強いチームに必要な選手のタイプとは

「ゴン」こと中山雅史選手はなぜ日本代表に選ばれているのでしょうか。技術的には若い選手のほうがはるかに上です。決してスピードがあるわけでもありません。でもトルシエにもジーコにも選ばれます。何故か。彼はチームにエネルギーを与える人だからだと思います。チームが劣勢になって多くの選手が心の中で、もうこのまま負けちゃうのかなという気持ちになったときに彼は本領を発揮します。彼のあきらめない、そして怒りにも似た強い気持ちがプレーに、あるいは言葉に表れてチームメイトが鼓舞されることを監督は期待しているからなんじゃないか思います。(以前少し触れましたが、このような気持ちをスペイン語でcorajeというらしいです。)

ゴールデンエイジの子どもたちに最も大切なことは技術(Technique)の向上であると言われています。これはゴールデンエイジの子どもたちは、人生の中で最も技術を習得するのに適した時期だということが、科学的にも証明されている(これについてはまた別の機会に・・・)からなんだと思いますが、では技術に優れる選手を11人集めれば強いチームになるのでしょうか。

世の中にたくさんの少年サッカー本が出版されていますが、その中のおすすめ本、トム・バイヤー著「キッズサッカーQ&A トムさんのサッカー」(出版芸術社刊)に「強いチームに必要な6つのタイプの選手」というくだりがありまして、おもしろかったので以下に引用、紹介します。

「トルシエ監督とヨーロッパ選手権を見にいった時のことだ。98年のワールドカップで優勝した時のフランス代表で監督をしていたエメ・ジャケさんと一緒に食事をしたんだ。そのときに、強いチームに必要な6つのタイプの選手ということについて話をした。

6つのタイプとは、
1.「リーダー」ができる選手
リーダーシップと責任感があってチームをまとめて引っぱっていく選手。キャプテンになれる選手だね。

2.「ストライカー」
チャンスがあればどんどんシュートをうって、しかもたくさん点をとることのできる選手。

3.創造力のある「クリエイター」
パス・ドリブル・シュートなんでもできる選手だ。パスで攻撃を組み立てたり、ドリブルでチャンスを作ったり、時にはシュートもねらえる選手。プレーメーカーとかゲームメーカーなんて言われることもあるね。

4.「エナジャイザー(エネルギーをつくる人)」とよばれる選手
たとえばヴェルディの北沢豪選手とかエドガー・ダービッツ(オランダ代表)のような、とてもエネルギッシュでファイトあふれる選手だ。ダイナモ(発電機)なんて言われることもあるね。パスをもらうため、スペースを作るため、相手からボールを奪うために一生懸命走り回る、元気な選手だね。

5.カベのように強い「プロテクター」
アントラーズの秋田豊選手やパオロ・マルディーニ(イタリア代表)のようなディフェンダーの選手だね。いつも落ち着いていて、味方に指示を出したり、カバーに入ったり。1対1にも強い。この選手が「キャプテン」になることも多い。

6.「スーパーサブ」
途中から交代で入って、それまでの流れをガラット変えることのできる選手だ。90年イタリア・ワールドカップのロジェ・ミラ(元カメルーン代表)とか、ジョホールバルでVゴールを決めた岡野雅行選手などだね。とても足が速いとか、とにかくヘディングが強いとか、その選手が入った時に「あっ、アイツが入ってきた。ということはこの作戦でいくんだな」と、すぐにチーム全体に伝わるような特長を持っている選手だね。

このようにチームを作るためには、いろいろなタイプの選手が必要になる。技術がある選手を11人集めればいいというわけではないんだ。自分がどんな選手になりたいのか、自分のよさは何なのか、そういうことも考えながらトレーニングをがんばってほしいな。」

(この本は子供向けに書かれていますが、大人が読んでも勉強になります。親子サッカー談義の材料としてお勧め本です。) 

話は変わりますが、オランダの名門クラブ「アヤックス」ではジュニアからトップまでの育成コンセプトとして「技術(Technique)」「判断力(Intelligence)」「スピード(Speed)」「人格(Personality)」を掲げているそうです。これらはすべて大切なことなのでしょうが、すべてが高いレベルで備わっている選手はそう多くいません。要は自分の特長、あるいは個性といったものを伸ばしていくこと、そしてそれをチームに生かしていくことが大切なんだと思います。

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