床から5cmのところで青い蛍光灯が、淡い光を放っている。
時計は既に深夜を指し、息をするのも躊躇われるような静寂が部屋を包んでいた。

僕はそんな中、何もない闇に向かって目を凝らす。
壁に背をつけて、ベッドの上に転がったまま。
寝るためだけにしか帰ってこない自室は、夜中を迎えると一層僕に知らん振りしている気がした。



耳が痛くなるような静けさの中、突如として 背後でギ、と音がした。
僕は思わず身を強張らせる。
固く瞼を閉じ、全神経を自分の背中に集中させた。

薄い壁の 向こう側に。



何度か軋むような音がする。
シーツの上を蠢く、衣擦れの音。
一言二言、ボソボソと暗い響きを持った囁き。
きっと普段なら聞き取れないような、恐ろしいほど小さな物音。


でも今は
心臓の鼓動さえ聞こえそうな今では

その音は煩いくらいに響いている気がした。



「…ぁ…っ」


一瞬、壁の向こう側から漏れた吐息。
ぴくん、と自分の身体が反応する。
胸の奥が苦しくなる。
一層強く目を瞑る。
静かにゆっくり、僕は息を吐いた。



「…ふ、ン…」


擦るような音は段々頻繁になり
それに伴い、彼のつめたような声も回数を増す。

甘い吐息。
彼の声。

少しずつ熱を帯び始める意味のない言葉達。
初めは唇を噛むように抑えられていた声が
耐え切れなくなったのか、時々妙な所で飛び跳ねる。


そんな声を上げている彼の姿を
僕は自分の下肢に手を這わせながら、瞼の裏に想像した。


上気した頬。
半開きの唇。
涙の粒が乗った金の睫毛。
汗の滲む鎖骨。

自分の指に、唇に、愛撫に
小さく身を震わせる彼の姿。



喉が音を立てて鳴った。
慌てて口元を押さえる。
…聞こえるはずなんてないのに。

案の定荒い呼吸は、僕の存在なんか無いかのように
背後の、たった十数センチ程度の薄い壁から絶え間なく聞こえてくる。



「ぃ、や…っ!はっ!んっ」


か細い声はうねり、大きくなり、僕の肌を一層粟立てる。
自分の顔が火照ってくるのがわかる。
僕は指を身体のあちこちに這いずり回す。


彼は知らないだろう。

自分達の秘め事が
こうやって壁を抜けて他者に伝わってることを。

自分の掠れた甘い声を聞くために
真夜中まで息を潜め、彼らの情事を待っている人間がいることを。


そして
彼の恋人が、それをを知っていて
その人物を 嘲笑っていることを。



「ンン…っひ!や、そこ…はっあ!!」


一際大きな軋む音がしてから、涙の混じった悲鳴を上げる彼。
耳朶に突き刺さる甲高い声。
脳裏に彼の表情が瞬く。


「…ディ、アッカ…ッ!」


壁の向こうの彼の恋人と、僕の吐息に紛れた声が被さった。
僕は自身に添えていた手を強く動かす。
そして空いた方の自分の指に、思い切り噛みついた。

悲鳴を上げないように。


この腕の中、彼がいるような錯覚を抱く。
潤んだ瞳で僕を見詰める彼。
懇願し、苦しげに呻く彼。


「も、いや…、ぁ!」


一瞬、彼が誰かの名を呼ぶ気配がした。
そのことに、僕は急に現実に引き戻される。


(聞いちゃ駄目だ)


反射的にそう思う。

性急に先端を引っかく。
頭が真っ白になる。
腰骨から全身に走る衝動。



しかし
意識を手放しそうな快感の中


残酷にも
その声だけは はっきりと聞こえた。



「ッい、ざぁく…ッ!!」


真っ白だった脳内は
一瞬にして真っ暗になった。







どれくらいそうしていたんだろう。

あれから暫く、僕はぼんやりと暗い部屋を見詰めていた。

意識は完全に外界からシャットアウトして
彼の尚続く喘ぎ声も聞かないふりをして。


いつの間にか壁の向こう側は静かになっていた。

きっと彼は、愛しい恋人の腕に抱かれ
柔らかな夢に包まれているんだろう。
穏やかな寝顔で、安らかな寝息を立てているんだろう。

それに比べ、なんと自分は滑稽なことか。

声を漏らさぬよう、僕は自嘲した。



こんなに傍にいて
こんなに彼の声を知っていて

それなのに


彼は決して
僕の名を呼ぶことは無い。




ズボンからゆっくり指を引き抜く。
粘膜を刺すような青臭さが周辺に広がった。
ぬらぬら光る自分の指を2、3いじくると、ニチャリとまだ乾ききらない水音がたった。

その照かりに、一瞬
彼の恋人の勝ち誇ったような笑みを見た気がして

僕は乱暴にシーツに精液をなすりつける。


再び訪れた静寂をもう一度見詰めてから

僕は、頭まで毛布を被った。















END










■ええと…
ヤマ無し、オチ無し、意味無し?(撲殺)


背景が白いことに激しく罪悪感を感じています。(うわー)

や…頑張ってね…少しはね…年齢に見合ったモン書こうとか思ったのが悪かったんですね…。
『16禁書けますよvv』って言って頂けて、それを真に受け、図に乗ったのが敗因ですよね…。

まぁ人間疲れてたり眠かったりすると本能出てくるらしいじゃないですか。
ストレス解消には己の欲求に素直であるべきじゃないですか。

だからってなんでこんなもんが出来上がるのかと訊かれれば
そりゃもう『人間だもの。(C:相田みつを)』と答えるしかない訳で…


とりあえず今いえることは
もうやりませんので勘弁してください!!!!(脱兎)