ビオトープの生命2011(1)
4月13日 黄色い花の季節
早春の花は黄色が多いなあという印象をほとんどの人が受けているのではないでしょうか。 草花の場合は、白い花も多いのですが、樹木の花の場合は、マンサクに始まって、サクラやツツジの頃までに咲く花は、ほとんどが黄色といっても良いほどです。
この理由は、やはり花粉を運ぶ昆虫にありそうです。 まだ寒い早春の頃に活動できる昆虫は、ハナアブやハエの仲間くらいです。 これらの昆虫には黄色が目立つというのが、黄色い花が多い理由になっているようです。 黄色とか白というのは、ほとんどの昆虫に目立つようで、多くの昆虫を集めるのに向いているようです。 だから専門の昆虫を選ぶ場合以外には無難な色ということになります。 反面で、自分が受精できない別の種の花粉を受け取る可能性も高くなるのですが、花も昆虫も少ない早春には、ベストな色ということになるのでしょう。
ダンコウバイ・シロモジ・クロモジ
黄色いボンボリのような小さな花をつけるクスノキ科の早春の花はとてもよく似ていて、見分けるのはかなりの熟練を必要とします。 東濃でよく見かけるのはクロモジ属のクロモジとダンコウバイ、シロモジ属のシロモジです。 実は葉の形がまったく違うので、葉の形を見れば簡単に見分けられるのですが、早春の花の通例で、花の時期にはまだ葉を展開していません。 クロモジは比較的早い段階から葉を広げ、図鑑では花と葉が同時のように書かれていますが、必ずしもそうではなさそうです。 この3種はすべて雌雄異株で、雄花と雌花の印象も微妙に異なります。
私の場合は、花が密について、黄色が濃ければダンコウバイ、花が疎らについて、淡い黄色ならばシロモジ、緑色がかっていればクロモジという程度に決めてしまっています。
ダンコウバイは賑やかな感じがします。
ダンコウバイの花と黄葉。
シロモジの花。
シロモジの黄葉。 クロモジの黄葉と実。
コウヤミズキ
これも東濃ではよく観られる樹木です。 別名のミヤマトサミズキという名前が示す通り、庭木として人気のあるトサミズキとよく似た特徴的な花を咲かせます。 7〜8個の淡黄色の花を穂状に垂らす花序は一度観たら忘れられないでしょう。
徐々に花茎を伸ばして、花の間隔が長くなります。
キブシ
どこでも見かける早春を代表する花で、やはり雌雄異株です。 これも穂状花序ですが、ひとつひとつの花が小さいので、コウヤミズキとは印象が異なります。 果実を五倍子の代用として黒色染料に使ったところから、キブシの名前がつけられました。
ずいぶん早い時期から蕾をつけていたが、気が付いたら咲いていた。
3月23日 タンポポ
タンポポはスミレとともに日本の里の春を代表する花でしょう。 その意味では、去年、このシリーズを始めた時に、真っ先に取り上げたかったのですが、スミレ・タンポポというのは、大きすぎるテーマで、何を書くべきか纏まらないのです。 結局、手も足も出ずに、取り上げやすい野草を選んでいたら、張り切りすぎてネタがなくなってしまいました。(笑) この辺りが素人の限界でしょう。
そうこうする間に、今年も里の方でタンポポの花が咲く季節になってきました。 素人には手に余るテーマですが、タンポポの世界で繰り広げられている一大事件について、簡単に触れてみたいと思います。 興味のある方は、専門家のサイトや論文でお調べ下さい。(と、逃げを打っておきます。)
日当たりのよい道路脇の斜面で、タンポポが咲き始めたのを見つけて、慌てて車を停めました。 早速近づいて、花をひっくり返し、総包片の形を調べました。 通常であれば、萼という部分ですが、タンポポは花弁に見えそうな部分が、舌状花というひとつの花であり、ひとつの花に見えるのは無数の花の集合体なので、萼ではなく、総包片と呼びます。 一昔前までは、ここの形を観察すれば、概ねどんなタンポポなのかを決めることが出来るといわれていたのです。 十年前くらいならば、結構、これで通用していたはずなのです。
日本のタンポポは、まず昔から日本にあった在来タンポポと、外国から移入された帰化タンポポに大別されます。 前者は地域によって違いがあるので、20種以上に分類されています。 後者はセイヨウタンポポ・アカミタンポポが有名です。
両者の最大の違いは生殖方法にあります。 前者(ニホンタンポポと呼ぶ)は、他の花の花粉をもらって受精するという一般的な有性生殖の方法で子孫を残します。 ところが後者(セイヨウタンポポと呼ぶ)は無性生殖で増えるのです。 受粉の必要がないので、昆虫を必要としません。つまり長い時期、花を咲かせることが出来ます。 個体数も極端に言えば1本で済みます。 加えて、種子が小さくて軽いので、拡がるのにも有利です。 ニホンタンポポよりも、繁殖力が数段上のように見えます。 ニホンタンポポは一気に駆逐されてしまうのではないかと思われましたが、都会の荒れ地などでは一気に進出したものの、田圃の畦などではニホンタンポポも頑張って、棲み分けしているというようにも見えました。
さて、ニホンタンポポとセイヨウタンポポの素人でも出来る見分け方というのが、総包の外片が反り返るかどうかということでした。 上の写真で左側がニホンタンポポ、右側がセイヨウタンポポということになります。 その頃の習慣で、私はタンポポを見つけると、すぐに裏返してしまうわけです。
ところが、実はセイヨウタンポポとニホンタンポポの雑種が出来ている、いや雑種の方が多くなっているらしいということが、次第に判ってきました。 無性生殖をしているセイヨウタンポポは花粉を作る必要がないのだから、雑種が出来るはずがないと思っていたのですが、元々セイヨウタンポポの祖先は有性生殖をしていたのですから、稀に花粉を吐き出すことがあるようで、それをニホンタンポポが受粉すれば、雑種が出来るわけです。 この場合、母親がニホンタンポポで、父親がセイヨウタンポポという組み合わせになります。 (逆もあるという記事もありました。)
さて、出来上がった子供はといえば、母親似もあれば、父親似もあるらしいのです。 というわけで、知らない間に雑種が拡がっていたということです。
さて、今回見つけたタンポポの総包写真が左上です。 従来の見方だとニホンタンポポ、細分類すればセイタカタンポポかな?という印象ですが、この付近はまだ梅も満開にならない季節です。 愛用の図鑑にはニホンタンポポの開花時期は4〜5月と自信満々に書いてあります。 図鑑というのは標準的なものの記載なので、例外はいっぱいあるものの、少し早すぎる感じがします。 加えて、咲いていた場所は造成地の斜面です。 こういう場所は、むしろセイヨウタンポポかなという気がします。 セイヨウタンポポは左下の写真のように、人間が造成した場所によく観られます。 なんとなく雑種のような気がしますが、素人が独断で決めるのは遠慮しましょう。
さて、今年こちらでは始めてのタンポポと並んで、白いタンポポが咲いていました。 日本には3種類の白いタンポポがあるそうですが、シロバナタンポポと思われます。 昔は西日本にしかなかったそうですが、最近は関東でも観られるようです。 もちろん名古屋でもよく観られます。
実はこのシロバナタンポポも無性生殖をします。 以前読んだ本でおそらく史前帰化植物(縄文か弥生の時代に人間が持ち込んだ)だろうと書かれていたので、同意していたのですが、今回ネットで調べるとカンサイタンポポとケイリンシロタンポポの交雑種とされ、5倍体で単為生殖可能と書かれていました。 一応、在来種とされています。
さて、倍体というのは植物のことを調べていると、時々出会う言葉ですが、遺伝子のセット(ゲノム)の数のことです。 通常は2セットを持つ2倍体で、ニホンタンポポはすべて2倍体です。 ところがセイヨウタンポポは3倍体あるいは4倍体ということです。
3月13日 野生動物
自然観察をする際の切り口として植物を選んできたとはいえ、野生動物は憧れの存在であり続けました。 でも植物であれば、生育場所を見つけてしまえば、かなり高い確率で観ることが出来、撮影することが出来ます。 しかし、相手が動物、とりわけ哺乳類となると、撮影に結びつくまでには多くの障壁が立ちふさがります。
野生動物のほとんどは、人間に対して強い警戒心を抱いています。 人間に限らず、自分よりも強い動物に対してはというのが正解かも知れません。 これは生き残るために、必要不可欠なことです。 自然界に生きるものは、生き残るためにそれぞれの感覚をとぎすませています。 文明に守られて安穏と生きる人間に比べ、その鋭さは格段に上であるというのが、一般論として成立するでしょう。 だから私が相手の存在に気づく前に、相手はこちらの存在に気づき、逃げたり隠れたりしているでしょう。
身を守るために、見つかりにくい夜に行動する動物もずいぶんいます。 というよりも、夜行性の方が多いというべきでしょうか。 身近な哺乳類のほとんどは夜行性のようです。 これだけ荒らされながら、いまだにイノシシの撮影が出来ないという一事をみても、それは明らかです。 よほどの高性能で特殊なカメラを持っていなければ、動物の撮影は不可能に近いとも言えます。 動物カメラマンの忍耐心・技術・道具の何一つ持っていない私に出来ることではないのです。 動物に関しては、ただただ奇跡的な偶然のチャンスに頼るしかないと思っています。
それでも、野生動物のいる場所に長時間居て、それなりに意識していれば、奇跡的な偶然に遭遇する確率は高くなります。 四季庵に頻繁に通うようになって、その兆候は現れていました。 撮影には結びつかなくとも目撃するとか、痕跡を観るとかいうことです。 その内に何かを観ることが出来そうな予感みたいなものはありました。
ホンドタヌキ
これまでにも時々、四季庵の周辺に小鳥の餌を置いたりしていたのですが、最近になって手応えを感じました。 最初はヒヨドリかなと思ったのですが、減る量が違います。 繰り返している間に、短時間に一気に食べ尽くされていることが判りました。 場所も地面に置いたブロックの上です。 どう考えても哺乳類だなと感じました。 すぐに思い当たるのは、ノウサギかネズミの仲間です。 ノウサギは野草園に糞がしてあったし、ネズミは建物の中にも出没します。 こちらが散歩や草刈りをしている間に食べられている例もあるので、続けていれば、運良く観られるチャンスがあるかも知れません。
ところがチャンスは思いの外に早く訪れました。 餌場は建物の裏口から見通せる場所にあるのですが、昼食を終えて、午後の活動を始めようと外を見た途端に動物の姿が目に映りました。 一目見た瞬間にタヌキであることくらいは分かります。 慌てて女房にカメラを持ってこさせ、その場所から撮影です。 向こうもこちらの存在にはすぐに気づいたようですが、こちらの動きを観察しながら、食べ残しを綺麗に食べています。 いささか面白味には欠ける写真ですが、ゆっくりとクリアに撮影することは出来ました。 まだ食べたりないようなので、大豆を放ってやると、それに驚いて逃げていきました。 なんせ動物には慣れていないので、適切な対応の仕方が分かりません。(笑) それでも、その後に餌を置いておくと、夜中にはなくなっていたので、今後も観られるチャンスがあるかも知れません。
日本のタヌキは、北海道に棲息するエゾタヌキと本州・四国・九州に棲息するホンドタヌキの2亜種だけですから、これがホンドタヌキであることは間違いのないところです。 タヌキはネコ目イヌ科タヌキ属に分類されます。 イヌ科の中でもずんぐりとした体つきで、足が短く、尾が太いので愛嬌のある風貌をしています。 もともと食肉目(ネコ目)の先祖は樹上生活を送っていたのですが、やがて草原に進出して、追跡型へと進化したのがイヌ科のグループといわれています。 タヌキは森林に留まって生活することを選んだので、胴長・短足で原始的なイヌ科の特徴を残す動物とされています。
タヌキはネズミ・カエル・鳥類や卵・魚類・昆虫などの小動物を食べますが、果実も好物です。 人家付近では生ゴミを漁って食べます。 山林が減少して都市化が進んだ結果、人里にも出没するようになったのですが、飼い犬やネコの病気に感染したり、自動車のライトにすくんでしまって交通事故に遭いやすい性質を持っています。 これまでにも自動車に轢かれたタヌキの死体を何度も観てきましたが、それがタヌキの基本的な性質とも言えそうです。
テレビなんかでも、時々人家にやってくるタヌキが紹介されますが、人間への警戒心はかなり低いようです。 何事にもメリットとリスクという両面があるのですが、タヌキが生き残っていく上で、有利な条件とも思えません。 とはいえ、我々にとっては再会できる可能性を示しています。 今度は親子連れと出逢えることを夢見ておきましょう。
ノスリ
タヌキは、この付近の生態系にあっては、かなり上位を占める存在ですが、鳥の中では猛禽類が生態系の頂点に位置すると言えます。
毎年、早春の一時期にビオトープにノスリがやってきます。 ノスリはタカの一種で、大きさはトビよりも一回り小型です。 色彩もいくらか白っぽく、顔もいくらか丸顔なので、猛禽類の精悍さにはいくらか欠ける感じもします。 ノスリという名前は、餌を採る時に地表すれすれに飛ぶところからつけられました。
この地域では留鳥または漂鳥と言われているのですが、この時期以外はどこにいるのかは知りません。 餌は昆虫類、節足動物、ミミズ、両棲類、爬虫類、鳥類、小型哺乳類で、わりとなんでも食べる肉食のようです。
今年はわりと長く居着いていますが、毎年この頃にだけ姿を見せます。 私の想像では、ヤマアカガエルの産卵時期と概ね一致するので、ヤマアカガエルの大集合がお目当てではないかと思っています。
今年もやってきたノスリ。 胸から腹にかけての白っぽさ、顔の筋などが特徴。
2月26日 カエルの唄が
ビオトープに出入りするようになって、2月になると、メダカ池やホタルの幼虫を放流する水路にカエルの卵が産みつけられていることを知りました。 一昨年の2月、ビオトープで正体不明の鳴き声が聞こえてきます。 野鳥ではなさそうだし、この時期に鳴く虫も思い当たりません。 そっと近づくと、大合唱はピタリと止みました。 でも、カエルが跳んだような気がします。 カエルって、まだ冬眠中なのでは・・・? 調べてみると、無数の卵が産みつけられています。 どうやら、あの合唱は、カエルの恋の歌だったことは間違いありません。
田んぼのカエルといえば、多くの人はトノサマガエルを思い浮かべるでしょう。 ビオトープの仲間たちも、トノサマガエルと信じていたようです。 でも、私のおぼろげな記憶では、トノサマガエルの産卵は田植えの時期だったような気がします。 それに、見かけた影もトノサマガエルよりも小さかったような・・・。 少し頑張って、やっとカエルの姿を撮影し、インターネットで調べてみました。 どうやら、トノサマガエルと同じアカガエル科のヤマアカガエルらしいということが判りました。 近縁のニホンアカガエルとはよく似ているし、混在するようなので、ニホンアカガエルも混じっているかも知れませんが、そこそこクリアに撮れたものは、すべてヤマアカガエルのようなので、とりあえずビオトープのこの時期のカエルはヤマアカガエルということにしておきます。
今年の冬は寒かったので、2月に覗いてみても、カエルの卵は見あたらなかったのですが、先週、放流水路にカエルの卵が産みつけられていました。 そろそろカエルの合唱が聴けるかなと思って訪れると、予想通りに恋の歌が聞こえてきます。 近づくと、カエルは水底に潜って隠れてしまうので、そっと近づいて水面に目を凝らします。 どうやらそれらしき姿を水面に見つけて、目一杯の望遠で撮影しました。 再生モードで確認すると、間違いなくカエルです。
カエルの雄は、雌よりも一回り小さいので、これが交尾シーンかどうかは自信がありませんが、ずいぶん集まっています。
カエルは里山あるいは田んぼの生態系の中でも、重要な位置を占めている動物です。 イネの害虫として嫌われてきたイナゴなどの昆虫や小動物を捕食します。 その一方で、ヘビや鳥やイノシシなどの食糧にもなります。 その特徴的な姿を、愛嬌があると感じるか、気味悪いと感じるかは、それは個人の感覚の問題ですから勝手なのですが、自然界に存在するものには、存在理由と役割があるということは深く理解したいものです。
ヤマアカガエルやニホンアカガエルは体長が4.2〜7.8cmで、体長6〜9cmのトノサマガエルよりも平均的に小型です。 色も赤褐色がかったものが多いようです。 トノサマガエルが土中で冬眠するのに対して、ヤマアカガエルやニホンアカガエルは水底で冬眠します。 繁殖時期も1〜6月で、トノサマガエルの4〜6月に比べ、ずいぶん早い時期から産卵します。
以前は、冬にも水を張った水田が多かったようですが、近年は水田の減少や乾田化が増え、産卵場所が減少しているといわれています。 年中水を張っているビオトープは、ヤマアカガエルにとっては絶好の空間になったようです。
トノサマガエルは乾田でも子孫を残せるように、間違いなく水が張られている田植え前後の時期に産卵し、素早く成長させる戦略を採ったカエルということになります。
ビオトープでも、暖かくなるとトノサマガエルの姿を見ているような気がします。 もっとも地域によってトノサマガエルではなく、ダルマガエルという似た仲間のこともあるそうですが、私は細分類にはあまり拘らないことにしています。
これまで植物中心でやってきましたし、あまり手を広げると収拾がつかなくなるので、これからも植物中心でやっていくつもりですが、ポピュラーなものは、どんどん取り上げていこうと思います。
2月19日 花粉症の季節
昨年の猛暑などが影響し、今年のスギ花粉の飛散量は昨年の10倍以上と予測されています。 今や国民の4人に1人は花粉症に悩まされているそうです。 幸いにも私自身は、現在のところ大丈夫なのですが、娘は暗い顔をしています。
花粉症は、植物花粉によるアレルギー疾患で、主な症状としては、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目の痒みなどが挙げられます。 花粉症の原因となる花粉は、スギ・ヒノキ・ブタクサ・マツ・イネ科・ヨモギなどがあり、60種とも80種ともいわれています。 その中でも、我が国で圧倒的に多いのは、スギ・ヒノキ花粉症です。
植物といっても、樹木・風媒花というのは、私にとっては弱い部分で、スギの花をしっかりと観たことがありません。 スギやヒノキはビオトープ周辺にも嫌という程植えられているので、今年は忘れずに観察してきました。 この付近では、まだ少し早めのようですが、それでもすぐに見つかりました。
画面中央が雄花。 向かって右上方が雌花のようです。 スギは日本特産の常緑高木。 ご覧のように雌雄同株です。
近づいてみましょう。 左が雄花で、花粉症の原因となる黄色い花粉はここから放出されます。 雌花は、手の届く範囲では、まだ小さなものしか見つかりませんでした。 下に去年の球果を載せておきます。
1月21日 ガマの穂綿
ビオトープのガマの穂綿が飛び交う季節になりました。 唱歌「大黒様」の「ガマの穂綿にくるまれば、ウサギはもとの白兎」の一節が蘇ってきます。
この白兎は、毛皮を剥がれてしまったわけですから、白い綿毛でくるんでやれば、外見上は元に戻るのかも知れませんが、なんとなく抵抗感を感じたのは、私ひとりではないでしょう。
この唱歌の原典である古事記の「因幡の白兎」では、大国主命は「蒲黄(ほおう)」を傷口に塗るようにと言ったのだそうです。 「蒲黄」はガマの花粉で、古来、薬用植物として使われてきました。 外用剤として傷口に塗れば止血剤になるほか、内服剤として利尿・通経作用もあります。 穂綿も布団の綿などに利用されたようですが、薬効はありません。
穂綿がガマの実であることは、容易に想像できますが、花にはまったく記憶がありません。 正直なところ、イネ科やカヤツリグサ科などの風媒花は、ある程度意識的に避けてきた傾向があります。
外観が地味だということもありますが、種類が多くて、調べるのが大変なのです。
ガマはガマ科の植物で、夏場に花を咲かせます。 穂綿になる部分は、当然雌花です。 雌花は極めてシンプルな構造で、花弁などは一切なく、雌しべだけです。 雌花の穂の上に突き出したものが見えますが、これが雄花の穂の残骸です。 雌の穂がまだ緑色を残す夏場に、ここに雄花をつけ、夥しい数の黄色い花粉を放出するわけです。 これが蒲黄というわけです。
美しい花がいっぱい咲く時期だけに、見落としてしまいそうですが、今年は忘れずに観察してみようと思います。