小泉純一郎首相への手紙

 小泉純一郎首相

 今から六十数年前、アジアの東のはずれにある私たちの日本は、欧米諸国との戦争を始めました。その時、日本の若者たちは、欧米の侵略からアジアを守るというスローガンを信じて戦い、日本は世界の孤児となりました。

 その戦争で敗れた日本は、アジアの人々に謝って、「国際紛争を武力では解決しない」と世界に約束しました。
 しかし、その四年後には、自衛隊の前身である警察予備隊を作り、「アメリカの正義」のための朝鮮戦争では日本の米軍基地が使われました。その後のベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン爆撃といったアジアの国々へのアメリカの攻撃に、日本は米国の後押しをし、ついには自衛隊をインド洋まで派遣するに至りました。

 六十年前、日本は「アジアを侵略する米英を懲らしめる戦争だ」と偽りを言いました。しかし、あなたは今、アジアを攻撃する米英を支持しています。そんな日本を、アジアの人々はどう考えるでしょう。
 一昨年、アメリカの経済力の象徴である貿易センタービルが自爆テロによって崩壊したとき、アジアの人々が驚喜乱舞する映像をテレビは報じていました。
 かつてアメリカが広島・長崎に原爆を落としたニュースを聞いた時、アジアの人々が「よくやってくれた」と、嬉し泣きをしたという事実があります。

 私たち日本がどれほど、アジアの人々に憎まれていたのか、そして今、アメリカがどれほど五十億の人々から憎まれているかを、私たちは知ることになったのです。
 日本がアメリカの友好国なら、その憎しみの結果であるテロは、けっして武力では抑えられないということをブッシュ大統領に教えてあげることが、先の戦争に倒れた日本兵士たちへのあなたのなすべき償いだと私たちは考えます。

 そして、アメリカのアジアへの攻撃を支持するアジア唯一の国になったて、ふたたびアジアの人々に憎まれる日本には、なってはならないと思います。
 私たちは今こそ、六十年前の「欧米の経済力、軍事的侵略を受けているアジアのために戦う日本」というスローガンを、本物にする絶好の機会に直面しています。
 ただし、兵器やお金ではなく、言葉の力で。