あらためて歴史を想う
誠之学友会会長 山田勝重
誠之小学校は昨年10月30日に開校140周年を迎え、数多くの近隣の町会関係者、学校関係者、学友会員をお迎えし、教職員の方々、生徒らと盛大にその記念すべき日を祝いました。
今となっては私の記憶の彼方となりつつある誠之小学校に通い始めた昭和31年の頃、大好きな乗り物であった都電で追分の停留所で乗り降りし、現在と比べるととんでもない人数の生徒達がひしめき合っていた教室や体育館兼講堂で学び、休み時間となれば友達とぶつかり合いながら狭い校庭や屋上や教室前の廊下で遊び、給食といい、昼休みといい、東大農学部のグランドを借りて行われた運動会といい、バス旅行、柏学園での宿泊課外活動、修学旅行といい、たくさんの仲間と過ごしたとにかく楽しいひと時でした。
その頃は、昨年発行の学友会誌に投稿していただいた西片町会の元会長小倉芳彦氏(昭和14年卒)がお書きになった誠之小学校の校歌の意味や、開校140周年記念誌「のびゆく誠之」に紹介されている「誠之のあゆみ」に記載されている小学校の生い立ちなど大して興味もなく、知る由もありませんでした。
その後大学を卒業し、社会に出て西片の地に住み、子供を誠之に送り、運動会や授業参観で学校を訪問し、地域の方々とお祭りなどの行事や町会の活動を通じて親交を深め、恩師の先生方をお招きしての同級生達との会合、先輩や後輩の学友などと仕事を通じて接する中で、「誠之」という学び舎を巣立った明治の時代以降今日に至るまで脈々と輩出された数多くの卒業生が世の中のありとあらゆる分野で活躍し、日本の政治、経済、歴史の中でいかに重要な役割を担ってきたか、また歴史の礎を築いてきたかを時の流れとともに知るようになりました。
4月6日の入学式は校庭の桜の花が満開となった初春の陽気の下で執り行われ、100人余の新1年生をお迎えしました。この校庭の桜の木や、えんじゅ、イチョウ、藤棚など誠之の歴史を見つめてきた数多くの木々も来年度から始まる校舎の全面改築工事のために伐採され、この年度で最後の見納めとなるのもまた誠之小学校が重ねていく歴史の流れにおける一つの分岐点となるのでしょう。
数年後に竣工する校舎にどんな樹木や草花が植えられるのか、またどんな生徒が集い、育っていくのかは知る由もありませんが、1学友として「生い立つ庭の若草は」、「おのがさまざまかぐわしき」もので、かつ「花咲きにおい誠ある」ものとして、「実をこそ結べ」と願うばかりです。
会長挨拶
(学友会会誌38号原稿より転載)
誠之学友会会長 山田勝重(昭和37年卒業)