もっと上手になりたい君たちへ

 

「うちの子は今サッカーに夢中なんです」
最近あるお母さんのこんな言葉を耳にしました。そこで、今回は今サッカーに夢中な君たち(高学年)に捧げる、もっともっとサッカーが楽しくなる方法を考えてみました。
きっとサッカーを楽しいと思うのは試合(ゲーム)をしている時じゃないかと思います。
今度練習などでゲームをする時に、次の5つのことを考えてやってみてください。一度に5つは覚えられない?では、最初は一つだけでもいいから、今日はこれをやるぞと自分で目標を決めてゲームに出てみたらどうかな。

 

1.まわりを見よう

ゲーム中は、ボールを持っていない時でも、いつもキョロキョロまわりを見るようにしよう。相手の選手がどこにいるか、味方の選手がどこにいるかを見てください。どこがチャンスかとか、どこがピンチかがわかるかもしれません。それからパスをもらう前にまわりを見られるようになるといいですね。パスをもらう前にまわりを見ておけば、もらってから何をすべきか(ドリブルか、パスか、シュートか)を先に考えられます。パスをもらってから、どうしようって考えていたら、プレーが遅くなってしまいますよね。
サッカーには、”look before” “think before” という言葉があります。中学生になったら英語も覚えましょう。

 

2.ボールを迎えに行こう

これは単純明快な話ですね。自分にパスが来るときにその場で待っていたら、相手に先回りされて取られちゃうかもしれません。パスを出してくれる味方との距離や、ボールの強さ、ゴロか浮き球かにもよりますが、たいていの場合にはボールを迎えに行った方がいいと思います。強くて速いパスを受ける場合にはなかなか難しいのですが、そんなときには気持ちだけでも迎えに行ってください。その気持ちが次のプレーにつながるのです。
これを英語では、”meet the ball” と言います。

 

3.パスをしたらすぐに動こう

サッカーは相手のゴールにシュートを決めるスポーツです。シュートを打つには相手ゴールの近くにボールを運ばないといけません。ひとりで何人もの相手をドリブルで抜いてシュートを決めることがないとは言いませんが、基本的にはパスをつないでボールを運んでいくことが多いと思います。君たちも知っている壁パスは、相手の守備を崩して相手の裏側(相手ゴールの近く)に攻め込んでいくのにとっても有効な戦術(方法)です。壁パスは、パスした後にのんびりしていたらうまく通りません。パスをしたらすぐに動くことが必要です。しかしこれ(パスをしたらすぐ動くこと)は壁パスのときだけのことではありません。パスをもらった味方が、相手に囲まれたりすることもあるでしょう。そうした時にはすぐに助けに行ってあげることが必要ですね。つまりパスをしたらそれで終わりということではなく、いつも先のことを考えて、次の動きをはじめることが大切だということなんです。
このことは英語で、”pass and move” と言います。

 

4.声を出そう

試合の時に、コーチから「もっと声を出そう」って言われますね。でも「声」っていろんな声があるよね。コーチはどんな声を出そうって言ってますか?
ゲーム中の声を大きく2つに分けると「ここにパス出して!」「そこにパス出すよ!」「何番マーク付け!」「後ろから相手が来てるよ!」といった味方に指示を出す声と、「がんばっていこうぜ!」「気にするな、取り返すぞ!」というような味方を励まし元気づける声に分けられると思います。

先ず最初の味方に指示を出す声が大切だってことは説明しなくてもわかるよね。ここで覚えてほしいのは、声はただ出せばいいというものではないということです。いつ出すかということも大切なんです。例えば「ここにパスを出して!」という声。まだボールをコントロール出来ていない味方に「出せ!」と言ってもパスは出てきません。パスの出し手が、ボールをしっかりコントロールして顔を上げる瞬間に「ここ!」って声をかけるのがいい声のかけ方だと思います。声をかけるタイミングがとっても大切です。


次に声を出そうと書きましたけど、声を出さない方がいい場合もあります。相手に気付かれないようにスーッと動いてパスをもらう時などです。こうした時には、身振り手振りで合図(ボディランゲージ)する、目と目で合図(アイコンタクト)するということも必要になってきます。つまり「声を出そう」とは言ってますが、その心は仲間同士で合図を送りあおう(コミュニケーション)ということなんです。そして合図を送りあう方法として「声」「身振り手振り」「目」があるよということを知っておいてもらいたいのです。

もう一つの味方を励まし元気づける声。これも大事ですね。どんどん出した方がいい。元気がないと「負けちゃうのかな」って気になってきちゃうからね。それほど強くないチームがみんなで声を出し励ましあって、その勢いで勝つということはサッカーではよくあることです。
逆に気をつけてほしいのが、失敗した味方に「何やってんだよ!」と怒る声をたまに耳にすることです。大声で怒っても失敗は元に戻りません。だったら、「気にするな、次にがんばれ!」と声をかけてあげた方がいいよね。失敗した人が怒られてシュンとしちゃうより、「みんな励ましてくれてありがとう、次は失敗しないようにがんばるよ」と思ってくれた方がいいにきまってますからね。

 

5.みんなで攻めてみんなで守ろう

5番目で最後になりますが、私が試合の時に一番言っていることがこれです。
君たちに質問します。
フォワードの仕事は何ですか?
ディフェンダーの仕事は何ですか?

フォワードの仕事は「攻めること」、ディフェンダーの仕事は「守ること」と思っている人がたくさんいますが、これは正しくありません。
もしディフェンダーの仕事が「守ること」だけだったら自分の近くに来たボールはなるべく遠くにボカーンと蹴り返しておけばいいことになりますし、フォワードの仕事が「攻めること」だけだったら相手にボールを奪われても味方ディフェンダーにもう一度取り戻してもらうまで待っていれば良いことになります。このようなチームをたまに見かけますが、決して強いチームにはなっていません。

サッカーは相手チームと互いにボールを奪い合うスポーツです。ディフェンダーであろうが、フォワードであろうが、相手ボールを奪い返した瞬間から「攻めること」が始まり、相手にボールを奪われた瞬間から「守ること」が始まるのです。得点するには相手から奪い返したボールを再び奪われないで、シュートできるところまで運んでいくことが必要です。また相手にボールを奪われたら出来るだけ早く取り返すことで、相手の得点チャンスをつぶすことが出来ます。これにはポジションは関係ないのです。

そして何より大切なことは「攻めること(ボールを奪われない)」と「守ること(ボールを奪いかえす)」の切り替えを早くすることです。
この「攻守の切り替え」を早くできることが強いチームの条件だと思います。

 

長くなってしまいましたが、サッカーには覚えなければならない約束事、基本的な戦術がたくさんあります。上記の5項目は基本戦術ということのさらに前段にある、サッカーの基本常識といっても良い事柄です。1.まわりを見る、2.ボールを迎えに行く、3.パスをしたらすぐに動く、4.コミュニケーション、5.攻守の切り替え、この5項目をいつも意識して実践することが、サッカーをより楽しく知的なものにしていく道なのだと思います。

 

コラム目次へ