休日というものは休むためのモノなわけで
間違ってもこんな風に
精神的に疲弊するためにあるんじゃなく。
可愛らしい顔と綺麗な顔が互いに睨みあう。
2人は真剣なつもりなのだろうが、まるで花が咲き競うように。
うーん、素晴らしい光景だ。
それが自分を取り合って争っているんだ、と思うとなおさら。
しかしながら問題は。
「・・・ですから、今日はディアッカは僕と出かける約束をしていたんですよ!イザークは引っ込んでて下さい!」
「フン!そんな事あるわけが無いだろう?今日はディアッカはお・れ・と、買い物に行くんだ。腰抜け」
両者共に男で、
両者共にほぼ自分勝手に言っている、というところだった。
俺は2人に聞えないよう、こっそりため息を吐いた。
始まりは、クルーゼ隊に久々の休暇が出た、ということにある。
軍隊って言うものは結構休みが不規則で
毎週必ず休める者もいれば、人によっては一年無休暇、なんて恐ろしい者もいる。
まあ今は戦時中なんだし、休暇を取れるヤツのほうが珍しいんだけど。
んで、俺達クルーゼ隊にもその『珍しい』休暇ってやつが揃って巡ってきて
故郷のプラントにも無事到着して
そんでなぜだか、せっかくの休日に俺の部屋の前で不毛な会話が繰り広げられている。
…当の本人を思いっきり無視して。
「大体僕は一週間も前から約束してたんです!僕はずーっとそれを楽しみにしてて!」
「捏造なんて見苦しいぞ?ニコル」
「な!誰が捏造ですか!失礼ですよ!イザークこそまた勝手に引廻すだけでしょう!?」
「それのどこが悪い。そして捏造で無いなら今日のは貴様の勘違いだ。帰れ」
「絶対帰りません!!!」
終わらない言い合いに俺は痛む額を押さえる。
そもそも俺はこの2人、どちらとも約束をした覚えは無い。
ニコルのほうは、確かに一週間前に約束はしたけれども
それが今日だとはさっき初めて聞いたし。
しかも訊かれたのは「今度一緒に出かけませんか?」程度だ。
イザークにいたっては、昨晩急に俺の部屋に来て
「明日は出かける。荷物持ちをしろ」
とだけ言って俺が返事をする前に出て行きやがった。
その2人が鉢合わせして、この状況だ。
まったく・・・嫌になるんだけど。
「じゃあそんなに言うならディアッカに決めてもらいましょうよ!」
「…は?」
急に話を振られて間抜けな声を上げる。しかし
「ハン!選ばれなかった後でメソメソ泣くなよ?臆病者」
「それは貴方じゃないですか?イザーク」
トントンと話は進む。
2人が好戦的な目線を俺に向ける。
『・・・どっち!?』
・・・・こんなんどっち選んでも後で怖いのは俺じゃねぇか!!
「え、えーと・・・・3人で出かけるってのは?」
『不許可!!!!!』
綺麗にハモって即効で却下かよ・・・・。
おまけに表情までおんなじだし。
そんなに意気あうなら頼むから賛同してくれ。
淡い希望を望んだ俺が馬鹿だったのか。
(だって休日っては、個人の自由の筈だろ・・・?)
その休日を誰かと過ごそうと考えるからいけないんだろうな。
俺は今日は久しぶりに日舞の練習にいく気満々だったのに。
こいつら俺の言い訳も聞きやがらねぇし。
こういうときに限って仲裁役のラスティは、ミゲルとか言う緑パイロットとデートだし。
時間は刻々と過ぎてくし。
だんだんイライラしてくるし。
ああもう、どうにかして終わりにしたいんだけど。
気は進まないけど怒鳴っちゃおうかな。
そう思って、息を吸い込もうとした瞬間。
「…!」
廊下を悠然と横切る影。
文句を言おうと溜め込んだ息は呼び止めるためのものに変わった。
「アスラン!!」
ぎょっとしてニコルとイザークが振り返る。
やや遅れてアスランも俺のほうを見る。
「どうした?ディア・・・・ぅあ!?」
立ち止まって問うアスランの腕と、稽古用具の入った袋を引っつかむ。
そして肩越しに目を見開いてるニコルとイザークに叫ぶ。
「ワリィ!俺今日はアスランと出かける予定だったから!!」
そのまま猛ダッシュで駆け出した。
2人が同時に舌打ちしたのが聴こえた。
「・・・そんな予定だったか?」
宿舎から走り去って、開合一番にアスランは首を傾げて言った。
俺は息を整えながら苦笑いをする。
「や、ごめん。あそこから逃れる口実に使わせてもらった。助かったよアスラン」
俺の身も蓋も無い言い方に、納得したように相手は頷く。
「そうか、ならよかった。忘れていたなら失礼だと思った」
無表情に言うアスランを見て、自然に唇が笑みの形になる。
そんな俺にアスランが問う。
「で?どうするんだ?抜け出してきて」
「ん?俺はこれから日舞の練習行くんだけどさ・・・
あー・・・ごめん、アスラン。もしかしてなんか宿舎内で用事あった?引っつかんできちゃったけど」
そうだ、俺のほうこそ相手の都合考えずに連れてきちまったんじゃないか。
さっきまで散々迷惑してたばっかだったのに。本当にすまない気持ちになってくる。
すると、アスランは
「いや、別に今日は何も予定が無かったから。
それで、もしよかったら『ニチブ』を見学させてくれないか?」
と言って微笑んだ。
その台詞に俺は心底感動した。
(こういうのが普通だよな。やっぱ。うん。
何だって俺の隊ってあんなおかしなヤツばっかなんだろうな・・・)
そう思って俺はもう一度「ごめん」と言ってから
「ありがとう」
と頭を下げた。
新緑の中で、アスランはもう一度笑った。
「それで・・・さっきから気になってたんだが、それが『ニチブ』の道具か?」
途中の小道でアスランが興味津々、といった感じで尋ねてきた。
「ああ、そうだよ。っていうかアスラン、そんなにアンタって日舞に興味あったっけ?」
記憶を掘り返してみる限りでは、そんなことは無かったように思えたが。
すると、アスランは恥ずかしそうに頬を染めた。そして
「・・・・キラの出身プラントの系列が、JAPだってこの間知って・・・」
と言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、そう・・・・・・・・・・・?」
一瞬の間を空けて頷く。
キラって誰だ、と内心で突っ込みを入れながら。
するとアスランは恍惚とした表情で語り始めた。
「キラは本当に可愛い子なんだ・・・おっちょこちょいで男のくせに泣き虫でそのくせ芯は強くって!!
だからディアッカ。他にも日本のことを知ってたらぜひ教えてくれないか?!」
満面の笑みで訴えられて、俺は思わず首を縦に振った。
『男』・・・男って言ったよな・・・今。
俺は顔を引きつらせて空を仰いだ。
前言撤回。
やっぱコイツも変かもしんない。
オチてません。
■ディアアスではない筈です。(いきなり)
だってアスランはキラ一筋・・・・
な、もんでディアッカさんの(というかむしろ私の)恰好の逃げ口になっております。
つーか不思議ちゃん続行中だなぁ・・・;
私は休日は超ヒッキーなんで、色黒も弱引きこもり設定で(笑)
だって平日は嫌でも人と顔合わすじゃないですか!ヒトゴミ苦手ですわよ。←でもコミケは行く。(・・・)
ま、本音は
ディアッカをモテモテにしたかっただけです!!!
以上!(走)