ああ参ったね。
ナチュラルのスカイグラスパーを深追いし過ぎて、こちらもモロに攻撃食らっちまった。
頭に血が上っていたとはいえ、酷い失態だよね。
なんだか最近AAを相手にし始めてから妙に運がねぇなぁとは思ってたけど、ここまで派手に壊したのは本当に久しぶりだよ。
ったく、機体大破はイザークの専売特許だぜ?
しかもただ大破しただけじゃなくあちこちイカレちまったようだ。
通信はもちろん、自爆装置すら起動しねぇ。
ついでになんだか体の節々がズキズキするし。どっか折ったかも知れないなぁ。
どうやら仲間の救援も間に合わなそうだ。
更にまずいことにAAの最終兵器、『ゴットフリート』の標準がバスターにぴったり合ったことが警報音にて知らされる。
俺は小さく舌打ちする。
ああ参ったね。
そろそろ年貢の納め時って奴?
やだなぁ、もっとやりたいこといっぱい有ったってのに。
まだ食べたことない美味いモンだっていっぱい有るだろうし、せっかくの地球観光も楽しんじゃいないし。
綺麗なオネーサマとももっと付き合いたかったね。まあ童貞じゃないだけマシだけど。ニコルはどうだったんだろ。
ああそうだ。この間せっかく扇子も着物も新調したのにな。
最期に踊っておけばよかったかな。
ああ畜生。
なんだか冷や汗が出てきやがった。
死ぬのは嫌だな。痛そう。うん、怖い。
生きたくったってこんな最期迎えなきゃいけない奴がいるってのに自殺願望者ってなんて贅沢なんだろうね。
ヤダヤダ、そいつらの分まで俺が生きてやりてーよ。へ。
こんな辺境の地でゴッツイ機体と心中か。
オトーサン、オカーサン先立つ不幸をお許しくださいってか?
・・・クソ食らえ!
ああ畜生。
当たり前のことだけどさ
俺が死んだって明日も太陽が昇ってナチュラルとコーディネーターの馬鹿げた戦争は続くんだ。
そもそも俺たった一人で仕留められる人数なんて高が知れてるなんて理解ってるけどね。
それにしたって寂しいじゃない?
誰にも知られないまま『俺』がいなくなっちまうんだぜ?
いままでだって俺がそうやって生き延びてきたわけだけど
何人もの『命』の上に立ってきたわけだけども
とっくに覚悟していたつもりだったけど
やっぱ結構、クるモンがあるかもね。
ああでも。
そうか、栄えある『ザラ隊』諸君がいたか。
俺がどこでどうやって死んだか、覚えててくれる奴らは。
イザークは・・・まあ少しくらいは怒ってくれるかな。あれで結構情に厚いんだ。
また後先見えなくなって怪我増やさなきゃいいけどさ。
アスランはどうだろう。あんま俺のこと眼中に入ってなさそうだしなぁ。
ま、期待しちゃいないけどね。
ニコルは・・・もう、いないけど。
臆病者だけど優しい奴だから きっと泣いてくれただろう。
あいつらは、死なないでくれると いいな。
ああそうだね。
何もここで死ぬって決まったわけじゃないじゃない。
生き延びようとすりゃ人間はしぶといんだぜ?
ましてやコッチは天下のコーディネーター。
ちょっとやそっとじゃ壊れる自信は無いね。
憎まれっ子、世にはばかるって奴?
もしかして殺されるかもしれないけど
っていうかその可能性のほうが断然高いんだけど。
でもうまく行きゃ、ちょっとは敵が減るかもね。
俺たった一人で仕留められる、『高が知れた数』のお蔭で
もしかしたら奴らが生き延びれるかもしれないしさ。
なんてったって俺ってばコーディネーターだし?
肉弾戦になりゃコッチが有利ってね。
一応エリートって肩書きには負けないくらいの働きはしようかな。
でもイザークなんかは頭足りないから
きっとまたすごい形相で『裏切り者ぉ!!』とか言うんだろな。ああ面白い。
まあそのためには奴らの懐には滑り込まなきゃいけない訳で。
せいぜい殊勝なふりでもして、大人しくここは『コウサン』してさしあげましょうか
アークエンジェルさん?
ああでもなるべくなら
やっぱり女の子は殺したくないんだけどね。
「バスターパイロット、投降しました!」
両手を挙げて機体から出てきた金の髪の少年が
薄く笑んでいたことに
気付いた者はいなかった。
色黒に夢見すぎ?
あまりのショックに健全に書いてしまいました・・・。すんごい散文的(笑)
30話を見て衝動的に書いたものです。
(↑だからつじつま合わなくても勘弁)