10月31日(日)晴れ

 静岡の旧友K山が家出して上京、泊まる所がないから、泊めてくれと言うが、なにぶん狭い家なので困惑している夢を見ていた。場所は阿佐ヶ谷。二度寝すると、今度は総武線を乗り越して「つしまみれ」という駅に着く。下車すると駅前に菅原文太のやくざ映画の看板。まるで70年代をそっくり残した駅だと思い、周辺をデジカメで写している夢。ヘンな夢。

 午後から息子と散歩。この前まで空き地だった所に、巨大なスーパーが建っている。トノサマバッタもコオロギもカナヘビもその下。卓球場に寄って、1時間ほど子供相手に遊び。

 PM5、帰宅すると家人が「香田さんの遺体が発見された……」と。街角でのインタビューに答える大多数が、「危険なところに行ったんだから殺されても当然」という人ばかり。それも若い人ばかりでなく、高齢者も同じようなことを言っていたと憤慨している。「殺されて当然。小泉首相は自衛隊を撤退させるべきじゃない」ーー人間一人が死んでいるのに、遺族の悲しみを思えば、そんな非情な言葉をテレビのインタビューで答えるなど、信じられない。人間とはそんなにも無神経になれるものか。「そこにいたお前が悪い」ーーどこかで聞いたセリフがここでも聞こえる。

 殺害犯よりも、そんな無神経な言葉を吐く人間の方がよほど悪質だ。もし、自分の家族が同じ言葉を投げつけられたとしたら……「一生かけてもその無神経な連中の居所を探し出し、一人ひとりを同じ目にあわせてやりたい」ーー憤激する家人。

 10.00就寝。


 
10月30日(土)雨

 イラクの武装勢力に拘束されていた香田証生さんらしき遺体を発見との報。昨日とは別件だったが、最終的に別人であると発表された。とりあえず、よかった。

 たとえ、本人の不注意から人質になったのであったとしても、日本人であるがゆえに武装勢力に死刑宣告されるのであれば、日本政府にその責任の一端はあるはず。48時間以内の自衛隊撤退の要求に対し、即座にこれを拒否したコイズミこそ、その最高責任者。世論・マスコミはまたしても「自己責任」の大合唱で、日本政府の対イラク政策の誤りを糊塗しようとしているが、そんな情報操作に惑わされてはいけない。最初からボタンの掛け違いを認めようとせず、犠牲者を増やしている政府こそまず指弾されるべきだろう。

 今回の香田証生さんの名前は「生きるための証を求めるため」両親が付けたのだという。それからわかるように、両親は敬虔なキリスト教徒であり、日本聖公会系の直方教会に所属するらしい。日本聖公会はキリスト者として、イラクへの米軍攻撃に反対しており、今年2月にはパレスチナを訪問。イスラエル政府のパレスチナ人弾圧に対しても、きわめて明確にこれを批判している。プロテスタントとカソリックの中間に位置する「中道」の教会を自称しながらも、「正義と平和」への発信を続けている、いわば「行動する教会」といえるだろう。
 聖路加国際病院聖ルカ礼拝堂もその教区の一つ。

 マスコミにリークされている香田さんに関する情報では、「安易な物見遊山」「自分探しのお気楽旅行」と喧伝されているが、彼の母親が言うように、心の優しい若者であり、イラク問題への関心も人一倍あったはず。単に物見遊山でイラクに入ったわけではないだろう。

 政府は香田さんのバックグラウンドにある「聖公会」も十分に承知の上で、情報操作をしたといえる。

 仮に、拉致されたのが、政権与党の一員である巨大宗教団体の信者であったとしたら、政府はどう動いたか。コイズミは即座に要求を拒否しただろうか。読売新聞の記者が拉致されたら、香田さんへの罵詈雑言と同じ言葉を読売は自分の紙面に掲載したか。

 ネット上で氾濫する香田さんへのバッシングには吐き気がする。最低な人間たち。

 PM2。六本木・俳優座劇場。テアトル・エコー「ルームサービス」。ブロードウェイにあるホテルに、貧乏劇団が泊りこんで、新作の稽古に明け暮れている。スポンサーが見つからないと、たまったホテル代が支払えない。そこへホテルの重役が査察のために乗り込んできて……。
 ジョンマレー/アレン・ボレッツ作のドタバタ・コメディーで、1937年の初演。やはり、今見ると古色蒼然。休憩15分挟んで2時間30分。一度も笑えず。

 6.00帰宅。子供の誕生会。

10月29日(金)晴れ
 
 風邪をぶり返したか、ノドに痛み。熱っぽい。

 香田さん拘束事件で期限の48時間が過ぎる。正午近く、新華社通信が「ティクリート付近で銃創のあるアジア人らしき遺体発見」の報。ところが、それはロシア報道筋からの引用。さらにロシアはドイツ報道からの情報入手と、まるで伝言ゲーム。真相は不明。この情報に振り回された香田さん一家の心痛はいかばかりか。今回も、人質バッシングはひどく、香田さんの実家には脅迫電話やいやがらせ電話が殺到しているという。この心性卑しい輩。

 28日に開かれた秋の園遊会で、天皇に忠誠心を見せようとしたのか、将棋の米長邦雄が「日本中の学校で国旗を揚げ国歌を斉唱させるのが私の仕事です」とのたまった。彼は都教育委員。ところが、それに対し、天皇は「やはり強制になるということでないことが、望ましいですね」の言葉。さすがに、幼い頃、クエーカー教徒である家庭教師・バイニング夫人の薫陶を受けただけはある。偏執狂的な米長への「民主天皇」の一撃。

 しかし、さっそく、石原慎太郎などは「強制ではなく、公務員の義務」と天皇の言葉に対し解釈改憲。

 この石原慎太郎、最近こんな発言もしている。

「フランス語は数を勘定できない言葉だから国際語として失格しているのも、むべなるかなという気がする。そういうものにしがみついている手合いが反対のための反対をしている。笑止千万だ」
 

 東京都立大を解体し「首都大学東京」を新たに設置する動きの中で、都立大でフランス文学を担当する教員の間に批判が多いことに関して、言い放った言葉だ。

 フランス語が数を勘定できない言葉? まったくもって意味不明な発言。フランス語では数を表現するのに60を超えると二十進法を使う。例えば、「90」は「40×2+10」『quatre(4)-vingt(20)-dix(10)』。これを「勘定できない言葉」と呼ぶのは、学生時代、よほどフランス語が苦手だったのか、あるいは無知なのか。まあ、この人の場合は「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の類だろうけど。

 でもって、こんな右翼国粋主義者に限って天皇の言葉を勝手に解釈し、政治的に利用する。本当に、この人たちは天皇を敬愛しているのでしょうか? 明治維新の際、薩長の倒幕派が明治維新に邪魔な孝明天皇を「暗殺した」という説は有名だが、要は真に天皇を敬愛しているのではなく、政治的に利用しようとする輩が今も昔も闊歩しているということ。本当に天皇の幸福を思うのなら、天皇制の軛から自由に解放して、野蛮な東国ではなく古雅な京都で暮らしていただくのが筋というもの。

 復古主義者たちは、今回の天皇の発言を「なかったもの」としたいし、左派は「天皇の政治的発言」を歓迎しない。どっちに転んでも、天皇という存在は政治に弄ばれる。

 政府は今年度の文化功労者に、井上ひさし、平岩弓枝、蜷川幸雄、山田洋次らを決定。350万円の年金と、文化勲章受賞の資格が得られたわけだが、代々木系の山田洋次監督が天皇から勲章を授与される構図はちょっと想像できないし、井上ひさしならなおさらのこと。60年代反乱派の蜷川はどうか。あと10年して、3人が文化勲章対象者になったとき、それぞれどう対応するか……。

 新潟中越地震の転落事故で、3人のうち真優ちゃんは依然クルマの中。かわいそうに。きょう、父親が自分と同郷で、同じ町出身だということを、Mさんから教えて貰う。お盆に帰省していたというから、もしかしたらどこかですれ違っていたかもしれない。それだけになおさらのこと痛ましく思える。
 祖父は漁協の元職員で、自らHPも開設している。そのサイトを見つけたが、「孫の成長」として紹介されている二人の笑顔。なんともやるせない。早く救出し、父親のもとに送り届けて欲しい。


 PM4.00、劇団鳥獣戯画に行くつもりだったが、パスして帰宅。

10月28日(木)晴れ

 新潟の親子三人生き埋め事故で、3歳の幼児の死が確認。奇跡は再び起こらず……。

 PM5.30、代々木で「アレグリア2」のゲネプロ。一般客も入り、満席。「キダム」に比べればいまいちだが、「超人」たちのパフォーマンスはさすが。人間、あまりにも驚くとポカンと口を開けるものだが、今回も気がつくと口が開いている。たるんだ鋼線の上でバランスをとる少女や「空中ブランコ」のすごさといったら……。ナッチ、ゴマキ、松浦亜弥の三人が宣伝のために来館。笑顔を振りまいていた。
 8.05終演。9.30帰宅。

 米大統領選まであと6日。国際政治経済学者の浜田和幸氏によれば、展開される選挙戦はこれまでにない熾烈なもので、明らかな「不正」を狙った選挙戦術はブッシュ陣営に顕著だという。

 そのひとつが、今回導入されたパネルタッチ式の電子投票システム。製造元はダイボールド社。経営者はブッシュ一族の長年の支持者。「ブッシュ再選のためにはなんでもやる」と言い放ったため、スタンフォード大学やMITのコンピューターシステム専門家が調べたところ、この投票機に細工が施されていることが判明。なんと、タッチパネルでケリーを押しても、3回に1回しかカウントされず、逆にブッシュを押すと1回で3票入るという。
 ワイドショーで小倉智昭が、「タッチパネルなんて、細工しようと思えばいくらでも細工できるんじゃないの」と言っていたが、その素人考えがズバリ当たっていたわけで‥‥。

 また、「オレオレ」詐欺を投票に利用したトリックもあるそうで、これはイギリスの「ザ・ガーディアン」紙の記者がリポートしているという。

「もしもし、こちらは選挙管理委員会です。ご存じないと困るので電話をしています。今回の大統領選挙から電話での投票が認められるようになりました。どの候補か言ってくだされば、この電話で投票を済ませることができます。わざわざ投票所に出かける必要はありません。あなたは誰に投票しますか」

「ケリーに入れたい」と答えると、「ありがとうございます。あなたの1票はすでに不在者投票と同じ扱いを受けました。もう11月2日に投票する必要はありません」と言われる。
 「ブッシュにしたい」と答えると、「分かりました。実は、この電話は試験的にかけているもので、皆さんの電話投票に対する反応を調べているだけです。ご協力ありがとうございます。11月2日には必ず投票所に行ってください」と言われるのである。

 引っかかるのは、高齢者やニュースにうとい有権者。「まさか?」と思う人は、前回の大統領選挙を思い浮かべるといい。
 フロリダ州内だけで2万2000人もの黒人有権者がニセの「前科者通告」を受け、投票資格がないと勘違いさせられ、結果的に、民主党の支持者が多いといわれる黒人が投票しなかったため、民主党候補だったゴア氏の敗北につながった「事件」。

 ブッシュの選挙CMもかなり巧妙なサブリミナルが仕組まれているという。
 「変貌を遂げる世界」と題するブッシュ陣営のテレビコマーシャル1800コマを解析した結果、ブッシュの顔に重ねるように7種類の奇妙な顔が隠されていることが明らかになったという。

 演説するブッシュの背後で静かに揺れるカーテンのすき間から、最初に登場するのは「幼い白人の少女」。次に彼女が手に持っている「動物の形をしたぬいぐるみ」に焦点が移り、その横に「宇宙人」が現れる。その前後には「ピンクの頭蓋骨」が出たり消えたりする。
 そのうち、少女が「男の子」に変身し、次の瞬間に男の子は「アフガニスタンのカルザイ大統領」に姿を変える。カルザイが再び男の子に戻ると、突然、何かにおびえたような表情を見せ、最後は戦火に逃げまどう大勢の裸の子供たちが映し出される。

 奇妙なサブリミナル映像が狙うのは、「ブッシュこそ恐怖を取り除いてくれる存在」とのメッセージといわれる。

 「絶対勝つ」といわれるブッシュ陣営にウラにはこんな策動があるわけで……。

 大学時代の同級生Eから電話。「来年、卒業して○年だから、久しぶりに同窓会やろう」と。その前にプレ同窓会を開くことに。幹事のEが復帰したから、これで定期的に同窓会が開催されることになるだろう。この前、Y君に会ったことを話すと、驚いていた。

 野沢尚「魔笛」読了。オウム事件を連想させるスリリングなハードミステリ。公安警察の暗躍、それに立ち向かう孤独な警察官。「羊たちの沈黙」に登場するレクター博士ばりのプロファイリングを見せる獄中の妻。暗い情念をたたえた物語は、野沢尚の自死を想起させる。


10月27日(水)晴れ

 7.30起床。20階から南港の風景を眺めながら朝食。10.00チェックアウト。維新派の公演場所に寄って、セットの裏側をパチリ。11.30の新幹線で帰京。

 東京駅で夕刊を買うと、「イラクで日本人青年拉致。自衛隊が撤退しなければ48時間以内に処刑」との報。
 小泉は即座に「テロには屈しない」と自衛隊撤退を否定したという。
 またしても「自己責任」の大合唱が巻き起こるのだろうか。「危険地帯に入り込み、捕まった人間が悪い」ーー。家族の悲痛な思いはいかばかりか。第一声で「(息子が)迷惑をかけて申し訳ありません」と、世間に謝る悪しき慣習ができてしまった奇怪な国ニッポン。「自己責任者」の斬首の瞬間を待ちわびている連中もいるに違いない。なんという貧しい精神。貧しい国。もし、青年が自分の家族だとしたら‥‥。見殺しにした人間を絶対に許すわけにはいかない。

 地震が発生し、新潟で被害が大きいとの秘書官情報にも、一時、車に戻っただけで、そのまま映画祭に1時間も居残ったコイズミ。その心性の無神経さ、酷薄さははっきりしている。
 ブッシュにシッポ振ってイラク駐留を延期し、基地の中に引きこもり、1日1億円をイラクの砂漠に撒いている暇があったら、すぐに自衛隊を帰国させて新潟地震の復旧に当たらせればいい。それが税金の使い道というものだろう。

 帰宅し、娘の誕生会。夜、早めに就寝。
 
10月26日(火)雨

 PM2.30、東京駅から新幹線で新大阪。先週行けなかった維新派「キートン」へ。
 5.00過ぎに着いたので、そのままコスモスクエアの「国際交流センター」へチェックイン。3年ぶり?
 
雨と寒さ対策のため、厚着の上にジージャン。徒歩で南港広場へ。例年と場所が異なり、やや海岸寄り。 
 
小雨の中、雑多な屋台が立ち並び、呼び込みの声。架設ステージではミニライブ。
 受付で制作のE藤さんに挨拶。ビール、おでん、シシカバブ、豚汁で腹ごしらえ。最後はホットココアで締め。

 7.15頃開場。場内ほぼ満席。前列にわかぎえふ、コング桑田らリリパ組。

 照明が落ち、激しい雨音と共に維新派「キートン」スタート。雨傘少年少女たちの間から、一人の少年登場。彼が迷い込んださびれた映画館。そこで上映されている無声映画の中にいつしか飛び込む少年。喜劇王キートンとの追いつ追われつの彷徨が始まる。

 「キートン」だけに、セリフはほとんどなし。変拍子ラップも抑え気味。移動式の舞台装置がめまぐるしい場面転換。書割の水平線の向こうを、点滅した照明の巨大な物体がゆっくりと通過する。さすがに維新派、これも舞台美術かと思いきや、これは港湾を通り過ぎるタンカーだった。それが、巨大オブジェに見えるのは維新派のスケールの大きさを物語っている。

 途中、客席とシンメトリーの45度斜面の舞台イントレが左右から延びてきて一つの斜面舞台に。急勾配の斜面を少年・少女たちが歩行するシュールで耽美的な構図。終幕では、その斜面の板が一部取り払われ、巨大な歯車が露呈する。まるで、分解した時計の中身。何十人にも増殖するキートン。迷路、電柱。光と影の作り出す異世界。今年も維新派が見られてよかった、と思う瞬間。

 昨年は国立劇場での屋内公演。やはり野外が維新派の真骨頂。途中、雨が降り始め、配られたレインコートを着用しての観劇。
 今日の雨はそんなに強くなかったが、今回は雨にたたられた公演。斜面舞台や高位置のイントレ上の歩行。危険がいっぱいではなかったか。

 めくるめく維新派ワールドを堪能した2時間20分。
 終演後、松本雄吉さんに挨拶しようと思ったが、「ちょっと体調を崩して、今日は現地にきていないんです。ごめんなさい」とE藤さん。
 屋台村は深夜まで続くが、平日に東京から来ている知人がいるはずもなし。仕方なく、国際交流センターに戻り、早めに就寝。
10月25日(月)晴れ

 PM5、新宿へ。タワーレコードでCD試聴。KEYCOの「レインボー・ビレッジ」購入。
 買わなかったCD。渚ようこの新譜で、阿久悠の作品集。期待したがあまりにもストレートな歌謡曲。渚ようこらしさがない。すぐに飽きそう。加藤ミリヤほか、一群のコピーコントロールCDもパス。

 PM7.00、サザンシアターで文学座「踏台」。
 水谷龍二が「缶詰」の続編として書き下ろした作品。角野卓造、たかお鷹、田村勝彦の団塊世代の負け組トリオ。靴製造会社の社長、重役の座を追われ、今はビルの清掃員。広告代理店のオフィスに派遣されてきたが、そこで左遷された部長と元部下たちの騒動に巻き込まれ……といった、人情コメディー。
 ところが、人間関係も性格描写も杜撰すぎてまったく笑えず。渡辺徹演じる負け組部長氏も、性格が分裂気味で感情移入できず。水谷龍二はオーバーワーク。このところ、水で薄めたような作品ばかり。切れ味のいい水谷脚本はどこに行ったのか。
 K間杜夫も終演後、早々に退散。

 8.50。代々木経由で帰宅。

10月24日(日)晴れ

 子供と一緒に躰道稽古へ。国体のため、いつもの市民武道場が使えず、今日も旧武道場。駅から躰道仲間のOL、M本さんの運転するベンツで送ってもらう。煙草片手にハンドル握るM本さん……。

 大会参加者の稽古が主で、指導員も少なく、年少、壮年は自主稽古。体を動かしただけで、いい運動になったが、物足りない。
 12.00終了。

 帰宅途中、ダイエーのauショップへ。ケイタイの不調を訴えるも、「近くにある正式なauショップに行ったほうが……」
 というわけで、駅前のauショップへ。電話がかかってくると、そのままCメールに切り替わるので、大事な電話に出られないことがままある。「設定の問題ではなく、電話機の問題かもしれません」とサービスセンター。
 修理に出す手間と時間を考えると、機種変更した方が安い。1万円のケイタイをポイント6000円引きで購入。カメラも130万画素と今とは比較にならない解像度。

10月23日(土)晴れ

 AM10、仕事を中途で切り上げ市ヶ谷へ。11.00に川部しのぶと打ち合わせの予定。例年は仕事を終えてから、宴会の途中での参加だが、今年は開始時間が1時間繰り上がり。

 11.00、市ヶ谷。国立印刷局博物館(記念館から改称)。途中でケイタイに電話あり、川部しのぶは1時間遅れるとのこと。
 12.00。高校同窓会スタート。ところが受付に並んだ名札がいっこうに減らない。そこに、人身事故のため中央線の運行に支障が出ているとの情報。例年よりも出席人数が少なく(不況のせい?)、会場がやや寂しいのに、追い討ちをかけるように、電車事故とは。
 それでも、懇親会半ばには出揃い、持ち直す。

 川部しのぶは正午過ぎにレコード会社の担当者と共に登場。54期であり、今回の同窓会では最年少。どこかふんわりとした、和み系の雰囲気。軽く打ち合わせ。M野元校長の教え子の娘とのことで、今回参加のM元校長も大喜び。メインアトラクションであるソプラノ歌手の独唱の後に恩師挨拶を挟んで歌ってもらうことにする。
 宴席でもあり、各テーブルは久しぶりの再会に話の花が咲いている。歌手としては、歌いにくい雰囲気だが、臆することなく、そののびやかなベルベットボイスを披露。前に陣取ったM元校長らの声援を受けて嬉しそう。

 PM3.00、閉会。受付に陣取ってテーブルに積まれた川部のCDの売り子に。飛ぶようにとはいかないが、声をかけると50、60代の諸先輩方が、かわいい後輩のためにと、買って行ってくれる。
 明日もインストアライブがあるとのことで、引き上げる川部と担当者を見送り、代々木へ移動。今年は同期参加ゼロ。そのため、初めて「代々木庵」での幹事二次会に参加することに。
 43期のN本柳智子さん、その叔父のS田さんらと8.00の解散まで歓談。
 途中、大きな揺れがあるも、地下のためか、あるいは皆酔っているためかあまり騒がず。

 亀戸駅でNさんと別れて帰宅すると、部屋の中がすごい状態。積み上げたDVDレコーダーやモニターは倒れるわ、仏壇の中身が飛び出すわ‥‥。
 後片付けをして、早めの就寝。
10月22日(金)晴れ

 仕事を終えて上野へ。「癒処」に行く途中、大学の同級生Y川くんとばったり。こちらは気がつかなかったが、声をかけられて「おおッ」

 不思議と1年の語学クラスのまとまりがよく、卒業してからも2~3年に一度はクラス会を開いているが、幹事役のEくんがこのところ体調不良のため、しばらく開いていない。銀行勤めのY君は最近、この近くの支店に配属されたのだとか。まだ勤務中ということで立ち話で別れる。「癒処」では明るい性格のN田さんと話が弾む。

 PM7.00。世田谷パブリックシアターで「新・明暗」。漱石の未完の小説を永井愛が新たに解釈、現代に舞台を移し変えて、結末を書き加えた作品。初演は主演の山本郁子がケガのため足をひきずりながらの完走。二役なのに足をケガしては演じ分けるのに無理があった。彼女としては不本意な作品だったろうが、これで「リベンジ」することができた。

 舞台装置は初演と同じ。ジグソーパズルか迷路のように、所々を打ち抜いたモザイク模様の背景。妻と元彼女、二人の心を計りかねて、不安の迷宮を彷徨うエリート商社員(佐々木蔵之介)の心理を表すかのよう。永井愛の演出はユーモラスでサスペンスフル。漱石の「近代的自我」とカフカの不条理劇を交錯させた上質な心理ミステリーコメディー。

 初演でも佐々木蔵之介の軽妙な演技が印象に残ったが、やはり蔵之介はうまい。もちろん、下総源太朗、中村方隆ら役者のアンサンブルが見事。演技巧者といえば、なんといっても小山萌子の3役。永井愛作品に欠かせない女優だが、その確かな演技力と華。怖いくらいに「女優」そのもの。
 木野花は相変わらず「独自の演技」だが、今回はやや抑え目。

 本番中にベッドが壊れるというハプニングがあり、客席のどよめきに、蔵之介が少し吹いてしまったが、山本郁子が懸命にフォロー。一瞬芝居が止まりかかったときにはヒヤリとしてしまったが……。
 休憩15分を挟んで3時間5分。役者の演技と機知に富んだセリフを堪能。笑いに笑い、ラストシーンの3人の「不安な立像」にニヤリ……。練熟の永井愛演劇、どこまで深化するか、同時代を伴走できるのはこの上ない喜び。

 青年座のM氏、TエコーのA氏と同列。終演後、ロビーにいた永井さんに挨拶して家路に。

11.45帰宅。


10月21日(木)雨

 父の夢を見ていた。実家の居間。元気そうな父の顔。「なんだ、死んだと思ったのは間違いだったんだ。よかった」と思っている夢。目を覚ますと3.30。トイレから帰って寝るとまた同じ夢。「やっぱり生きていたんだ」と思っている自分。夢の中で少しだけ心が弾んだ。

 台風が過ぎ、電車の運行は通常通り。朝から少し頭痛。風邪が抜けきっていないのか。
 
 会報が刷り上ったので、事務局のS畑さんに車で取りに来てもらう。1500部。ずっしりと重い。

 午後2.30、年に一度の「更改日」。
 PM4.20、鍼。帰り道、アメ横に寄ってシャケトバ(1000円)、カンカイ(1000円)、乾燥キウイ(300円)。
 PM6.00帰宅。
 
 ネットで調べたら、昨日DVDにした「三十六人の乗客」は2000年にNHKアーカイブスで再放送されているという。自分の持っているのは80年頃にやはりNHKが再放送したもの。ベータで、しかも劣化しているので音声は最悪。ウーム。


10月20日(水)台風

 会報も終わったので、ホッと一息。休む間もなく、ラジオドラマ・カセットのデジタル化。

 石田信之さんから電話。スパーク1演劇祭参加の1劇団が「事故」のため、中止になった旨のお知らせ。

 午後、急に上腹部に痛み。年に何度か襲うこの痛み。何だろう? 横になっているうちに、ウトウトと居眠り。PM4、目覚めて、S市の丸井へスラックスを買いに。台風接近で雨風強し。こんなに日に洋服を買いに行く人もないだろうに。6階でお気に入りのINTERMEZZOのジャケット(4万5000円)とスラックス(1万5000円)を購入。

 5.00帰宅。机の上に置きっぱなしにしていた古いベータテープに入っているドラマ「三十六人の乗客」をデジタル化。20年前に再放送を録画したものだったか。夕食後に鑑賞。

 スキーバスの中に紛れ込んだ銀行強盗犯。それを追う刑事。不倫カップル、大学生たち、横領犯……バスの中の人間模様はさまざま。果たして銀行強盗は誰なのか。ノンポリ学生たちが「恋の季節」を歌っている。1969年、第6回プラハ国際テレビ祭でカメラワーク賞を受賞した作品。この頃はまだ手持ちカメラがなく、据え置きカメラでバスの中を撮影したということ。そのカメラワークが受賞の対象になった。脚本は有馬頼義と早坂暁。演出は佐々木昭一郎氏が敬愛する遠藤利男。
 出演者の顔ぶれも多彩。露口茂、日下武史、山谷初男、此島愛子……。60~70年代に活躍した顔ぶれが懐かしい。
 その後、「6羽のカモメ」をデジタル化。10.00就寝。



10月19日(火)雨

 超大型の台風が沖縄に接近中。明日には大阪を通過するとか。PM2.00、東京駅まで行くが、駅員によれば「明日の新幹線は運休の公算が大きいです」とのこと。行きはよいよい帰りは怖いでは仕事に差し支える。安全策をとって、大阪行きは翌週に延期することに。維新派のE藤さんに留守電入れて、そのまま会社に引き返す。

 PM4.30、ぽっかりと時間が空いたので、銀座で映画「誰も知らない」を見る。これは是枝監督による佐々木昭一郎「夢の島少女」への返歌か。「夢の島少女」で埋立地から還ってきた少女の死体は、幼女に姿を変えて再び轟音響く羽田の地に戻る。

 映画を観終わって外に出ると、雨が降り続いている。WレコードのT橋さんから着信。土曜の同窓会に川部しのぶが出席したいとのこと。よかった。同窓生として、プロモーションの一助になればと思ったのだが、それが功を奏したことになる。会場で彼女の歌をぜひみんなに聴いてもらいたい。

 PM8.00帰宅。

10月18日(月)晴れ
 
 朝から猛烈な花粉症状態。仕事にならないので、鼻炎用カプセル服用。耐え切れない眠気と倦怠感に襲われ30分仮眠。これからつらい季節……。

 午後、おととい買ったCDの「川部しのぶ」のモバイルHPでプロフィルを見ていたら、なんとなく、アンテナに引っかかるものがある。「青森出身」としか書いておらず詳しい出身地は不明だが、地元青森のFM局がプッシュしているとのこと。しかし、むつ市のCDショップが大量にCDを搬入しているとの情報も。諸々の情報を総合すると、どうも彼女はむつ市出身ではないかとの想像が膨らんでくる。そうだとしたら、高校の後輩かもしれないではないか。

 ケイタイで地元のBzに電話し、「川部しのぶって知ってる?」と聞くと、やや間があった後、「前に女性3人のユニットで青森のイメージソングを歌ってた一人がソロになったということを聞いたことがある。確かにむつ市出身だよ」との返事。しかも、思ったとおり同じ高校。つまり、後輩。偶然の重なりにびっくり。あの日、銀座で山野楽器店に寄らなければ、CDを手にすることもなかったわけで……。
 これは天の配剤? さっそく担当者にメール送信。

 PM6、帰宅。診療所に行って花粉症の薬を出してもらう。対症的に鼻炎カプセルを飲んでいてもラチが開かない。
 明日は大阪・南港で維新派野外劇。久しぶりの大阪だ。

 本宮ひろ志が「ヤングジャンプ」に連載していた漫画「国が燃える」に対し、「南京大虐殺」の表現が不当だとして抗議され、結果的に集英社が自主規制で「中断」決定した事件。歴史を歪曲するのはどちらなのか、言を待たないが、後世の資料のために、「言論弾圧」を推し進めた地方議員の名前を列挙しておく。作家を守ることもできず、おめおめと引き下がった集英社は言論・表現の自由封殺の道を開いたわけで、出版社としてあまりにも情けない。

集英社問題を考える地方議員の会
  代 表     犬伏秀一大田区議
 事務局長   松浦芳子杉並区議

古賀俊昭・東京都議/土屋たかゆき・東京都議/高橋雪文・岩手県議/鈴木正人・志木市議/白土幸仁・春日部市議/新村和弘・雄踏町議/渡辺眞・日野市議/沢田力・さいたま市議/大田祐介・海老名市議/宍倉清蔵・千葉市議/大関修右・内原町議/上島よしもり・世田谷区議/鴨打喜久男・小平市議/上橋泉・柏市議/吉住健一・新宿区議/大西宣也・町田市議/伊藤玲子・鎌倉市議/井出口良一・大分市議/井上健・国立市議/三宅隆一・川崎市議/梅田俊幸・日野市議/頼重秀一・沼津市議/小畑くにお・浜北市議/三宅博・八尾市議/水ノ上成彰・堺市議/木村徳・国分寺市議/広重市郎・宇部市議/吉田信解・本庄市議/中田勇・新座市議/新井よしなお・町田市議/佐々木祥二・元長野県議/森高康行・愛媛県議/天目石要一郎・武蔵村山市議/岸田正・大田区議/田中健・大田区議/伊藤たけし・渋谷区議/稲川和成・川口市議/井野兼一・塩尻市議/矢本おさむ・南海市議(10/4現在 順不同)


 浦澤直樹の「PLUT0」を読む。手塚治虫「鉄腕アトム」の「地上最大のロボット」をアダプテーションしたもので、やたらとネット上の評価が高いのでどんなものかと思ったのだが、確かに手塚治虫への優れたオマージュではある。しかしそれ以上でもそれ以下でもない。その評価の分かれ目は「ブラックジャック」世代と「スーパー太平記」世代の違いか。

「手塚を超えた」との評も見受けられたが、おこがましい。これは自分だけの妄言なのかと、同世代の漫画評論家でもあるT取氏に電話してみる。「いやぁ、アトムが登場したときにはジーンときましたね。アトム世代にとってはそれだけで評価したい」「手塚を超えた? ウソでしょ。あくまでも、地上最大のロボットの翻案としてすぐれているというだけのこと。後から書いたものが原作を超えなかったらダメでしょう。浦澤直樹が手塚治虫を超えたなんて聞いたら、怒って手塚さんが墓場から出てきますよ」

 さすがに同世代。まったく同意見。究極のオリジネーターである手塚治虫のオマージュ版を「原作を超えた」などとは言わせたくない。しかも、ロボットの造形が陳腐。ノース2号の変身はいったい何?といいたくなる。ロボットの造形ひとつとっても、手塚治虫のオリジナリティーに匹敵するキャラクターは手塚以後の漫画家に皆無。皆、手塚の手のひらの上で踊っている孫悟空のようなもの。こんなこと言うと、ブラックジャック世代に「手塚治虫原理主義者奴!」と呼ばれるのだろうけど。


10月17日(日)晴れ

 7.00起床。躰道稽古へ。北A霞駅前でY先生が車で待機。国体で市民体育館が使用中のため、今日から月末まではいつもとは別の場所。駅から離れた神社脇の古い武道所。狭く、着替える場所もなし。女性陣がちょっとかわいそう。

 まだ風邪が抜けず、旋条蹴りをするとめまいでフラフラ。学生選手権大会が行われているため人数は半分。T橋さんから新しい型を伝授。12時まで。
 駅まで女子大生のM山さん、女子高生のK池さんと一緒。「就職活動中なんですよ。出版社も受けようと思っているんです」とM山さん。

 PM1.30、下北沢。本多劇場で沢竜二の芝居。見に行かなくてはと思いながら行けずに今日まで。今日が楽日なので、なんとかすべりこみ。沢式みゅーじかる「無法松の一生」。
 大衆演劇ではあるが、きっちりした構成・演出。「柔道一直線」の櫻木健一、北林早苗など懐かしの顔ぶれがゲスト。さすがにベテラン、芝居も歌も一流。「大衆演劇」だと思って、若い一般客は敬遠しているのかもしれないが、これこそ一級のエンターテインメント。わかっていても、松の最期に思わず涙。祇園太鼓の乱れ打ちも見せ場。69歳の沢竜二、まだまだ若い。

 終演後、打ち揃って客を送り出す出演者たち。これが大衆演劇のいいところ。沢氏に挨拶して劇場を後にする。ジーンズショップで秋物シャツとジャケットを購入。
 6.00帰宅。家族で外食。ダイエーで新しいパジャマ。8.00帰宅。


10月16日(土)晴れ

 必死で仕事を終わらせ、午後から会報の校了。校了と同時進行でパソコン画面に向かって編集後記を書く。なんという綱渡り。
 というわけで、スパーク1演劇祭は仕方なしにパス。3時校了。その後で読み返したら、1箇所大きな赤字。赤字は終わった後に見つかるもの……。

 PM5、銀座。ル テアトル銀座で「ローズのジレンマ」。黒柳徹子がピュリッツアー賞を受賞した女性作家ローズ役。5年前に恋人を亡くして以来、スランプに陥り、収入は激減。助手のアイリーンは贅沢を切り詰め、新作を書かせようとするが、ローズは毎晩のように現れる恋人の幽霊との甘い生活にひたるばかり。しかし、恋人の幽霊はあと2週間でこの世とさよならすることになり、自分の書き残した未完成の小説を、ある若手作家の手で完成させることを提案する。

 ローズ(黒柳徹子)と恋人ウォルシュ(岡田眞澄)、助手(川上麻衣子)、若手作家(うじきつよし)の4人が織り成すヒューマン・コメディー。昨年初演されたばかりのニール・サイモンの最新作。
 「ジュリア」のリリアン・ヘルマンと「血の収穫」のダシール・ハメットをモデルにしたものとか。
 黒柳徹子は相変わらず、そつのない演技。屈折した知性派作家を素直に造形。岡田眞澄もブレのない演技。川上麻衣子も複雑な役柄を好演。うじきつよしはすっかり役者稼業が身についたようで、危なげのない演技。うまい。

 それにしても、自分の娘を里子に出した過去があり、死んだ恋人の亡霊と生活している作家……という徹子の役。最近、息子を亡くしたばかりの岡田眞澄が亡霊という役。私生活と舞台がこれほど交差するとは。二人の私生活に重ね合わせて複雑な気持ち。

 土曜のためか、後方の席は空席が目立つものの、熱狂的なファンが多く、カーテンコールは一部スタンディングオベーション。
 7.35終演。

 閉店間際の山野楽器に立ち寄り、CD3枚購入。
高田渡トリビュート、マキ凛花「マネチカ」、川部しのぶ「DOUBLE FANTASY」。
 マキ凛花はポップでキュートな、いかにもな昭和歌謡ふう。古いSP盤ジャズを意識したようなボーカル・オフ気味の録音。川部しのぶは青森出身。「バラード・ルネッサンス」の惹句のとおり、豊かな表現力。イーグルスの「DESPERADO」が聞かせる。

 9.00帰宅。iPODの曲を整理。
0.00就寝。

10月15日(金)晴れ

 明日までに会報を校了させなければ。仕事もハードだし、気ぜわしい一日。

 11.45、カトケン事務所のN島さんとK藤忍が立ち寄ったてくれが、ちょうど締め切り間際の厳しい時間。彼女たちに会う時間も取れず、そのまま帰してしまった。せっかく来てくれたのに悪いことをした。

 午後、会報仕上げ。すべて個人作業だから時間がかかること。4.30まで。疲労。事務局のS畑さんにゲラを取りに来てもらう。綱渡りの作業にようやく灯り。しかし、誤植というのは思いもよらぬところから見つかるもの。それはもう仕方ない。

 休憩時間、会社の先輩Y氏がぽつりと「○○君の田舎は原発ができるんだって?」と話しかけてくる。「はぁー……」と、あまり気のない返事をすると、「そうか……。この前、ニュースで見たんだよ、マグロで有名なのに原発ができたらどうなるんだろうなぁ。昔、マグロ漁船のナントカ丸が被爆して原爆マグロっていうのがあったけどな、原発マグロは……」

 「原発マグロ」ーーこの言葉だけは今まで活字にするのを避けてきた。田舎で町興しをしているグループの活動や努力を思えば、「原発」「マグロ」から容易に連想される「原発マグロ」という言葉を使うことには心理的な抵抗があった。第五福竜丸のビキニ環礁被爆事件から50年。連想するのはある世代以上だろうが。

 できることならこの連想ゲームはしたくなかった。しかし、原発設置が規定路線となり、運転開始時期まで決定した今、そんな「目隠し」は無意味になるだろう。

 何年か前、「原発、原発って騒ぐと町のイメージが悪くなるからマスコミはあまり触れて欲しくないよ」と地元の年配の人が言っていた。一般の町民も同じだろう。
 だが、今日のY氏の発言はこれから普通の人たちが持つであろう感想だ。今はまだほとんど大間原発がマスコミの話題に上っていないが、これから運転開始が近くなればいやでも大間原発の存在はクローズアップされる。「隠しておける」わけがない。

 Y氏などは体育会系で、まったくのノンポリではあるが、やはり世代的に「原爆マグロ」を連想した。
 今から覚悟しておいたほうがいい。大間とマグロと原発は一つの共通テーマで括られる日がやってくる。拓郎が「いつか滅びるこの海が♪」と歌った70年代に大間の原発誘致騒ぎが始まり、奇しくも自分の故郷の海が国家と企業によって「盗まれ・滅びる」日のスタートになったのだった。20数年、ささやかな抵抗を続けてきたが、もはや……。

 海に放射能を垂れ流す原発が漁業と共存できるなどありえない話。
 使いたくなかった「原発マグロ」の5文字。しかし自分にウソはつけない。原発問題に触れることなく故郷は語れない。

 「もう漁師は終わりさ。原発ができれば沿岸漁業が廃れるのは目に見えてる。オレの代で漁師は終わりだな」
 生まれついての漁師である叔父がお盆につぶやいた。
 
 ふとグーグルで「原発まぐろ」を検索したら1件ヒットする。「原発マグロ」でも1件。故郷のO畑町の郷土史を研究している人。飄々・一徹な風流人? もう一人は仙台の小学校教員。こちらも反骨精神旺盛な同世代と見た。どちらのサイトも滋味がある。偶然の副産物。

 7.30帰宅。会報のチェック。


10月14日(木)晴れ
 
 朝起きたらすっきりさわかや。風邪などどこ吹く風。
 
 午後、会報仮組み。8ページ建てで3時間。披露困憊。帰りに上野でマッサージ。T橋さんとおしゃべりしながら、途中ウトウト。
 7.00帰宅。10.00、布団の中で吉田光彦氏の新刊マンガ「ばく食え」(高橋克彦原作)を読みながら眠りに就く。

10月13日(水)曇り

 9.30起床。同窓会報の割付。3時まで。疲労困憊。夕方持ち直し、昨夜録画した「東京キャンティ物語」を見る。60年代文化発信地だったキャンティに集った有名人たち。73年デビューの松任谷由実もその一人。「ミスリム」ジャケットのグランドピアノは川添梶子氏所有のもので、衣裳もサンローランでそろえてくれたとか。歌とインタビューと物語で綴る2時間。白井晃が内山理名と主演。いい役どころ。

 クレモンティーヌ、スガシカオはいいとして松浦亜弥の「ひこうき雲」はいただけない。まるで演歌。それに、本家・松任谷由実の「青い影」も。ヘタなだけでなく、英語の発音が悪いことが露呈してしまった。想い出の曲とはいってもこれは明らかな選曲ミス。見終わればなんだが上澄みだけのあっさり番組。オトナの番組にはやや程遠い。

 I病院からハガキ通知。「良性」とのことでホッと一安心。

10月12日(火)雨

 今日も朝から雨。昨夜は早く寝たもののなかなか寝付かれず、10時、11時、午前1時……結局眠ったのが2時過ぎ。目覚めのつらさよ。ノドに違和感。咳、クシャミ、鼻水がないのが救い。

 午後からなんとか持ち直し、3時過ぎに退社。ビックカメラでDVD-R50枚、7329円。半年で5000円も値下がりしたわけか。
 PM4.30~5.30、上野でマッサージ。風邪で肩やら足腰がガタガタ。
 PM7帰宅。早めに就寝。布団の中で寺山修司の「新釈稲妻草紙」。読み始めたら止まらず、11時、読了。初演「身毒丸」のように、壮大な見世物オペラにしたらさぞ面白いだろうに、いかんせん、差別表現がネックになるか。

10月11日(月)晴れ

 朝まで悪夢の連続。田舎の実家に行って掃除をしている夢、ほこりが積もって「ああ、空き家になるというのはこういうことか」と思っている。もうひとつは割付用紙の上に白塗りの暗黒舞踏の舞踏手たちがびっしりと張りついている夢。振り払っても、同じ夢を繰り返し繰り返し朝まで見る。同窓会報の割付がまだ一枚もできていないことが気にかかっているためだろう。このままで果たして会報はできるのか。仕事の合間をみて手がけるのはほとんど綱渡り。来年からは何か対策を考えないと消耗するばかり。

 11時に起きて、軽い食事。病院の薬を飲んだらまた眠くなって布団の中。3時に目が覚め、また薬。熱さましシートをひたいに張って寝たら、少し気分が楽。夕方起きて昨夜の”深夜劇場にようこそ”「夏の夜の夢」をDVDにダビング。少し熱が下がったので気分は少し上向き。たかだか風邪なのに、こんなにも気持ちが落込むとは。

10月10日(日)雨

 9.00起床。急用で、W松武史さんにメールを入れたら「今、新橋演舞場で本番中……」と丁寧な返信。悪いことしてしまった。

 なんとなく体がだるく、午後も寝たり起きたり。疲れがたまっているのか。あまりにも体がだるいので熱を計ったら38度。自分にとっては高熱。すぐに病院へタクシーで急行。1時間待ち。子供を抱いたお母さん、お父さんが多い。「風邪でしょう」ということで、薬を貰って帰宅。8時には就寝。

10月9日(土)台風

 台風接近。午前中の雨が午後からパタリとやみ、まさに嵐の前の静けさ。

 台風といえば小学2年の時、学習雑誌に連載されていたサトウサンペイの四コママンガを思い出す。台風接近、主人公は急いで風下にハンモックを吊るす。すると翌朝、扇風機やら冷蔵庫、ラジオがそのハンモックに入っていて、ニッコリ……。台風の怖さよりも、ラジオとか扇風機など当時は貴重な電化製品が飛んでくることに期待していたわけだ。もっとも、近所の家に冷蔵庫などあるはずもない。風速17㍍以上を台風と呼ぶのもその4コママンガで知った。
 しかし、きょうの台風はハンパじゃない。静岡・石廊崎では最大瞬間風速67.6㍍。観測史上最高とか。PM3、雨の中を三軒茶屋。スパーク1へ。演劇祭の審査を引き受けた以上、台風だからといって見逃すわけにはいかない。東京惑ワズ「ぐんそうと私 04」
 
 イラクに派兵されたひ孫からの手紙を読む一家。傍らでひねもす居眠りをするボケた曾祖母。彼女には戦争によって夫と引き裂かれたつらい過去があった。
 2004年と1942年のパラオ諸島の激戦地を往還しながら描かれるもうひとつの戦争。
 結婚わずか3カ月で召集された夫は、パラオのジャングルで手榴弾の犠牲となる。彼が霊魂となって、遺された妻の一生をみつめる……。設定はありきたりだが、役者たちの情熱はすばらしい。聞けば、新宿ゴールデン街の飲み屋のマスターたちで結成された劇団とか。
 だからというわけでもないが、時代考証に凝っていて、陸軍兵隊たちの軍服や銃剣など、実にリアル。ただ、演出はやや冗漫。あと30分切り詰めて、凝縮させたほうがスッキリする。

 PM5終演。台風で雨風最高潮。それでも観客は30人ほど。劇団員も感激の面持ち。
 
 外に出ると雨と強風。傘の骨が折れるほど。渋谷に移動し、ハチ公口に出ると、町は水没状態。電車もベタ遅れ。小田急などは運転休止。これは予定を変更して家に帰らないと、電車がストップするのでは。劇団もこれでは中止にするのでは……と逡巡。今日を逃せば予定が玉突きになるので、思い切って阿佐ヶ谷へ。

 6.00、ゴールド街はほとんどシャッターが下り、開いてる店が少ない。2階のうなぎ屋でうなぎご飯1500円。6.30、ザムザに行くと、受付に傘の列。こんな悪天候でもお客さんは来るのだと感心。

 お茶を飲もうとラピュタに入ると、PANTAさん。左目に筋肉少女帯メイク。「?」と思ったら、ソワレの前に大槻ケンヂのミニライブがあるのに、大槻氏、台風のために到着が遅れているそうな。それで、シャレ好きのPANTAさん、大槻メイクで出て行って「場つなぎ」しようとの算段。「伝説のロッカーがこんなことしていいのか」と笑わせるPANTA。一緒のSki(制服向上委員会)のメンバーらとケイタイカメラで大はしゃぎ。

 7.20、劇場に入ると観客100人ほど。依然大槻氏到着せず。で、PANTA登場。思わぬ「余興」に盛大な拍手。
「昔、ライブで筋肉少女帯と一緒になったとき、少女帯だから女だろうと思ってて、終わったあとも、あるバンドをずっと筋少だと思ってた。それがSHOWーYAの寺田恵子で……。フリッパーズギターを紹介されたときも、彼らはギター屋さんなんだと勘違いしてた」
 一人漫談絶好調。で、PANTAの後は大槻ケンヂの登場。メイクをしない素顔の大槻ケンヂを見たのは初めて。ギタリストのサポートで3曲披露。今日のお客さんは、PANTAと大槻ケンヂのダブルヘッダーで料金以上の得をした。

 7.45~9.45、月蝕歌劇団「ステーシー」。15~17歳の少女たちがある日突然ゾンビ化し、人間を襲う。彼女たちを抹殺するにはバラバラにし、165の肉片にしなければならない。血のり飛び散るスプラッタ純愛劇。
 大槻ケンヂの原作とはいっても、いつもの月蝕と違和感ない舞台。脚本・演出の高取氏が「鉄人28号」の横山光輝へのオマージュを折り込むなど、自分の世界に引き込んでいるためか。

 終演後、森永理科と立ち話。「あの大阪弁はムチャクチャなニセ大阪弁なんですよ」「ゾンビの動きで体に負担かけているからあちこち痛くて」とか。

 松宮、一ノ瀬、高取さんらと近くの居酒屋に移動。飲み会。宮西計三氏を紹介される。宮西氏といえば、独特の作風で知られるイラストレーター&漫画家。ひさうちみちお、奥平衣良らとともに70~80年代にかけてよく読んだものだ。やはり独特の雰囲気。

 11.45、終電に遅れるので宴席を辞去。いつもならこれで途中、川口あたりからタクシーになるのに、不覚にも台風の後遺症を計算に入れてなかった。阿佐ヶ谷駅のホームで待てど暮らせど電車は来ない。「45分遅れ」とのアナウンス。0.45分に阿佐ヶ谷? それではとても間に合わない。荻窪方面は動いているので、荻窪にバックして、新宿へ直行。電車の中からシーザーにメール。新宿で飲んでいるらしい。
 新宿0.35。駅員に聞くともう赤羽までも電車の接続はないという。山手線も池袋止まり。仕方なしに、池袋からタクシー。帰宅は1.30。タクシー代9910円。高くついてしまった……。

10月8日(金)雨

 朝から雨。台風が接近中。

 PM5、池袋タワーレコードでDVD「トラ・トラ・トラ2002」購入。PANTA、三上寛、中山ラビ、佐渡山豊WITHローリー、遠藤ミチロウ、とうじ魔とうじetc濃いメンツの沖縄ライブ。

 PM7.00帰宅。

 「死んだ子供の年を数える」という言い方があるが、自分の場合、いまだに死んだ母と父の年を数えてしまう。母が生きていれば今月27日で74歳。父は来月30日で76歳。健康でさえあれば、まだまだ人生が残っていたはずなのに。

 ジョン・レノンが生きていれば明日9日で64歳。「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」に収録されたレノン--マッカートニーの曲に「When I'm Sixty Four」がある。

When I get older losing my hair
many years from now
will you still be sending me a valentine
birthday greeting, bottle of wine
If I'd been out till quarter to three
would you lock the door
Will you still need me
Will you still feed me
When I'm sixty-four

「今から何年もたって 僕がトシを取って 頭が薄くなっても バレンタインデーや誕生日にカードやワインを贈ってくれるかい?
……僕が64歳になってもまだ僕を必要としてくれるかい? そして食事を作ってくれるかい?

 レノンの迎えられなかった64歳。私は迎えられるだろうか。


10月7日(木)晴れ
 
 深夜零時前、珍しく、ぐっすりと寝入っている頃、突然の揺れ。地震。慌てて飛び起きて、グラグラと揺れている書架を押さえる。ここまでは毎度の地震光景。じきにおさまるのでたいした心配はしないのだが、今回は違う。大きい。抑える手をはじき飛ばすような大きな揺れ。東京に来て30年、こんな地震は初めて。中学の時に十勝沖地震は体験しているが、あの時、電信柱がユラユラと揺らめいた光景を思い出す。大きな声で隣室の家族を呼び起こす。さすがに大人は起きるも、子供二人は夢の中。数分後に揺れはおさまるが、最後まで彼らは目を覚まさず。……ウーム。

 明け方、友人のTMの夢を見ていた。目が覚めると、枕もとのケイタイにTMからメール。「今、東京に来ている」と。予知夢?

 夏休み中のMくんの代打。今年一番の忙しさ。

 PM4.20、K記念病院で鍼。PM5.30、三軒茶屋へ。回転寿司で夕食。1900円。高い。

 TSUTAYAでCDやDVDを見るもめぼしいものなし。PM7、エスカレーターで降りようとしたら、三枝健起氏がエレベーターを上ってくる。すれ違い。三枝氏も気がついたようで笑顔で目礼。3階のパブリックシターで「リア王」か。

 1階に下りて、トラムへ。遊機械オフィス「溺れた世界」。白井晃がゲイリー・オーウェンの作品を演出。醜い者によって美しい者が支配される世界。醜い者(市民)は美しい者が放つ光を恐れ、彼らを抑圧し、迫害する。市民である青年ダレンは、その社会を嫌悪し、いつか自分を救いに来る天使が現れることを夢想する。そこに、一組の美しい女と男が現れる。市民に追われた女性ターラとその恋人ジュリアンだった……。

 ダイアローグとモノローグが複雑に入り混じり、詩のような台詞。とっつきにくい構造の舞台ではあるが、映像と照明の美しさに魅入られてしまう。初舞台の上原さくら大健闘。つみきみほは「醜」の側の女を鋭角的な演技で好演。

 9.00終演。帰りしな、友人の岩崎みどりさんと久しぶりに邂逅。「明日も取材なんです」と元気そうな顔。何年も会っていないはず。駅のホームで電車を待っていると、後ろから顔を覗き込む人。アイドル探偵団の北川氏。「事務所が三茶なんですよ」と。これから映画の完成披露パーティーに行くところとか。相変わらず忙しそう。
 家に着くと小松克彦氏からメール。なんだか、今日は80年代の友人の連鎖の日。

 
10月6日(水晴れ

 久しぶりに朝寝。今日は同窓会会報の割付をしなければ。ストーブも出さなければならないし。やるべきことが多すぎ。躰道稽古は休みにしないと体がもたない。

 父のバイク免許証更新のお知らせが転送されてくる。そうか、来月は父の誕生日。電話して、失効手続きを。午後、郵便局で過振込みの年金を返還。半年たっても事務的な手続きが残っている。

 郵便局での光景。50代のオジサン職員が受付窓口で悪戦苦闘。東南アジア系の女性が口座を作りたいらしいが、その名前が日本語にはなじまない文字らしい。「日本語で何と読むんですか?」などと聞いている。やがて、その文字をパソコンで入力する段になって、どうしたらその文字を打っていいかわからない。隣の窓口の若い女性職員に助けを求めると、「ヘルプを参照して打てばいいんです」とそっけない返事。ややあって、もう一度「どうやるのかなぁ」と件のオジサン。「そんなこともわからないの」とでも言いたげな顔で、「そうじゃなくて……なかったらカナで打てばいいんですよ」と言うが、自分は腰を上げない。そんな状況が30分。オジサンの窓口がふさがっているので、順番を待つ人がたまってしまう。汗をふきふき、苦闘の末にようやく文字がみつかったようで、東南アジア系の女性を笑顔で見送り。「ありがとうございました」。
 
 フーッ。なんだかなあ……。日本全国でこんな光景が繰り広げられているんだろうな。パソコンに不慣れな世代が、仕事場で若いコたちに蔑みの目で見られる。パソコンができないというだけで、年長者をないがしろにする若手社員。セクハラと同じように、パソハラが蔓延する世の中。イヤな時代。

 貸し納戸からストーブを出してくる。今年初めてのストーブ点火。まだTシャツでも十分なのだが。
 ついでに自転車新調。やはり、ないと不便。防犯登録込みで8000円。今度は盗まれないようにしないと。
 洗濯機から水漏れ。たぶん前回と同じ、振動でホースに亀裂が入ったのだろう。これは構造欠陥だ。

10月5日(火)雨

 秋の長雨か、それにしてもよく降り続く。

 9月末で定年前退職した先輩のアナを埋めるため、以前よりも仕事の量が増え、結構キツイものがある。

 PM4.50、下北沢着。5時からのシネマアートンにぎりぎりセーフ。観客数人。寺山修司脚本、篠田正浩監督の「無頼漢」。1970年の作品。

 老中・水野忠邦(芥川比呂志)の天保の改革を時代背景に、お役者志願の遊び人・直次郎(仲代達矢)と美しい花魁・三千歳(岩下志麻)との恋、直次郎と母親(市川翠扇)の確執、そして、河内山宗俊(丹波哲郎)、下層貧民たちを組織する三文小僧(山本圭)の一揆などを織り交ぜた極彩色の時代絵巻。

 母親を川に捨てるが、不幸を絵に描いたような暗闇の丑松(小沢昭一)が連れ帰ってしまうなど、母・妻・夫の愛憎描写は”寺山節考”。闇の中から現れる異形の者たち、3人の按摩、3人の娘たちの囁き、見世物小屋、全面に展開する浮世絵ーー随所に寺山演劇らしい要素やビジュアルが満載。すでに天井桟敷を旗揚げしているわけだから、このビジュアルは篠田正浩色というよりも寺山色が濃厚なのか。

 ルンペン・プロレタリアートの武装革命に対し、「一揆で権力は倒せぬ。権力は代わるだけだ」とうそぶく水野忠邦。この水野の姿、改革・改革とお題目のように唱えることによって国民の支持を集めている今のコイズミとそっくりではないか。「ウソも100回繰り返せば真実になる」と言ったのはナチス・ドイツのヨーゼフ・ゲッベルス宣伝大臣。「郵政民営化」が国民にとって必要な「改革」なのか検証もせず、「改革」を叫ぶことによって目くらましされている国民は、思考停止に陥り、ゲッペルス=コイズミの意のまま。「悪政」を「改革」とうそぶくコイズミと水野忠邦。権力の情報操作は何百年たっても変わらない。

 映画が作られた1970年。まだ70年安保の余燼がくすぶっていた時代。映画で最後に打ち上げられる「花火」は革命への無念の思いが込められた祝砲か。

 それにしても俳優陣の豪華さよ。
 渡辺文雄、米倉斉加年、中村敦夫、蜷川幸雄、垂水悟郎、藤原釜足、山谷初男、東恵美子、太地喜和子、浜村純 、小林昭二。それに若き日の蟹江敬三が一揆の仲間役。セリフも出番も長い。後年、なぜか寺山修司を嫌った蜷川がこの映画に役者として出ていたとは知らなかった。
 6.42終映。外はまだ雨。

 本多劇場に移動して、流山児★事務所「心中天の網島」。偶然にも篠田正浩監督の映画で有名な作品。山元清多の脚本を篠井英介が演出。流山児祥が黒テントの斎藤晴彦ばりのオペレッタ独唱。曽根崎心中から17年後。お初・徳兵衛の幽霊が現れ、近松門左衛門に、心中ものはもうやめて……の頼み。夢から覚めた近松にもたらされた新たな心中事件。それが治兵衛・小春の「心中天の網島」。

 素材としては面白いのかもしれないが、設定を現代風にし、遊女を昭和初期のカフェで働く女給らしいコスチュームにしたのはいかがなものか。治兵衛と妻のおさんの関係もサザエさんのようなホームドラマ。時代設定を変えても人間の愛憎は不変とはいっても、それには限界がある。近松の時代の身分制度に基づく人間関係はその時代だけのもの。現代劇として成立させるのはあまりにも倫理や思想の枠組みが違いすぎる。
 二幕後半、純白の死装束をつけた二人の道行きシーンには違和感がない。コスチュームで時代背景を限定しないで、最初から無国籍・無時代で通したほうがよかったのでは。眼鏡を忘れて行ったため、役者の表情がつかめなかったせいもあるのか、消化不良。

 8.40終演。

 ロビーで伊藤裕作氏と立ち話。「女体道場っていう劇団が面白いですよ」と裕作氏。雨だし、疲労困憊なので飲み会はパスして家路に。途中まで松本祐子さんと一緒。クミジャの最後の演出が松本さん。もちろん、すべてを知っていたとのこと。「でも、稽古しているうちに、どんどん元気になって……」。
 来年5月にはアトリエでT典彦の書き下ろしを演出するそうなので楽しみ。
 10.30帰宅。
 ネットオークションで手に入れた寺山修司「新釈稲妻草紙」を紐解くも、疲労蓄積でそのまま布団の中。

10月4日(月)雨

 一日中雨が降り続く。

 PM5、中野坂上へ。宝仙寺で金久美子の通夜。早めに着いたので、喫茶店で待機。お寺への通り道なので、客は通夜に行く弔問客らしき人が多い。梁山泊のK村ともみがいたので挨拶。品川徹氏も。

 PM5.45。宝仙寺着。外波山文明、鄭義信、崔洋一らが裏方を務め、忙しく立ち働いている。記帳を済ませ、係員に促されるまま椅子席に。前方の列に近童弐吉、三田村周三、木場勝己の顔。

 白い花に覆われた祭壇に横たわる白い棺。その前でクミジャの遺影が微笑む。写真家のM内勝氏がすみだパークスタジオで芝居の稽古の時に撮ったスナップ。「何か手に持っていて、こちらを振り返った瞬間の写真」とか。10年ほど前か。M内氏は3月の「アジアン・スイーツ」の際に、クミジャから新しいプロフィル写真の撮影を頼まれたというが、写してみたが、やはりかすかなやつれが目立ったため、それをボツにし、「この次に撮り直そうよ」と話したという。

 6時に導師が入場し、読経。そして焼香。喪主の父・二徳(ジトク)氏と母親が弔問客に向かって一礼。粛々と進む焼香の列。別室で精進落とし。

 松本修・黒木美奈子夫妻、田村泰二郎、大久保鷹、唐十郎、庚芳夫、三枝健起。そして、梁山泊の旧メンバー。岡島博憲、鯉沼敦、石井ひとみ、徳永廣美、州永敬子、朱源実。現メンバーはコビヤマ洋一、三浦伸子、梶村ともみ、渡会久美子。それに秋元さん。
「久しぶりに会うのがこんな席とはね……」と州永さん。

 ほとんどの人が3月公演を見ており、それがクミジャの最後の姿になったとのこと。
 途中で両親が参列者に挨拶。

「二人の子供が親より先に逝ってしまい、これほど悲しくつらい事はありません。子供の頃から手のかからない娘で……。今まで楽しい思い出をもらったことに感謝したい」との父親の言葉に、会場からすすり泣きの声。久美子の弟も一昨年亡くなったのだという。あんなに仲の良かった弟が先立っていたとは……。知らなかった。

 同じテーブルに安保由夫、唐十郎、三枝健起の各氏。「常盤座で千年の孤独を上演した時、ロビーで打ち上げやったよね。クミジャにお酌してもらって……あの時は楽しかったなぁ」と唐さん。
 酒の強かった唐さんのお兄さんが赤塚不二夫とウィスキーの飲み比べしたエピソードなどで周囲を湧かせる。

 20年来、気にかかっていた「冒険ダン吉の冒険」のことを聞いてみたら、「あれはボクのホンじゃなくて、宮本研さんの脚本ですよ」
「デュエットは……誰だっあかなぁ。中島みゆきじゃないですね。彼女とは「安寿子の靴」が最初だったから」
 そばから安保さんが「あのとき、ボクが音楽をやる予定だったんだけど、つぶれちゃったんだ」
「歌ってたのは烏丸せつこですよ」
 と三枝氏。なんと、あのドラマの演出は三枝氏だったのだ。
「じゃあ、音楽は兄貴の成彰?」と唐さん。
「詞はボクでしょうね。……よう子がいたよ♪っていう歌詞の”よう子”が田中容子かっって? そうだったかもしれませんね。あの(大きな)田中容子ですよね」
「冒険ダン吉、もう一回聴いてみたいね。健起は持ってるでしょう。今度聴かせてよ」と唐さん。通夜の席で、長年の疑問が氷解するとは……。

 8.30、入り口付近の参列者が一斉に立ち上がったのを機に、全員が帰り仕度。義信に挨拶。黒テント時代からのクミジャの「同志」であり、まるで本当のきょうだいのようだった義信。最後の舞台となった「アジアン・スイーツ」が期間も場所も制限されていたのは、彼女の残された命を考えてのぎりぎりの選択だったという。

 クミジャの遺作は原一男監督の「またの日の、知華」だが、その前の作品が「千の風になって」(金秀吉監督)。
「クミジャさんが30歳の頃、結婚はしないの?って聞いたら、”そうね……。しなくてもいいの。だってあと50年も女優を続けられるんだもの”って言ったのが印象に残っている」と俳優のO島氏。
 千の風になり、またいつかどこかで女優として生まれ変わるであろうクミジャの魂よ安らかなれ。


10月3日(日)雨

 朝から大雨。朝刊を開いて社会面を見た瞬間、「ああ……」と絶句してしまう。

 死亡ケイに囲まれた写真は女優の金久美子(キム・クミジャ)。やはり……。胃がんで胃の全摘手術を受けたのが去年だったか。「もうダメなんです。彼女は」とある俳優が酒席でつぶやいていた。それでも、3月には盟友・鄭義信(チョン・ウィシン)が彼女のために「アジアン・スイーツ」を書き下ろし、舞台で元気な姿を見せていたので、ホッとしていたのに、あれはやっぱり鄭義信の彼女への最後の餞だったのか。鄭義信には珍しく、ハッピーエンドの芝居。それも純白のウェディングドレスに身を包んだクミジャの満面の笑顔で舞台は終わった。実生活で着ることのなかった花嫁衣裳。クミジャにとって、あのドレスはなによりの贈り物だったに違いない。

 女優・金久美子を初めて見たのは70年代、黒テントの「西遊記」だったか。その後、梁山泊に移ってからは主演女優として活躍。不幸にして梁山泊と袂を分かってからはマスコミに活躍の場を移したが、舞台への情熱は更に増し、数多くの舞台に出演している。

 キム・ホソン監督の「狂った愛の歌」でアジア太平洋映画祭最優秀主演女優賞を受賞したのは90年。その直後に、新宿の喫茶店で2時間ほど話を聞いたことがある。クリスマス・イブの日だった。
 「なんのために演劇を選んだのか……。同じ民族同士が争ったり、差別することがなくなり、世界がひとつになることが私の夢。その夢のために、女優は……死ぬまで続けたい」。
 ちょっとうつむきながら気恥ずかしそうに答えたクミジャの顔が今も目に浮かぶ。北と南に分断された祖国への複雑な思い。「夢と理想」という青臭い質問に真摯に答えてくれたクミジャ。梁山泊を離れてからは、あまり話をする機会もなかったが、昨今の韓流ブームを彼女はどう見ていたのだろうか。上滑りな流行? 親善への一助? 

 「イブだけど、今日は家で待ってる弟と過ごします」
 気遣いとやさしさの人。世界がひとつになるーークミジャの夢がいつか叶いますよう。合掌。


 AM9。S木市の道場に集合。1時間稽古。その後、電車で綾瀬の東京武道館へ移動。12.30から昇級・昇段審査。待ち時間が長く3時過ぎに順番。受験を決定して1週間。やはり付け焼刃はダメ。実技の途中で、頭の中が真っ白。ごまかしようがなく、そのまま終了。こりゃ、良くて初級。二級飛ばしなど夢。悄然と家路に。5.00帰宅。

 PANTA対談集「万物流転」届く。


 
10月2日(土)晴れ

 PM2.30、原宿I病院で検査。
 PM4.30、下北沢へ。アートンで寺山修司脚本映画を見ようと思ったが、5.00開始6.45終演ではスパーク1演劇祭に間に合いそうもない。ディスク・ユニオンを覗いて少し街をぶらついてから、タクシーで三軒茶屋へ。ほとんどワンメーター。近い。これなら映画を見ても間に合ったかもしれない。

 PM7、スパーク1でヒューリッド・プロデュース「ドロッパーズドロップ」。舞台には机が一つ。両サイドにダンボール箱。倉庫の一角を利用した芸能プロダクションの事務所、という設定。机に座っているのは、売れない脚本家。そこに一本の電話。テレビの子供向け戦隊アクション番組のゴーストライターの依頼。「ゴースト」にプライドが傷つくが、事務所社長や周囲は乗り気。なんとか脚本を仕上げるが、そこに、銀行強盗がまぎれこんできて……というラブコメ・アクション。音楽の使い方、子供向けアクションのネタはどこかTEAM発砲BーIZN風。初めて見る役者ばかりだが、案外こなれた演技。照明の演出が疑問だが、きっちりとした演出で最後まで見せる。1時間35分。まずまずのデキ。

 8.45の直通急行電車に間に合い、そのまま帰宅。明日は躰道審査。早めの就寝。

10月1日(金)晴れ

 イチローついに王手。
 PM7、帰宅。社保庁から父の年金支払い超過で返納通知。死亡時に連絡はしてあったから当局の事務的な手続きの遅れによるミスだろうに、こんなところはしっかりしている。

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