室蘭の味
第一回は天丼の有名店「天勝」。
子供の頃から大町(現在の室蘭市中央町をこう呼んだ)へお出かけすると、食事は必然のようにここでした。
浜町アーケード街にあるこの店は大正期からの創業で、室蘭市民には古くから親しまれてきた老舗です。

「天勝」と言う店名どおり基本は天婦羅店ですが、どこぞの高級店とは違いとってもリーズナブルな価格のお店です。
人口が激減しそれにつれて飲食店も少なくなってきた現在の室蘭では、お盆などの帰省時には開店と同時に大混雑となります。
最近では見られなくなってきた食券制で、お会計で渡されるプラスチックのふだはカラフルな配色。
色でメニューが判るようです。

この店でなんと言っても有名なのが天丼。
700円!という価格で、大海老1(たぶんBLタイガー)甘エビ3(地物)イカ1(大ぶり)というのもこのご時勢には恐ろしく破格なお値段ですね。
ご飯はいつ行っても超熱々のハフハフで、なによりも美味しいのが天丼の命とも言うべきタレ!
こくがあるのに意外にしつこい甘さは有りません。
天丼としてはさっぱりとしていますが、脂っこい天婦羅を上手にリードする甘辛さがとってもグッドです!
タレのつけ方は上からただかけているのではなく、昔風に天婦羅をタレの中にドップリとくぐらせてからご飯の上に乗せているため、天婦羅の真下のご飯にはタレは意外とかかっておらず、天婦羅にだっぷりと染みたタレの味で白飯を食べる感じになりますが、掘り進めていくうちに甘辛のタレが染みたご飯の層が発掘され、少なくなってきた天婦羅をバランスよく補ってくれます。

一緒についてくる味噌汁は具は「わかめ」のみですが、煮干のだしを使っていて味の強い天丼にはピッタリの風味!


しかもこちらもとってもアチチッな美味しさです。
ご飯の量もかなり多めで、年配の方はちょっと食べきれないといった話も聞きます。



ここは天丼のほかに蕎麦類も有名です。
最近は手打ちの専門店が多く出てきたため、それに比べるとまぁ普通の町場の蕎麦といった感じでは有りますが、少し甘めのつゆが効いたくせになるような味となっています。
なによりも凄いのはその価格!
今時「天ぷらそば」で550円などとは聞いたこともありませんね。
しかもちゃんとした海老天がどんと乗っています。

「もりそば」にいたってはなんと400円。
最近では茹で置き麺を使ったススキのの立ち食い蕎麦でもそのくらいはします。
あと冬場に頂くととっても美味しいのが「なべやきうどん」
こちらも600円と比較的リーズナブルなお値段ですが、グラグラと煮えくり返った状態で供されるそれは、しばらく手をつけることを躊躇してしまうほどの代物です。
しかもこれにもたっぷりとした海老天が入っておりますね。

ネット上での評価では甘すぎるとか、天婦羅定食でアラカルトが無く所詮天丼屋!といったむきもあるようですが、ここの味に小さい頃から慣れ親しんだ自分にとっては、まさに郷土の味というべきお店であります。

住所:〒051-0011 北海道室蘭市中央町2丁目3-16
電話:0143-22-5564