年は女役が多かったので、ずっとダイエットしてるの。でも、食べないと体力が続かないので、きちんと食べてます」
 女形は体型を維持するのが大変だ。

 円形の舞台なので、客席が見渡せる。ちょうど対面の席に山口の銀行員氏の姿を発見。休憩時間に立話。「前に篠井さんがぜひ見て、と言ってたので、今日は朝、飛行機で来たんです。ついでだから昼に文学座のリチャード三世。明朝5時には、帰らないと」。相変わらず、すごい情熱。「転勤になるかもしれないので、12月はどうかな……」

 今日は久しぶりに旧知の仲間が勢ぞろい。新国立の総務部に異動したばかりの梅ちゃん、演劇ライターの沢さん夫妻。武村氏、沢さんの友人の山本さん、立石氏。「それじゃ一杯」と青山「我や」で飲み会。武村氏は連れの若い女性が先約だということで、不参加。

 芝居の話やらドラマの話に花が咲く。立石氏、今日出ていた花山佳子の初代マネジャーだったとか。パルコの第一回専属女優が彼女。フーム。

 で、今日一番の驚きは、前触れもなく、やってきた。沢さんが何気なく、「今、テレビの脚本も書いてるんですよ、彼女。最初はラジオドラマで……」と冗談めかして言ってたので、なんのことかと思いきや、山本さん、書いたラジオドラマが入選し、それがギャラクシー賞に選ばれたとのこと。えっ? もしかして……。隣りの席の山本さんに尋ねると「ギャラクシー賞とか、もうひとつ、なんだっけナントカ賞をもらって……」
 なんと、NHK・FMシアターで話題になった「唐木屋一件のこと」を書いたのが彼女だったのだ。もうびっくり仰天。
 歌舞伎に造詣が深いのは知っていたが、脚本を書いていたとは思いも寄らなかった。しかも、NHKラジオドラマを。

 梅ちゃんはじめ、演劇畑の人たちばかりだから、ラジオドラマと聞いても、ピンとこない風情。衝撃を受けたのは私だけのよう。山本さんも取り立てて、賞や脚本のことを話題にすることもなく、それで終わったが、ウーム……。
 深夜0時解散。駅で山本さんらと別れ、帰宅の途。終電に間に合わず、途中からタクシー。1.30帰宅。
 今週は家に滞在する時間が極端に短かった。疲労もピーク。 

11月7日(金)晴れ

 朝、玄関を出ると一面の霧。上階から見下ろすと、マンションが中空に浮かんでいるような濃霧。まるで、昨夜見た「ウーマン・イン・ブラック」のよう、と思いながら駅に向かう。電車も濃霧のため遅れが出ている。

 PM5、つつがなく仕事を終えて、新宿へ。
 回転寿司で食事をした後、タワーレコードで小一時間新譜探検。新しいアーティストが並ぶが、いまいち食指動かず。
「アコースティック・ソウルの未来型バンド」との惹句に、何度か視聴しているVo Vo Tau(ボボタウ)、惹かれるものがあるが、どこか違う。買うには至らず。

 南口のヨドバシカメラに移動して、デスクトップパソコン、DVDレコーダーコーナーへ。DVD&HDDレコーダー、ソニーかパアイオニアか迷うところ。「ソニーだけはやめた方がいいい」のアドバイスを社の先輩からもらっただけに……。

着信にDJ・T氏の名前。S・ローザさんと会える日決定。

 PM7、スペース・ゼロでストレイ・ドッグ「竜二 お父さんの遺した映画」 。映画「竜二」を遺してこの世を去った俳優・金子正次への追悼とオマージュ。昨日6日が金子正次の命日。その日を選んだ作・演出、森岡利行の思い入れの強さよ。初演が印象的だっただけに期待。開演前に、並びの席のN元絵里子とおしゃべり。来年の本公演までお休みとか。

 今は女子高校生になった金子正次の遺児と妻が映画館の前で、映画「竜二」にかけた父を回想するシーンから始まる。自分の知らない父の姿を見つめながら、現実の困難に立ち向かっていく娘……というのがサブテーマ。

 金子正次役は相澤一成、シェイプUPガールズの中島史恵がゲスト出演で数役。2人とも好演。松田優作役はモデル事務所所属らしく、俳優としてのキャリアがないためかやや一本調子。酒井健太郎、中原和宏のコメディ・リリーフコンビは見ていて安心感。
 
 初演と比べて、やや役者の演技が 固いのが難点。それでも、森岡の思いは伝わる。病魔と闘い力尽きる金子、手を握り、4時間も名前を呼び続けたという松田優作。そのシーンになるとやはり滂沱の涙。アングラ・小劇場の匂いを残した舞台は凄烈。どこか懐かしさを感じる。

  終演後、ロビーで森岡氏と立ち話。アイドル・黒川芽衣を擁し、順風満帆のようで、来年公開の映画「問題のない私たち」が近作とか。金子氏の遺児は初演の時、海外留学していて舞台は見ていないとか。

 階段に整列した役者たちの「ありがとうございました〜!」という声の間を縫って、劇場の外に。コンビニで30日のクラシックピアノコンサートのチケット代を振り込み、家路に。
 10.30帰宅。
11月6日(木)晴れ

 PM7、渋谷。パルコ劇場で「ウーマン・イン・ブラック」。92年初演。今回で5演目だとのこと。そのうち4回は見ているはず。ストーリーも、どこが怖い場面なのかも分かっていながら、ツボを押さえた演出の妙、何度見ても新たな恐怖に引き込まれる。ゴシックホラーの傑作。

 舞台はロンドン。若い頃、依頼人の屋敷で体験した忌まわしい記憶のために、今も悪夢にさいなまれる中年弁護士。彼は劇場でその恐怖を告白することによって呪縛から逃れようとする。若い俳優を雇い、彼とともに、過去を再現しようとするが、一方で、劇場でも奇怪な出来事が……。

 パンフで「リング」「女優霊」の脚本家・高橋洋がオリジナルへの讃辞を述べていたが、なるほど「女優霊」の怖さと相通じるものがある。というか、「ウーマンーー」を見てインスパイアされたというのが先か。
 背景幕に隠された舞台装置以外、装置らしきものはほとんどなく、俳優の持つ大きなバスケットが馬車になり、夜汽車の座席になる。懐中電灯は開かずの間に通じる道標。馬車の音、馬のいななき女の悲鳴、そしてロッキングチェアの軋み。無から有を生じるのが演劇ならば、まさにこれこそが演劇。演技と照明と効果音だけでこれほど見る者を恐怖させるとは。その恐怖のツボを押されるたびに、ビクンと座席で飛び上がる観客。ウーン、何度見ても怖い。

 で、毎回見るたびに「ジリ」という言葉に反応する私。「海霧」のことで、子供の頃、漁師たちからよく聞いた言葉。北海道地方の方言を訳語に使った翻訳家はもしかして北海道出身? It’s drizzlingで霧雨が降る。ドリジリングとジリ。似ている。ずっと「イッツ・ジリング」と思いこんできたが、「drizzilng」だったのか。

 9.15終演。出口でMe&HerコーポレーションのY家かおりさんと立話。「1月にラッパ屋やります」とニッコリ。上川隆也がMe&Herの所属とはうかつにも知らなかった。

 乗り継ぎが良く、渋谷からジャスト1時間5分で家に到着。10.40。

 数多くの外交交渉に立ち合い”同時通訳の神様”と言われた元参議院議員の国弘正雄氏がこう言っている。
「テキサスのブッシュ邸に小泉首相が泊まったとき、ブッシュは小泉を指して”This Prime Minister”と呼んだ。This〜という言い方はこいつ、このガキといった侮蔑的な表現で、英米の首脳に対してこの言い方を用いたら外交問題になりかねない。その直後に韓国の金大統領に会った際はきちんと”President KIM”と敬語を使っていたから、あながちブッシュが言葉知らずだったわけではなさそう」。

 つまり、日本をキャッシュ・ディスペンサーと見下すブッシュの本音が出た言葉と解釈してもよさそうだ。これほど、コケにされ、バカにされてもブッシュの靴を舐めつづけるコイズミとは何者?
11月5日(水)晴れ後雨

 8.00起床。足を捻挫したため、集団登校できない子供を自転車の後ろに乗せて学校へ。幼稚園時代の送り迎えを思い出してほのかな幸福感。
 
 お昼、銀行、郵便局へ。帰りにTSUTAYAで「光の雨」「レッド・ドラゴン」、ミス・マンディの「ナチュラル」を借りてくる。

 劇中劇という形で、現在の時点から連合赤軍事件に距離を取ろうとした高橋伴明の、やや腰がひけた「光の雨」を見つつ、30数年後の日本がはるか遠くに来てしまったことにがく然とする。
 革命どころか、護憲を唱えるだけの社民主義が政治状況の最左翼に位置するなど誰が想像しただろう。
 先日の毎日新聞で元サンデー毎日の編集長・牧太郎がこう言っていた。
「はっきり言うなら、今回の選挙は憲法改正選挙だ。その観点で見れば、中曽根元首相が現役にこだわった理由が透けて見える。教育基本法の改正など、戦後民主主義を一掃する局面に自分が立ち会いたいということ。しかし、それが隠れた争点であることがバレたら小泉首相のもくろみはついえる。だから、中曽根に引導を渡して、争点をぼかした。自民・民主の二大政党論に埋没するのは「護憲」の社民・共産。その護憲政党を一掃しようというのが今回の選挙の本来の目的なのだ」

 さすがに慧眼。ズバリ、言い当てている。改憲に向けて、護憲勢力を駆逐するのが今回の選挙の目的なのは明らか。もはや、それを止める手立てはない。5年後には自民と民主の右派が合同し、新大政翼賛会が結成され、言論統制、徴兵制は現実のものになっていることだろう。そのターニングポイントになったのが今回の選挙と、近未来の歴史学者は指摘するに違いない。

 夕方、子供を迎えに行き、そのまま接骨院へ連れて行く。その後、自分のメンテナンスのために、整骨院へ。終わった頃に、雨雲が広がり、ぽつりぽつりと雨。
11月4日(火)晴れ

 早々に仕事を切り上げ、大急ぎで新宿へ。3.40、新宿ジョイシネマでタランティーノ監督の話題作「キル・ビル」。これほどわくわくと胸躍らせて映画館に入ったのは久しぶり。

 「深作欣二に捧ぐ」の字幕と、冒頭に流れるナンシー・シナトラの「バン・バン」を聴いた瞬間、期待は確信に……と思ったのだが。

 ウーン、所詮は映画オタクがオタク観客のために作った映画でしかないようで……。

 無国籍映画もここに極まれリといった、どこにも存在しないキッチュなニッポンとニッポン人が登場するのはいいとしても(沖縄の寿司店のシーンは何?)、期待した様式美に肩透かし。予告編の真っ白な雪の降る中、ルーシー”修羅雪”リューとユマ”死亡遊戯”サーマンが向かい合うシネスコシーン、それが、鈴木清順「刺青一代」へのオマージュと思ったのだが、「様式美」よりも、石井”地獄”輝男活劇で終始するスプラッタ映画。

 大根を切るように首・手足が飛び、憎むべき女殺し屋は江戸川”芋虫”乱歩状態。死臭漂うスプラッタはまったく受け付けないので、クスリとも笑えない。

 ただ、新撰組「池田屋」のような、大階段がある酒場でのアクションはなかなか楽しませてくれる。階段落ちまであるのだから、念が入ってる。あのような酒場が六本木あたりに出来たらウケルかも。

 至福の瞬間は梶芽衣子の歌「修羅の花」(?)が流れた時。30年ぶりに聴いたような気がする。林美雄のパック・イン・ミュージックでいつも流れていたのを録音したのに、テープはどこに行ったのか。「怨み節」も使われると聞いていたが、どこで流れたか不明。もしかして、エンドロールの後半か? 先を急いだので、エンドロールが終わる前に映画館を飛び出したのがいけなかった。もう一度見直す気はないので、レンタルになったら確認してみよう。

 PM6.30、三軒茶屋。「はとぽっぽ」でさば焼き定食630円。

 7.00、パブリックシアターで文学座「リチャード三世」。次兄を殺し、先王の皇太子妃を妻にし、次々と王位簒奪に向けて姦計をめぐらす悪漢リチャード三世。しかし、王位を手にした瞬間、自ら滅びの道をたどっていく。
 悪漢リチャードを演じるのは江守徹。背中に醜いコブを背負い、猜疑心が強く、シニカルな物言い。その中にちらりとユーモアをまぶすーー悪の魅力に満ちたリチャード像を嬉々として演じている。

 中央にスクリーンを設え、そこに映像をインサートする。それは国王をほめたたえるニュースキャスターであったり、内乱をリポートする実況中継であったりする。アフガン、イラクのニュース映像を使ったモンタージュ。
 女性の衣裳はベトナム、あるいは朝鮮、中国風。つまりアジアの民族衣装に似たコスチューム。兵士も人民軍風から、グリーンベレー、ナチス・ドイツ風の軍服。リチャードを権力を渇仰する独裁者として見た場合、その衣裳の意味は自明。ここにも2003年のアクチュアルな政治状況が反映されている。観客は巧まずしてリチャード三世に”あの人”を二重写しにする。上演意図とは別の構図が派生する不幸。

 9・50終演。休憩15分をはさみ、2時間50分は適度な長さ。

 11.15帰宅。郵便受けに封書。93歳になるT先生から先日の同窓会報のお礼状だ。高齢にも関わらず、かくしゃくとして筆運びも乱れがない。郷土史にも造形が深く、真の教養人とはT先生のような方をいうのだろう。わざわざお礼状を書いてくれる。うれしいことだ。 23日に撮ったばかりという薬研の紅葉写真を同封してある。まだまだ元気でいてほしい。
11月3日(月)曇り時々雨

 PM2.30、雨がそぼ降る中、レンタルスペースに夏ものTシャツをしまいに行く。駅の方角からぞろぞろ人の群れ。祭りが終わって、帰宅する人波に似ている。何かと思ったら、コイズミ首相が選挙応援で駅前に来たらしい。当地にやってくるというので駅前はポスター、ビラが散乱していたが、今の時間か。政治に興味のない人でも、「顔を見に行ってみようか」というくらいだから、動員はすさまじいものがあったんだろう。
 
 一方、各地で展開する田中真紀子の遊説内容があまりにも激越で、さすがに一般紙は避けているようだが、こんな中身だという。

「景気が悪い、仕事がない、失業率が高い。これらはみんな小泉内閣の失政による痛みです。ライオンヘアだかネコだかカツラだか知りませんが政策のすべてがねじれている」

「私はイラク派兵に反対です。小泉首相がそんなに派遣したいなら、まず売れないタレントの息子と2人で行けばいい」

「安倍晋三はA級戦犯・岸信介の孫。そんなんが日本を核武装とか言ってる。彼は日本版ネオコンです」

「麻生太郎も吉田茂の孫だか知りませんが、”日韓併合は韓国の人も喜んでいた”なんて言ってる。もし、日本がアメリカに併合されて喜ぶなんて言われたらどう思います? 喜んでたなんてウソつけですよ」

「平壌宣言は最大の失敗。手ぶらで行ってマツタケもらった? 機密費持ってったんでしょ。5人が帰ってきたのはいいけど、メディアによれば10億円という説もある」

 機密費使って5人を引き取ってきたという政界のウラ情報が本当かどうか知らないが、そこまで踏み込んだ発言をしたのは真紀子が初めてだろう。自民党のスネ傷政治家は真紀子台風が通り過ぎるのをクビをすくめて待つだけ、か。

 夕方、I井久美子さんから電話。H形あきこの件。

 同窓会HPを少しだけ作成。

11月2日(日)晴れ

 午後から新宿へ。10〜11月にかけては、見なくてはならない芝居が多すぎて、休日を潰さなければ対応できない。「休日は家族と」が鉄則の我が家。買い物に行くと言い置いて、電車に飛び乗り新宿へ。
 
 PM3.30、サザンシアターでテアトル・エコー「ドアをあけると……」。アラン・エイクボーンのスリラー・コメディー。97年に「キャスター・ウエスト・エンド・シアター(現JT)」プロデュースでパルコ劇場で見ているが、川上麻衣子がSMの女王役をやったという以外ほとんど記憶になく、面白かったという印象もない。もしかしたら、体調がよくなくて、半睡状態だったのかも。そう思えるほど、エコー版の舞台は抜群の面白さ。
 
 2030年、死期がせまった老実業家が遺産目当てで、最初と二番目の妻を相棒の男に殺させたという告白文を書き、それを弁護士に渡すよう、コールガールのプーペイに頼む。ところがその告白文を相棒の男に見つかり、逃げまどううち、部屋の隅にあった物置のドアに飛び込むプーペイ。そこは20年前の同じホテルの部屋。2番目の妻が滞在していて、彼女に事の仔細を話すが、信用されない。しかし、二番目の妻が殺される日は今夜……と過去、大過去、現在を往還するサスペンス・コメディー。

 登場人物は過去に20年遡れるが、未来には行けないというルールや、殺人犯の男が事故で死んだが、過去の時間では生きていて第二の犯行は防げない……といったタイムパラドックスに沿った脚本がずば抜けて面白い。
 確かに「サイコ+バック・トゥ・ザ・フューチャーの面白さ」の惹句も誇大ではない。

 プーペイがシャワーを浴びるため、カーテンを開けようとすると、サイコの音楽が流れる。思わず「やっぱりシャワーはやめよう」とひとりごちするシーンに思わず吹き出す。このタイミングのよさ。勝田安彦の演出とは思えないスマートさ。

 しかし、今回の舞台の成功はなんといっても、主演の杉村理加の存在だろう。こんなにうまい女優がエコーにいたのかと仰天するほど演技が巧み。全体の99パーセントが風俗嬢の演技、残りの1パーセント、つまり大団円の後、未来が変わり、別な人生を送っている女性にスライドしていく場面での演技の絶妙な変化。すごい演技派女優。しかもキュートで美形。
 聞けば、映放部所属で外部の商業演劇出演が多く、なかなかエコーの舞台では使うことの出来ない女優さんとか。
 6.00終演。急いで家路に。帰宅してビールを飲んだら、眠くなり9時過ぎには就寝。連休だから夜更かしして、本を読んだり、ビデオを見たりできるのに……。なぜだ?
11月1日(土)晴れ

 PM1から急遽、12月からスタートするN印刷の入稿新システムの説明会。

 2時から銀座みゆき館で金濱夏世プロデュース「The Goth-chic」の予定。いつも案内をいただきながら、なかなか時間が合わなくて行けない女優の阿部由輝子を見るため。98年の劇団アプラオス「風の吹く夜」以来だから5年ぶりか。今回こそは駆けつけなければと思ったので、内心焦るも、説明会は予定より早く終了、これなら楽勝と思いきや、早く終わりすぎたため、次の説明予定を前倒し。連続説明会に。時計を見ながらイライラ。

 ようやく説明会が終わったのが1・50。急いで駅に向かうが、こんなときに限って電車がなかなか来ない。息せき切ってみゆき館に飛び込むとすでに5分経過。開演時間に遅れるほど、失礼なことはない。が、今日を逃がせば見る時間がないので恥を忍んで裏口から入場。

 詩人バイロンの館で、パーシー・シェリー、その妻、メアリー・シェリーらが体験する怪奇と幻想の一夜。「フランケンシュタイン」をメアリーが書くモチーフになった事件、という設定。阿部由輝子はメアリー・シェリーの役。さすがに一頭地を抜く演技・存在感。主宰が耽美派劇団「オルガン・ヴィトー」の出身らしく、妖しく耽美な舞台。ただ、「耽美派」にありがちなやや冗漫で主観的な演出。

 上演時間2時間。終演後、阿部由輝子に挨拶。初めて会ったのが、10年ほど前だっただろうか。アイドル本で「演劇界のアイドル女優」というコラムを持っていて、それに似合う女優を探していた。当時、「榴華殿」の看板女優。タイニィアリスで会ったのだった。

 あれから幾星霜、もっと多彩なフィールドで活躍して欲しい女優だが、B型特有の”器用さ”のためか、これぞという作品・演出家にまだ出会っていないようで、それは本人も自覚しているみたい。このままではもったいない。彼女の女優としての実力を引き出せる演出家・作家が現われないものか。
 
 4.15帰社し、CMコンテストのビデオを渡すために、近くの喫茶店でOさんと待ち合わせ。上海帰りのOさんとしばし歓談。

 7.00。東小金井。
 野戦の月+海筆子の「阿Qクロニクル 罠と虜」。

 テントのタッパを上げ、舞台を高く設えたことで、その下に「地下舞台」を作った。舞台が割れると。その下にもうひとつ舞台が現われる構造。しかも、その地下から背景に向かって階段がせりあがるので、スペクタクル性たっぷり。冒頭、天井から落下、逆さ宙吊りで登場する俳優に仰天する観客。去年に続いて、台湾からの俳優が参加、その存在感が強烈。

 台湾支配時代と現在の日本を往還しながら、今に続くアジアとニッポンの暗部を照射する。

 地下舞台、水、火、野戦の月ならではのスペクタクルが、今回は特に大仕掛け。テント芝居で、こんなに見どころたっぷりの大仕掛けを見たのは久しぶり、いや、初めてかもしれない。梁山泊の「人魚伝説」の水槽にも驚かされたものだが、水だけでなく、火、地下舞台、階段舞台(階段落ちがある)ーーこのスペクタクル性には、心底、驚いた。いまどきの若い観客はこんなアングラ・テント芝居を敬遠しているのかもしれないが、見ないのは大きな損。もっと客が入ってもいいと思うのだが今日は91人。ハードなテーマではありながら、エンターテインメント性たっぷり。初めて見たという若い女のコ3人グループが「こんな舞台だとは思わなかった」と喜んでいた。
 
 終演後の打ち上げで、ばらちづこらと歓談。リュウくんが彼女の子供だということを初めて知る。障害をもって生まれた子供と共に生き、今は同じ舞台に立っている。高校生の長女も去年は舞台に出たが、今は距離を取っているとか。同じ年頃の子供を持つ親として、考えされられるものがあった。

 「見て欲しい人はちゃんと見に来ていますから」と桜井大造氏。観客動員はさほど気にしていないというが、今の演劇界にはもちろん忸怩たるものがあるに違いない。
 去年の話の続きで、彼の義兄の実家はやはり、私の母方と同じルーツ、家名らしい。「その昔、○○さんの田舎を訪ねたのは、義父でしょう」と。

 11.00、宴会は続くが、終電に乗り遅れてはいけないので、桜井氏らに挨拶して退出。ばらさんが「同じ方向だから一緒に帰りましょう」と言ってくれたが、先に駅に着いたので、滑り込んできた電車に一足先に乗って家路に。
 AM1.00帰宅。
 

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