たくさんの悲鳴を聞き
たくさんの血糊を浴び
たくさんの絶望を招き


そのことに
はじめは何の疑問も抱かなかった。

躊躇いなど微塵も無かった。


何かを生じさせようとすれば、必ず何かは失われ
何かを得れば、何かは奪われることになり
何かを守ろうとするなら、何かは疵付けなければならなかった。


それは
笑ってしまうほど簡単な理屈で
絶対唯一の真理。

そうしなれば
明日は自分が動かぬ屍だったから。


ただ唯一の自分に屠られた彼らへの手向けは

自分がひたすらその命をつなぐこと。

だから。




けたたましい警報音が響き渡る。
走る緊張。
俺はゆっくりと、随分と変わってしまった顔ぶれを見回す。

皆いそいそと立ち上がり、各自で気合を入れて歩みだす。


この戦いも勝ち取り
そして『生きる』のだと。


俺は小さく、いつぞやの台詞を呟く。
誰でもない、自分に向かって。


「行こうか」


今日もまた、彼らを屠ろうと。

背筋を伸ばし、前を向く。


だから、迷いは無い。
こうやって、自分は生きていくのだから。
生きていくしか、無いのだから。


そしてそれは


きっと俺の
『未来』がなくなる日まで。






■『いまだこず』。それが未来。
13お題、お付き合いありがとうございました。