突然の出来事に、身動ぎすらできなかった。
夕暮れも近づいてきて
調査を終えてお互いに待ち合わせた裏路地。
自分と何気ない談笑していた探索部隊の男性が
パン、と風船が破裂するような音を立て
爆発した。
目の前の光景が理解できないまま目を見開いていると、背後でその様子を見ていたファインダーも 同じように破裂した。
一拍遅れて、双方からバタバタッと派手な音と共に 私の全身に熱い液体がかかる。
暫く呆然と私は突っ立ったままだったが
自身の頬を撫で、その液体が赤いのだと認識した瞬間
背骨の奥からブルリと震えが走り
全身を粟立たせ、その場で吐いた。
ゲェゲェと、お世辞にも美しくない擬音で
冷たい地面に這い蹲る。
鼻の奥が酸っぱい。
唾液が口の端を伝う。
気持ちが悪過ぎて、手で拭う事すらできない。
酸で焼けた口内がピリピリした。
うつむきながら思考が廻る。
なんで
どうして
何が起きたの?
ひとしきり胃のものを出してしまって、肩で息を整えながら
恐る恐る周りを見渡す。
まさしく『爆散』してしまった彼らは、まるで人形みたいにぽーんと脚を投げ出して
硬い石畳に横たわっている。
白いコートは見る影も無く、残っているのは下半身だけ。
それ『以上』に視線がいきそうになり、また咽喉に込み上げてくる気配を感じて、慌てて私は目を逸らした。
…これでは、私のイノセンスも役に立たない
そう思った途端、彼らの優しい笑顔が胸に蘇り
吐き気の変わりに嗚咽がこみ上げてきた。
ふ、と自分の真上に落ちた影に気が付く。
大通りの街灯に照らされ、長く伸びた影。
目線で辿っていくと、墨で光る上等な靴に行き着いた。
靴から脚へ、脚から胸へ、顔へ。
そして最後に菫みたいな色の瞳と目が合った。
そこには 浅黒い肌の美しい男性が立っていた。
私は暫く言葉も発せず、彼と見つめてあっていた。
それはとても奇妙な瞬間で
たった数フィート先に広がる華やかでにぎやいだ大通りとは、まるで隔絶されたような死臭の立ち込める空間の中
ぼんやり私は頭の片隅で
シルクハットが長身な彼を、更に大きく見せているな と思っていた。
そして悲鳴も上げずに平然と、この異常な光景を見つめている彼に
私は極自然に尋ねていた。
「あなた、が 殺した…の?」
その問いに、影は答える。
「そ、俺だよ」
あっけらかんと悪びれもせず
その口元には 微笑すら浮かべて。
「コンバンワ、フラウ・ミランダ」
おどけた様にお辞儀をする。
それはまるで
駒鳥を殺した雀のように。
■実はセカンドコンタクトとかであれば良いと思います。