The Darkness Or Light
第一部【魔女、来訪】
第7回【決戦前夜、多彩な思惑】



「ちっ!数が多いと殲滅が面倒だよなぁ・・・」

中学棟を終えた俺と深月の連合は高校棟の殲滅に入った。
案の定、駅との連結により駅から逃げてくる奴のおかげで
数におけるミリタリーバランスは圧倒的に奴らが上だった。
俺や深月ならいいが俺達の部下のフォローを考えなければいけないのは
俺達の行動を大きく制限させる。

「ったく、数で攻めてきやがって!!!
 嫌いなんだよ、そういうのは!!!」

「な、猶哉隊長!みみみぃ殿より連絡!
 今からこちらに来るとのことです!!!」

部下の報告を聞きつつ、目の前の犬を貫く。

「来るのはみみみぃとzケニーだけか?」

「いえ、その御二人と共感者が一人だそうです。」

「つまりは無理強いの勧誘か。」

「そういうのは言わないほうがいいわよ猶哉。
 彼らの士気に関わるから。」

犬っころの首を刎ね、こちらに跳んで来た深月と合流。

「こっちにゲートがあって助かっただろうな、黒子は。」

「そうね、さすがに三人じゃ数に押されて2人が危ないわね。」

「うちの総統はとにかくしぶといから死ぬ事はないだろうが
 普通の人間は厳しいだろ、どう見ても。」

そんな会話をしつつ俺と深月の部隊は犬っころの殲滅をしていた。










「おおおおおおおおおおおおお!!!生徒会長〜!!!
 どうにかしろぉおおおおおおおおおおお!!!」

2階に来たらきたで十数匹の犬さん、こんにちはをした。
とりあえず下に逃亡。
無理だっつうの、あんな数。

「いや、基本的に私は今回何もしないようにしたいのだよ高山田君。
 だってほら、かったるいし・・・」

「うるさい黙れさっさと犬を片付けろ俗物諸悪の根源!!!」

そう、この生徒会長が何を思ったか十数匹の人狼目掛けて
どっから取り出したのかわからない骨を投げやがった。

その瞬間に俺は突っ込んだよ、何をしてんねん!って感じで。
ナイスツッコミ!って言われた時点で気付いたが狙われてたね、俺のツッコミ

「ん〜でもまぁ追いかけっこもここまでみたいだし、頑張れ2人共。」

前を見るとどうやら違う階段から降りてきたと思われる人狼達。

・・・・・・・・俺生きて帰れるかな?(苦笑)

(絶対死ぬなよ、俺の体だからな!)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

(はいはいわかってるよ実。
 閏、お前はそのまま寝ておけよ。)

3人で急ブレーキ。
俺達は囲まれた。

「この数を相手に3人で来るとはな。
 舐められたものだな、必滅の騎士よ。」

リーダー格と思われる他の人狼より大きな奴が前に出る。
目が他が赤なのに対し、こっちは普通の白の眼球で瞳は黒。
まさしく人間のような瞳だった。
何より体に鎧を着けているのと達者な言葉を話しているのが他と違う。
それに実力のほうは全く違うのだろう、と気配で理解した。

「いやぁ彼らの経験値の為に来てみたんだがねぇ・・・
 仕方ない、このビーフジャーキーやるから退いてくれ。」

またもどっから出したのかわからないビーフジャーキーを取り出すな、阿呆!
相手逆撫でしてどうすんじゃいワレェい!!!
他の人狼が怒りにとび出そうというのをリーダー格の人狼は手で制した。

「・・・・・・・・・・ふん、前に対峙した時と変わらずだな。
 しかしなぜ、我が主はお前を狙うのだろうな。」

何?こいつ、この阿呆生徒会長と知り合いだったのか。

「未だに聞いてないのか、【炎舞の黒狼】。
 あいつの一番近くに居るお前すら。」

「・・・・・・そうだ、我が主【炎魔の魔術師】は何も言わぬ。
 だが、こう噂に聞いた、死神や堕天使に関してだとな。」

「なるほど、どこの誰が言ったのか詮索はしないが
 合ってるかどうかはこの際秘密ね。」

この阿呆、何しやがったんだ?
何か何でもやりそうだからな、変なこと

(俺もそう思う。)

ほら、実もそう言ってやがる。

「ならばなおさら退かんよ必滅の騎士・・・
 もうすぐ我が主が来るからな。」

「何!?あいつがそんなに早く・・・・・・まさか!?」

お〜い、何か話がやばいのはわかるが俺と烏羽は置いてく気か、こらぁ!

「ふっ、想像に任せよう。
 さぁここで我らは足止めをさせてもらおう。
 無論そこの二人も逃しはせんぞ!やれ!!!」

奴の合図で一斉に人狼が襲い掛かってきた。
くそっ!どうすんだよ!!!

「・・・烏羽君、高山田君、君たちは後ろを頼むよ。
 私は正面をやる。
 炎舞の黒狼は厳しい相手だろう。」

阿呆生徒会長が前に立った。

「おい!俺と烏羽だけじゃ無理!」

「了解だ、黒子氏。
 高山田君、無理でもやらないと無駄に死ぬだけだぞ。」

ったく、どうにでもなりやがれぇ!!!

後ろを向く。
?あれ?5匹しかいねぇ・・・
もっといたよな・・・

「あ、言い忘れたが後ろからのは罠で消耗してると思うから。」

「「そういうことは早くいえぇ!!!」」

綺麗にハモった。
つうか何時の間に罠なんか張ってた、お前。









「高山田君、残ったのは頼むよ。」

「・・・・・・わかったよ。絶対こいつら狩ってやるぜ!」

パーミッションを構える。
すぐさま前方の人狼目掛け撃つ。

ガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

それこそ弾切れまで。

やがて弾切れが来るのと人狼の爪がくるのは同時だった。

「っ!」

「おらあああああああああああ!!!」

横手からの高山田君のストレートで人狼は吹っ飛んだ。

「助かった。」
「礼は後だ、銃撃で三体逝った。
 残りはこいつとあれの2体だ!」

再度、違う人狼からの私へ振り下ろされる爪。
それを刀で対応する。
爪が負け、折れた。

「ナッ!?」

人狼が驚く隙を逃さず私は横に刀を振る。

「グアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

あっけなく人狼は両断され青い炎に燃えた。

そして高山田君と対峙している人狼目掛け刀を放つ。

「ガァッ!?」

人狼が刀に刺された胸部を見るのと高山田が突っ込むのは同時。

「みようみまねの正拳突きぃ!!!」

バコッと音がして人狼に拳がめり込んだ。
人狼は少しうめいた後、青い炎に焼かれていった。

「・・・脆すぎる、こんなに簡単な相手じゃないはずだ、普通の人間にとって。」

「同感だ、こいつはあの生徒会長のせいか?」

正面の敵を見る。
しかし、既に敵は一人のみ。

「さて、黒狼。
 あいつが来ないうちに私は逃げさせてもらうぞ。
 如何にお前でも3人がかりで勝てる見込みはないだろ?」

「さすがは必滅の騎士。
 だがここで退くわけには行かんのだ・・・」






「そこまででいいわ、グラバ。
 ご苦労様、下がってもいいわよ。」



黒狼の後ろから女性の声が聞こえた。
全員がそちらを見る。
黒子が舌打ちをした。

「我が主、来たか。」
「厄介な事になったな。
 ・・・・・・・久しぶりだな、ヴェシェーラ。」


「えぇ、久しぶりね、私の愛しき人。
 さぁ、挨拶代わりの品、受け取ってもらおうかしら。」








そう赤い服を纏った金髪の女性が言ったのと
黒子目掛けて炎の玉が来たのは同時だった。

「・・・挨拶代わりにこれはないだろ、おい。」

黒子はただ剣を横に振る。
それだけで炎は四散した。

「ふふっ、単なる冗談の域よ。
 さて、今夜はここで帰らせてもらうわ。」

挨拶もすんだし、と付け加え女性は背を向ける。

「よろしいのか?」

「えぇ、どうせなら楽しみは最後までとっておくものよ。
 好きな食べ物と同じようにね。」

黒狼がそれに倣い女性のあとを歩く。
黒子は何も言わない。
私達も何も言わなかった。
いや私達は何も言えなかった。
圧倒的な力の差を感じていた。

「あ、そうそう言い忘れたわ。
 明日の夜、私の可愛い・・・かどうかはわからない残りの人狼がここに着くわ。」

背を向けたまま女性は言う。
黒子は苦笑した。

「御情報どうも。
 しかし、仇が前にいるのによく平然と帰れるな、お前。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仇?

「あら、あなたの意思を尊重したのよ。
 私の親切を本当は無駄にする気はないんでしょ?」

「・・・女には適わないものだな。」

「ふふっ、あなたがわかりやすいだけよ。
 それじゃ、お休みなさい。」

女性と黒狼は炎に包まれ消えた。
無論、それが焼かれて消えた訳ではない事がよくわかる。

「さて、高校棟のほうに行きますか、そこでぼーっとしてる二人。」

黒子がこっちを向いた。
その表情はいつも通りの馬鹿っぽい顔だった。

私は何か勘違いをしていないか?

この男に対して・・・・・・

そんな疑問を抱かずにはいられなかった。










「ゲートは屋上ね。」

道中の敵は全て片付けた。
後は屋上のみ。

今のところ被害は無い。

「開けるわ、準備はいいわね?」

後ろの部下を見る。
うん、準備はできてるわね。

扉を開ける。

風が吹く。


「遅かったな、紫桜の堕天使、黒翼の死神・・・」

相手は一体。
どうやら今までの犬とは違うみたいね。

その先には黒い禍禍しい程の瘴気を放っている穴がある。
それこそが私達がゲートと呼ぶ物。

そこからみみみぃ、zケニー、後男子が一人出てきた。

「おっと、ナイスタイミングってやつか?」

続けて黒子が後ろから現われる。
二人の人間を文字通り持って。

とりあえず詮索はしないでおく。

「・・・さて、どうする最後の一匹。
 この人数相手で勝てる見込みはねぇんじゃねぇのか?」

猶哉が一歩前に出る。

「ふむ、それもそうだな。
 我が主も到着したようだ、ここにいる意味はもう無い。
 だが名ぐらいは名乗っておこう。
 我が名は【ブラウ】。
 この名をしかと覚えておけ・・・」

そういって最後に残っていた人狼は消えた。
ふ〜ん・・・主が到着ねぇ。

「・・・黒子?」

事の真相を知っているであろう後ろの人物に語りかける。

「・・・・・・・・・聞いての通りだ。
 先程会ったよ、炎魔の魔術師、【ヴェシェーラ・カー・ブランドル】にな。」

周囲の部下からざわめきがおきる。
無理も無いわ、予測なら明日のはずなんだから。

「私の作戦ミスだ。
 おそらく今も奴は西欧にいるだろう。
 魔力によって作った影武者がな・・・」

西欧からの報告の前にヴェシェーラは既に日本に向かっていた。
おそらくそういうことだろう。
西欧の部隊はヴェシェーラの魔力の一部に大敗した、ということだ。

それ程の力をヴェシェーラは持っているということね。

「立ち話もなんだ、本部に戻るぞ。
 あぁ、部下は残してくれ。
 狩場がこのままだし、なによりゲートが開きっぱなしだ。
 このままだと空間が不安定になってこっちの世界に影響が来る。
 じゃあ新参者の高山田君、柊君。
 今までの経緯を見たとしてこれが最後の通達だ。
 一緒に来るか、それともこの場で全てを忘れて普通の暮らしをするか。」

有無を言わせない黒子の言葉。
これからの事はこんな前哨戦よりもさらに危険な事となる。
いかに感応者とは言え祖の血だけでいける世界ではない。
その点は烏羽君とて同じだ。
彼らは戦闘面では若すぎる。
人員がなく、いきなり実戦状態の彼らは死にやすい。

相手は人ではない、夜の眷属、化け物なのだから。

「俺は全く構わない。
 あいつらにコケにさらたままじゃ嫌なんでな。」
「私もですよ。
 今さら戻れるわけないじゃないですか。」
「黒子、私にも言ったのだろうがもうここまで私は来ているのだ。
 ここで全てを忘れて、なんて後味の悪い事をしてくれる気か?」

3人共意見は同じだった。
こうなるだろう、と私は内心自分の考えが当たっていた事に違和感を感じなかった。

「ふっ、よろしい。
 んじゃまずは帰りますか、うちらの世界に・・・」










【黒月の執行者総本部地地下会議室】

「・・・・・・人を忘れていた、ではすまないと思うぞ黒子総統。」

「すまない・・・忙しかったのでな・・・」

帰ってみたら既に夜の9時。
うっかりアメリカ方面総司令【ビーワング・ダウェル】が来る事をすっかり忘れてた。
もう爺さんめっちゃ怒ってるよ・・・
ただいま会議室で一対一の説教中。
うわ〜ん、深月と猶哉の裏切り者!!!
zケニーの馬鹿野郎!!!
みみみぃのクソタル!!!

「事と次第によっては次の総議会でこの事をねちねちと攻める材料にするが?」

この時点で爺さんの雰囲気が変わっているのでいつもの調子に戻す。
・・・古い付き合いだからな。

「・・・爺さんには適わないね。」

「どっちが年寄りじゃ・・・
 話は聞いた。
 炎魔の魔術師、来たのだな?」

「あぁ、先程直に会った。
 で、こっちは明日帰ってもらう気だからこの際置いといて
 爺さん、通信じゃなく直接とはどういった御用件で?」

おそらく爺さんの話す内容はかなりやばい事だろう。
面倒事が最近尽きないねぇ・・・

「・・・実はな、炎魔の魔術師の件の影響かは知らんが
 最近得た情報で【三魔血鬼】の【グランバレッド】が動いたらしいのだ。」

ほら、滅茶苦茶厄介なお話だよ。
私達にも休みぐらい欲しいもんだよ、全く。
三魔血鬼というとヴァンパイアの中でも【祖】を除く種の最高峰に位置していると
言われている三人。
その実力は並みのヴァンパイアとは格が全く違う。

「グランバレッドがねぇ・・・
 通り名は【紅の騎士】だったか?
 あいつが動く、ということは相当大事になるな、こいつは・・・」

嫌な思想しか浮かばない。
裏だけで処理している私達だが、今回ばかりは無理かもしれないな。

「まだ詳しい事は解からん。
 ガルトと連携で調査しているが如何せん奴らは闇の者だ。
 かなり時間はかかるな・・・」

ガルト、【ガルト・ライルガード】の事だろう。
彼は西欧方面司令だからな。
あいつらが一番はこびる位置に居る、という意味では情報網は一番か。

「かかってでもいいからその時までに相手の目的は知らないくてはな。
 しかしグランバレッドがか・・・」

意外だ。
あの三魔血鬼の【武】を掌るあいつが個人で動くなんてな・・・
魔の【ヴァルトリア】、
暴の【ガンドレアル】、こいつら二人ならわかるんだがなぁ・・・
こいつは裏がありそうだな。
後で隠密を送るとしよう。

「あぁ、これは確かなものだ。
 他の三魔血鬼は動いていないようじゃな。」

「わかった。
 話はそれだけ?」

「あぁ、そうじゃ。
 後ガルトの一人娘も連れてきてな・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジか?
あぁ、耳栓用意・・・・・する必要ないか。
あいつ、ここにいないし。

しかし、私は甘い、と痛感させられることになる。

「今おそらく会議室前で待っていると思ったが・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やな予感。
しかもパターンからするとここであいつと深月が来る、と思う。

と、いうことは、



「猶哉様〜!!!」

「うおおおお!?なんでお前がここにぃ!?」

「猶哉様の為ならどこにでも馳せ参じますわ!!!」





あ〜・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり・・・・・・・・・・・・



強力になったねぇ、第一声又は音波・・・・・・・・・





ふっ・・・・・・・・・・・・・・ガクッ。







気絶から復活したのは深月、私共々1時間かかった。
その他の執行者にいた部下達にも若瀬ながら業務に支障をきたした。
これが放送でやられたら総本部は終わりだな・・・と私は常に思う。
彼女の名はフェルナ・ライルガード。
北欧方面司令、ガルト・ライルガードの一人娘だ。

まぁ顔や姿はマジでいいんだわ、確かに。
でも当人は猶哉ラブというまぁあっち系の人。

そして冗談じゃない威力の破壊音波の持ち主



「・・・前よりも強力になったな、おい・・・」

なんで猶哉は無事なのかは不明。
いつもあいつだけは気絶しない。
不公平じゃねぇ?と私は常々思う。
まぁ私に対する扱い面で私はさらに不公平だと思うが。

「本当・・・前より気絶時間が延びたわ・・・
 あぁ、頭がまだくらくらするわ・・・」

実は烏羽、高山田、柊、みみみぃ、zケニーも一緒にいたようで、
まだ回復していない。
初めての奴は1日起きないかもな・・・
実際問題聞いたことのあるであろう爺さんも今医務室だ。
鼓膜破れてないことを祈っているぞ。

「とはいえ、このままでは話が進まないし、ご帰宅の時間だなこいつらは。
 親には学園の教師役から連絡させるとして、こいつらには明日来てもらうか。
 幸い明日は休みだからな。」

「で、問題はどうやって起こすか、だろ?」

「あぁ、君の意見だが今は除外ね猶哉君。
 君の腕にべったりくっついてるそこのお嬢さんの相手でもしてなさい。
 つうかしてろ、お帰りまで。」

そうじゃないと私が恨まれる。
外人なのに何故か藁人形を愛用しているこの子には
何回か打たれた経験があるからなぁ・・・

結構きつかったぞ、あれは。
毎回毎回心臓部分を的確に打ってくれるからな・・・(苦笑)

「そう総統様も言っている事ですし
 私達はどこかに行きましょう猶哉様〜。」

「だああああああ!!!引っ付くなぁ!!!
 そして俺はまだ勤務中だっつうの!!!」

うむ、他人の不幸は蜜の味。

「それとそこの深月さん。
 やめなさいスレッジハンマーで起こそうとするのは。
 それじゃ死人が出るよ、マジで。」

本部で殺戮劇をするつもりか、お前は。

「ちっ、それじゃ黒子、後は任せたわ。
 私は疲れたから先に寝させてもらうわ。」

「へいへい、つうか私上司なんだがなぁ・・・」

ぶつくさ言いつつもハリセンを取り出す。
やっぱつっこみと人を起こす時はこれが一番だ。

「大阪名物〜♪」

さぁ眠れる子羊達を起こしてやろう。







「狩場の抹消、ならびにゲートの消滅を完了させたそうです。」

執務室で君崎の報告を聞く。
全く、後片付けぐらいは自分達でしてもらいたいものだ。
前の人狼は一人できちんとやってくれたというのに。

これもあいつの嫌味だろうな・・・

「ご苦労さん、と伝えておいてくれ。
 それと明日の事もよろしく頼む、もな。」

「承りました。
 では、私はこれで。」

「あぁ、お疲れさん。
 後で孫へのサービス休みをとらせるよ。」

「よいのですか?」

おい、そのにやけた顔じゃわかりまくりだぞ君崎。
まっ、わざとだろうけどな。

「あぁ、お前の孫の嬢ちゃんに何か買ってやれ。
 最近全く相手して無いだろ?」

「えぇ、感謝いたします黒子様。
 しかし、孫に手を出す気ではないでしょうね?
やはり黒子様にはそういう気が・・・」

「だから私にそっちの気はねぇよ!!!」

ったく、どいつもこいつも人を誤解しまくってやがる。

「はっはっはっ、それではお食事をお楽しみ下さいませ。」

君崎が出るのと食事が運ばれてくるのは同時。
今日の夕飯はなんでしょうってとこだ。

「お疲れ様です黒子様。
 本日の料理はまぐろとこはだのお刺身、
 あさりのお味噌汁、タコと夏野菜のマリネ、桜海老のかき揚げ天丼でございます。」

「今日は魚介尽くしか。
 毎度毎度済まないな、【FM】」

目の前にいるメイドに語る。
無表情な顔に笑みが浮かぶ。
彼女の名はFM。
この本部での食事関係、二つの生命線の一人で私の侍女となっている。
まぁ侍女は名目上だがな・・・

食堂のおばちゃんとFMがいないとここの食事は絶望的なものとなる。
華月もいないしな・・・
無論私も料理くらいできることはできるが部下の手前、やるわけにはいかない。

「ありがとうございます。」

「しかしお前もだが休みぐらい言えばちゃんと与えるぞ?
 私は信頼する部下には厳しくするつもりはない。」

つまりサボってる奴には厳しいということだ。
代表例で言えばみみみぃだ。

「毎度お言葉ですが黒子様、私はあなた様の侍女、となっております。
 それでは職務怠慢となってしまいます。
 仕えるのが私の仕事です。
 休みは1日に何時間かはとっております。
 お気になさらず、目の前の事のみお考えを。」

この会話、これで何回目かねぇ・・・
まぁ本人がこういうので私として強行的にするしかないのだが
当たり前ながらできない。
そうされると「私にお暇をだすのですね・・・」と何か勘違いをされるからだ。

はぁっ、女ってのはどうもわからないし怖い生き物だ、本当に。
とりあえず食欲を満たす為、目の前の美味い物を食べる。

「毎度の事ながらさすがだなFM。」

「畏れ入ります。」

「自分の財布が寂しくても美味い物は食いたいよなぁ・・・」

今月もピンチだ。
上の者だからってお金持ちとは限らない。
特にその下が有能な場合は特に。

「失礼ですが黒子様は総大将では?」

「ふっ、FM、覚えておけ。
 男っていうのは女には力で勝ったとしても本質的な力では勝てないのだよ。」

「はぁ・・・」

お前も女だからな、いつかはわかるさ。
つうか私の周りの女に普通の奴はいないからその内確実にわかるさ、多分。


「ふぃ〜、ご馳走さん。」

「御粗末様です。」

「よし、下がっていいぞFM。
 明日に備えよ。」

「はっ、それではお休みなさいませ。」

「あいさお休み。」

さて、明日の事を考えねばな。

確実に狙いは私だ。
それはまず間違いない。
だがしかしこれを他の連中に悟られる訳にはいかん。
こいつは私とあいつの問題だからな。

まぁそのとばっちりを受けてる深月や猶哉やzケニー達には悪いと思ってるが
教える訳にはいかない。
烏羽と高山田のその部分の記憶の削除は済んでいる。
あっちもいろいろと偽装をしてくれるはずだから安心できる。

さぁ、明日終わりを見るのかねぇ、あの時から続く復讐劇に・・・







今日の黒月学園新聞【黒海】第7号

* いやぁ7月も終わりに入って夏真っ盛り。
無論、学園は夏休みで休校中ですが新聞部に休みはありません。
部活動や先生達のように学園に来る人の為に新聞部は毎日新聞を出し続けます。
では、今日の話題はこれら。

O最近、科学部が10月の文化祭に向け何やら怪しい実験を行なっているようです。
 しかも今回は機械工学部と合同で。
 如何にも怪しいこの連中は今年何をやらかして粛清されるんでしょうねぇ?
 その前に最近エアコンの調子が悪いらしくてそっちで死にそうらしいですが。
 実はそれに生徒会が絡んでるとかいないとか。

 O生徒会メンツが何人かを引き連れて海へ行くとの未確認情報をゲット。
 なんでも「まずいラーメン、粉っぽいカレー、溶けたかき氷!」とか
生徒会長が喚いていたらしいですが・・・
 興味のある方は生徒会長を追跡して隣町の【神音浜】にでもお出かけしてみては?

 O外の運動部内で夜、プールで幽霊が泳いでいるとの噂が広まっていたのですが
 その正体が判明。
 犯人はzケニー氏でした。
 なんでも泳ぎの練習をするのにここが一番楽だったとかなんとか。
 騒ぎの原因となったため、深月氏と猶哉氏による
 マグロ解体ショーの生贄になる予定でしたが
 ワシントン条約に引っ掛かるとかで殺魚未遂となり
やむなく、まな板に張り付けの刑となりました。

・・・・・・つうかワシントン条約になぜ引っ掛かる?


今年の夏はおもしろいネタが一杯ありそうだ。


O今日の生徒会長名言

「人に殴られて空に飛ぶのはギャグだけだ?
 あんた私と一緒に学園に来なさい。
 悲しい現実を見せてやろう。」

第8回に続く



後書き
次くらいで第1は終わるかなぁ・・・
いや、終わらせて次のネタ行かないと・・・
あぁ、もう夏が終わってしまう〜!!!


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