あの人は今
横倉健児氏

 ラジオドラマ「おはよう、インディア」で寺山さんが見つけた当時9歳のケンちゃんは、その後、「マザー」「夢の島少女」にも出演した。
「寺山さんはケンちゃんのことがお気に入りで”養子にもらいたい”と真剣に考えていたようだね」と佐々木さん。
 後日、寺山修司元夫人・九條今日子さんに尋ねたところ「そういうことがあったかもしれないわね。寺山は子供が大好きで、偏陸(森崎)のことも養子にしたいってよく言ってたもの」との返事。
 ケンちゃんは今、都内で音楽スタジオを経営しているという。また、「さすらい」に出演した安仁ひろしさんは現在、横須賀で米軍関係の仕事をしているとか。
若林彰氏

 「コメット・イケヤ」「夢の島少女」で寺山・佐々木両氏と関わりの深い若林さんは国際青年演劇センター(1971年設立)の代表を務めている。これは演劇の国際交流を進めるために、演劇人、作家、映画人が中心となって結成された組織で、若林氏自身も「三輪車の男たち」(F・アラバール作、麻布自由劇場=1971年)を皮切りに、国内外で活動。「藪の中」(芥川龍之介原作。1994年、ルーマニア)、「狼少年」(寺山修司原作。ルーマニア、1995年)などの海外公演で演出を手掛けている。
 寺山修司とも交流が深く、「コメット・イケヤ」のイタリア賞出品のためのフランス語プレゼンテーションをNHKの依頼で書いている。
 むろん、俳優として佐々木昭一郎作品と関わりの深さは言うまでもない。(2001.11.18)
渡部克浩氏

 「紅い花」に少年、シンデンのマサジ役で出ていた渡部氏は2002年に行われたTAMA映画祭の「佐々木昭一郎の世界」の客席顔を見せ、イベントの終わりに佐々木氏に招じられ、観客に紹介された。「小劇場の役者をやってます」と自己紹介。後に知ったのだが、「カンコンキンシアタ−」の演出部、「月光舎」には俳優として出演していた。釣りが好きで、その日も佐渡から駆けつけたと言っていたが、翌年4月4日、児童劇団のプロデュース公演の稽古に行く途中、JR車内で倒れ、帰らぬ人となった。心筋梗塞。享年39歳。「紅い花」のキクチサヨコとシンデンのマサジがドラマの終幕で山に帰ったように、渡部氏も永遠の向こうに去ってしまった。
沢井桃子さん

 「紅い花」のキクチサヨコ。青年座の女優だった沢井さんは、テレビなどで活躍したが、「紅い花」出演後、ほどなくして結婚・引退した。