1998年のJーPOP |
近ごろ、やたらと元気がいいのがJポップの女性ボーカリストたち。Misia、Coccoらのブレークに象徴されるように、ひところ、ミュージックシーンを席けんしたコムロサウンドから、R&Bを基調にしたブラックミュージック、ヒップホップにシフト。個性豊かな歌姫たちが続々と登場している。ブレーク必至の新人を中心に、99年のJポップシーンの充実ぶりを予見させる実力派・個性派を紹介しよう。
まず、98年最大の収穫は、なんといってもこの人、Misia(ミーシャ)だ。2月のデビュー曲「つつみ込むように…」(BMGジャパン)の抜群のグルーブ感と歌唱力。ついに日本のアーティストもここまできたかと業界を騒然とさせ、セカンドマキシ「陽のあたる場所」でブレークした20歳。初アルバム「Mother Father Brother Sister」も200万枚を超えるヒット。新作「THE GLORY DAY」では、R&B、ゴスペル、ヒップホップと多彩な楽曲を展開。まさに、98年はMisiaに始まり、Misiaに終わったといっても過言ではない。 彼女を追撃する秘密兵器と目されているのがニューヨーク生まれの15歳、宇多田ヒカル。アメリカでは「Cubic U(キュービック・ユウ)」の名前でアルバムをリリース、かのレニー・クラヴィッツが絶賛しただけあって、甘く、激しく、せつない歌声は、15歳とは思えない豊かな表現力を内包している。デビューマキシシングル「AUTOMATIC」(東芝EMI)は売り切れ店が出るほどの人気。 スケールの大きさではポニー・キャニオンの新星、嶋野百恵。クールでキャッチーな楽曲と繊細でツヤのあるボーカルが魅力。R&Bテーストが濃厚なデビューマキシシングル「baby baby、Service」、第2弾「apple〈only one only you〉」はともに完成度ピカ一。 パワフルなボーカルでミーシャと互角に渡り合うのがSILVA。デビュー作「Sachi」、第2弾「Water Flower」(ブーガルー)ともに聴きごたえ十分。メジャーデビュー第2弾「SAUCE」(ワーナーミュージック・ジャパン)で大ブレークしたSUGARSOUL。AIKOのセクシーなハスキーボイス、ライブでのあでやかなステージング。まさにナンバーワン・ソウルディーバだ。 最近、一児の母になったSAKURAの第4弾シングル「君のために」(東芝EMI)の澄んだ歌声と安定したグルーブ感は必聴。最新アルバム「ダブル・イメージ」(ポリドール)でジャズからヒップホップまで多面体に挑戦した美貌の歌姫・MONDAY満ちる、セクシー系デュオ・DOUBLEの「BED」(フォーライフ)もメローな情感が心地よい。 個性派ポップの筆頭は椎名林檎。世紀末のGSサウンズともいうべき「歌舞伎町の女王」(東芝EMI)はネオ・アコースティック派の面目躍如の一枚。 一度聴いたら忘れられない不思議ボイスの猫沢エミはファッション誌のモデルとしても活躍。最新マキシシングル「SHELL」(TRIAD)はピチカート・ファイヴの小西康陽がプロデュース。 インディーズ系でイチ押しは勘解由友見(かげゆ・ともみ)の「アイスる。」(bounce)。キュートでふてぶてしいボーカルの魅力とせつない恋愛詩の取り合わせは飛びぬけてユニーク。 ウイスパー(ささやき)系ボーカルではbice(ビーチェ)がオススメ。最新作はシンプルで胸キュンなアコースティックサウンド「スニーカー」(ポニー・キャニオン)。思わず抱き締めたくなるようなJenka(ジェンカ)のウイスパーボイス「again and again」(ソニー・ミュージックエンタテインメント)も二重マル。ミニアルバム「Slow&Hold」(ソニー・ミュージックエンタテインメント)でデビューしたmisa joey(ミサ・ジョーイ)もウイスパー系。 グループではLUCY VANPELTを改名しメジャーデビューしたadvantage lucy。アイコの明るくストレートなボーカルが魅力のギターポップバンド。最新マキシシングルは「HELLO MATE!」(東芝EMI)。SWINGING POPSICLEの藤島美音子は透明感ある声がポップなメロディーとマッチ。最新作は「HEAVEN」(ソニー・ミュージックエンタテインメント)。 このところ、風格さえ出てきたのがACO。「LADY SOUL」(Ki/oonレコード)は文句なしの傑作。のっこ(元レベッカ)の「ベランダの岸辺」(BMGジャパン)も掛け値なしの大傑作。特にユーミンの「ベルベット・イースター」のカバー曲は涙ものだ。 以上がJポップの最新オススメ盤。 (1998年12月29日・記) |