| 12月31日(日)晴れ 大晦日といっても格別の感慨がない。昨日の続き、明日の前日。いつからこうなったのか……。 子供の頃は、朝まだ暗い時間の餅つきの音で目が覚め、その餅で作った短冊に緑と赤の食紅で着色し、部屋の天井四隅に「桜」を飾りつけ。「桜」には、小さな鯛の落雁やミカンをぶら下げたものだ。地方によっては「繭玉」と呼ぶらしいが、ウチの田舎ではそのまま「桜」。 しだれ柳のように桜の木にぶら下がった餅は正月が終わると、枝から外して、油で揚げておやつになったものだ。神棚の大きな鯛の落雁も、今は甘いものがあふれかえっているから邪魔になるだけなんだろうけど、昔はお茶うけに年寄りが重宝してたっけ。 雪合戦、かまくら、ソリ遊び。冬休みの楽しみはいっぱい。靴の中に入った雪で家に帰る頃は水浸し。それをストーブで乾かしてまた翌日雪の中へ。薪ストーブに餅を押し付けて「ちりちり」を作ったり、ストーブに付いている湯沸しで茹でリンゴつくり。餅で煎餅を作って、やわらかいうちに、針刺し遊び。 ……数え切れないほどの正月の遊び。 大人になってからも正月は特別な日々だったはずなのに……。 1800、家族全員が集まって食事。これが「年取り」。この時ばかりは中学生でもおおっぴらにぶどう酒を飲むことができたっけ。年取りが終わると、除夜の鐘を聴きながら神社にお参り。このとき、出会う人には決して声をかけてはいけない。深夜の初詣ですれ違う人に声をかけてはダメという風習は、ここだけではないようで、何かの時代小説で読んだ記憶があるが、さて、何だっただろう。地方の風習には必ず理由がある。 珍しく、普段飲まない日本酒を飲みすぎて、9時前には布団の中。 テレビの懐メロ番組を見ながら、「ああ、あの歌手も年取ったなぁ」などと口をついて出る言葉。中学時代に、両親がテレビを見ながら言ってたことと同じ。この頃、スーパーで干し柿を見ると、つい買ってしまう。最近までは干し柿はあまり好きじゃなかったのに。母の嗜好が急に移ったよう。母は干し柿が大好きだった。父も紅白が始まる前に「眠い」といって布団にもぐりこんでいた。なんだか、この頃、自分が次第に昔の父と母に近づいているような……。 12月30日(土)晴れ 午後、「にしめ」を作るために材料を買い出しに近所のスーパーへ。フキ、ワラビが売り切れで仕方なく別のスーパーに移動。 1915、新宿。シアターpooで恒例の万有引力餅つき会。すでに店内満席。M紙のT橋さん、カメラマンの楠野さん、M田政男さん、大野さん、T取英さん、蘭妖子さん、市川さん夫妻、T橋咲さん、タリさん、ひびきみかさん、そしていつも元気なsimizzy……。途中から旺なつきさんも参加。シーザーに指名されて、杵を振り上げての餅つき。掛け声も勇ましく、満面の笑顔で餅つきを楽しんでいた。元宝塚のトップスターだが、気取らない性格。今回は4臼で終了。ちょうど2300。 二次会はパスして家路に。終電にギリギリセーフ。2430帰宅。 12月29日(金)晴れ 朝から大掃除。風呂場、そして台所の換気扇。 この換気扇が大物。半年に1回は洗浄しないと。1年でものすごい油の付着。ヘドロのような油をそぎ落とすのに2時間。1800にはひとまず終えて、一番風呂。 そのあとはビール片手に「野良猫ロック セックスハンター」を見る。 この映画の挿入歌「禁じられた一夜」は梶芽衣子と安岡力也のデュエット。林美雄パックで何度となく放送され、大好きな歌。わが「くちずさみ曲」ナンバーワンだ。この30年で何回歌ったか。 ところが、肝心の映画を観るのは初めて。 基地の町を舞台に、米軍の兵士に姉を陵辱されたトラウマを持つ藤竜也演じるバロンの執拗な人間狩り=ハーフ狩りと、バロンを操る右翼政治結社の動き、妹を探すハーフの青年(安岡力也)とやさぐれズベ公グループのリーダー・マコ(梶芽衣子)との恋情を描いたアクション活劇。 クスリ、シンナー、暴走、銃撃。まさに70年前後の東京の風俗全開のアクション映画。このシリーズは21日間で撮影することが至上命令だったとか。完成度云々よりもそのエネルギーがすさまじい。梶芽衣子のクール・ビュ−ティーぶりが最高。 休みの日ほど早寝するクセがあるようで、今日も2200には就寝。 12月28日(木)晴れ 仕事納め。 今日で仕事が終わりというのに、最近はウキウキワクワクの高揚感がない。暖冬でぽかぽか陽気。およそ冬らしくないというのもあるが。 以前なら正月前の高揚感があったのに。どうしてだろう……と考えたら、やはり、実家に帰省するということがなくなったということも影響しているのか。 お盆・正月の帰省の前には高田渡の「あしたはきっと」を歌ったものだ。「明日の朝の一番列車で〜♪ かわいこちゃんの待ってる町に〜♪」 待ってる人がいないというのは淋しいもの。やはり「待ってる人がいてのお正月」。 机周りの片付けもサクッと。「J万才」関係の事務処理も今日でほぼ終了。 以前なら、納会代わりに、差し入れの刺身で軽く一杯というのが慣わしだったが、近年はそれもなし。粛々と仕事を終えたら引き揚げる。会社も少しずつ変わっていく。 1530、退社。 新宿トップスでN村くんと待ち合わせ。「JB」のスタッフとして頑張ってくれた。携帯、カメラのJBグッズを受け取り、歓談。明日から帰省とか。H戸出身。新幹線で3時間。近くなったものだ。 彼と別れ、歌舞伎町へ。冬ざれの街。「王城」がなくなってもう何年経つのか。人並みでごった返す歌舞伎町。そこにはもう自分の入り込む余地はない。 時間つぶしのために近場の映画館に。開演5分過ぎたが「インビジブル2」を。 これがまあ今の映画か、との感慨しかないB級映画。あまりの貧しさにため息しか出ない。映画がナメられている。 1935、新宿ピットイン。恒例の浅川マキの大晦日ライブ。開場時間が過ぎ、お客さんが続々と入場中。間をすり抜け、ピットインの鈴木さんに挨拶して中へ。 今回の客席は比較的、中・高齢者が多い。中でも中高年の女性の姿が目立つ。団塊世代の上の世代か。もちろん、20代の女性も多く、ちょい不良オヤジに連れられたセレブ風20代女性も。満席で立見も。ここ最近、新しい浅川マキファンが増えているようだ。 2010、10分押しでスタート。いつもなら単独のアカペラで始まるところを、セシル・モンローのドラムスをバックにした「アカペラ」から入るマキさん。「夜が明けたら」「こぼれる金の砂」……。ひとしきりパンキッシュな独唱が続いて、その後は早々と、ゲスト奏者の向井滋春、渋谷毅が登場。 39年目。そのほとんどをサポートしている渋谷さん。39年生まれだから67歳。常連メンバーだった川端民夫が亡くなって何年になるだろう。セシルと渋谷さんだけは変わらない。あと何年このライブが見られるだろう、といつも思ってしまう。「来年のスケジュールはいつも白紙。どこでどうしてるか……」とはマキさんの口癖だが、暮れのライブだけは気がつくと、ずっと続いている。 ジャズ界の至宝、渋谷毅と浅川マキのセッションが聴けるだけで、なんという贅沢な空間なのか。今年は向井滋春がトロンボーンだけでなくチェロを披露。これがなんとも素晴らしい。 休憩を挟んで第二部は2120から。 「暗い目をした女優」「霧に潜む」「心隠して」「セント・ジェームス病院」……。 数あるレパートリーの中からやはりマキさんの好きな曲だけがチョイスされる。 2215終演。アンコールの声にこたえて珍しく登場。いつもなら「これでおしまい」なのに。 そこで歌ったのが、 いつかまた逢う指切りで 笑いながらに 別れたが 白い小指の いとしさが 忘れられない さびしさを 歌に歌って 祈るこころの いじらしさ 夜のグラスの 酒よりももゆる紅色 色さえた 恋の花ゆえ 口づけて君に捧げた 薔薇の花 ドラの響きに ゆれて悲しや 夢と散る 美空ひばりの「悲しき口笛」(藤浦洸作詞、万城目正作曲)だ。「JB」最終回の原稿で書いてくれた歌。 楽屋に行って挨拶。 「あの歌、二番からしか知らないのよ。寺山さんが、こうやって(レコード針を落とすしぐさ)、二番からかけてくれてたから」 ピットインの楽屋は畳一畳半もないくらい。セシル、渋谷さんはファンのところへ。向井さんに「チェロは以前から?」と聞くとマキさん「それは聞かないほうがいいわよ。クラシック畑の人たちはもうスゴイんだから」。今回はマキさんの要望でチェロ弾きを披露したのだとか。 ひとしきりおしゃべりして、2240、家路に。 12月27日(水)晴れ 休日。大掃除。まずは自分の部屋から。パソコン周りの配線は蜘蛛の巣のよう。その解きほぐしからスタート。 床にワックス、窓ガラスふき……。それだけで一日が終わり。 夜、「女番町 野良猫ロック」を見る。これはシリーズ第一弾。和田アキ子主演。ズベ公番長も30年後には「日の丸に敬礼。君が代独唱」となるのだから悲しいものがあるが。アンドレカンドレ名義で井上陽水も出演している。全編無許可撮影。バギーで新宿西口の地下道に侵入するんだから、アナーキー。 12月26日(火)雨 1900、池袋、芸術劇場中ホール。米米CLUB演劇部「私がおばさんになってる!?」 ジェームス小野田と石井美奈子が立ち上げた演劇ユニットの旗揚げ公演。 拙者ムニエルの村上大樹の作・演出。26歳の箱入り娘(矢沢心)。三人の男からプロポーズされるが、その中の意中の人と約束を。ところが、突然、25年後の自分の日記の世界に飛び込んでしまう。そこでは51歳の自分(石井美奈子)がさえないサラリーマンとビンボーな生活を……。 25年間も引きこもっている男、IT族の末路、ヒルズの遺跡が沈む東京湾海底に生息するナゾの半魚人……。単なるタイムスリップものではなく、ブラックでシュールな味付けの不条理冒険コメディー。永山たかし、弓削智久、大口兼吾ら若手人気役者、猫のホテルの千葉雅子(おいしい役どころ)、澤田育子らムニエルの役者も総登場。 村上は米米の信奉者とか。「米米で人生を変えられた」と公言するほどの熱狂的ファンらしい。そのためか、脚本・演出の気合いの入れ方が違う。緻密なストーリー、布石、笑いのツボ、どれをとっても詰めがしっかり。リスペクトする相手の初舞台への心遣いが伝わってくる。 矢沢心も初舞台ながら健闘。舞台の上下に配された巨大な日記帳オブジェ、回り舞台などセットも超豪華。 2120終演。氷雨。 注文した「野良猫ロック」コンプリートDVDボックスが届く。70年代日活映画の傑作「野良猫ロック」シリーズ5本が収録。長谷部安春、原田芳雄、藤竜也の特別インタビューも収録されていれる。割引がきいて1万8000円。清水の舞台から飛び降りた気になってエイヤと購入。これで「野良猫ロックシリーズ」が見られるのなら安いもの。 12月25日(月)晴れ 早めに帰宅。 夕食後、「東京フレンドパーク」を最後まで。この手のバラエティーは「真剣勝負」でなければ興味が半減する。だから、ウケを狙うお笑い芸人が出る回はパス。今回は、「花より男子」の出演者5人。今年、欠かさず見たドラマはこの番組だけ。来年、その続編が放映されるのでそのパブリシティー。井上真央が魅力的。 12月24日(日)晴れ のんびり朝寝。食卓はケーキにローストチキンなどイブのメニュー。 暮れになると親戚から海の幸が送られてくるので嬉しい。アワビ、獲れたてのイカ、マグロ、つきたてのモチetc。それらが食卓に並ぶと今年も終わりか……と思う。 1800、家を抜けて初台へ。ドアーズでPANTAの「アンチ・クリスマス・ライブ」。今年で4回目? 踊り場にしゃがみこんで荻野目慶子さんがバッグをかき回し探し物? 「青ひげの時には……」と挨拶したが、もちろん、覚えてるわけはない。 入口付近まで観客でいっぱい。20代から50代まで世代は多様。 クリスマスメドレーに合わせてPANTAら出演者が顔見せのオープニング。出演予定者に名前がなかったアナーキーの仲野茂も出ている。これは嬉しい。 秋間ツネオのライブからPANTAへバトンタッチ。続いて、トークタイム。ゲストは来年1月に公開される映画「幽閉者」を監督した足立正生。出演者の荻野目慶子、仲野茂。足立監督も慣れたもの。会場の若者にもウケるような的確な受け答え。進行役のスマイリー原島が実にクレバー。久しぶりにオトナのMCを見たカンジ。テレビは無論のこと最近のコンサート・ライブのMCはあまりにもひどい。知性のカケラもないMCばかり。スマイリー原島のウイットに富み、なおかつ含羞のある司会ぶりは好感が持てる。 プレゼントコーナーでは同じ当選数字が続出で混乱。アナーキーのBOXセット、荻野目慶子、PANTAの映画スチールなどレアもの。 足立監督退場の後は、PANTAの長編叙事詩「ライラのバラード」。 続いて、ニュースペーパーの「純ちゃん晋ちゃん」コンビ登場。ピリリと毒の効いた風刺コントに大笑い。PANTA「本当は、さる高貴なご一家を演じてもらいたかったが」云々。 日比野野音で行われた「週刊金曜日」の集会で、コント集団「他言無用」が皇室ネタを取り上げたのを、週刊新潮が「不敬だ」と記事にし、これに扇動された右翼が金曜日と「他言無用」、永六輔の事務所を猛攻撃。これによって「さる高貴なご一家」ネタが封殺されたという事件。言論機関が言論封殺を煽るという右翼新潮ならではのやり口。「不敬罪」の復活。「自粛」の連鎖を促す新潮の大犯罪。 ラストはPANTA&陽炎のライブ。新譜「CACA」の曲と、「ルイーズ」「つれなのふりや」「あやつり人形」など70年代の名曲をターボエンジン全開で。 会場は一気にヒートアップ。「今日はアンコールなし」の宣言通り、最後まで一気に駆け抜け完全燃焼。最近のライブはアンコールがお約束になっているが、ここまで熱く盛り上がったステージならアンコールは不要。 2200、終演。 楽屋でPANTA、仲野茂と立話。この前の「秘密の花園」にひっかけて、大河ドラマの話で大笑い。 2330帰宅。 12月23日(土)晴れ 特別出勤。部署は全員出社。通常通りの業務。 1118、同僚との雑談で任天堂ゲーム機「WII」の話題。「なかなか手に入らないんだよなぁ」「いつ入荷するかわからないからね」 その話の流れで、ネットの掲示板をチェックしていた同僚が、「今、銀座のビックカメラで放出し始めたようですよ」 ガセネタも多いというが、ビックカメラへ急行。ネットの情報は本当だった。すでに100人ほどの行列。後尾について待つこと1時間。無事、WIIをゲット。オプション含めて4万円弱。なんとも高いクリスマスプレゼント。ゲーム業界に踊らされているのを承知しているが、つらいところ……。 帰社し、ひとしきりWIIの話題。今日はビックカメラで2000台余りを放出したのだとか。ウ〜ン、すごい数字。 1700帰宅。 先日、ディレクターの暮松さんからお借りしたDVDを見る。 ザ・ノンフィクション「ダメ親父のラブソング」。若い頃、林家三平門下の林家クーペを名乗りながら、度重なる不祥事で破門。その後、芝居、実業など様々な事に手を出し失敗。今はホームレス状態で、ライブハウスの雇われ店長として店に寝泊りする「クーペ」。SHIHOとのデュオで歌手活動をするも泣かず飛ばず。そんなクーペのもとに、ある日、一通の手紙が届く。それは、25年前に別れた一人娘からの手紙。一度も会ったことのない父への最初で最後の手紙。その手紙がクーペの生き方を変える。 3年間に渡るドキュメンタリーであり、その間にクーペの身の上に思いもよらない事故・事件が起こる。 まだ見ぬ娘との再会はかなうのか。テレビ画面を見ながら滂沱の涙。 12月22日(金)晴れ 「J万才」終了。ハードな日々だったが、とりあえず、事故がなくてよかった。残務整理はこれから。 1900、新馬場。六行会ホールで東京セレソンDX「歌姫」。 表に墨文字で「挑戦状」と大書きされ、中を開けると、カラーの飛び出す絵本。超豪華な招待状。これはいったい何? といぶかしく思ったが、きょうようやくその全貌が……。 97年旗揚げらしいが初めて聞く名前。主宰の宅間孝行は「花より男子」などの構成脚本でも活躍する売れっ子脚本家とか。最近、大河内奈々子と結婚したので、名前は知っていたが、芝居は見たことがない。 どんな芝居を見せてくれるのかと、興味本意で出かけたが、スーツ姿にワイヤレス、まるで刑事ドラマの警官のようなスタッフがホールの入口から客席の要所要所を固め、有名タレントのコンサートのよう。パンフレットも豪華版。どれだけお金がかかっている芝居なのか。 ロビーにはタレントプロダクションや人材企業の花輪。民主党の議員の花まで。自分が知らないだけで、そんなに有名な劇団だったの? しかも、今回はプレビュー公演。それなのに座席は超満員。 で、肝心な芝居は……。 戦後のある地方の田舎町の映画館が舞台。特攻隊の生き残りで、行き倒れになって記憶をなくした男が、館主に拾われ、そのまま住みついている。館主の娘も憎からず思っているようだ。しかし、ある日、一人の女が訪ねて来る。行方不明の夫を探しているのだという。 ……とこれだけで、話の筋が見えてしまうベタな人情劇。舞台でテレビドラマをやっているような。 ……と思って、プロフィールを見たら、宅間は03年に放送された鄭義信のNHKスタジオ演劇「春のほたる」に出ているのだ。なるほど、これはスタジオ演劇と考えれば納得がいく。 よそ様の宴会に、一見さんがまぎれこんだようで、盛り上がる会場の拍手にも、居心地があまり良くない。見渡しても知ってる顔はないし……。 2100終演。家路に。 12月21日(木)晴れ 1800、渋谷。フランセでT取氏と待ち合わせ。その予定はなかったが、電話したら、ちょうど新宿にいたT取さんが来てくれる。最終回のゲラを見ながら打ち合わせ。大学、劇団、連載が重なり、体がいくつあっても足りないというT取さん。ひとつ終了で、よかったかも……。 1900、パルコ劇場で「みんな昔はリーだった」。ネプチューンの堀内健主演、後藤ひろひと作・演出。 公園で、中年男(板尾創路)が甥(熊井幸平)を相手に自分の昔話を語る……という冒頭。後藤得意の「物語」の導入シーン。 場面は30数年前の中学校へ。ブルース・リー映画全盛の頃。リーを崇め、日々格闘の技の鍛錬に励む男子学生グループ(池田成志、伊藤正、竹下宏太郎)。中でも竹下は「けんかえれじい」のスッポンこと川津祐介のようなキャラで、みんなの師匠格。そこに外国生活の長い転校生(瀬川亮)が加わる。いじめられキャラで軟弱な瀬川。彼らのマドンナが京野ことみ。顔に似合わず気の強い女の子。このリーを崇拝する中学生グループの青春グラフィティと、大人になった彼らの未来の姿が交差する。過去と未来の往還。 いかにもストーリーテラー・後藤ひろひとらしい、大笑いさせて最後に泣かせるという展開。童話シリーズのようにあざとい展開でもないので、思わずホロリとさせられそうになる。 ウーン、しかし後藤は演劇界の浅田次郎か。この手の「ちょっといい話」は短なる感傷劇になるわけで……苦手。 2120終演。 12月20日(水)晴れ 0730起床。ゴミ出し。 午後、家人と買い物。 1500、武蔵野線で新木場→国際展示場。有明コロシアムへ。 1640到着。入場口でI田さんと落ち合い、会場へ。元東映助監督で映画プロデューサーのF山さん夫妻、フリーのテレビディレクターK松さん夫妻の計6人。I田さんの芝居に出たこともある俳優のレーニンF山さんは海外生活も長く、英語、スペイン語が堪能なため、今回の通訳を務めている。そのツテでの亀田ボクシング観戦。5万円の席だから、眺めは上々。 開場から2時間経っても客席は3分の1程度。人気凋落? ……が、メインイベントの時間にはほぼ満席に。 D・スペクター、和田アキ子、北島三郎……有名人が入場する度に、歓声が。 和田アキ子による「君が代斉唱」。自らの出自を明らかにしたばかりの和田の君が代。その胸によぎるものは。 挑戦者ランダエダには最初から覇気がなく、前回の試合とは別の意味での凡戦。亀田パフォーマンスに会場どよめくも、なんだこりゃの防衛戦。 試合が終わり、亀田の判定を見るまでもなく、ぞろぞろと会場を後にする観客。 電車、道路が混む前にこちらも退散。ゲート前でI田さんらと別れて家路に。 2300着。舞浜からはディズニー帰りの乗客がどっと乗り込み、朝のラッシュ並み。 青島幸男死去。一世を風靡した「いじわるばあさん」も晩年は毀誉褒貶が交錯。都知事時代最後の「変節」が最後まで響いた。家族・自身への有形無形の脅迫が「変節」の原因だといわれるが……。大橋巨泉が「晩節を汚した」とコメント。厳しい意見だが、政治家としてはそういわれても仕方ない。 棺を覆いて後……世間は無情。 12月19日(火)晴れ 部署トレードで、S班からきたK君がきょうから研修。さて、何カ月もつか。地道な努力と時間を要する部署だけに、促成栽培はきかない。機が熟するまで耐えられるかが問題。 午後、S氏に電話するもつかまらず、やむなく制作のKさんに電話。どうしたのか、ノロウイルスにでもやられたのか、と思ったら、あとから電話が来て、自転車で転んで全身打撲とか。「トシですかね」とS氏。たいしたことないようだが。 1530、委員会。気が重い。気の合わない連中と同席するのほど憂鬱なものはない。1時間! 難行苦行。 1900、銀座・博品館劇場。「ガールフレンズ」再び。制作のK村さんの配慮で堀内敬子版を。ほんとはPANTAさんと来たかったのだが、今日はリハーサルの日で日程合わず。残念。 客席は8割。やはり、ふだん舞台を見たことがない人が多いようで、並びの席の中年男がガムをクチャクチャ噛み、パンフを目の前でパラパラ。気が散ることこの上ない。休憩に入ったときに注意したら素直に恐縮していたが、モノを食べながらステージを見るということに何のためらいもないのは驚き。客席が明るいため、ガムを噛むたびにアゴがせわしなく動くのが視界に入ると、気が散って気が散って。 と、まあ、環境は悪かったがステージは最高。 池田有希子と堀内敬子は甲乙つけがたいトップミュージカル女優。そのミューズ2人が共演する。それも、2人の歌だけで展開する。こんなステージはめったに見られるものではない。キャストが変わっただけで、見違えるように奥行きのある舞台に。のびやかで艶のある声、豊かな感情表現。しなやかな体。池田有希子と堀内敬子という、わが二大ミューズを心ゆくまで味わい、陶然の境地。「青いエアメイル」では、堀内敬子も涙ボロボロ。 2120終演。客席に水谷龍二氏の顔も。訪問客も多いだろうと、楽屋に行くのは遠慮して帰宅の途に。 途中で何度かI田信之さんから着信があり、下車してから電話すると、「明日、亀田の試合に一緒に行きませんか」とのお誘い。ボクシングを生で見るのは初めて。これは楽しみ。 12月18日(月)晴れ 年末の追い込み作業は土曜のうちに済ませたので、比較的ラクな日程。 午後、Aマキさんから電話。原稿の気になる部分の確認。 1900帰宅。早めに就寝。ベッドの中で結城昌治の「刑事」を。今なら横山秀夫だろうが、結城昌治の警官小説の見事さよ。あらためて、うまい作家だったのだと再認識。 12月17日(日)晴れ 躰道のS木優勝大会。 0850集合。今回は他の道場、東京国際大の学生など多数が参加。午前中は予選、午後から決勝大会。午後の開会式後に演武で「勢命の法形」を披露。 1530全試合終了。気心の知れた道場間の試合のため、いまひとつ真剣味に欠けた嫌いがあるが、まあ、納会だから……。 5時からの忘年会に間があるので、Y先生の家で待機。初めて故・祝嶺正献最高師範の生前の映像を見る。亡くなる直前の映像とのことだが、後進を指導する気迫がすごい。この方が存命だったら躰道の発展も違ったものになっただろう。 1700、K朝霞の和民で納会&忘年会。総勢20数人。和やかな中にも、武道家らしい厳しい提言が。 2000、一次会終了。二次会は恒例のカラオケ大会だが、疲れもあり、一足先に失礼する。2100帰宅。 12月16日(土)晴れ 普段となんら変わらない朝。しかし、それは灰色の朝でもある。 昨日の国会で「教育基本法”改正”」が成立した。新聞各紙は、またぞろ、一面で大見出し、社会面を大きく割いて「教育基本法改正」の問題点を識者に語らせる。言論機関としての良識を示すためのアリバイ工作。度し難い。それなら、なぜ教育基本法改正反対のキャンペーンを張らなかったのか。 この国はすでに転回点を越えてしまった。温度が10度上昇しても、すでにゆでガエルの皮膚は何も感じない。 かつての皇国史観を反省し、再び子どもたちを戦場に駆り立てないために「個人の尊厳と真理と平和を希求する自由で自立した教育の普及」を目指した民主的教育基本法が「国家のために尽くし、個より公を優先させる」愛国教育に変わる。 「法」は強制力を伴う。「今までと同じだろう」などと、たかをくくってはいけない。今でさえ、君が代、日の丸の強制が行われ、起立しない教師のパージが現実化しているのに、それが「法」で担保されたらどんなことになるか。 明文化された「愛国心」がどのように教育の現場に反映されるだろう。 おそらく、君が代・日の丸に起立しない父兄には、子供の内申書に「愛国心の欠如」という烙印で仕返しが行われるだろう。 冗談ではない。真面目な話。 今でさえ、日の丸・君が代の有形無形の強制力はある。都を提訴した訴訟団にたまたま、ある武道流派に所属する人がいただけでその所属流派が武道館の使用を拒否されるという恐ろしいほどばかばかしい現実。しかし、それが国や、その意を受けた自治体のやり口。 ボディーブローのように、打たれた痛みは効いてきて、やがて「やはり、お上には逆らえない」となる。 真綿で首を絞められるような「ビニール質のファシズム」という言葉がはやったのはもう20年も前か。 そんな時代が牧歌的に思えるほど、時代のファシズム化は進んだ。 ビニール質のファシズムではなく、これからはアルミのファシズムになり、鉄のファシズムになるだろう。 平和憲法を体現する教育基本法が殺された日。それは、国民が「アウシュビッツ」に向って抑圧と恐怖の道を歩き始めた日でもある。 「まだ憲法がある」とははかない希望。もはや「憲法」しか残されていない。憲法第9条が殺される日、それは日本の民主主義が殺戮される日でもある。 1400、新宿。サザンシターで、ひょうご舞台芸術「ブルックリンボーイ」(作=ドナルド・マーグリーズ、 演出=グレッグ・デール)。 自分の生まれた町・ブルックリンを舞台にした自伝的小説で一躍ベストセラー作家になった40代の男、エリック・ワイスが主人公。 売れない三文作家から、マスコミに追いかけられ、世界的な雑誌の表紙にまで……。そんなエリックが訪れた故郷の町。彼の前に現われるのは、幼なじみで敬虔なユダヤ教信者、一生を靴職人で終えた頑固な父、同じ文筆家であり、夫との葛藤の末に別れた妻、講演会で「お持ち帰り」した女子大生、原作に目を付け、エリックに脚本を任せると見せて、原作だけを買い取る敏腕映画プロデューサー、それに出演する人気俳優……。 一見、コメディーの体裁ではあるが、父と子、妻と夫、生まれた町への愛憎などを自己存在と絡めて描いたシリアスな物語。実に丹念な演出。主演は浅野和之。とにかくうまい。セリフに説得力がある。 石田圭祐も朴訥で底抜けに人がいい幼なじみ役を好演。スター俳優役の今拓哉、映画プロデューサー・阿知波悟美、妻・神野三鈴、女子大生・月影瞳と、出演者がすべてパーフェクトな演技。中でも父親役の織本順吉がいい。00年の「川を越え、森を抜けて」以来か。最初出てきた時は誰だかわからないほど面変わりしているので、驚いたが、発声も芝居もしっかりしている。79歳。さすがに杖を頼りにする姿は老いがにじむが、その分、人間的な深みがその体から立ち上がる。すばらしい俳優だ。 亡くなって後に、息子に理解される父。長年のわだかまりが氷解する父と子。二人の会話シーンが胸を打つ。舞台を見ながら、つい自分の身に置き換え、思わず涙してしまう。ああ、父と、もっと話をしておけばよかった。母ともっともっと一緒にいてあげればよかった……。 終演後、M紙のT橋さんと駅まで。「コメディーかと思ったら、実にしみじみとしたいい作品でしたね」とT橋さん。 T橋さんは、夜、博品館劇場「ガールフレンズ」とのこと。そういえば、堀内敬子版の予定を入れなければ。さっそく、K村さんに電話。 1700、下北沢。スズナリの下の古本屋で結城昌治の文庫「刑事」「魔性の香り」。映画監督・内藤誠の「昭和の映画少年」(1981年、秀英書房)。結城昌治の小説は10代の頃、片っ端から読んだものだが、後年の集英社文庫には未読があったか。内藤誠は山内恵美子主演の「ネオンくらげ」のエピソードを書いている。それが読みたかったのだ。 「デモンズ」のビデオが700円で売っていたので一緒に購入。スプラッタホラーは嫌いだが、これは20年前に函館の映画館で家人と一緒に見た唯一のホラー。 1930、スズナリで劇団鳥獣戯画「おはこ」。歌舞伎十八番を役者十数人が早変わりでダイジェストで見せてしまおうという趣向。 忠臣蔵の大石内蔵助が討ち入り後の切腹を待つ間に、歌舞伎十八番の夢を次々と見るが、最後の演目だけが思い出せない……。元日劇スター・あぜち守がこなれた演技。ハイジの声の杉山佳寿子も。 お茶付きの升席で鑑賞も、椅子席の方が楽だったりして……。 2130、終演後、石丸さん、知念さんに挨拶。「久しぶりじゃないですか」と知念さん。確かに。見ないうちに、役者もほとんど総入れ替え。残っているのは樋口春香くらいか。ユニコは口跡、表情が知念さんとソックリ。 12月15日(金)晴れ 1600、六本木。「貴奈」でA川マキさんと待ち合わせだが、早めに着いたので、ペットショップを覗いてみる。しかし、この前の&ウエスティーはすでに引き取り手があったようでケージに姿なし。 1630、「貴奈」。いつもなら先に待っているのに、珍しくマキさんが5分遅れ。「ここに来る前に打ち合わせがあって」 来年2月にリリースされるベスト版のマスタリング、歌詞カードのことでおおわらわの様子。 「昨日も寝てないの」 お疲れのようで、小一時間で切り上げ。暮れのライブのこと、最終回の原稿のこと。難問がひとつ。 1900帰宅。 12月14日(木)晴れ Yさんと決別する夢を見ていた。無性に淋しく、早く夢から醒めてくれないかと夢の中で願う。 0500、起き抜けにふと、仲のいい従姉の顔が目に浮かぶ。子供の頃の顔。あれから数十年が経ち、それぞれが子を持つ身。こうして命の連鎖が続いていく。なんということのない、ごく当たり前のことなのに不思議な気持ちになる。人は生まれ人は死に、そして新しい命が続いていく。 教育基本法改悪、防衛省昇格法案が、国民的反対運動の盛り上がりもないまま国会を通過する。国家主義の時代に逆走する日本。未来につなげる命を国家のために差し出してたまるものか。 国会欠席、審議中に携帯メール打ち、居眠り、新聞読み……まるで崩壊した学級のような国会議員たちによるお子様国会が成立させようとしている教育基本法改悪。その前に自分たちの教育をやり直したほうがいいという突っ込みも空しい。 1600帰宅。頭痛、腰痛、熱っぽさで、ル テアトル銀座「黄昏」はキャンセル。 福島の根本豊さんからMD届く。この前のFM番組に電話出演したときの録音。横で聴いていた家人から「もっと明るくしゃべらないと」とダメ出し。とはいっても、土曜の夕方、静まりかえった中で、仕事してる同僚もおり、ハイテンションでしゃべるのもどうかと……などと言い訳。ま、確かに我ながらトーンは低い……と反省しきり。 帰宅したら風邪も快方に。社内の空気が悪かったか。 12月13日(水)晴れ 午前9時半まではあたふたと朝の仕事に追われ、息つく暇もなし。しかし、それ以降は十分に時間をとって、ラス前のページを……。 1600、芝居の予定もないので帰宅の途に。 早めに風呂に入りノンビリと。T取さんとメールで打ち合わせ。 2200就寝。健康的な一日。 12月12日(火)晴れ 同僚が休みを交代してくれというので今週は火曜日休み。朝から銀行に行ったり、中学に忘れ物を届けに行ったり結構忙しい。午後、古いVHSをタビングしたり、カセットをCDにしたり、整理整頓。合間に昔のラジオドラマ「ベートーベンになりたかった男」を聴く。作曲家・作家、長谷川千秋を描いたもの。奇矯なふるまいで有名だった人らしい。その奇矯な行動の裏にある葛藤。やはり昔のドラマはいい。 12月11日(月)晴れ 1900、下北沢。急に冷え込んだので鼻炎になったのか、クシャミ、鼻水。これでは舞台に集中できない。あわててアルガード鼻炎薬を。しかし、それが効き過ぎたのか猛烈な睡魔に。竹中直人の匙かげん第二回公演「SOU」はほとんど夢うつつ。高橋ひとみも井川遥も紗幕の向こう、はるか彼方。せっかくの舞台が……。 前の席に座っていた神木隆之介クンが実にキュートだったことしか記憶にない。2130終演。 帰宅後、だらだらとネット巡回。YOU TUBEで昔の少年ドラマを。少年ケニヤの映像が懐かしい。 12月10日(日)晴れ 1000〜1200、躰道稽古。来週の大会で稽古納め。 1300帰宅。 12月9日(土)氷雨 朝から急に冷え込む。サクサクと仕事を片付け、1400、新宿。劇団1980「少々乱暴」。瀬戸大橋の工事現場で墜落死した出稼ぎの男。遺骨を引き取った家族がお葬式をしているところにひょっこり現われたのは、死んだ当人。人違いで戸籍を抹消された男が、自分の生存証明を得るために、死んだ男の人生をたどっていく。そこから見えてくる現代ニッポンの奇々怪々の現実。初演を改作しての再演。歌と語りで芝居をナビゲートするのは三上寛。客席通路からギターを抱えて登場。小泊村から出奔した自分の東京への憧憬を歌に託し、ギターかき鳴らしての三上節。藤田傳の三上寛を起用した狙いがズバリ。 その昔、藤田傳は天井桟敷の欧州ツアーに同行し、寺山修司の作品を見て「寺山は天才だ」と思ったとか。寺山修司を師と仰ぐ三上寛が藤田傳の作品に出る。これもひとつの縁か。 舞台は優れているが、いかんせん、若い観客の顔がほとんどない。通路を隔てた後方の客席はガラガラ。もったいない。 1550終演。氷雨のためか、トップスも満席で断られ、喫茶店を何件か回るも待ち時間あり。ようやく落ち着いたのが1時間後。紀伊國屋で買ったばかりの佐々木昭一郎著「創るということ 新装版」をひも解く。紀伊國屋の新刊コーナーで10冊ほど棚に積まれていたのでびっくり。来年のCS放送で佐々木作品が最終放送されるという予告が帯に。初版の何カ所かは訂正されており、原田美枝子の名前も削除。 しかし、時間を潰すのに一苦労。電器店でHDD内臓のミニコンポ試聴。担当者に聴くと、「HDD型のミニコンポは音質的にはいまひとつ。しかも、ハードディスクトラブルで、貯め込んだ曲がすべて消えたり、リスクが大きい」とか。HDD型のミニコンポだとFMドラマをCDに保存するのが楽だと思ったが、意外な欠点があるものだ。 1900、紀伊國屋ホールでティー・ファクトリー「黒いぬ」。1845に劇場に入ったが、ロビーも客席も閑散として、これから芝居が始まるという雰囲気ではない。客席はわずか30人あまり。開演時間には、通路前方の席はほぼ埋まったが、後方席はガラガラ。パラダイス一座と並んで「シルバー芝居」が宣伝されたはずなのに、この温度差。熱気がまったく感じられない。 それは芝居が始まっても同じ。せっかく観世榮夫、菅野菜保之、新井純、綾田俊樹、坂上二郎といった個性的なシルバー俳優を集めているのに、脚本がひどすぎる。昔、秘密の任務を負った諜報部員が「黒いぬ」のコードネームを持つ男に呼ばれ再結集する。そこに殺人事件発生……という導入部。期待を持たせようにも、チープな演出、展開ですぐに底が割れてしまう。 諜報部員たちが過去に関わった事件が、60年安保でのアメリカ要人狙撃だの、田中角栄失脚を狙って立花隆に資料を渡しただの、挙句の果てに、北朝鮮による赤軍派の欧州拉致事件を妨害した……だの、めちゃくちゃな話。この前、文学座に書いた「ふたりの男」のモチーフを再利用したような物語。というか物語にもならない、コント芝居。しかも、この時期に北朝鮮拉致モノを面白おかしく上演するというのは、無神経で犯罪的。川村毅は基本的には文学青年であり政治青年ではない。ありていに言えば政治オンチ。 なにやら北朝鮮ものを散りばめれば、なんとなく政治的な主題の舞台になると思ったのか。あまりのもひどい舞台。坂上二郎など、まったくセリフが聞き取れない。 生まれてこの方、こんなに醜悪な舞台を見たの初めてだ。綾田俊樹や元黒テントの新井純がかわいそう。 観客にもそれが伝わったのか、カーテンコールもおざなりな拍手。 2045終演。速攻で電車に飛び乗り家路に。電車の乗り継ぎもよくジャスト1時間で帰宅。 12月8日(金)晴れ いつものように午後までハードな半日。雄秋葉原のヨドバシカメラでDVDケースを買って、夕方帰宅。この頃は豚児がパソコンを占領しているため、HP更新もままならず。 12月7日(木)晴れ ハードな木曜日を乗り切って、1700、下北沢へ。 げんこつラーメン、ヴィレッジヴァンガード、ディスクユニオンのコース。ユニオンで赤塚不二夫の「まんがNo1」(3500円)、HOTWAX「和もの大辞典」を購入。伝説の雑誌「まんがNo1」の附録ソノシートのCD化がお目当て。三上寛の「おまわりさん!!」、井上陽水「櫻三月散歩道」などを収録。 1900、スズナリでパラダイス一座「オールドバンチ」(山元清多・作、流山児祥・演出)。 こんな異様な雰囲気のスズナリは初めてだ。客席からロビーまで、観客がごった返し、その熱気で、開演前から異常な高揚感。客席の3分の2は20代。ほかは50〜60代。その20代の観客の熱気がまたすごい。ほとんどが劇団の研究生や声優のタマゴたちだろう。お目当ては自分たちの「大先生」。 その「先生」とは、戌井市郎(文学座・演出家=90歳)、瓜生正美(元青年劇場主宰、82歳)、肝付兼太(劇団21世紀FOX主宰、71歳)、中村哮夫(演出家=75歳)、本多一夫(72歳。下北沢・本多劇場グループオーナー)、高橋悠治(作曲家・ピアニスト=68歳)。 映像出演で岩淵達治(ドイツ文学家・演出家、学習院大学名誉教授=79歳)、観世榮夫(能楽師、79歳)。 この顔ぶれのすごさ。 物語は、この年老いた「七人の侍」が、とある銀行に強盗に入り、立てこもるというもの。その目的は何なのか……。 いやはや、大変な芝居を見てしまった。これは今年の演劇界の大収穫だ。 流山児演出の芝居でこれだけ徹頭徹尾大笑いした舞台はない。今年のベストプレイといってもいい。こんなに芝居の面白さが詰まった舞台はほかにない。 とにかく主役の役者たちがいい。戌井氏のとぼけた味、本多さんの飄々とした立ち姿、中村氏は50年ぶりらしいが現役でも通じる演技力、瓜生さんの説得力、肝付さんはさすがの現役。映像出演の岩淵さんが町田マリーと組んで素晴らしい演技。さすがは東大演劇部。観世さんはもちろん言うに及ばず。 これに藤井びん、塩野谷正、谷宗和、坂井香奈美、石井澄の若手が絶妙に絡むのだ。 「あの戦争はあったのだ」「あったことをなかったことにしちゃいけない」 瓜生氏のセリフは、自身の戦争体験から生まれたもの。「あの戦争は確かにあったのだ」というセリフが芝居に流れる基調低音、モチーフ。 こんなに面白い芝居を見たのは初めて。上演中、顔の筋肉が緩みっぱなし。1時間30分、超幸せな気分。これが芝居。人間を元気にさせる芝居。 終演後のアフタートークも居残って聞いてしまう。流山児、岩淵、本多の各氏。学習院大名誉教授の岩淵氏の下ネタ満載の軽妙な語り口に場内爆笑。ほとんどが残ってアフタートークに参加するというのも驚きの現象。誰も帰る人がいないんだもの。場内満席で肝付、中村氏などは補助席で見ることに。芝居が面白ければアフタートークも盛り上がる。 終演後、高取氏、流山児氏、岩淵氏の4人で駅前のイワシの店に。ここでも軽妙トーク爆発の岩淵先生。面白い話をたっぷりと。 気がつくと2330。楽しすぎてつい長居をしてしまった。駅で解散。高取さんはゴールデン街へ。 2430帰宅。26時就寝。いい夢みれそうな「オール・ドバンチデー」。この芝居は当日並んででも見るべし。末代までの語り草になるだろう。 12月6日(水)晴れ 家人と電車を乗り継いで大型ショッピングモールへ。買い物の付き添い。 ペットショップをのぞくと、家人のお気に入りのヨークシャーテリアが1匹。ケージから出してもらい、腕に抱くと、つぶらな瞳で見上げてくる。「ほら、顔を見てる。気に入ったんですよ」と担当の女性。ヨーキー系の毛足の長い犬より柴犬のような犬のほうが好きだが、しばらく抱っこしていると情が移ってしまう。「これはこれで可愛いんじゃない?」 値札は15万円。気持ちは少し傾くが、後は家族会議。 クリスマス用にバッグなどを買ったら、アッという間に、サイフから紙幣が飛んでいく。 1800帰宅。 12月5日(火)晴れ 死者を辱めるという、鬼畜の所業としか思えないペドフィリアでネクロフィリアな小学校教師。その父親が神奈川県警の大物だったという情報の裏付けで社内バタバタ。警察関係者しか知りえない現場写真その他の情報をなぜ教師が手に入れることができたか。点と線はつながる。 1530、D委員会。新メンバーで初会合。傲岸不遜なお方が何人か。会議の類は大嫌いなB型の私。グダグダ自説を展開するよりやってみれば、と言いたくなる。これからの1年は難行苦行になりそう。 1800、銀座。山野楽器でCDを物色。めぼしいものなし。三越地下で差し入れのスイーツを見繕う。書店でワゴンセール風に並べられていた500円プライスの「怪傑ハリマオ」DVDを3巻購入。 1900、博品館劇場で「ガールフレンズ」。ホイチョイプロの馬場康夫の原案・演出によるユーミンソング・ミュージカル。 女ともだち二人の学生時代から30代までの友情をそれぞれの交差する恋に絡めて描いたもので、セリフまったくなし。二人が交互にユーミンの歌を歌うことによって物語が展開する。 内気でピュアな真理子に華原朋美と堀内敬子(Wキャスト。今日は華原朋美)、恋愛に積極的な裕子に池田有希子。 舞台上部にノートを形どった白いパネルが設置され、それがスクリーンとなって歌詞が投影される。歌詞を間違えると一目瞭然。これは役者にとってはちょっとプレッシャーか。 「天気雨」「ロッヂで待つクリスマス」「ルージュの伝言」「冷たい雨」など30曲。個人的にはやはり70年代のアルバム「コバルトアワー」「OLIVE」「流線型80」あたりがツボ。特に「帰愁」「青いエアメイル」「未来は霧の中に」「埠頭を渡る風」などは涙なくして聴けない。 で、舞台。ユーミンの歌詞はもともとドラマチックだから、どれをつないでもそれなりの物語は生まれる。しかし、セリフなしでは、ヘタすると、ただの生バンドをバックにした歌謡大会になってしまう恐れがある。結果……期待感が大きかっただけにウーンな展開。救いは池田有希子の歌のうまさと演劇的肉体。それがなければ、ただの「あてふり芝居」に。「中央フリーウエイ」では車で走らせるシーン、「冷たい雨」には赤い靴が出てくる。そのまま、歌詞を視覚化しただけ。 演劇的というのは、足し算ではなく、掛け合わせて、まったく別なものを生み出すこと。混合ではなく化合。 それがうまく機能していればよかったのだが……。 「♪選ばなかったから失うのだと 悲しい想いが胸をつらぬく けれどあなたがずっと好きだわ 時の流れに負けないの」という「青いエアメイル」を歌う時の華原朋美が目に涙をにじませて思い入れたっぷり。誰かのことを思い浮かべているのかとつい余計な想像してしまう。 水着になったりコートを羽織ったり、スクール服になったり、まるで早変わり着せ替え人形。 「街角のペシミスト」で黒のコートに黒タイツ姿の池田有希子が妖艶。 休憩20分挟んで2時間15分。客席には普段舞台を見ないような音楽関係者が多いみたい。客層が違う。休憩時間にD井美和子さんと立話。来年またリーディングドラマをやることが決まったという。 終演後、楽屋へ。メイクを落として出てきた池田ユッコとハグ。来年7月のこまつ座公演までは空白とか。実力日本一の女優なのにもったいない。 華原朋美の関係者がどっと入ってきたのを機に退散。 クリスマスのイルミネーションが点滅する銀座。師走といってもコートなしで十分。年々温暖化が進んでいるのか。 2230帰宅。買ったばかりの「怪傑ハリマオ」をDVDプレーヤーに。なんと懐かしいオープニング。しかもカラー放送。当時はもちろん白黒放送だったから、こんな色だったのかと新鮮。後からの着色か? 主演の勝木敏之氏はその後消息不明に。今どうしているのか。 12月4日(月)晴れ 楽なシフトのため、午前10時には本日の仕事終了。が、あれこれとやることはたくさん。 1600、六本木のペットショップを再訪。わざわざ電車に乗って会いに行くのだからどうかしてる。まあ、ほれて通えば千里も一里? ケースが移動したらしく、一瞬、引き取り手がついたのかと思ったが、この前とは別の場所で、ほかの犬と一緒。チワワとウエスティーの掛け合わせとか。つぶらな瞳がたまらない。 1730、新宿。トップスでT取さんと打ち合わせ。ラスト2回の内容をどうするか。二人であれこれと検討。T取さんは稽古の後、今夜京都に。1900解散。家路に。帰宅すると、向井さんから新著「みづはなけれど ふねはしる」が届いている。麻田圭子氏とのコラボレーション。資本の論理にまみれた文学界への叛旗……。 ハロゲンヒーターは電気代がかかり過ぎるので昨日から石油ストーブにしたのに、ニオイがイヤとか、家族の不満。ニオイよりも節約。 12月3日(日)晴れ 0730起床。躰道稽古へ。「運足五連動」などを集中的に。先日の昇級試験の結果発表。無事、1級に。認証状をもらって家路に。 帰りの電車はガラガラ。前に座った女の人たちが、偶然右から順番に10代、20代、30代、50代、70代。まるで教科書の「人類の進化」を見ているよう。ピチピチ美肌の10代もいつかは……。 「昔の恋を懐かしく思うのは今の自分が幸せだからこそ♪」というユーミンの歌がiPodから流れてくる。 「わが病、生まれし国を恥ずること、否定をいたく好むこと、古びし恋を嘆くこと、盃とれば酔い覚めの悲しさを思うこと」という佐藤春夫の詩ではないが、時折り、古い恋の記憶がぽっかり浮上することがある。まだ20歳を過ぎたばかりだったその人もいまでは40代。どんな人生をおくっているのか。懐かしさと悔恨。さて、今の自分は幸せなのか……。 来週はユーミンソングのミュージカル「ガールフレンズ」が博品館劇場で。池田有希子が出ているので楽しみ。 12月2日(土)晴れ さすがに飲みすぎたようで、朝まで何度も目が覚め輾転反側。0530起床。気力で会社へ。ほとんど翌日に残らないお酒だったが睡眠不足は避けられない。お昼までに仕事をこなし、1300、シアターXでNLT「アルバニアンドリーム」。セリフは聞こえているが、なんども睡魔に引き寄せられ、舞台に集中できず。舞台自体も、NLTにしては「知的」すぎて、客席から笑いが聞こえず。帰りの電車でパンフを読むと演出の北澤秀人が「教育基本法改正大いに結構」と留保もなしに、持論を展開。この時期になんという雑な論か。 1445終演。帰社し、F木さんに昨夜D肥さんから預かった資料を渡して説明。 1830、森下へ。ベニサン・ピットでtptの「黒蜥蜴」。D・ルヴォーと門井均の共同演出。美輪明宏版は何度も見ているが、ルヴォー版は麻実れい主演。さすが貫禄十分。黒蜥蜴にふさわしい女優。相手役・明智小五郎は千葉哲也。ウーン、役者として文句なしだが、明智役としてはどうか。さえない中年オヤジにしか見えないのだ。稀代の女賊が恋をするにふさわしい美貌・知性を兼ね備えた明智探偵のイメージとはだいぶ違う。娘役は宮光真理子。「雪の女王」に出ていた女優さん。ノーブルな顔立ちはいかにも人形のようなお嬢さん役にピッタリ。青い亀役は浅利香津代。岩瀬庄兵衛役は清水 治。黒テントのスターが下卑た俗物を演じている。……長い時間が過ぎた。 3幕3時間。tptによるエンターテインメント作品だけに見ごたえ十分。美術もマル。「楽しんでいただけました?」と門井絵瑠さん。 2230帰宅。 12月1日(金)晴れ 1630、新宿駅でN村君、U井氏と待ち合わせ。宝さがしグッズを交換。 1700、荻窪。自分が住んでいた街なのに、離れて16年も経つと土地カンがなくなるのか、一瞬迷い道。 高校の同窓生がやっている和風ダイニング「くいてっこ」でJ誌のD肥さんと待ち合わせ。A紙の美人記者T澤さんと3人で飲み会の約束をしていたのだ。まず、D肥さんから耳寄り情報。さっそくF木氏に電話。 1830にはT澤嬢も登場。初めて会うのにも関わらずすぐに十年来の友人のように話が弾んでしまう。青森支局に3年在任したというT澤さん、津軽弁も堪能で、実にエネルギッシュ……かつ繊細な感性。週刊誌に7年余りも在籍しただけあって、好奇心と人をそらさない会話で盛り上げ上手。3人で弘前のお酒「豊盃」を酌み交わしながら話は尽きず。実に楽しく居心地がいいお酒。久しぶりに時間が経つのも忘れて痛飲。めったに飲まない日本酒が進むこと。3人で軽く1升以上は空けてしまったが、1130タイムアップ。1145、新宿駅でT澤さんを見送り、家路に。2500帰宅。 |