The Darkness Or Light
第三回【裏と表、赤と黒】



「お帰りなさいませ、僧慈様。」

家に帰ると華月が玄関で正座をして待っていた。
そういえばあの変態が家に置くとか言ってたのを思い出した。

「お荷物をお持ちしましょう。」

立って半ば強行的に鞄を奪われて先にリビングへ入っていった。
・・・・・・・・あれがメイドの仕事なのか?
一般庶民の私には理解し難いものがあるが
それとは逆にどこかいいものを感じてもいる自分が微妙に嫌。

あの変態と同じのような気がしてな。

「今日の夜は外出するとの黒子様よりご連絡がございました。
 ので、お食事はお早めに御取りください。」

上で着替えて下に行くと台所の華月よりそんなことを言われた。
匂いからすると作っているのは煮物系か。

「そうか、じゃあ食事中にいろいろと聞かせてもらうがいいかな?」

「私の事以外は全て黒子様より話すなと言われておりますが?」

なるほど、そういう点はきちんと押さえてる訳か。
普通か。

「それなら華月の事を聞かせてもらおう。
 一つ屋根の下で暮らす事になるようだからな、お互いの事はなるべく知っておきたい。」

「わかりました。
 お風呂のほうは入れてあります。どうぞ御入浴を。」

「ありがとう。」








家の前に立つ。
時刻はちょうど11時50分。
さて、そろそろ行こう。


夕食はやはり煮物による和食メインだった。
明日は洋食にするとの事だかうまかった。
華月について本人にいろいろと聞いてみたがあまりいいものではなかった。
曰く、両親は幼い時に他界。
曰く、その後転々としていた所を黒子やその仲間(誰だかは教えてくれなかった)が
救いメイドとして某人物に仕えていたこと。

本当に黒子って何者だ?
昨日のバイザーを付けた女性がその仲間だろうか?

とりあえず約束の場へ行くしか無い、と思った時、
その場に着いた。
考え事しながら歩かないほうが私はいいのかもしれないな。

「さて、待ち人は何時現われるか・・・・」



時計の針は12時をちょうど指した時、世界に異変が起きた。
昨日のような状態で・・・・・・






「昨日人に何て言ってたか、あなたは覚えてるかしら?」

コツコツと足音を鳴らしながら先程彼がいた場所に行く。

「あ〜何か言ってたか?」

通信相手の馬鹿はとぼけた口調で返してきた。

「あらもう老化かしら。
 嫌ね、これだから年寄りは・・・」

腕に付けてある棒を取り、愛用の大鎌を出す。
全く、手間取らせるわね。

「まぁいいじゃないか、もうじき【あいつ】もそっちに行く。
 そこでさくっと終わらせてあいつに話せば万事OKだ。」

この馬鹿絶対狙ってたわね。
私達の同僚になるにはそれなりの力が無いと駄目なのはわかるけど2度目は危険と
この馬鹿は思わないのだろうか?
しかも相手は昨日と同じ。
さすがの私も2度目はそのままやらせないわよ。

急いだほうがよさそうね。

「さて、あなたも速く来なさい。
 ただでさえ向こうは待ってくれないし私は録画したビデオが見たいし
 報告書をあなたに提出しなきゃいけないの。」

「わかってますよ、えぇわかってます。
 だったらもう少し上司の扱いを良くして下さい、お願いします。」

「嫌よ、あなた馬鹿だもの。」

「シクシクシクシク・・・・」

あ〜うるさい。
私は鎌を構え、前を見る。
【狩場】はきちんと見えている。
多少の隠蔽はしてあるようだがこの程度では甘すぎる、見え見えだ。

「古の者が古来より使いし狩りの世界。
 我はその狩猟者を狩る者なり。
 我は闇にして闇にあらず、人にして人にあらず・・・
 今ここに、蛮族の聖域への扉を開け・・・・!」

何時も通りの詠唱をする。
そして鎌を横一閃。

見事に【狩場】への入り口が開く。

「さぁ、行きましょうか。
 速くしないとわんこの餌になってるかもしれないしね。」

「・・・・・・おぉ、こわっ。」

背後から馬鹿の声が聞こえた。
帰ってきたら殴ろうと心に決めた。









「マタアッタナ、ヒトノコヨ。」

「あぁ、また会ってしまったな人狼君。」

昨日と同じ光景。
赤と黒しかない世界。

・・・・・そしておとぎ話でしか出て来ないと思っていた人狼。
前回と全く一緒だな、私の服装以外は。

「ヤハリ、エモノヲニガシタママデイルノハワガプイドニハンスルノデナ、
 ワルクオモウナ、コレモサダメダ。」

人狼がニヤリを笑った。
勝利を確信した狩猟者の目だ。
狩られる者への死の宣告。

「生憎と私は己の運命を変えようとするのが好きでね。
 結構今まで無茶をしていたものだ。」

人狼に返答する。
人狼の笑みは崩れない。

「ヨカロウ。
 ダガ、キノウノモノヲマツノハムダダゾ。
 コノセカイ、イヤ【聖域】ハキノウノモノトハチガウ。
 ミツケラレヨウハズガナイ。」

「残念ながら今日は人を待たせているのでね。
 その者がもしかしたら昨日の人かもしれんよ?」

「ザレゴトヲ・・・・・・
 サァ、キノウノツヅキヲシヨウカ、ヒトノコヨ。」

人狼が低い姿勢を執った。
突撃をしようというのだろう。
スピードで自分が勝てる見込みは全く無い。
かといってウェイトの差も大きい。

さぁどうしたものかと悩んでいると黒い影が私の目の前に立った。

「狼との会話は楽しかったかしら?」

「えぇ、意外とね。」

黒いバイザーを付けた昨日の女性が大鎌を持って再び現われた。



「ナッ!?バ、バカナ、アノケッカイヲミツケタトイウノカ!?
 アリエン、ニンゲンニソンナマネガ・・・・・」

人狼は姿勢を直し、驚愕していた。
それもそうだろう。
あれだけ自信満々に言っていたのに、この有様では。

「お生憎、私を普通の人間と思ったのが運の尽き。
 人の異名を知っておいて見下すのは許せないわね。」

女性は楽しげに笑った。
いやはや、来ると思っていたのだが少し肝が冷えたものだ。
とは言うものの、女性に頼る男っていうのも情けない話だが。

「クッ、ダガイカニ【黒翼の死神】トテヒトリデワレニカテルトオモウナ!!!」

再度姿勢を低くした後、突進してきた。
まさに風のように。

「身の程を知りなさい。
 わんこはさっさとお家へ帰ったほうがいいんじゃないの?
 ママが心配してるわよ。」

女性は鎌を構える。
普通ならそのまま突進によって弾き飛ばされるのではないかと思う。
だが、女性には余裕が見えた。

「ナメルナアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

人狼が大きく上から下へ己の右腕を振り下ろす。

カキイィィィィィィン・・・

しかし、その一撃は鎌の一振りにより肩から見事に飛び、虚空を仰いだ。

「ナッ!?」

人狼はまたも驚愕しつつも己の腕を取り、距離を開けた。
その間女性は全く動こうとしない。

「クッ!?ナゼダ、サイセイガオソイ!?」

切り口と切り口を必死に合わせようとしている人狼は滑稽に見えた。
これでは逆だ。
狩る側と狩られる側とが。

「当たり前よ、この【獄滅の鎌】を舐めないでよ。
 最低1時間はまともに付かないわよ、その腕。」

そして鎌を構える女性、今度はこちらの番と言わんばかりに。

「グゥッ!ニンゲンゴトキニコウモワレガヤラレルトハ・・・!」

「お遊びが過ぎたわね、そろそろケリをつけさせてもらうわ闇の化身。
 今度は地獄で会いましょ。」

疾風の如く女性が駆ける。
それを見た人狼は斬られた腕を投げる。
女性は軽く避ける。
しかし、ここで女性は何かに気付き、そして止まり、後ろに向けて鎌を投げる。
空飛ぶ腕はこっちに来る。

初めっから私狙いだったのか!

避けようとするものの間に合わないと思ったが飛んできた鎌がその腕を再び斬る。
腕は手首と腕部分に分かれ、地面に落ちた。

しかし、これで女性は丸腰。
一瞬の隙をついたのは人狼。
人狼は女性目掛け、タックルをする。

「くっ!」

女性は転ぶものの、直ぐに体勢を立て直すも、人狼は走り出していた。
逃げるつもりだ。

「マタアオウ、シニガミヨ!」

人狼は駆けるがその先に赤とは違う色、黒い影を見つけた。
あんな所に黒い色はなかった。

「!?」

前を見た人狼はそれが何か解かったのだろう。
突然止まった。

だが私は見た。
人狼の胸部分が串刺しになっているのを。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

人狼は雄叫びを上げ、青い炎で燃えていった。
最終的に何も残さずに消えた。

黒の正体は人だった。

こっちは紫のバイザーをつけている女性だった。
髪は黒だが、こっちにいる女性よりも短い。
なにより雰囲気が全く違う。
左手には大きな槍があった。

「借りができたかな?」

鎌を拾った長髪の女性が言う。
鎌は短い棒に変わり、女性の腕部分に付いた。

「いや、別に。
 借りを作ったと思ってないよ。
 あの状況なら已む無しな事だしね。」

姉御肌な口調の女性が笑いながら言う。


「さて、戻りますか、現実に。」






「お帰りお二人さん、戦果はどう・・・・・・・・・・・ぐはっ!?」

帰ってきて早々、長髪の女性は目の前の男をぶん殴った。
男のほうは緑のバイザーをつけており、なぜか黒いマントまではおっている。
緑は趣味が悪いな・・・

「・・・サボってたわね?」

「いえ、滅相も無い。
 部下が仕事してるのに上司がサボってるはずが無いでしょう?」

でも正座してるのはなぜだろうか?
これでは上司と部下の立場はまるっきり逆だ。

「まぁいいわ。
 これで役者は揃ったわね。
 じゃ、司令、まずはあなたからどうぞ。」

あぁ、と言い、立ち上がる情けない男。
だが、空気が変わったのはわかった。

「さて、君。
 君の選択肢は二つだ。
 全てを知り、私達の同僚となるか、
 それとも昨日と今日の事を忘れてもらって普通の日常に戻るか。
 二つに一つ、どちらを選ぶ?
個人的には手荒な真似はしたくないし、君の実力は高く評価している。」

男を真正面から見る。
どこか雰囲気が誰かに似てる気がした。

「その最後の決定の前に私は全てを知ることを選択したいのだがいいかな?
 何せ、ほとんど何もわからずに巻き込まれた口だ、
 全てを聞いてから判断したい。」

「・・・なるほど、君の意見は正しい。
 ならばまずは自己紹介から始めるとしようか。
 とは言うものの君に私は名乗る必要は無いのだがな。」

「と、言う事は私はあなたと会った事がある、ということか。」

誰かに雰囲気が似ているが・・・・・・・誰だろうか?
おそらくその誰かなのだろうが。

「ここに誘った者と言えばわかるかな?」

男がバイザーを外した。
その顔はある人物にとてもよく似ている。
黒子だった。

「なるほど、あなただったか。
 来ないとか言いつつも来たようだが、一つ質問させていただこう。
 確かに黒子に似ているが、あなたは正真正銘の黒子かね?
 昼間の彼とは微妙に違う気がするのだが?」

雰囲気は確かに黒子だ。
だが、こんなにも大人びていない。
まるで何年後かの黒子を見ているようだ。

「無論、私は黒子だ。
 ただし、こっちの姿が私の本当の姿と言ったところだ。
 ちなみにそうくるとこの2人も誰だかわかるんじゃないか?
 演説の時でね。」

「・・・・・・・・・・長髪の彼女は深月氏、そしてもう一人は猶哉氏と
 見るが如何に?」

「正解だ、あたしは猶哉。
 まぁあたしもこの馬鹿が言ってるようにこっちのほうが本来の姿だな。」

「背が全然違うかもしれないけど私は深月。
 一番最初に会ったわね、驚いた?」

いじわるな笑みを浮かべて深月氏、猶哉氏はバイザーを取る。
ふむ、黒子と同じように昼間の面影は残ってるがまるで別人な気がしてくる。

「性格面は変わってないから気をつけろよ、
 なにせこの二人は相当危け・・・・・・ぐおっ!?」

見事な裏拳だ。
顔と腹に見事に入ったな。
黒子は苦しみながらのた打ち回る。
正直、気持ち悪い。

「学園でもこうなのですか?
 いや、こうなのか?」

「えぇ、いつもこうよ。
 毎日毎日、疲れるものよ。」

「本当だな、相手してやってるこっちの身になってほしいものだ。」

「いや、お前ら、それが人を何度も殺しかけてる奴の言う事か?」

「「何か言った?」」

「はい、何でもないです・・・」(涙)

情けない限りだ。
この男は何がしたいのか常人の私には理解し難いものがある。

「とりあえず漫才はここまでだ。
 さて、全てが知りたいと言っていたね。
 まずは何から聞きたい?」

黒子は起き上がり、こちらに視線を戻す。
あれだけ見事な一撃もらっておいてピンピンしてるのは謎だがまぁいいだろう。
この男は人なのかすら危うい所があるからな。

「まずは、そうだな・・・
 先程の人狼は本物か?作り物ではないのだな?」

「えぇ、無論よ。
 正真正銘、あれは人狼。
 闇の中に生きる闇の化身。」

深月氏が答える。

「他にも今までいろんな奴がいたがまぁ言わなくてもわかるだろ?」

「なるほど、では次に
 先程の空間は何か?ということだ。」

「あれは奴らが使う自分達の狩猟場。
 私達はあれを【狩場】と呼ぶが奴らは【聖域】と呼んでいる。
 夜に活動する奴らは獲物をあの空間でじっと待っている。
 そして獲物がその空間とシンクロしている場所に入ると、
 君のようにあの空間に連れ込まれるということだ。
詳しい事は後で教える。」

黒子が私の表情を見ながら言う。
私が意外と落ち着いているのがそんなに可笑しいのだろうか?
さすがに2度目では落ち着きもあるというものだ。

「世間で言えば神隠しや、行方不明者の何割かは奴らの仕業ね。
 あの空間に入ったら最後、普通の人はまず助からないわ。
 相手は狩猟者、こっちは獲物、勝ち目は無いわ。」

「なるほど、では次にあなた達は何者なのだ?
 一般市民を助ける為に危険を冒してこんなことをしているのか、
 それとも、奴らを狩る為だけなのか。」

「まぁどっちも、と言った所だな。
 あたし達は裏の世界で生きる者、
 【黒月の執行者】と呼ばれる機関の一員。
 んでここにいる馬鹿がその大将。」

猶哉氏が黒子を指す。
本当に人は見かけによらないものだと思ったのは気のせいではないだろう。

「・・・なぜ他の事では動じないで今だけ驚いた顔をしてるんだ?」

「いや、意外すぎて。」

「・・・よく言われる。」(涙)

黒子は地面にのの字を書いていじけ始めたが私達は無視。
付き合いきれん。

「他に何か聞きたいことは?」

「ふむ・・・・・・・大体の事は聞いた。
 後は後ほど聞かせてもらおう。」

「・・・・・と、いう事はあたし達の仲間になるってことか?」

「肯定だ。
 摩訶不思議な体験をするのも人生の一環だろう。
 それにいろいろと興味がある。
 足手まといでしかならないよう努力する。」

「ふむ、君の家に華月を置いて正解だったね。」

黒子復活。

「これからも華月を頼むよ。
 まぁ監視役と思ってくれ。」

「・・・善処しよう。
 あまり女性とは接したことないのでな。」

「さて、じゃ私達は帰るわね。
 明日も遅刻せずに学校に来なさいね。
 後で本部に案内するわ。」

「日本国内なのか?」

「ちなみにこの町内よ。」

・・・・・・・・嘘、じゃないようだな。
この町内の人も知ったらどんな顔する事か・・・

「じゃ、また明日、お休みなさい。」
「風邪ひくなよ。」
「シーユーアゲイン、それと必ず明日の投票日に私に票を入れろよ。」

3人はその後、風の如く闇に消えていった。
さて、私も家に帰るとしようか。
明日は明日で疲れそうだな・・・・・・・
明日から私は普通とは違った世界を見ることになるだろう。
けれども後悔はしない。
私が選んだ道なのだから・・・





今日の黒月学園新聞【黒海】第3号

*選挙運動が激戦している今日、現在の状況をお伝えします。

O生徒会長争奪戦
最も激戦区なのですが傍から見ると三対一の試合となっている状態。
無論一が誰かは言うに及ばず前生徒会長である。
何せ三のほうは皆、過去の選挙で黒子に負け続けてきた者達である。
今年こそは、と活き込んで裸踊りや合唱までしだす有り様。
当の前会長は何時も通りの馬鹿な事を言って前副会長二人に粛清される状況である。
しかしどうやら今年も黒子のほうに票が行く確立は高いようだ。

O副会長安泰
椅子が二つで該当者二人。
まさしくどう考えても当選する状況。
加えて学園内での人気度は凄まじい二人組み。
これでは落ちる方が無理だろう。

O会計戦
今のところ大きな動きは無し。
強いて例を挙げると約一名が花火を使ったパフォーマンスをして
アフロになったぐらいだ。
zケニー氏が一番有力らしいが最後までわからない。
一番苦労する役割が一番目立たないとは悲しいものである。

以上、選挙近況でした。
明日は投票日です、皆さん、きちんと投票しましょう。BY新聞部一同

O今日の生徒会長名言(前)

「はははははは!!!圧倒的ではないか我が表は!!!」


後書き
無駄にやっちまいました、なレベルっすね・・・
ふぅ、やっぱりどうも人外なとこがあるんだよなぁ・・・

どうにかしなければ・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・なったら楽なんすけどねぇ。(苦笑)


「お帰りなさいませ、僧慈様。」

家に帰ると華月が玄関で正座をして待っていた。
そういえばあの変態が家に置くとか言ってたのを思い出した。

「お荷物をお持ちしましょう。」

立って半ば強行的に鞄を奪われて先にリビングへ入っていった。
・・・・・・・・あれがメイドの仕事なのか?
一般庶民の私には理解し難いものがあるが
それとは逆にどこかいいものを感じてもいる自分が微妙に嫌。

あの変態と同じのような気がしてな。

「今日の夜は外出するとの黒子様よりご連絡がございました。
 ので、お食事はお早めに御取りください。」

上で着替えて下に行くと台所の華月よりそんなことを言われた。
匂いからすると作っているのは煮物系か。

「そうか、じゃあ食事中にいろいろと聞かせてもらうがいいかな?」

「私の事以外は全て黒子様より話すなと言われておりますが?」

なるほど、そういう点はきちんと押さえてる訳か。
普通か。

「それなら華月の事を聞かせてもらおう。
 一つ屋根の下で暮らす事になるようだからな、お互いの事はなるべく知っておきたい。」

「わかりました。
 お風呂のほうは入れてあります。どうぞ御入浴を。」

「ありがとう。」








家の前に立つ。
時刻はちょうど11時50分。
さて、そろそろ行こう。


夕食はやはり煮物による和食メインだった。
明日は洋食にするとの事だかうまかった。
華月について本人にいろいろと聞いてみたがあまりいいものではなかった。
曰く、両親は幼い時に他界。
曰く、その後転々としていた所を黒子やその仲間(誰だかは教えてくれなかった)が
救いメイドとして某人物に仕えていたこと。

本当に黒子って何者だ?
昨日のバイザーを付けた女性がその仲間だろうか?

とりあえず約束の場へ行くしか無い、と思った時、
その場に着いた。
考え事しながら歩かないほうが私はいいのかもしれないな。

「さて、待ち人は何時現われるか・・・・」



時計の針は12時をちょうど指した時、世界に異変が起きた。
昨日のような状態で・・・・・・






「昨日人に何て言ってたか、あなたは覚えてるかしら?」

コツコツと足音を鳴らしながら先程彼がいた場所に行く。

「あ〜何か言ってたか?」

通信相手の馬鹿はとぼけた口調で返してきた。

「あらもう老化かしら。
 嫌ね、これだから年寄りは・・・」

腕に付けてある棒を取り、愛用の大鎌を出す。
全く、手間取らせるわね。

「まぁいいじゃないか、もうじき【あいつ】もそっちに行く。
 そこでさくっと終わらせてあいつに話せば万事OKだ。」

この馬鹿絶対狙ってたわね。
私達の同僚になるにはそれなりの力が無いと駄目なのはわかるけど2度目は危険と
この馬鹿は思わないのだろうか?
しかも相手は昨日と同じ。
さすがの私も2度目はそのままやらせないわよ。

急いだほうがよさそうね。

「さて、あなたも速く来なさい。
 ただでさえ向こうは待ってくれないし私は録画したビデオが見たいし
 報告書をあなたに提出しなきゃいけないの。」

「わかってますよ、えぇわかってます。
 だったらもう少し上司の扱いを良くして下さい、お願いします。」

「嫌よ、あなた馬鹿だもの。」

「シクシクシクシク・・・・」

あ〜うるさい。
私は鎌を構え、前を見る。
【狩場】はきちんと見えている。
多少の隠蔽はしてあるようだがこの程度では甘すぎる、見え見えだ。

「古の者が古来より使いし狩りの世界。
 我はその狩猟者を狩る者なり。
 我は闇にして闇にあらず、人にして人にあらず・・・
 今ここに、蛮族の聖域への扉を開け・・・・!」

何時も通りの詠唱をする。
そして鎌を横一閃。

見事に【狩場】への入り口が開く。

「さぁ、行きましょうか。
 速くしないとわんこの餌になってるかもしれないしね。」

「・・・・・・おぉ、こわっ。」

背後から馬鹿の声が聞こえた。
帰ってきたら殴ろうと心に決めた。









「マタアッタナ、ヒトノコヨ。」

「あぁ、また会ってしまったな人狼君。」

昨日と同じ光景。
赤と黒しかない世界。

・・・・・そしておとぎ話でしか出て来ないと思っていた人狼。
前回と全く一緒だな、私の服装以外は。

「ヤハリ、エモノヲニガシタママデイルノハワガプイドニハンスルノデナ、
 ワルクオモウナ、コレモサダメダ。」

人狼がニヤリを笑った。
勝利を確信した狩猟者の目だ。
狩られる者への死の宣告。

「生憎と私は己の運命を変えようとするのが好きでね。
 結構今まで無茶をしていたものだ。」

人狼に返答する。
人狼の笑みは崩れない。

「ヨカロウ。
 ダガ、キノウノモノヲマツノハムダダゾ。
 コノセカイ、イヤ【聖域】ハキノウノモノトハチガウ。
 ミツケラレヨウハズガナイ。」

「残念ながら今日は人を待たせているのでね。
 その者がもしかしたら昨日の人かもしれんよ?」

「ザレゴトヲ・・・・・・
 サァ、キノウノツヅキヲシヨウカ、ヒトノコヨ。」

人狼が低い姿勢を執った。
突撃をしようというのだろう。
スピードで自分が勝てる見込みは全く無い。
かといってウェイトの差も大きい。

さぁどうしたものかと悩んでいると黒い影が私の目の前に立った。

「狼との会話は楽しかったかしら?」

「えぇ、意外とね。」

黒いバイザーを付けた昨日の女性が大鎌を持って再び現われた。



「ナッ!?バ、バカナ、アノケッカイヲミツケタトイウノカ!?
 アリエン、ニンゲンニソンナマネガ・・・・・」

人狼は姿勢を直し、驚愕していた。
それもそうだろう。
あれだけ自信満々に言っていたのに、この有様では。

「お生憎、私を普通の人間と思ったのが運の尽き。
 人の異名を知っておいて見下すのは許せないわね。」

女性は楽しげに笑った。
いやはや、来ると思っていたのだが少し肝が冷えたものだ。
とは言うものの、女性に頼る男っていうのも情けない話だが。

「クッ、ダガイカニ【黒翼の死神】トテヒトリデワレニカテルトオモウナ!!!」

再度姿勢を低くした後、突進してきた。
まさに風のように。

「身の程を知りなさい。
 わんこはさっさとお家へ帰ったほうがいいんじゃないの?
 ママが心配してるわよ。」

女性は鎌を構える。
普通ならそのまま突進によって弾き飛ばされるのではないかと思う。
だが、女性には余裕が見えた。

「ナメルナアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

人狼が大きく上から下へ己の右腕を振り下ろす。

カキイィィィィィィン・・・

しかし、その一撃は鎌の一振りにより肩から見事に飛び、虚空を仰いだ。

「ナッ!?」

人狼はまたも驚愕しつつも己の腕を取り、距離を開けた。
その間女性は全く動こうとしない。

「クッ!?ナゼダ、サイセイガオソイ!?」

切り口と切り口を必死に合わせようとしている人狼は滑稽に見えた。
これでは逆だ。
狩る側と狩られる側とが。

「当たり前よ、この【獄滅の鎌】を舐めないでよ。
 最低1時間はまともに付かないわよ、その腕。」

そして鎌を構える女性、今度はこちらの番と言わんばかりに。

「グゥッ!ニンゲンゴトキニコウモワレガヤラレルトハ・・・!」

「お遊びが過ぎたわね、そろそろケリをつけさせてもらうわ闇の化身。
 今度は地獄で会いましょ。」

疾風の如く女性が駆ける。
それを見た人狼は斬られた腕を投げる。
女性は軽く避ける。
しかし、ここで女性は何かに気付き、そして止まり、後ろに向けて鎌を投げる。
空飛ぶ腕はこっちに来る。

初めっから私狙いだったのか!

避けようとするものの間に合わないと思ったが飛んできた鎌がその腕を再び斬る。
腕は手首と腕部分に分かれ、地面に落ちた。

しかし、これで女性は丸腰。
一瞬の隙をついたのは人狼。
人狼は女性目掛け、タックルをする。

「くっ!」

女性は転ぶものの、直ぐに体勢を立て直すも、人狼は走り出していた。
逃げるつもりだ。

「マタアオウ、シニガミヨ!」

人狼は駆けるがその先に赤とは違う色、黒い影を見つけた。
あんな所に黒い色はなかった。

「!?」

前を見た人狼はそれが何か解かったのだろう。
突然止まった。

だが私は見た。
人狼の胸部分が串刺しになっているのを。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

人狼は雄叫びを上げ、青い炎で燃えていった。
最終的に何も残さずに消えた。

黒の正体は人だった。

こっちは紫のバイザーをつけている女性だった。
髪は黒だが、こっちにいる女性よりも短い。
なにより雰囲気が全く違う。
左手には大きな槍があった。

「借りができたかな?」

鎌を拾った長髪の女性が言う。
鎌は短い棒に変わり、女性の腕部分に付いた。

「いや、別に。
 借りを作ったと思ってないよ。
 あの状況なら已む無しな事だしね。」

姉御肌な口調の女性が笑いながら言う。


「さて、戻りますか、現実に。」






「お帰りお二人さん、戦果はどう・・・・・・・・・・・ぐはっ!?」

帰ってきて早々、長髪の女性は目の前の男をぶん殴った。
男のほうは緑のバイザーをつけており、なぜか黒いマントまではおっている。
緑は趣味が悪いな・・・

「・・・サボってたわね?」

「いえ、滅相も無い。
 部下が仕事してるのに上司がサボってるはずが無いでしょう?」

でも正座してるのはなぜだろうか?
これでは上司と部下の立場はまるっきり逆だ。

「まぁいいわ。
 これで役者は揃ったわね。
 じゃ、司令、まずはあなたからどうぞ。」

あぁ、と言い、立ち上がる情けない男。
だが、空気が変わったのはわかった。

「さて、君。
 君の選択肢は二つだ。
 全てを知り、私達の同僚となるか、
 それとも昨日と今日の事を忘れてもらって普通の日常に戻るか。
 二つに一つ、どちらを選ぶ?
個人的には手荒な真似はしたくないし、君の実力は高く評価している。」

男を真正面から見る。
どこか雰囲気が誰かに似てる気がした。

「その最後の決定の前に私は全てを知ることを選択したいのだがいいかな?
 何せ、ほとんど何もわからずに巻き込まれた口だ、
 全てを聞いてから判断したい。」

「・・・なるほど、君の意見は正しい。
 ならばまずは自己紹介から始めるとしようか。
 とは言うものの君に私は名乗る必要は無いのだがな。」

「と、言う事は私はあなたと会った事がある、ということか。」

誰かに雰囲気が似ているが・・・・・・・誰だろうか?
おそらくその誰かなのだろうが。

「ここに誘った者と言えばわかるかな?」

男がバイザーを外した。
その顔はある人物にとてもよく似ている。
黒子だった。

「なるほど、あなただったか。
 来ないとか言いつつも来たようだが、一つ質問させていただこう。
 確かに黒子に似ているが、あなたは正真正銘の黒子かね?
 昼間の彼とは微妙に違う気がするのだが?」

雰囲気は確かに黒子だ。
だが、こんなにも大人びていない。
まるで何年後かの黒子を見ているようだ。

「無論、私は黒子だ。
 ただし、こっちの姿が私の本当の姿と言ったところだ。
 ちなみにそうくるとこの2人も誰だかわかるんじゃないか?
 演説の時でね。」

「・・・・・・・・・・長髪の彼女は深月氏、そしてもう一人は猶哉氏と
 見るが如何に?」

「正解だ、あたしは猶哉。
 まぁあたしもこの馬鹿が言ってるようにこっちのほうが本来の姿だな。」

「背が全然違うかもしれないけど私は深月。
 一番最初に会ったわね、驚いた?」

いじわるな笑みを浮かべて深月氏、猶哉氏はバイザーを取る。
ふむ、黒子と同じように昼間の面影は残ってるがまるで別人な気がしてくる。

「性格面は変わってないから気をつけろよ、
 なにせこの二人は相当危け・・・・・・ぐおっ!?」

見事な裏拳だ。
顔と腹に見事に入ったな。
黒子は苦しみながらのた打ち回る。
正直、気持ち悪い。

「学園でもこうなのですか?
 いや、こうなのか?」

「えぇ、いつもこうよ。
 毎日毎日、疲れるものよ。」

「本当だな、相手してやってるこっちの身になってほしいものだ。」

「いや、お前ら、それが人を何度も殺しかけてる奴の言う事か?」

「「何か言った?」」

「はい、何でもないです・・・」(涙)

情けない限りだ。
この男は何がしたいのか常人の私には理解し難いものがある。

「とりあえず漫才はここまでだ。
 さて、全てが知りたいと言っていたね。
 まずは何から聞きたい?」

黒子は起き上がり、こちらに視線を戻す。
あれだけ見事な一撃もらっておいてピンピンしてるのは謎だがまぁいいだろう。
この男は人なのかすら危うい所があるからな。

「まずは、そうだな・・・
 先程の人狼は本物か?作り物ではないのだな?」

「えぇ、無論よ。
 正真正銘、あれは人狼。
 闇の中に生きる闇の化身。」

深月氏が答える。

「他にも今までいろんな奴がいたがまぁ言わなくてもわかるだろ?」

「なるほど、では次に
 先程の空間は何か?ということだ。」

「あれは奴らが使う自分達の狩猟場。
 私達はあれを【狩場】と呼ぶが奴らは【聖域】と呼んでいる。
 夜に活動する奴らは獲物をあの空間でじっと待っている。
 そして獲物がその空間とシンクロしている場所に入ると、
 君のようにあの空間に連れ込まれるということだ。
詳しい事は後で教える。」

黒子が私の表情を見ながら言う。
私が意外と落ち着いているのがそんなに可笑しいのだろうか?
さすがに2度目では落ち着きもあるというものだ。

「世間で言えば神隠しや、行方不明者の何割かは奴らの仕業ね。
 あの空間に入ったら最後、普通の人はまず助からないわ。
 相手は狩猟者、こっちは獲物、勝ち目は無いわ。」

「なるほど、では次にあなた達は何者なのだ?
 一般市民を助ける為に危険を冒してこんなことをしているのか、
 それとも、奴らを狩る為だけなのか。」

「まぁどっちも、と言った所だな。
 あたし達は裏の世界で生きる者、
 【黒月の執行者】と呼ばれる機関の一員。
 んでここにいる馬鹿がその大将。」

猶哉氏が黒子を指す。
本当に人は見かけによらないものだと思ったのは気のせいではないだろう。

「・・・なぜ他の事では動じないで今だけ驚いた顔をしてるんだ?」

「いや、意外すぎて。」

「・・・よく言われる。」(涙)

黒子は地面にのの字を書いていじけ始めたが私達は無視。
付き合いきれん。

「他に何か聞きたいことは?」

「ふむ・・・・・・・大体の事は聞いた。
 後は後ほど聞かせてもらおう。」

「・・・・・と、いう事はあたし達の仲間になるってことか?」

「肯定だ。
 摩訶不思議な体験をするのも人生の一環だろう。
 それにいろいろと興味がある。
 足手まといでしかならないよう努力する。」

「ふむ、君の家に華月を置いて正解だったね。」

黒子復活。

「これからも華月を頼むよ。
 まぁ監視役と思ってくれ。」

「・・・善処しよう。
 あまり女性とは接したことないのでな。」

「さて、じゃ私達は帰るわね。
 明日も遅刻せずに学校に来なさいね。
 後で本部に案内するわ。」

「日本国内なのか?」

「ちなみにこの町内よ。」

・・・・・・・・嘘、じゃないようだな。
この町内の人も知ったらどんな顔する事か・・・

「じゃ、また明日、お休みなさい。」
「風邪ひくなよ。」
「シーユーアゲイン、それと必ず明日の投票日に私に票を入れろよ。」

3人はその後、風の如く闇に消えていった。
さて、私も家に帰るとしようか。
明日は明日で疲れそうだな・・・・・・・
明日から私は普通とは違った世界を見ることになるだろう。
けれども後悔はしない。
私が選んだ道なのだから・・・





今日の黒月学園新聞【黒海】第3号

*選挙運動が激戦している今日、現在の状況をお伝えします。

O生徒会長争奪戦
最も激戦区なのですが傍から見ると三対一の試合となっている状態。
無論一が誰かは言うに及ばず前生徒会長である。
何せ三のほうは皆、過去の選挙で黒子に負け続けてきた者達である。
今年こそは、と活き込んで裸踊りや合唱までしだす有り様。
当の前会長は何時も通りの馬鹿な事を言って前副会長二人に粛清される状況である。
しかしどうやら今年も黒子のほうに票が行く確立は高いようだ。

O副会長安泰
椅子が二つで該当者二人。
まさしくどう考えても当選する状況。
加えて学園内での人気度は凄まじい二人組み。
これでは落ちる方が無理だろう。

O会計戦
今のところ大きな動きは無し。
強いて例を挙げると約一名が花火を使ったパフォーマンスをして
アフロになったぐらいだ。
zケニー氏が一番有力らしいが最後までわからない。
一番苦労する役割が一番目立たないとは悲しいものである。

以上、選挙近況でした。
明日は投票日です、皆さん、きちんと投票しましょう。BY新聞部一同

O今日の生徒会長名言(前)

「はははははは!!!圧倒的ではないか我が表は!!!」


後書き
無駄にやっちまいました、なレベルっすね・・・
ふぅ、やっぱりどうも人外なとこがあるんだよなぁ・・・

どうにかしなければ・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・なったら楽なんすけどねぇ。(苦笑)



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