浅く息を吐く。
唾を何度飲んでもなんだか喉の奥にモノがせり上がって来る気がする。
もう一度深呼吸をして周りを見渡す。
神経質そうにしきりに、切り揃えられた髪をいじる青年。
何か楽器でもやっているのか、机を指でリズミカルにたたいている少年。
精神集中か、はたまたボンヤリとか窓の外を眺めている少年。
その少年に気を紛らわすためか、やたらめったら明るく話しかける青年。
「緊張でもしているのか?ディアッカ」
銀髪の青年が話しかけてくる。
果たして彼は自分の声が上ずっていることに気付いているのだろうか。
指摘はせずに
「まあね」
と笑う。
そう、緊張。
重大な任務を果たすときというのは、いつも緊張を強いられるものだ。
失敗したら?
今度こそ帰ってこれなかったら?
・・・・死んだら?
その不安たちが、喉を圧迫する異物となる。
「でも」
それと同時に
「ゾクゾクしてるけどね」
この上ない快感。
これから劇的に変わるであろう、自分たちの運命の予感。
命を賭けた ゲーム。
薄く笑うと相手も満足したように頷き、そのまま無言になる。
「・・・・クルーゼ隊、パイロット五名は移動を開始せよ」
伝令の囁きに、空気が氷のように引き締まる。
「行こうか」
ヘルメットを手に、ソファーから立ち上がり歩き出す。
もう戻れない
日常に背を向けて。
■G奪取計画直前。そして少年たちは運命の渦中へ。