助けてくださったことへのお礼を言って
久しぶりに出会えた嬉しさを伝えて
元気に振舞っているつもりでしたの
婚約者だったアスランも
ずっと一緒にいたダコスタさんも気づかないほど
自分でも巧く隠せたと思ってましたの
それなのに
貴方があんまり優しく尋ねるものですから
「何か辛いことがあったの?」
なんて訊くものですから
上手に凍りつかせておいた筈の感情が
音を立てて溢れてきました
「お父様が……死にました…」
言葉は残酷に響きました
震える唇はそれ以上モノが言えず
舌はもつれて、塩辛い味が広がりました
わたくしは我慢しました
父の知らせを聞いたときも
ここで泣き出して、立ち止まって
他の方々に迷惑をかけたらいけないと
必死に感情を鎮めて、毅然としておりました
アスランに出会えたときも
本当は全部伝えて泣き喚きたかったけれども
やっぱりこらえて
努めて明るく振舞いました
本当は
全てを投げ出して
誰かに慰めて欲しかったのに
ですから
ですからここで泣きついたらいけません
元婚約者にも涙を見せなかったくせに
この方に慰めてもらおうなんて卑怯です
涙を武器にして、この方の好意に甘えようとするなんて
卑劣な行為です
(大丈夫、顔をあげるのよ)
そして
なんでもない、という笑顔を作ればいいのです
いつもみたいに哀しみは押し殺して
微笑んでしまえばいいのです
いつもそうやって
乗り切ってきたでしょう?
決意して顔をあげます
身体を一度キラから離して
口は笑みの形にして
でも わたくしは失敗しました
キラはこちらを見ていました
綺麗な眼差しで見据えておりました
そしてその彼の水晶色の瞳に映ったわたくしは
不恰好な 作り笑いをしておりました
それを見た瞬間、とても滑稽になりました
身体の力が抜けてしまいました
ハッとした時には脚は絡まり
そのまま無重力に流され
わたくしは彼の胸へと投げ出されました
(いけない)
そう思いました
手に力を込めて、彼から逃げ出さなければ、と思いました
でも身体は言う事をきかなくて
わたくしは彼の胸に納まったままでした
(…卑怯な、女)
偉そうなことを言って彼を送り出したくせに
情けなくて哀しくて
涙がハラハラ落ちてきました
止めようとしても もう止まりませんでした
きっとどこかでアスランが見ています
キラもきっと、こんなわたくしに失望しておいででしょう
お二人とも優しいですから、絶対にそんなこと口に出さないでしょうが
(本当に…卑怯…)
分かっていてこんなことをしている自分を殺してやりたい
このまま目から溶けて
全部溶けて
無くなってしまいたい
でも
無心に泣いているこの瞬間は
自分を憐れんでいられるこの瞬間は
予想していた以上に心地のいいもので
おずおずと背を撫ぜるキラの手の感触に わたくしは
確かに歓びを感じていたのです。
了
■ラクキラです。
いきなりですな!42話のラクス出陣…出撃の補完ですよ。
ラクス様が聖女であろうとしているのか、それとも天然でああなのかは知りません。
アスランにお説教とかしてる彼女に結構批判がありましたが
でもあの瞬間のラクス様は確かに16歳の乙女だったのではないかと。
自分を我慢してしまう、強くて責任感の強い子だったのかなーと思いました。
そういうにはやっぱり日の出の描写力が足りませんがね!(爽)
今の子にも見習って欲しいモンです(笑)
しかし最近はキラが神(ゴッド)化してきて
もう百合っプルなんて呼べませんよね(呼んでたんだ)