着いて早々寝込んでみたり
砂漠の環境にウンザリしてみたり
捕虜になった挙句、二回も女相手に殺されかけたり
何の因果か敵の味方についてみたり
でもそんな中
唯一今地球に来てよかった、と
思えていることは。
「キラ、ほらこぼしてるよ」
「キラ、駄目じゃないか。そんなことしちゃ」
「キラ、まだその癖治ってなかったのかい?」
「キラ!ちょっと待て!」
「だーー!!もうアスラン五月蝿い!!!」
ガシャーン!とちゃぶ台でもひっくり返しそうな勢いで
(元)ストライクのパイロット、『キラ=ヤマト』が怒鳴る。
そしてその後を、まるで親鳥が小鳥を心配するみたいに
チョコチョコと元同僚で元隊長のアスラン=ザラが引っ付いていく。
まだ小言を並べながら。
「何言ってるんだ!元はと言えばお前がちゃんとやらないから」
「それにしたって限度があるでしょう!?久しぶりに会ったってぜんっぜん変わってないんだから!」
「それを言うならお前もだろう!」
「五月蝿い!アスランのお節介!!もう今日はついてこないで!」
「そ、そんな…!キラ!?」
とうとうキれた彼の背中に絶望的な声を投げかけるアスラン。
しかしながら呼ばれた本人は、その哀れな声を無視してズンズン廊下の奥に消えていった。
まあ無理も無い。
むしろよく耐えた、というべきか。
幼馴染だか親友だか知らないが、再会してからの彼の過保護っぷりは物凄かった。
会えなかった今までの鬱憤を晴らすかのように
いつでもピヨピヨ彼に付きまとっては、世話を焼きたがる。
一挙一動、それこそ箸の上げ下げに至るまで。
それは中々微笑ましさを通り過ぎ、苦笑を誘うほどで。
彼のZAFTでの顔を知っている者には 寒気すら。
(…そうか、『全然変わってない』のか…)
天井を見上げ、俺が知っているアスラン=ザラを思い浮かべる。
冷静沈着
超絶鉄仮面
理知的理論派
無気力無感動
執着物は無きに等しい。
(・・・・・・・・・・・それと、この目の前の人物が同一人物・・・・・?)
綺麗な顔はおんなじまま
まるっきり正反対な行動をしているこの男と。
俺は口元を引きつらせる。
(イザークが見たら卒倒すんだろうなぁ…)
もしくは泣き出すかも。こんな奴に俺は負けたのかぁ!!とか言って。
「…ディアッカ…」
キノコでも生えそうなジメジメした声の方を向く。
一応俺がいたこと気づいてたのか。
視線の先には半分涙目の無駄に美しい少年。
「…何?」
昔の威厳は今いずこ?と聞きたいのをグっとこらえて尋ねる。
「……キラを怒らせた…どうすればいいだろう…?」
「知りません。」
丸めた背中で情けなさを醸し出しているエースパイロット殿に
俺は半眼でお答えする。
すると彼は貝のようにうずくまり、重いため息をついた。
「ああキラ……………!やっと会えたのに…ついてくるななんてあんまりだ…!」
「こっそり後をつけりゃいいじゃん」
「駄目だ。昔ばれた時そのまま一週間口を利いてもらえなかった」
「…………そう」
もう実行済みなんだ…と遠くを見る。
アスランは今にも泣き出しそうな顔をしている。
情けない。
いや、それを通り越してもういっそ可哀想なんですけど。
しかしふと、その姿に一瞬見覚えがあって俺は呟いていた。
「…イザークも、そんなことあったな…」
少し興味があったのか、アスランがこちらを見る。
やっとまともな顔をしたことに安堵し、俺は続ける。
「イザークとさ、俺も幼馴染なんだけど 俺たちもこんな風に喧嘩したことあったなって」
この二人の場合、喧嘩って言うのか知らないけど。
「内容は結構些細だったんだよ。
イザークが俺の大事なモン壊したとかイザークが俺のオヤツ食べちまったとかイザークが悪戯を俺のせいにしたとか…」
言っててちょっと悲しくなってくる。
何?俺ってあんまりろくな年少時代送ってない?もしかして。
アスランの顔にも哀れみが浮かんでいる。
「んで…それに耐えかねた俺がとうとうキれてさ。イザークに絶交宣言したんだよね」
「……それで?」
アスランに促され、頷く。
「そしたら、まあ3日間は確かに口は利かないんだ。でも結局仲直りする」
「…なぜだ?」
せっかく絶交できたのに、とでも言いたげな口調。
俺は苦笑して言った。
「無言の謝罪をされるから」
イザークは強情っぱりでおまけに変なところで照れ屋だ。
自分から謝るなんて口が裂けたってやらない。
けれど
「なんかね、黙って 睨んでるんだ」
初めて喧嘩したときはまだ彼が怒ってるんだと思った。
怒ったのは自分の方だって言うのに、なんて我侭な奴だと思ったけれど。
でもどうやらそれは
「目がね、すんごい泣きそうなの」
一生懸命涙をこらえて、到る所でこちらを見てる。
授業中の教室や、すれ違う廊下や、家の前とかで。
ただひたすら、睨んでくる。
「そんな時どうしたらいいのか、知らないんじゃないかな」
今まで謝る必要なんて無かったから。
謝るのが嫌だから。
でもどうしてもその気持ちを表したくて、でも方法がわからなくって。
自分の必死の意志を、強い視線で伝えようと。
「で、結局俺の方が折れて、何でもなかったように話しかけるの。それで喧嘩終了」
よくもまあ今まで続いたもんだ、と肩をすくめる。
許してやる自分も自分だけど。
でもそんなこんなで
ずっと彼と続いてきたのも事実。
「…そうか、駆け引きも必要なんだな…」
「は?」
物思いにふけっていたところに、感極まったように呟かれた声の方を見る。
すると神の啓示を受けたように戦慄くアスランがいた。
「そうだ…いつも喧嘩だと俺が謝ってばかりだった…たまにはキラにも謝らせるべきだ!」
「…アスラン?」
しかし俺の声なぞまるで届いていないかのように、彼はまだ呟いている。
「待っていろキラ…!俺の悲しみをお前も味わうべきなんだ!」
俺はこめかみを押さえてから、もう一度天井を見上げた。
真っ白い、シミひとつ無い壁が心底目に沁みる。
(…イザーク今頃どうしてんのかなぁ・・・)
そんな現実逃避をしてみたくなった。
大気圏を機体むき出しで突入してみたり
地球の部隊に邪魔者扱いされたり
捕虜だってのに暫くほおっておかれたり
オンナノコのご機嫌取りなんかしたりして
色んなことがあったけど
唯一良かったと思えることは
冷静沈着だったはずのエースパイロットの
意外過ぎる 一面を見れたこと位か。
ちなみに、結局先に謝る事になったのが
我らがザラ隊長だったことは
言うまでも無い。
強制終了。
■誰だお前は。
出てくる人々皆空想の産物(遠い目)
え、えっと…アスキラとイザッカでよ★(一応)
実はキラは初めてだす。イメージ掴めずにアワアワしました。
アスランはいつも通り変態モードで…(ぎゃあ!石投げないでください!)
本当はすごいキラ&ディアニコの重苦しい話だったんですが私も方が耐え切れず…!
結局しろらっと嬢とやばい位盛り上がったアスキラ&ディアな話に。
このアスキラはしろらっと嬢に献上です(いらんだろ)
もっとキラとディアを絡めて面白おかしくも書きたかった…それはまた次の機会に。
っていうか、早くこんな和気藹々としたアス&ディアが見たいものです。
ディアス…!!(本音)
気がつけばお題もラスト一個。
ファイト!私!