4月になりました。私の勤めている会社の入社式で社長が新入社員に3つの願いとして「勉強すること」、「知恵を持て(指示待ち人間になるな)」、「チームワークを大切に」ということを話していました。実はこの3つ、私が新学期にあたり最初の練習のときに新3年生に話そうかなと思っていたこととほとんど重なってまして、小学3年生に話すことを大人になっても言われてる我社の新入社員はちょっと情けないなと思い、いや待てよ、社長が普段私たちに感じていることを、先輩たちのようになるなという意味で新人に言ったのかななどと先輩社員としては少し反省もしてしまいました。

  さて、私の会社の話はどうでもよいのですが、「知恵を持て(指示待ち人間になるな)」ということはサッカーにおいてきわめて大切なことだと思います。なぜならサッカーの試合中は、どんなに相手に押し込まれていても、バレーやバスケのように監督がタイムを取ることはできません。野球のように、打て、見送れ、バントしろ、盗塁しろといったサインをベンチから送ることは不可能です。相手からボールを奪ったときに、ドリブルしようか、パスしようか、シュートしようかと、いちいちベンチの指示を仰いでいたらすぐに相手にボールを奪い返されてしまいます。ひとたび試合が始まれば、選手たちは自分でゲームの状況を把握して、自分で考え判断していかなければなりません。

  少し古くなりますが、1978年のワールドカップで優勝したアルゼンチン代表の監督セサル・ルイス・メノッティは優勝インタビューでサッカーにおいて重要なことは「テクニック」「インテリジェンス」「コラヘ」であると言いました。テクニックとコラヘ(coraje:スペイン語)はちょっとおいておきまして、インテリジェンスという言葉、当時中学2年生だった私には意味がわからず、ただただその響きが気に入り、どんな意味だろうかとわくわくしながら英和辞典を引きました。いわゆる身体能力的にそれほど優れていなかった私は、以来「サッカーはインテリジェンスだ」をずっと自分に言い聞かせるように思い続けています。

  自分で考えて、自分で判断したプレーが得点につながったとき、あるいは失点を防ぐことができたときの喜び、楽しさは格別です。私は意外性のあるプレーができたとき、たとえば相手の選手が誰も予想しなかったところへパスを出せたときなどに無常の喜びを感じます。点を入れた、試合に勝った、これはもちろん楽しいことですが、自分で考えるという喜びも子どもたちに感じさせてあげられるような指導をしていきたいものです。これは渡部監督作成の志津FCの目標でもありますが、そうは言ってもなかなか難しいかな。がんばります。

Intelligence

コラム目次へ