ビオトープの生命2011(4)

12月2日 エクリプス:コガモ

鳥に限らず、動物の中には、オスがメスよりもずっと目立つ姿形をしているものが多く観られます。 この理由は、メスに目立って、モテたいということと考えて、ほぼ間違いなさそうですが、目立つということは、天敵からも目立つので、狙われやすくなるというリスクも伴います。 自分の遺伝子を残すということは、文字通りに命がけのことなのです。
メスの場合は、子供を産んで、育てるということで、多くの場合、目立たない地味な姿をしています。 まだ成熟していないオスも、自分の姿を目立たせる必要はないので、メスに似た地味な姿をしていることが一般的です。  この結果、メスだと思って撮影したら、実は「若」(成熟していない若いオス)だったということを繰り返します。
また殆どの野鳥は、季節によって羽毛を生え替わらせます。 夏羽と冬羽では、まったく別の鳥に見えることも珍しくありません。 もう素人は頭が混乱してきます。 さらに混乱に拍車をかけるのが、エクリプスという概念です。 オスにとって、目立つ羽をつけるということは、メスから目立つようにして、伴侶を手に入れたいということが目的ですから、繁殖期が終わったら、目立たない羽に着替えた方が都合が良いわけです。 ですから、繁殖期が終わったら、メスそっくりの羽に着替えます。 この状態のオスをエクリプスと呼びます。 まあ、夏羽と冬羽の違いのような気もしますが、初心者の私には、詳しい知識がまだありません。

コガモは、ユーラシアや北米大陸の中北部で繁殖し、越冬するために南に渡ります。 日本にも冬場に渡ってくる冬鳥ですが、カモ類の中では冬の渡りが比較的早く、関東では9〜4月にかけて観られるようです。 私の散歩コースである山崎川でも10月には姿を見かけるようになります。 ビオトープ周辺でも、冬場には養魚池などで、良く姿を見かけます。 大きさはハトよりも少し大きい程度で、日本で観られるカモの中では、最小クラスです。 大きさは小さいのですが、オスの姿は美しく、特に目の周りの暗緑色の羽が、光線の具合により、緑色や青色に輝く美しさはマガモと同じです。
私にとっては、冬場には何時でも観られる、ありふれた存在であるという安心感から、あまり一生懸命に撮影することもなかったのですが、不思議なことに気づいていました。 渡ってきた当初には、オスの姿がないのです。 メスが先に渡ってくる? オスとメスが別の場所に集まっている? でも、それ以上に深く考えることもなく、時が過ぎていました。
鳥の出が悪くて収穫のないある日、コガモでも撮っておくかと、気合いの籠もらないままに撮影した画像を見ていて、あれ??? これってオスじゃないか? やっと、メスだと思っていたのが、オスらしいと気づきました。 「若」はメスと一緒に行動しているのかな? いやいや、夏羽から冬羽に着替えているのかな? ようやく重い腰を上げて、少し真面目に調べる気になりました。
コガモのオスはエクリプスの状態で越冬地に渡ってくるのです。 ところが、その後、2月末〜3月につがいを形成して、繁殖地に渡ると記されています。 要するに、越冬地で伴侶を決める集団見合い(ディスプレイ)をするのです。 日本に来てから、集団見合いに備えての着替えを行っている最中だったわけです。 着替えが進むにつれ、私の目には、オスが増えてきたと映っただけのことでした。



一応、着替えの様子を纏めておきましょう。
上は、12月末に撮影したオスです。着替えが終わり、オスらしい姿になっています。
左下は、10月に撮影した、エクリプスのオスと思われる姿です。(もう一つ確信が持てません。) メスとそっくりの姿です。
右下は、11月に撮影した換羽途中のオスです。
実に見事で、華麗なる変身ですね。

  

これで一つの謎は解決したのですが、新たな謎が生まれてきます。 なぜ、わざわざ越冬地で伴侶を決める必要性があるのでしょうか? 繁殖地に戻ってから行うのが普通のような気がします。
オスは目立つ姿のままで、繁殖地に渡っていくのでしょうか? そうだとすれば、婚約旅行の最中に、敵に狙われやすくなりそうな気がします。 戻った時には、未亡人になっていたということが、ないことを願わざるを得ません。

この冬は、もう少し、コガモに注意してみようと思います。


11月3日 蝶と蛾:イカリモンガ

蝶と蛾の違いについては、昔はこう言われていました。 @蝶は昼行性、蛾は夜行性。 A蝶は触覚が棒状、蛾は羽毛状。 B蝶は羽根を閉じてとまり、蛾は開いてとまる。
当時から、これには色々な例外があることは知られていました。 しかし最近では、蝶と蛾を区別できる明確な定義はないとされています。 それにしても・・・。 下の写真を観て、これが蛾であると思う人がどれだけいるのでしょうか?
この蛾を始めて観たのは、10月の中旬、四季庵のセンブリを撮影しようとしていた時でした。 小さな赤い色に気づいて、カメラを向けました。 大きさは2cmほどでしょうか? 最初はベニシジミというシジミチョウの仲間だと思っていました。 しかし望遠で撮影している間に、そうではないことに気づきました。 大きさは、やや大きめのシジミチョウですが、羽根の形は、むしろタテハチョウを連想させます。 そしてタテハチョウの仲間を片っ端から調べましたが、似たものを見つけられません。 可能な限りで、あらゆる蝶の仲間を調べましたが、やはり見つかりません。 それに反して、出かける都度、ビオトープで、この蝶を見かけるようになったのです。 古典的な分類では、あらゆる点で蝶の特徴を備えるこの蝶が、蛾に分類されているとも思われませんが、念のために蛾も調べてみようと思うようになりました。 ところが、やはり蛾は蝶に比べて人気がないようで、なかなか適当な資料が見つかりません。 正解は意外なところに転がっているもので、四季庵に置いてある子供向けの昆虫の図鑑を観ていたら、イカリモンガという蛾がそっくりであることに気づきました。 早速ネットで検索して、間違いないことが判明しました。


ノコンギクの蜜を吸うイカリモンガ。

イカリモンガの説明を読むと、言い合わせたように、蝶と間違えやすいと書かれているので、私が蝶と思ったのも当然のことのようです。 しかし、この蛾には、もう一つ大きな特徴があります。 それは幼虫の食草が、イノデというシダ類の植物だということです。 どうやら、蝶や蛾の仲間で、シダ植物を食草にするのは、イカリモンガ科だけのようです。 花をつける顕花植物の登場は、確か恐竜の繁栄した時代の後半からで、比較的最近の出来事です。 石炭の元になった植物はシダ類で、はるかに以前から繁栄していました。 どうやら、蝶や蛾は昆虫の中でもかなり新しい種類で、花と共存することにより繁栄してきた仲間のようです。 蜜を吸い、花粉を運ぶだけではなく、幼虫の食草も顕花植物と密接な関係を築いて進化してきたのでしょう。 想像を逞しくすれば、古いタイプの植物であるシダを食草とするイカリモンガは、蝶や蛾の先祖の面影を残す種類なのかも知れませんね。


10月27日 秋の花二題

ヤマラッキョウ

今年も池の畔で、ヤマラッキョウの紅紫色のボンボリのような花が咲き始めました。 ヤマラッキョウは、ユリ科ネギ属の多年草で、比較的湿った草原に生育します。 秋の野草の中でも遅めに開花するので、私なんぞは、この花が咲き、リンドウが咲くと、いよいよ今年の花のシーズンも終わりかと、寂しさを感じてしまいます。



ヤマラッキョウの名前の由来は、カレーライスの付け合わせとして食用にされるラッキョウに姿が似て、山に咲くからなのですが、実はラッキョウの花は、あまり馴染みがありませんでした。
栽培品のラッキョウは、中国ヒマラヤ原産の野草を野菜化したもので、鳥取・福井・富山県では特産品になっていますが、こちらでは、あまり多く栽培されていないようです。 以前、畑に植えられて、全体にやや大振り、花の数が少ないものを見たので、これがラッキョウの花だなと思っていました。 今回も山麓で休憩していると、荒れた畑に、やや大振りで花の数が少ないヤマラッキョウそっくりの花を見つけました。 たぶんラッキョウだろうと見当をつけて、少し入念に花を撮影しておきました。 帰宅後、インターネットで見分け方を調べると、次の二つが浮かび上がってきました。 ネギ属ですから葉は中空です。 その断面が五角形のものがラッキョウ、三角形のものがヤマラッキョウだそうです。 もう一つは、おしべの根元に歯牙という突起があるのが、ラッキョウで、ヤマラッキョウにはこれがありません。 歯牙は運良く写っており、やはり予想通りにラッキョウでした。

  
(左)ヤマラッキョウの花。 (右)ラッキョウの花。おしべの根元に突起が見えます。

ラッキョウは、主に鱗茎と呼ばれる地下茎の部分を塩漬けや甘酢漬けにして食用にしますが、ヤマラッキョウでは、鱗茎が小さいので、炒め物や天ぷらに利用される他、山菜として食用にもされるようです。 しかし多くの山野草が少なくなってしまった現在、食用にするのは控えて欲しいものです。

ゲンノショウコ

ゲンノショウコは、フウロソウ科フウロソウ属の多年草で、低地から高地まで、広く一般的に見られます。 フウロソウ属の花はタンニンやケルセチンを含むので、古来から胃腸薬として利用されてきました。 薬用植物の薬効はまちまちですが、この草については間違いがないということで、「現の証拠」という意味で命名されたと言われます。 花の色は濃い紅紫色から、白に近い淡紅色まで様々ですが、この地域では色の薄いものが殆どです。



ゲンノショウコには、ミコシグサという別名も、広く使われています。 これは花ではなく、実の形から名付けられたものです。 この花は花期が長いので、上の写真でも、花に混じって実の姿も認められます。
種子をまき散らして、自分たちの棲息領域を広げるのは、植物にとって重要な生存戦略なので、色々な方法が生み出されていますが、自ら弾け散って、いわばバネの力で種子を遠くへ飛ばすのが、フウロソウ属の共通の方法です。
左下は、上と同様の当初の姿です。 つまり種子が成熟している段階です。 種子が成熟すると、包んでいる皮が次第に乾燥し、乾燥しきると、下部から裂開して、種子を飛ばすわけです。
右下は、種子を飛ばした後の姿です。 皮がバネになって、種子を遠くに飛ばしたことが判ります。 この姿を、お祭りのお神輿に見立てて、ミコシグサと名付けられました。 この姿は、冬場にも残ります。 何もない冬には、お神輿に似たこの姿に霜が降りた様でも、格好な被写体になってくれます。

  
(左)種子散布前。 (右)種子散布後。お神輿に見えるでしょう?


10月4日 赤とんぼ入門

「夕焼け小焼けの赤とんぼ。負われて見たのは、いつの日か」
私の少年時代には、まだ名古屋市内でも、秋空いっぱいに群れ飛ぶ、赤とんぼの姿が見られました。
今でも、ビオトープ周辺では、それなりの数の赤とんぼが飛んでいます。 去年、里の住民が、もの凄い数の赤とんぼが飛んでいたと教えてくれたので、単にタイミングの問題かも知れませんが、私は大群と呼べるほどの数には出会っていません。 年々、水田が減って、赤とんぼの数が減っているのも、間違いないでしょう。 稲作という、日本人の生活パターンと、水田という環境に、もっともうまく適応して、赤とんぼは繁栄してきました。
赤とんぼの中でも、日本でもっともポピュラーな存在がアキアカネです。 アキアカネは、初夏に田んぼで羽化し、夏の間は涼しい高原で避暑をし、秋に里に戻って、稲刈りの終わったばかりの田んぼで産卵します。
夏になると、低地では花が少なくなるので、花を求めて高原や高山に出かけるというのが、少し前の我々のパターンでした。 そういう場所では、避暑に来ているアキアカネの姿をよく見かけました。 三年ほど前、霧ヶ峰方面を訪れた際、もの凄い数のアキアカネが群舞する姿に出くわしました。 これだけの大群に出会ったのは、少年時代以来だと思います。



赤とんぼというのは、学術用語ではないので、あまり厳密な定義はないのですが、ここではトンボ科アカネ属の小型のトンボの総称という意味にしておきます。
その大部分は、羽化したばかりの時は黄色っぽい色をしていますが、成熟すると、特にオスは赤くなります。 一般にメスはオスほどには赤くならず、黄褐色程度です。 赤は婚姻色だと考えられます。



田んぼに戻ったアキアカネは、稲刈り直後の田んぼで、相手を見つけて、交尾をし、産卵を行います。
赤とんぼに限らず、トンボの交尾は、愛のハート形を作る独特のものです。 オスは尻尾(胴の端部)の先にある鉤をメスの頭の後に引っかけ、草などにとまります。 するとメスは自分の尻尾をオスの腹(胴の付け根)に突き立てます。 オスもメスも生殖細胞は尻尾の先の方で作るのですが、オスの精子の貯蔵庫は腹の方にあります。 だからこの形で受精が成立するのです。 これが愛のハート形の意味です。(左下写真参照)
受精が終わると、赤とんぼの殆どは、連結したままで飛び立ち、産卵します。 多くは打水(打泥)産卵といって、メスが水面を叩いて、水中や土中に卵を産みつけるタイプです。(右下写真参照) アキアカネもこのタイプですが、ナツアカネなどは、打空産卵といって、空中でメスが尻尾を振って、卵を産み落とします。 時期も、ナツアカネは刈り取り前です。

  
赤とんぼの交尾と連結打水(打泥)産卵。(マユタテアカネ)

赤とんぼの産卵時期というのは、種類によって多少の前後はあるものの、稲刈りの前後ですから、田んぼは水を抜いて、水溜まりが僅かに残る程度です。 幼虫であるヤゴが飢え死にしてしまわないかと心配になるのですが、実は卵のままで越冬し、孵化するのは100日前後先になります。 その時期というのは、ちょうど田植えに備えて、田んぼに水を入れる時期に当たります。 その時期を待って、トンボは幼虫になり、増えてきたミジンコなどを食べて、大急ぎで成長します。 そして初夏には成虫になり、アキアカネなどは、成長しきる前に長旅に出発するのです。 もの凄い体力を必要とするように思われますが、上昇気流を利用すると、実はあまり体力を必要としないようです。 体力を養うのは、涼しい場所で時間をかけて行うわけです。 アキアカネが赤とんぼの代名詞にまでなり、もてはやされる理由は、日本の地形と人間の営みに見事に合致している、その生態に依るようです。
身体の小さな赤とんぼは、このように一生を凝縮して、ほぼ半年で一生を終えます。  しかし日本最大のトンボであるオニヤンマになると、ヤゴの時代は5年だと言われます。 同じトンボでも、ずいぶん違うものです。

  
アキアカネ(メス)とマユタテアカネ(オス)

本当は、良く比較されるアキアカネとナツアカネを撮影して、本文を書きたかったのですが、どうもナツアカネと断言できそうな写真が見あたりません。 この周辺にナツアカネがいたとしても、打空産卵シーンは、単なる連結飛行写真と区別できません。 アキアカネと信じて撮影した交尾と産卵も、違和感を感じて調べると、マユタテアカネのものでした。 老眼が進んできた我々には、小さな赤とんぼは荷が重すぎます。 肉眼では判別が不可能です。
ということで、ビオトープおよび坂折棚田で撮影できた、比較的見分けやすい赤とんぼについて、見分け方超入門を行ってみます。
まずはアキアカネ。 秋になっても、胸は真っ赤になりません。 胸の横側の模様が、目立ちます。 話にだけ出てきたナツアカネは、模様は似ていますが、胸や頭まで真っ赤になります。
マユタテアカネは、顔面に黒い点があります。(眉があると言うそうです。) オスの胸は褐色になります。 メスは羽の先が褐色になるものが多いようです。(産卵写真参照) 棲息環境は広く、溜め池・水田・用水路・湧き水の水溜まりでも産卵します。

  
羽の先端が黒褐色のコノシメトンボ(メス)と帯があるミヤマアカネ。(オス)

羽に色が付いている赤とんぼは、肉眼でも比較的分かりやすいものです。
コノシメトンボのように先端が黒いものには、ノシメトンボ・リスアカネなどがあります。 アキアカネほどではありませんが、夏は山腹の樹林などに移動するようです。 比較的開けた水面を好み、公園の池やプールにも産卵します。
ミヤマアカネのように、帯になったものは、他にはなさそうです。 赤とんぼには珍しく、流水環境を好むようです。 羽化しても、あまり遠くへは移動しないタイプです。


9月27日 彼岸花

秋のお彼岸の頃になると、田圃の畦や、お墓の周囲で、ヒガンバナの毒々しいまでに鮮やかな赤い花が、一斉に咲きます。 別名の曼珠沙華は法華経の天上の赤い花という意味ですが、それ以外に地方によって様々な方言がついています。 そのほとんどは、シビトバナに代表されるように、有毒植物であるということと、ある種の異様な姿から名付けられたものと思われます。
私も子供の頃から、この花には、何か違和感を感じていました。 その原因の一つは、鮮やかすぎる色彩と、大きいけれど線の細い独特の花の姿でした。 色々な花を観てくると、ヒガンバナの花の形は、それほど変わったものでもないのですが、当時は変な形に思われたのです。 それ以上に違和感を感じたのは、全体のバランスです。 ヒガンバナには葉っぱが見あたりません。 地面から直接茎が立ち上がり、大きな花を頭につけているのです。 これが、どうにも異様に見えたのです。
実は、ヒガンバナの葉は、晩秋に出て、冬を越し、夏に枯れるのです。 冬眠ではなく、夏眠をするのです。 寒い時期にせっせと光合成を行って、栄養を鱗茎というタマネギ状の部分に貯え、暑い夏に休養をして、秋に花を咲かせるということです。 キツネノカミソリなどのヒガンバナ科の植物には、このタイプが多いようです。



ヒガンバナは。中国原産といわれ、稲作伝来時に入ってきた史前帰化植物といわれます。 土に混じっていた鱗茎が、全国に広まったと考えられますが、ネズミなどの土に穴を掘る動物が入り込まないように、あえて鱗茎を持ち込んだという説もあります。
鱗茎には、数種のアルカロイドが含まれ、有毒です。 この毒を嫌って、動物が近寄らないので、田圃の畦やお墓の周囲に植えられるのです。 しかし、日本にあるすべてのヒガンバナの遺伝子は三倍体で、種子はほとんど出来ず、出来ても発芽しないといわれています。 つまり日本全国に広がっているヒガンバナは、株分けによって、人間が意識的に植えたものなのです。
ヒガンバナの鱗茎は有毒で、通常では食べませんが、澱粉は豊富です。 だから飢饉で食べるものがない時には、すり潰して水洗いし、これを食べていたといわれます。 ちょうど、稲刈りの頃に、鮮やかな花を咲かせるという性質も手伝って、人間の手によって、全国に広がったことは間違いなさそうです。

  

ヒガンバナの花をよく観ると、花被片とおしべは6でめしべは1、この時期には観られない葉は、細長い単子葉で、ユリ科の花と良く似ています。 重要な違いは、子房(実になる部分)の位置で、右の写真を観ると、緑色の部分が途中で膨らんでいます。 ユリでは、これが花被片に包まれ、花の正面から見ると、めしべの根元の膨らんだ部分が見えます。 ユリは子房上位、ヒガンバナは子房下位といいます。 ユリとヒガンバナは、かなり近い関係であることが判ります。

<10月29日追加分>

ヒガンバナの葉は、晩秋になったら出ると書いて、すましていたのですが、いつもの散歩道の途中のお宅の庭で、もう葉が出ていることに気づきました。 日本のヒガンバナは、前述したように三倍体なので、種子は出来ていませんが、茎はまだ残っています。 どうやら、本来ならば種子を作り終えて、エネルギーが残り少なくなったら、葉を出して光合成を行い、来年の花を咲かせるために、貯金を始めるということのようです。 参考までに、ヒガンバナの葉の写真を追加しておきます。

  
早くも芽吹いたヒガンバナの葉。