1999年のJ−POP          
 宇多田ヒカルやDragon Ashの大ブレークの余波か、ヒットチャートの上位をR&Bやヒップホップ、ラップが占めた今年のJポップ界。この傾向は来年も続くとみてよいだろう。そこで、オトナの鑑賞に堪えるディーバ(歌姫)を中心に2000年のJポップシーンを占ってみた。
 2ndマキシシングル「MAGIC」が大ヒットしたTina(ティナ)。サックス奏者の父を持ち、クラブシーンではずばぬけた存在感を誇っていた天性のソウルシンガーだ。1stアルバム「コロラド」はしっとりとツヤのあるバラードからグルーブ感あふれる曲までR&Bに多面的にアプローチした傑作。ショパンの「別れの曲」のカバーは楽器を使わない多重録音のアカペラ。表情豊かなボーカルで2000年も独走しそう。

 2ndアルバム「Love On Wings」も好調なSAKURA。最新シングル「Oh I…」は愛の奇跡をうたい上げた、ちょっぴり切ないバラード。メローな旋律と甘い歌声がマッチした逸品。
 UAやCHARA、SUGAR SOULに曲を提供してきた大物プロデューサー・大沢伸一が自らの新レーベルのアーティスト第1弾に選んだのがBird。クラブシーンで絶大な支持を受け、1stアルバム「Bird」もロングセールス中。パワフルでスピード感のあるボーカルは幅広いファン層を持つ。

 1stアルバム「Dualism」で全曲の作詞作曲を手がけたSHOWLEE(ショウリー)はOLから転身したという異色の経歴。コケティッシュな声と力強いメロディーやコーラスとのミスマッチ感はアジアンポップスの雰囲気を漂わせ、セクシュアル度ナンバーワン。

 ブラックナンバー「ストロング・ウーマン」でアンダーグラウンド・シーンから第一線に飛び出したPUSHIM(プシン)は解散した大阪のダンス・レゲエユニット「TOKIWA」の紅一点ボーカリスト。力強さと温かみのある声で歌うキャロル・キングのカバー曲「It’s Too Late」はレゲエ・フレーバーあふれる傑作だ。
 日・韓・コロンビア“3国”のユニット、m―flo(エム・フロウ)の「ミラーボール・サテライト2012」は未来のディスコがコンセプト。Lisaのソウルフルなボーカルが映える。

 1stシングル「悲しいわがまま」のメロー&スイートな歌声が心地よいWyolica(ワイヨリカ)の2ndシングルはDragon Ashの降谷建志をフィーチャーした「風をあつめて」。アコースティックギターと、繊細な中にパワーを秘めたazumiのボーカルが絶妙に絡み合ったアップテンポナンバー。

 同じく降谷建志との共同作業から生まれた「Garden」(ワーナーミュージック・ジャパン)で新生面を切り開いたSugar Soulのアイコ。内向するアイコと降谷の開放性の衝突が突き抜けた余韻を残す。1stアルバム「On」、DJ HASEBE、ZEEBRAと再び組んだニューマキシシングル「SUGAR SOUL/ZEEBRA:SIVA1999」も必聴。

 Nina(ニーナ)はジュディ・アンド・マリーのYUKIが参加する新ユニット。ポップでソリッドなロックナンバーは痛快。Charaと組んだ別ユニット「CharaプラスYuki」の「愛の火・3つ・オレンジ」もヒットチャート上位に。
 1stアルバム「NANOSECOND」がリリースされたばかりのMIO、1stアルバム「531」が好評の嶋野百恵、1月に新作アルバムが出るMisia、ニューアルバム「153・7」のNuu(ヌー)、ジャズ、ラテンと八面六臂(ろっぴ)のMONDAY満ちるも好調キープ。
 ニューアルバム「absolute ego」を出したばかりのACO(アコ)。
 18歳でデビューして以来、他の追随を許さない独特の世界を構築してきたが、シングル「悦びに咲く花」で元電気グルーヴの砂原良徳と共同作業。シタールなどの音をコラージュしたサウンドメーキングが透明感に満ちたACOのボーカルとあいまって、不思議な効果をあげている。さらに深化した新生ACOの世界を聴いてみよう。

 インディーズからメジャー展開し、「花火」「カブトムシ」とクリーンヒットを連発したaikoは久々に登場した胸キュン・ロリータ少女。「夏の星座にぶら下がって上から花火を見下ろして……」と歌うキュートな歌声にハートはメロメロ……。
 若い女性の圧倒的な支持を受け、瞬く間にブレーク。個性派ポップの頂点に立った椎名林檎の動向も目が離せない。
 以上が目得耳得の最新Jポップおススメ盤。
                                                                 (1999.12.29)