懐かしの我が家
  1950年代、私が子供だった頃、わが家には5球スーパーのラジオが1台ありました。チューニングが合うと丸い緑色の目が閉じたり開いたりする「グリーンアイ」が真ん中についた真空管ラジオ。祖父の聞く浪曲、祖母の聞く民謡。そして母の聞く昼下がりの歌謡曲にメロドラマ。朝は「パパ、行ってらっしゃい」とともに目がさめました。「一丁目一番地」「オヤカマ氏とオイソガ氏」(1959年頃)などというドラマも記憶しています。今でもテーマソングのさわりは歌えるんですから子供の記憶力ってすごいですね。


  さて、幼稚園の頃にはラジオの置いてある食器棚の上によじ登ることができるようになり、夕方流れるラジオドラマが私の楽しみになりました。
「赤胴鈴之介」「緑のコタン」「宇宙から来た少年」(1962年4月2日スタート)「キャンデーの冒険」(1961年10月2日スタート)などがそうです。ビクターの犬よろしく、食器棚の上でラジオに耳を傾ける私。もちろん、細かな内容はすっかり忘れましたが、今でもアイヌの少女の可憐さ、空漠とした惑星に降り立った少年の心細さ、「学者ネコ」の助けで成長していくみなしご猫キャンディーの冒険は記憶の底にかすかに残っています。

 やがてテレビに興味は移り、ラジオとは長いお別れ。再会したのは68年頃から始まった深夜放送でのこと。「深夜放送ファン」という雑誌も創刊され、オールナイトニッポン(ニッポン放送)、セイ!ヤング(文化放送)、パックイン・ミュージック(TBS)と3強が勢ぞろい。なぜかMBS(毎日放送)の「チャチャ!ヤング」という番組も電波状況の良い深夜は1000キロ離れた田舎にも届いていました。北海道では「HBCヤング26時」が、やや遅れて地元・青森では「ナイト・ブリッジ・フォーユー」がスタートしました。

  ステレオコンポを買ってからはFM放送とも仲良くなりました。そこで出会ったのが「ラジオ劇場」(FMシアターの前身)。三つ子の魂百までといいますが、子供の頃聴いた名作ラジオドラマの記憶がよみがえったのでしょう。ぽつりぽつりと聴くようになり、何本か録音もしていますが、惜しむらくは、一度聴いたテープは消していたこと。今思うと残念です。

  ラジオドラマは映像のないドラマ。作品の半分は作家が作り、半分は聴取者の想像力に委ねる。見えないものを見ることがラジオドラマの醍醐味です。ラジオドラマの一ファンとして、これまで録音したラジオドラマ(FMシアター中心)を整理し、公開していこうと思います。